『ことの次第』は1982年のヴィム・ヴェンダース監督による西ドイツのロードムービーです。ポルトガルでSF映画を撮影中のクルーがフィルムと資金の枯渇で立ち往生します。監督は失踪したプロデューサーを探しにロサンゼルスへ向かいます。映画製作の内幕と存在の不安を描いた白黒作品。
基本情報
- 邦題:ことの次第
- 原題:DER STAND DER DINGE
- 公開年:1981年
- 製作国・地域:西ドイツ
- 上映時間:127分
- ジャンル:ドラマ
女優の活躍
『ことの次第』では複数の女優が映画クルーの一員として登場し、撮影中断という異常事態の中でそれぞれの役割を果たします。
イザベル・ヴァンガルテン演じるアンナは、監督フリードリヒの恋人として感情的な支柱となり、待機中のクルーたちとの会話や内省的なシーンで存在感を発揮します。彼女の活躍は、クルーの精神的動揺を象徴するような繊細な演技が特徴です。
レベッカ・ポーリー演じるジョアンは、撮影中の女優役として物語の中心に位置づけられます。彼女はクルーの一員として退屈と不安に苛まれながら、仲間たちとの交流を通じて人間性を表現します。特に、ヌードシーンを含む大胆な演技で、身体的な解放と内面的な葛藤を体現しています。この活躍は、映画のテーマである「現実とフィクションの境」を強調するものとなっています。
ヴィヴァ演じるケイトは、クルーの一員としてユーモラスで風変わりなキャラクターを演じます。アンディ・ウォーホル作品で知られる彼女のスタイルが活かされ、淡々とした演技で周囲を和ませる役割を果たします。彼女の活躍は、クルーの日常的なやり取りにアクセントを加え、全体の雰囲気を豊かにしています。
カミラ・モラ演じるジュリアとアレクサンドラ・オーデル演じるジェーンは、脇役ながらクルーの多様な人間関係を支えます。ジュリアは音響や小道具関連の業務を担い、ジェーンは脚本や演出補助として活躍します。彼女たちの存在は、映画製作の集団性を描く上で重要です。
ジャネット・ラサック演じるカレンは、ロサンゼルスパートで登場し、プロデューサーの周辺人物として緊張感を加えます。これらの女優たちは、全体として待機の退屈さと創造性の喪失を体現し、作品のテーマを深めています。
女優たちの活躍は、単なる演技を超えて、ヴェンダースの監督手法を反映します。彼女たちは即興的な対話を通じてキャラクターを構築し、映画のメタ構造を強調します。このようなアプローチにより、観客は女優たちの自然なパフォーマンスを通じて、映画産業の内実を感じ取ることができます。
女優の衣装・化粧・髪型
『ことの次第』は白黒映画であるため、衣装・化粧・髪型の視覚効果はモノトーンで表現されます。イザベル・ヴァンガルテン演じるアンナの衣装は、シンプルなブラウスとスカートが中心で、日常的なクルー生活を反映した実用的なスタイルです。化粧は控えめで、自然な肌色を活かした薄化粧が施され、髪型は緩くウェーブのかかったミディアムヘアで、洗練された印象を与えます。
レベッカ・ポーリー演じるジョアンの衣装は、カジュアルなシャツやジーンズが多く、撮影現場の自由さを表しています。化粧は最小限で、目元を軽く強調したナチュラルメイクが用いられ、髪型はストレートのロングヘアで、風になびく様子が詩的なシーンを演出します。ヌードシーンでは衣装なしの自然体が強調され、化粧もほとんど施されていません。
ヴィヴァ演じるケイトの衣装は、ボヘミアン風のドレスやコートで、個性的なキャラクターを際立たせます。化粧は大胆なアイラインとリップが特徴ですが、白黒のためコントラストが強く出ます。髪型はボリュームのあるカーリーヘアで、ウォーホル時代の影響を感じさせるスタイルです。
カミラ・モラ演じるジュリアの衣装は、ワークウェア風のシャツとパンツで、現場作業を意識した機能性が高いです。化粧はファンデーション中心のシンプルメイクで、髪型はポニーテールが主です。
アレクサンドラ・オーデル演じるジェーンの衣装は、軽やかなワンピースで、若々しさを表します。化粧は明るいトーンのリップメイクが施され、髪型はショートボブで、清潔感があります。
ジャネット・ラサック演じるカレンの衣装は、シックなブラウスとスカートで、都市的な雰囲気を醸します。化粧は洗練されたフルメイクで、髪型はアップスタイルが目立ちます。
全体として、女優たちの衣装・化粧・髪型は、物語のリアリズムを支え、白黒の映像美を高めています。これらは即興撮影の影響で、自然で現実味のあるものとなっています。
あらすじ
ポルトガルでSF映画『ザ・サバイバーズ』を撮影中のクルーは、フィルムと資金の枯渇により作業を中断します。監督のフリードリヒ・ムンローは、プロデューサーのゴードンから連絡が途絶えたため、クルーをホテルに残してロサンゼルスへ向かいます。クルーたちは退屈な待機生活を送り、哲学的な会話を交わします。
フリードリヒはロサンゼルスでゴードンを探し、ようやくトレーラーハウスに隠れている彼を見つけます。ゴードンはマフィアの借金から逃れていたのです。二人は映画産業の厳しさについて語り合いますが、事態は深刻化します。クルーたちは次第に不安を募らせ、関係性が揺らぎ始めます。
物語は、映画製作の裏側を描きながら、現実とフィクションの境目を問いかけます。フリードリヒの旅は、自己発見のロードトリップとなり、クルーの日常は人間性の本質を露わにします。最終的に、フリードリヒは決断を迫られるのです。
このあらすじは、ヴェンダースのスタイルを体現し、ゆったりとしたペースで進行します。白黒の映像が、荒涼とした風景と内省的な雰囲気を強調します。クルーの待機シーンは、時間の停滞を象徴的に描いています。
解説
本作『ことの次第』は、ヴィム・ヴェンダースの自伝的要素が強い作品。1982年に製作された背景には、ヴェンダースの前作『ハメット』の撮影中断があります。この中断期間を利用してポルトガルで即興的に撮影されたため、物語自体が映画製作の苦難を反映しています。白黒の選択は、予算の制約から生まれましたが、結果として芸術的な深みを加えています。
テーマとしては、映画産業の商業主義と芸術性の対立が挙げられます。クルーの待機は、創造性の停滞を象徴し、ハリウッドの影響を批判的に描きます。フリードリヒの名前はフリードリヒ・ムルナウへのオマージュで、撮影監督のジョー・コービーはジョー・バイロックのアナグラムです。サミュエル・フラーやロジャー・コーマンの出演は、映画史への言及を強調します。
音楽はユルゲン・クニーパーによるものが中心で、ジョー・イーリーやXの曲が使用され、ロードムービーらしい雰囲気を醸します。本作はヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、ヴェンダースの国際的評価を高めました。続編的な『リスボン物語』(1994年)では、フリードリヒが再登場します。
批評的には、ゆったりとしたペースが賛否を分けますが、映画のメタ構造が革新的です。クルーの哲学的対話は、存在の不安を掘り下げ、観客に映画の本質を問いかけます。この解説を通じて、本作が80年代ヨーロッパ映画の代表作であることがわかります。
さらに、ポルトガルの風景とロサンゼルスのコントラストが、文化的疎外感を表現します。ヴェンダースのロードムービーシリーズの一環として、旅の象徴性が際立ちます。全体として、映画製作の「状態」を哲学的に探求した作品です。
キャスト
- パトリック・ボーショー:フリードリヒ(監督)
- アレン・ガーフィールド:ゴードン(プロデューサー)
- イザベル・ヴァンガルテン:アンナ
- レベッカ・ポーリー:ジョアン
- ジェフリー・キム:マーク
- ジェフリー・ケアリー:ロバート
- カミラ・モラ:ジュリア
- アレクサンドラ・オーデル:ジェーン
- ポール・ゲッティ・ジュニア:デニス(脚本家)
- ヴィヴァ:ケイト
- サミュエル・フラー:ジョー(撮影監督)
- ロジャー・コーマン:弁護士
- ジャネット・ラサック:カレン
- アルトゥール・セメド:製作マネージャー
- フランシスコ・バイアン:録音技師
- ロバート・クレイマー:カメラオペレーター
- モンティ・ベイン:ハーバート
スタッフ
- 監督:ヴィム・ヴェンダース
- 脚本:ロバート・クレイマー、ヴィム・ヴェンダース、ジョシュア・ウォレス
- 製作:クリス・ジーヴェルニヒ
- 撮影:アンリ・アレカン、フレッド・マーフィー、マーティン・シェイアー
- 編集:ペーター・プジゴッダ、バルバラ・フォン・ヴァイテルスハウゼン
- 音楽:ユルゲン・クニーパー
- 配給:グレイ・シティ(米国)、アクシオム・フィルムズ(英国・アイルランド)




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