1962年のイタリア映画『家族日誌』は、戦後のローマを舞台に、ジャーナリストのエンリコが弟ロレンツォの死を知り、過去の複雑な兄弟関係を回想する物語。愛と罪悪感、家族の絆を描いた感動的なドラマで、ヴァレリオ・ズルリーニ監督が手掛け、マルチェロ・マストロヤンニとジャック・ペランが主演します。
基本情報
- 邦題:家族日誌
- 原題:CRONACA FAMILIARE
- 公開年:1962年
- 製作国・地域:アメリカ、イタリア
- 上映時間:114分
女優の活躍
映画『家族日誌』では、女優たちの活躍が物語の情感を深めています。
シルヴィは、兄弟の祖母役として登場します。彼女は貧しいながらも愛情深く兄弟を育てる人物を演じ、家族の絆の基盤を象徴する存在です。シルヴィの演技は、静かな力強さと温かみを併せ持ち、兄弟の幼少期のシーンで特に印象的です。彼女の存在が、物語の基調となる哀愁を強調しています。
ヴァレリア・チャンゴッティーニは、エンツィーナ役で出演します。彼女はエンリコの人生に関わる重要な女性として描かれ、兄弟の再会後の生活に影響を与えます。チャンゴッティーニの演技は、繊細で現実味があり、戦後の混乱した時代背景の中で、希望と絶望の狭間を表現しています。彼女のシーンは、物語の転換点で活躍し、観客に感情移入を促します。
セレーナ・ヴェルガノは、病院の修道女役を務めます。この役は、弟ロレンツォの最期に関わる部分で登場し、慈悲深さと静かな悲しみを体現します。ヴェルガノの演技は、控えめながらも心に残るもので、映画のクライマックスを支えています。他の女優として、フランカ・パスットやミランダ・カンパ、マルチェラ・ヴァレリなども脇役で参加し、それぞれのシーンで物語のリアリティを高めています。
これらの女優たちは、男優中心の物語の中で、女性の視点から家族のドラマを豊かにしています。
全体として、女優たちの活躍は、1960年代のイタリア映画らしい洗練された表現が見られます。彼女たちは、感情の微妙なニュアンスを演じ分け、監督ヴァレリオ・ズルリーニの繊細な演出を引き立てています。特に、シルヴィの祖母役は、映画のテーマである家族の喪失と再生を象徴的に描き、批評家からも高く評価されています。チャンゴッティーニやヴェルガノの役柄は、兄弟の関係性を補完する形で活躍し、物語の深みを増しています。この映画は、女優たちの自然な演技が、男優たちのパフォーマンスと調和し、全体のバランスを保っています。
女優の衣装・化粧・髪型
女優たちの衣装は、戦後イタリアの現実を反映したシンプルで実用的なものが中心です。シルヴィの祖母役では、質素なドレスやエプロンを着用し、貧困層の生活を表現しています。布地は綿やウールが多く、地味な色調で、物語の哀愁を強調します。チャンゴッティーニのエンツィーナ役は、日常着としてスカートとブラウスを基調とし、控えめなデザインが彼女のキャラクターの純粋さを表しています。ヴェルガノの修道女役は、伝統的な修道服で、黒いヴェールとローブが厳粛さを演出します。これらの衣装は、時代背景に忠実で、過度な装飾を避けています。
化粧については、自然志向が強く、ナチュラルメイクが主流です。シルヴィは、薄いファンデーションと軽いリップで、年齢相応のしわや表情を活かしたメイクです。これにより、祖母の温かみと人生の重みが自然に伝わります。チャンゴッティーニは、アイラインを軽く引いた目元と淡いチークで、若々しさと繊細さを強調しています。ヴェルガノの修道女役は、ほとんど化粧を施さず、素顔に近い状態で、清純さと神聖さを表現します。全体的に、1960年代初頭のイタリア映画らしい、控えめで現実的なメイクが採用され、物語のリアリズムを高めています。
髪型は、時代を反映したシンプルなスタイルが特徴です。シルヴィの髪は、緩くまとめたアップスタイルで、白髪交じりの自然な質感を活かしています。これが、祖母の役に深みを加えています。チャンゴッティーニは、ミディアムレングスのゆるいウェーブで、日常的な柔らかさを演出します。ヴェルガノの修道女役は、ヴェールで覆われたストレートヘアで、厳格さを強調します。他の女優たちも、ボブやポニーテールなどの実用的な髪型が多く、過度なボリュームを避けています。このような髪型は、戦後の質素な生活を描く上で効果的です。
これらの要素は、監督の美学に基づき、女優たちの自然美を引き出しています。衣装の地味さ、化粧の控えめさ、髪型のシンプルさが、映画のテーマである家族の内面的なドラマを支えています。特に、シルヴィのスタイルは、時代を超えた普遍性を与え、チャンゴッティーニのそれは、若さの儚さを象徴します。全体として、これらのビジュアルは、物語の感情を視覚的に強化しています。
あらすじ
『家族日誌』の物語は、1945年のローマから始まります。苦労するジャーナリストのエンリコは、電話で弟ロレンツォの死を知らされます。この知らせがきっかけとなり、エンリコは過去を回想します。幼少期、兄弟は貧しい祖母に育てられましたが、母親の死後、別々の道を歩みます。ロレンツォは裕福な貴族に引き取られ、優雅に育ちます。一方、エンリコは苦労を重ね、芸術家を目指します。
1930年代のフィレンツェで、兄弟は再会します。エンリコは弟の保護者役となり、共に暮らします。しかし、ロレンツォの贅沢な生活習慣とエンリコの貧困が対立を生み、複雑な感情が交錯します。ロレンツォの病気が発覚し、エンリコは罪悪感に苛まれます。物語は、兄弟の愛憎と別れを描き、戦後の喪失感を表現します。
クライマックスでは、ロレンツォの死が描かれ、エンリコの内面的な葛藤が頂点に達します。あらすじ全体を通じて、家族の絆の脆さと強さが浮き彫りになります。この物語は、原作小説のエッセンスを活かし、感動的な結末を迎えます。
解説
この映画『家族日誌』は、ヴァスコ・プラトリーニの1947年小説「家族日誌」を基にしています。戦後イタリアの社会的背景を反映し、家族の喪失と再生をテーマにしています。監督ヴァレリオ・ズルリーニは、兄弟の心理描写を細やかに描き、存在論的な深みを加えています。マルチェロ・マストロヤンニのエンリコ役は、罪悪感と愛情の狭間で揺れる複雑なキャラクターを体現し、高い評価を得ています。
ジャック・ペランのロレンツォ役は、純粋さと脆さを表現し、兄弟のコントラストを際立たせます。撮影監督ジュゼッペ・ロトゥンノの美しい映像は、フィレンツェの風景を詩的に捉え、物語の哀愁を増幅します。音楽のゴッフレード・ペトラッシは、静かなメロディーで感情を強調します。この映画は、1962年のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、イタリア映画の傑作として位置づけられています。
テーマ的には、戦後の混乱と個人レベルの喪失を重ね、家族の重要性を問いかけます。ズルリーニの演出は、会話の親密さと視覚的美しさが特徴です。批評家からは、男泣きの傑作と称され、感情の複雑さを描いた点が称賛されます。アメリカとイタリアの合作ですが、主にイタリアで制作され、上映時間114分というコンパクトさで、集中したドラマを展開します。
さらに、この作品は、ネオレアリズモの影響を受けつつ、より内省的なスタイルを取っています。女優たちの活躍も、物語のリアリティを支え、全体のバランスを整えています。現代でも、家族の絆を考える上で、普遍的な魅力を保っています。
キャスト
- マルチェロ・マストロヤンニ:エンリコ
- ジャック・ペラン:ロレンツォ
- シルヴィ:祖母
- サルヴォ・ランドーネ:サロッキ
- ヴァレリア・チャンゴッティーニ:エンツィーナ
- セレーナ・ヴェルガノ:病院の修道女
- マルコ・グリエルミ
- フランカ・パスット
- ミランダ・カンパ
- ニノ・フスカーニ
- マルチェラ・ヴァレリ
スタッフ
- 監督:ヴァレリオ・ズルリーニ
- 脚本:マリオ・ミッシローリ
- 製作:ゴッフレード・ロンバルド
- 撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ
- 編集:マリオ・セランドレイ
- 音楽:ゴッフレード・ペトラッシ
- 衣装:ガイア・ロマニーニ
- メイク:リノ・カルボーニ
- ヘア:アマリア・パオレッティ
- 音響:ジョヴァンニ・ロッシ




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