『女ガンマン 皆殺しのメロディ』(1971年)は、イギリス製の異色西部劇で、ラクエル・ウェルチ主演。夫を殺され暴行を受けたハニー・コールダーが、賞金稼ぎの指導でガンマンとなり、復讐を果たす物語。タランティーノの『キル・ビル』に影響を与えた作品です。
基本情報
- 邦題:女ガンマン・皆殺しのメロディ
- 原題:HANNIE CAULDER
- 公開年:1971年
- 製作国:英国
- 上映時間:85分
- ジャンル:アクション
見どころ
“裸にポンチョ”の美女、ラクエル・ウェルチが話題となったマカロニ・ウエスタン風アクション。監督は『大列車強盗』のバート・ケネディ。銃撃戦、恋愛と娯楽要素は十分。
女優ラクエル・ウェルチの活躍
ラクエル・ウェルチは『女ガンマン 皆殺しのメロディ』で主人公ハニー・コールダーを演じ、セックス・シンボルとしての魅力を最大限に発揮しつつ、アクション女優としての新たな一面を見せました。『恐竜100万年』(1966年)でビキニ姿が世界的に話題となった彼女は、本作では「裸にポンチョ一枚」という大胆な衣装で登場し、観客の注目を集めました。この衣装は、映画冒頭で夫を殺され家を焼かれたハニーが、絶望の中で復讐を誓う姿を象徴するもので、ウェルチの肉体美と強い意志を強調しています。
ウェルチの演技は、単なる美貌に頼らず、復讐に燃える女性の成長を丁寧に表現。銃を扱えない素人から、賞金稼ぎトマス・ルーサー・プライス(ロバート・カルプ)の指導を受け、一流のガンマンへと変貌する過程を説得力のある演技で描きました。特に、復讐の旅を通じてハニーが精神的・肉体的に強くなっていく姿は、後の女性リベンジ映画の原型とも言えます。ウェルチのセクシーな魅力とカッコよさが融合したパフォーマンスは、本作を単なるB級西部劇から一線を画す作品に押し上げ、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』(2003年)のインスピレーション源となりました。彼女の存在感は、豪華な脇役陣と相まって、映画のエンタメ性を高めています。
あらすじ
アメリカ西部の荒野。ハニー・コールダー(ラクエル・ウェルチ)は、夫ジムと町外れの牧場で静かに暮らしていました。しかし、銀行強盗に失敗したクレメンス三兄弟(エメット、フランク、ルーファス)が逃亡用の馬を求めて牧場に現れ、状況は一変。ジムを殺害し、ハニーを暴行、さらには家を焼き払い、彼女を絶望の淵に突き落とします。復讐を誓ったハニーは、偶然出会った賞金稼ぎトマス・ルーサー・プライス(ロバート・カルプ)と行動を共にし、銃の扱いや戦闘技術を学びます。
二人はメキシコへ向かい、名銃職人ベイリー(クリストファー・リー)にハニー専用の特製リボルバーを製作してもらいます。訓練を重ね、ガンマンとして成長したハニーは、プライスと共にクレメンス三兄弟を追跡。旅の中で、謎めいた賞金稼ぎ「プレーチャー」(スティーヴン・ボイド)とも遭遇します。やがて、フランク(ジャック・イーラム)とルーファス(ストローザー・マーティン)を倒したハニーですが、プライスはエメット(アーネスト・ボーグナイン)との戦いで致命傷を負い死亡。それでもハニーは一人でエメットを追い詰め、復讐を完遂。過去を背負いながら、彼女は新たな道を歩み始めます。
解説
『女ガンマン 皆殺しのメロディ』は、マカロニ・ウエスタンブームの末期に製作されたイギリス映画で、アメリカ人監督バート・ケネディと豪華なアメリカ人俳優陣を起用し、イタリア製西部劇の影響を受けつつ独自の色を出した作品です。女性が主人公の復讐劇という設定は当時珍しく、後の『キル・ビル』や『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012年)に影響を与えた点で歴史的意義を持ちます。タランティーノは本作のシンプルで痛快なストーリーと、女性が自ら運命を切り開く姿にインスパイアされたと公言しています。
映画の魅力は、ラクエル・ウェルチのセクシーさとアクションの融合にあります。冒頭の「裸にポンチョ」姿はセンセーショナルですが、物語が進むにつれハニーの成長と自立が強調され、単なる色物以上の深みを与えています。ケネディ監督の演出は、躍動感ある音楽(ケン・ソーン)とテッド・スケイフのダイナミックな撮影で、西部劇の荒々しさとエンタメ性を引き立てます。ただし、プライスとの微妙なロマンスが未発展に終わる点や、復讐劇の動機に対する感情描写の浅さは、批評家からツッコミの対象ともなりました。
脇役陣の豪華さも見どころで、特に悪役三兄弟を演じたアーネスト・ボーグナイン、ジャック・イーラム、ストローザー・マーティンは、個性的で憎々しいキャラクター造形で物語に厚みを加えています。クリストファー・リーの銃職人役や、スティーヴン・ボイドのカメオ出演もファンにはたまらない要素です。日本では劇場未公開でしたが、テレビ放送やビデオソフト化でカルト的な人気を博しました。
キャスト
- ハニー・コールダー:ラクエル・ウェルチ(セックス・シンボルとして知られ、本作でアクション女優としての才能も開花)
- トマス・ルーサー・プライス:ロバート・カルプ(『アイ・スパイ』の主演俳優、渋い賞金稼ぎ役)
- エメット・クレメンス:アーネスト・ボーグナイン(『ワイルドバンチ』などで知られる名優、凶悪な長兄)
- フランク・クレメンス:ジャック・イーラム(独特の風貌で西部劇の常連)
- ルーファス・クレメンス:ストローザー・マーティン(『リオ・ロボ』など脇役で活躍)
- ベイリー:クリストファー・リー(『ドラキュラ』シリーズの名優、銃職人役)
- プレーチャー:スティーヴン・ボイド(『ベン・ハー』出演、クレジットなしのカメオ)
- マダム:ダイアナ・ドース(イギリス女優、脇役で登場)
スタッフ
- 監督・脚本:バート・ケネディ(『ジョン・ウェイン/駅馬車』などを手掛けた西部劇の名匠)
- 脚本:デヴィッド・ハフト
- 原案:ピーター・クーパー
- 製作:パトリック・カーティス
- 撮影:テッド・スケイフ(ダイナミックな西部の風景を捉える)
- 音楽:ケン・ソーン(『国境は燃えている』の作曲家、活気あるスコア)
- 製作会社:カートウェル・プロダクションズ、ティゴン・ブリティッシュ・フィルム
補足
『女ガンマン 皆殺しのメロディ』は1971年にイギリスで公開され、スペインで撮影されました。マカロニ・ウエスタンの影響を受けつつ、女性主人公という斬新な視点と豪華キャストで独自の地位を築きました。ラクエル・ウェルチの魅力と復讐劇の痛快さが融合し、カルトクラシックとして今なお愛されています。視聴はU-NEXTやAmazon Prime Videoなどの配信サービスで可能です(2025年1月時点)。




コメント 足跡・感想・レビューなど