ヒラリー・スワンク(Hilary Swank)はアメリカ合衆国の女優。1992年映画デビュー後、『ボーイズ・ドント・クライ』と『ミリオンダラー・ベイビー』で2度のアカデミー主演女優賞を受賞。スポーツ万能で、真面目な性格のベジタリアン。2020年の『ザ・ハント』でアシーナ役を演じ、風刺的なサバイバル・ゲームを過激に体現。
プロフィール
- 名前:ヒラリー・スワンク(Hilary Swank)
- 本名:ヒラリー・アン・スワンク(Hilary Ann Swank)
- 生年月日:1974年7月30日(51歳)
- 出生地:アメリカ合衆国ネブラスカ州リンカーン
- 身長:168cm
- 職業:女優
- 活動期間:1992年~
- 配偶者:チャド・ロウ(1997年~2006年)
- フィリップ・シュナイダー(2018年~)
生い立ち・教育
ヒラリー・アン・スワンクは、1974年7月30日にアメリカ合衆国ネブラスカ州リンカーンで生まれました。父親のジェリー・スワンクは元海兵隊員で首席飛行士であり、母親のジュディスは秘書として働いていました。家族はアイオワ州の農村部にルーツを持ち、母方の祖母はメキシコ系アメリカ人で、多様な血統を有しています。姓の「スワンク」はドイツ語の「Schwenk」に由来するもので、イングランド、オランダ、ドイツ、アルスター・スコットランド、スイス、ウェールズの系譜も含まれます。幼少期は経済的に厳しい環境で過ごし、一時期はトレーラーハウスで暮らしました。6歳の頃、家族とともにワシントン州スポケーンに移住し、その後ベリングハム近郊のレイク・サミッシュ地域に定住しました。
スワンクは幼い頃から活発で、スポーツに大変な才能を発揮しました。特に水泳と器械体操に熱中し、ジュニアオリンピックの地元選考会で優秀な成績を収め、州選手権でも5位に入るなど活躍しました。このような身体能力は、後年の役柄で活かされることとなります。一方で、9歳の時に地元の劇団で演技を学び始め、舞台『ジャングル・ブック』でモーグリ役を演じて以来、演劇の世界に魅了されました。以降、定期的にローカル劇団の公演に参加し、演技スキルを磨きました。15歳の時、両親の離婚を機に、母親とともに女優の夢を追ってロサンゼルスへ移住します。当初は車中泊を余儀なくされるほどの苦労を味わいましたが、母親の献身的な支援のもと、南パサデナ高校に通いながらオーディションを受け続けました。
学校生活では、周囲との違いから疎外感を抱くことが多かったとスワンク自身が語っています。「本や映画のキャラクターに没頭することでしか、自分を表現できなかった」と回想するほど、内気な一面もありました。しかし、この経験が彼女の演技への情熱をさらに深め、16歳でプロの女優として活動を開始する原動力となりました。正式な大学教育は受けていませんが、演技学校やワークショップを通じて実践的な学びを積み重ね、早い段階からプロフェッショナルなキャリアを築きました。こうした生い立ちは、彼女のタフネスと共感力を養い、後年の受賞作でのリアルな演技に反映されています。
経歴
ヒラリー・スワンクの俳優キャリアは、1992年のTV番組『Camp Wilder』での端役出演で始まりました。同年、映画『バッフィ/ザ・バンパイア・キラー』でスクリーン・デビューを果たし、キンバリー・ハンナ役を演じました。続いて1994年の『ベスト・キッド4/ネクスト・レベル』で主演のジュリー・ピアースを務め、体操の経験を活かしたアクションシーンが注目されました。しかし、この作品は興行的に成功せず、彼女のキャリアは低迷期を迎えます。1990年代中盤は、低予算のインディペンデント映画やテレビドラマに多く出演し、1995年の『Kounterfeit』や1996年の『Terror in the Family』で問題を抱えたティーンエイジャー役を熱演しました。
転機となったのは、1997年から1998年にかけてのTV番組『ビバリーヒルズ高校白書』へのレギュラー出演です。カーリー・レイノルズ役で人気を博しましたが、16エピソード後に降板を余儀なくされ、大きなショックを受けました。この挫折が、1999年の『ボーイズ・ドント・クライ』へのオーディションにつながります。実在のトランスジェンダー男性ブランドン・ティーナを演じるため、1か月間男性として生活し、体脂肪率を7%まで落とす徹底した準備を重ねました。低予算作品ながら、プレミア誌の「史上最高のパフォーマンス100選」に選ばれ、第72回アカデミー賞最優秀女優賞をはじめ、ゴールデングローブ賞など20以上の賞を受賞。24歳での快挙は、ハリウッドに衝撃を与えました。2020年には、この役について「現代ならトランスジェンダー俳優に譲る」と語り、多様性を尊重する姿勢を示しています。
ブレイク後の2000年は『ギフト』でミステリアスな役を、2001年の『マリー・アントワネットの首飾り』でジャンヌ・ド・ラ・モット・ヴァロアを演じました。2002年の『インソムニア』ではアラスカの少女役、2003年のSFスリラー『ザ・コア』で科学者役を務め、多ジャンルへの挑戦を続けます。そして2004年、クリント・イーストウッド監督の『ミリオンダラー・ベイビー』でボクサー・マギー・フィッツジェラルドを演じ、19ポンドの筋肉を増強するトレーニングを敢行。第77回アカデミー賞最優秀女優賞を獲得し、ヴィヴィアン・リーやサリー・フィールドに並ぶ2度目の受賞者となりました。この作品は興行的にも成功し、彼女の地位を不動のものとしました。
2006年には『ブラック・ダリア』でマデリン・リンスコット役を演じ、2007年にハリウッド・ウォーク・オブ・フェームの星を授与されました。同年、『フリーダム・ライターズ』で教師エリン・グルーウェル役を演じ、製作総指揮も務め、社会派ドラマで高評価を得ました。また『ザ・リーピング』での悪魔祓い役や『P.S. アイ・ラブ・ユー』での未亡人役も好評です。2009年の『アメリア』では伝説のパイロット・アメリア・イアハートを演じ、飛行訓練を受け、自身のプロダクション会社2S Filmsを設立。プロデューサーとしても活躍を始めました。2014年の『You’re Not You』でALS患者役を、2017年の『ローガン・ラッキー』でFBI捜査官役を演じ、2019年のNetflix映画『アイ・アム・マザー』で未来の母親役を務めました。2020年の『ザ・ハント』ではサバイバル・スリラーでアシーナ役を、2023年の『The Good Mother』で母親役を演じ、キャリアを継続しています。2024年以降も新作が予定されており、50歳近くになっても精力的に活動を続けています。
私生活
ヒラリー・スワンクは、真面目でストイックな性格として知られています。非飲酒者・非喫煙者であり、ベジタリアンとして長年食生活を管理しています。10代半ばから時折魚介類を摂取する柔軟さも見せますが、健康志向が強く、役作りのための過酷なトレーニングを厭いません。私生活では、1997年に俳優のチャド・ロウと出会い、交際を経て同年に結婚しました。夫妻は互いのキャリアを支え合い、親しい関係を築きましたが、2006年に離婚を発表。理由は公表されていませんが、互いの成長を尊重した円満な別れでした。
離婚後、スワンクはプライベートを慎重に守りつつ、慈善活動に積極的です。2011年にはチェチェン共和国のラムザン・カディロフ大統領の誕生日パーティーに出席し、100万ドルのギャラを受け取ったことが人権侵害との関連で批判を呼びました。これに対し、彼女は謝罪し、ギャラを慈善団体に寄付することを表明。政治的な教訓として反省を述べました。この一件は、彼女のキャリアに一時的な影を落としましたが、以降は慎重な選択を心がけています。
2016年に実業家のフィリップ・シュナイダーと出会い、交際を深めました。シュナイダーは金融アナリストで、安定した生活を提供するパートナーです。2018年8月18日、ハワイで挙式を挙げ、再婚を果たしました。夫妻は静かな家庭を築き、2022年10月に双子の妊娠を発表。長年の母性への願いが叶い、喜びをファンと共有しました。出産後の2023年以降も、育児と仕事の両立を図りながら、公の場に姿を現しています。家族を大切にする姿勢は、インタビューでしばしば語られ、彼女の人間的な魅力として支持されています。また、動物愛護や女性権利の支援にも熱心で、ベジタリアンとしての信念を活かした活動を続けています。
出演作品
ヒラリー・スワンクの出演作品は、1992年の『バッフィ/ザ・バンパイア・キラー』でキンバリー・ハンナ役としてデビューし、ヴァンパイアとの戦いを描いたコメディホラーで若々しい魅力を発揮しました。1994年の『ベスト・キッド4/ネクスト・レベル』では主演のジュリー・ピアースを演じ、カンフーと友情の物語でアクションを披露しましたが、興行的には苦戦しました。同年のTV映画『Cries Unheard: The Donna Yaklich Story』で若き殺人者の役を務め、ドラマチックな演技を磨きました。
1995年の『Kounterfeit』ではストリートギャングのメンバー役、1996年の『Terror in the Family』で家庭内暴力の被害者役を演じ、ティーンエイジャーの複雑な心理を表現しました。1997年から1998年の『ビバリーヒルズ高校白書』ではカーリー・レイノルズ役で人気を博し、高校生の恋愛と成長を描いたエピソードで存在感を示しました。1999年のブレイク作『ボーイズ・ドント・クライ』でブランドン・ティーナ役を熱演し、アイデンティティの葛藤をリアルに体現、アカデミー賞受賞のきっかけとなりました。
2000年の『ギフト』では予知能力を持つ女性ヴァレリー・バークスデール役を演じ、サスペンスフルなミステリーで批評家から称賛されました。2001年の『マリー・アントワネットの首飾り』で詐欺師のジャンヌ・ド・ラ・モット・ヴァロアを務め、18世紀フランスの宮廷陰謀を華やかに描きました。2002年の『インソムニア』ではアラスカの少女エリー・バー役で、クリストファー・ノーラン監督作のサスペンスに深みを加えました。2003年のSFアクション『ザ・コア』で宇宙飛行士レベッカ・チャイルズ少佐を演じ、地球核の危機をスリリングに表現しました。
2004年の傑作『ミリオンダラー・ベイビー』でボクサー・マギー・フィッツジェラルド役を演じ、貧困からの脱却と師弟の絆を感動的に描き、2度目のアカデミー賞を獲得しました。2006年の『ブラック・ダリア』ではハリウッド女優マデリン・リンスコット役で、1940年代の殺人事件をミステリアスに体現。2007年の『フリーダム・ライターズ』で教師エリン・グルーウェル役を務め、問題児たちの教育改革を基にした実話でインスピレーションを与えました。同年の『ザ・リーピング』では宣教師キャサリン・ウィンター役でオカルトホラーを、『P.S. アイ・ラブ・ユー』で夫を失ったホリー・ケネディ役でラブロマンスを優しく演じました。
2009年の『アメリア』でアメリア・イアハート役を演じ、冒険家のパイロット人生を飛行シーン満載で再現、ゴールデングローブ賞にノミネートされました。2014年の『You’re Not You』ではALS患者のケイト・パーカー役で、病との闘いを繊細に描きました。2017年の『ローガン・ラッキー』でFBI捜査官サラ・グレイソン役をコミカルに演じ、犯罪コメディの成功に貢献。2019年の『アイ・アム・マザー』ではAI母親役でSFスリラーをリードし、Netflixで世界的に配信されました。
2020年の『ザ・ハント』でアシーナ役を演じ、風刺的なサバイバルゲームを過激に体現。2023年の『The Good Mother』では母親役で家族の秘密を探るサスペンスを主演し、批評家から好評を得ました。これらの作品を通じて、スワンクはドラマからアクション、SFまで幅広いジャンルで存在感を発揮し続けています。



レビュー 作品の感想や女優への思い