『最後まで行く』（2023年）は、藤井道人監督による韓国映画のリメイク。刑事の工藤（岡田准一）がひき逃げ事故を隠蔽しようとするが、監察官の矢崎（綾野剛）に追われるクライムサスペンス。96時間の逃走劇が緊張感とユーモアで描かれ、豪華キャストが集結。
基本情報
- 原題：最後まで行く
- 公開年：2023年
- 製作国：日本
- 上映時間：118分
- ジャンル：クライム
女優の活躍
『最後まで行く』（2023年）では、広末涼子、山田真歩、清水くるみが主要な女性キャラクターを演じ、それぞれの役柄で物語に深みを加えました。
広末涼子（工藤美沙子役）
広末涼子は、主人公・工藤裕司（岡田准一）の妻、美沙子を演じました。彼女は本作で、夫の犯罪と家庭の危機に直面する女性として、感情の機微を繊細に表現。広末は1990年代から日本映画界で活躍し、『おくりびと』（2008年）や『鍵泥棒のメソッド』（2012年）などで知られる実力派女優です。本作では、夫の裏金疑惑やひき逃げ事件に巻き込まれながらも、家族を守ろうとする姿を静かな迫力で演じました。特に、工藤との電話での緊迫した会話シーンでは、絶望と愛情が交錯する複雑な心情を見事に描き出し、物語の感情的な軸を支えました。彼女の落ち着いた演技は、物語のハードボイルドなトーンに温かみを加えています。
山田真歩（植松由紀子役）
山田真歩は、県警本部長の娘・植松由紀子役で出演。彼女は『SR サイタマノラッパー』（2009年）や『0.5ミリ』（2014年）などで知られ、独特の存在感で知られています。本作では、物語の鍵を握るキャラクターとして、短い出番ながら強い印象を残しました。彼女の演技は、ミステリアスかつ計算された雰囲気を持ち、物語の緊張感を高める一助となっています。
清水くるみ（岸谷真由子役）
若手女優の清水くるみは、尾田創（磯村勇斗）の仲間である岸谷真由子を演じました。清水は『ちはやふる』（2016年）などで注目を集め、本作では裏社会に関わる若者として、クールでタフな一面を見せています。彼女の登場シーンは少なくとも、物語の裏側で蠢く陰謀を体現する重要な役どころで、観客に新鮮なインパクトを与えました。
女優の衣装・化粧・髪型
女優たちの衣装、化粧、髪型は、キャラクターの背景や物語のトーンを反映し、視覚的に役割を強調しています。
広末涼子（美沙子）
広末演じる美沙子は、刑事の妻として家庭的な雰囲気を保ちつつ、物語の進行とともに疲弊していく姿が衣装に反映されています。普段はシンプルなニットやカジュアルなブラウスを着用し、落ち着いた色合いのグレーやベージュが中心。化粧はナチュラルで、薄いファンデーションと控えめなリップが、彼女の優しさと現実的な生活感を表現。髪型は肩までのボブで、自然なウェーブが家庭的な温かみを強調します。物語後半では、夫の危機によるストレスを反映し、髪がやや乱れたり、化粧が薄くなることで、彼女の心理的動揺が視覚的に示されます。
山田真歩（由紀子）
由紀子は県警本部長の娘として、洗練された都会的なスタイルが特徴。ダークカラーのタイトなドレスやジャケットを着用し、ミステリアスな雰囲気を醸し出します。化粧はシャープなアイラインと濃いめの口紅で、強い女性像を強調。髪型はストレートのロングヘアで、整った外見が彼女の計算高さを示唆しています。このスタイルは、物語の裏に潜む権力や陰謀を象徴しています。
清水くるみ（真由子）
真由子は裏社会に関わる若者として、カジュアルかつタフなスタイルが特徴。黒のレザージャケットやダークトーンのTシャツ、ジーンズを着用し、反抗的な雰囲気を演出。化粧はスモーキーなアイシャドウと濃いアイラインで、強気な性格を強調。髪型は短めのボブで、動きやすさと実用性を優先したスタイルが、彼女の行動的な役割を反映しています。
あらすじ
年の瀬の雨の夜、刑事・工藤裕司（岡田准一）は危篤の母のもとへ急ぐ途中、妻・美沙子（広末涼子）から母の死を知らされる。動揺する中、彼は車で男をはねてしまい、遺体をトランクに隠して逃走。遺体を母の棺桶に入れ、斎場で焼却しようと試みますが、謎の監察官・矢崎貴之（綾野剛）から執拗な追跡を受けます。工藤は裏金疑惑や家族の危機に追い詰められながら、矢崎との壮絶な駆け引きを繰り広げる。金、罠、裏切りが交錯する96時間の逃走劇の末、衝撃の事実と結末が明らかに。
解説
『最後まで行く』（2023年）は、2014年の韓国映画『最後まで行く』（原題：A Hard Day）の日本リメイクで、藤井道人監督が手掛けたクライムサスペンスです。韓国版はイ・ソンギュン主演でカンヌ国際映画祭監督週間に選出され、観客動員345万人を記録する大ヒット。中国、フランス、フィリピンでもリメイクされ、フランス版『レストレス』（2022年）はNetflixで世界的に成功しました。日本版は、オリジナルに敬意を払いつつ、日本独自の社会性や文化を反映したハードボイルドな作品に仕上げられています。
本作の魅力は、緊張感とコミカルさの絶妙なバランスにあります。工藤の絶体絶命の状況は、時にユーモラスな描写（例：「棺桶めっちゃ重い」）で軽妙に描かれ、観客に息つく間を与えつつ、終盤のアクションや心理戦で一気に引き込みます。藤井監督の特徴である光と影のコントラストや「埃」をモチーフにした映像美が、登場人物の葛藤や汚れていく姿を象徴的に表現。岡田准一と綾野剛の対決は、互いの追い詰め合う心理戦が手に汗握る展開を生み、豪華キャストの競演が物語に厚みを加えています。
日本版は、韓国版と異なるラストや仙葉組長（柄本明）の追加など、独自の解釈を加え、権力や腐敗を背景にした深いテーマを描きます。社会性とエンターテインメント性を両立させた本作は、邦画の新たな可能性を示す野心作です。
キャスト
- 工藤裕司：岡田准一（裏金に関わる刑事、ひき逃げ事故を隠蔽）
- 矢崎貴之：綾野剛（冷徹な監察官、工藤を執拗に追う）
- 工藤美沙子：広末涼子（工藤の妻、家族の危機に直面）
- 仙葉泰：柄本明（仙葉組組長、物語の黒幕）
- 尾田創：磯村勇斗（金庫番、裏社会の若者）
- 久我山太地：駿河太郎（工藤の同僚）
- 淡島幹雄：杉本哲太（工藤の上司）
- 岸谷真由子：清水くるみ（尾田の仲間）
- 植松由紀子：山田真歩（県警本部長の娘）
スタッフ
- 監督：藤井道人（『新聞記者』『余命10年』）
- 脚本：平田研也、藤井道人
- オリジナル脚本：キム・ソンフン
- 製作：映画「最後まで行く」製作委員会（日活、WOWOW、ジェイ・ストーム、KDDI、BABEL LABEL）
- 配給：東宝
- 撮影：板倉陽子
- 音楽：大間々昂
- 編集：古川達馬
結論
『最後まで行く』（2023年）は、韓国映画のリメイクを成功させたクライムサスペンスの傑作。広末涼子ら女優陣の感情豊かな演技、キャラを反映した衣装・メイク、藤井道人監督の緻密な演出が、緊張感とユーモアを見事に融合。岡田准一と綾野剛の迫真の対決、豪華キャストによる96時間の逃走劇は、観客を最後まで惹きつけます。
レビュー 作品の感想や女優への思い