「ジョン・ウィック」シリーズのスピンオフ作品である『バレリーナ:The World of John Wick』は、2025年6月6日に全米で公開されたアクションスリラー映画で、同シリーズ初のスピンオフ映画として注目を集めました。本作は、キアヌ・リーブス主演の「ジョン・ウィック」シリーズの世界観を継承しつつ、新たな主人公エヴ・マカロ(アナ・デ・アルマス)を中心に物語が展開します。以下では、映画『バレリーナ』のボックスオフィス成績、ストーリー、キャスト、製作背景、そしてその評価について、詳細かつ丁寧に解説します。
ボックスオフィス成績
『バレリーナ:The World of John Wick』の公開初週末の興行収入は、北米3,409館で約2,500万ドル(約37億円、1ドル=150円換算)と、事前の予測である3,500万~4,000万ドルを下回る結果となりました。この数字は、「ジョン・ウィック」シリーズの過去4作品の初週末成績と比較すると、2014年の『ジョン・ウィック』(1,440万ドル)に次ぐシリーズ最低のスタートとなりました。シリーズの他の作品では、『ジョン・ウィック:チャプター2』(3,040万ドル)、『ジョン・ウィック:パラベラム』(5,680万ドル)、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(7,380万ドル)と、徐々に初週末の興行収入が増加していたため、『バレリーナ』の成績は期待を下回る結果として注目されました。
国際市場では、82カ国で約2,600万ドルを記録し、グローバルでの初週末興行収入は合計5,100万ドルとなりました。ライオンズゲートは、製作費約9,000万ドルの約60%以上を海外での事前販売でカバーしており、財政的リスクを軽減していますが、スピンオフ作品としての成功は、今後の「ジョン・ウィック」シリーズの拡張計画に影響を与える可能性があります。ライオンズゲートは、『ジョン・ウィック5』やドニー・イェン主演のスピンオフ、アニメーション前日譚など、さらなるシリーズ展開を計画しているため、『バレリーナ』の興行成績は今後の戦略にとって重要な試金石とされています。
公開初週末の競合作品としては、ディズニーの『リロ・アンド・スティッチ』の実写リメイクが3週連続で1位を維持し、3,250万ドルを記録しました。この競争環境が『バレリーナ』の成績に影響を与えた可能性がありますが、観客の出口調査では高い評価(CinemaScoreで「A-」、Rotten Tomatoesの観客スコアで94%)を受けており、口コミによる長期的な興行成績の向上が期待されています。
ストーリーと背景
『バレリーナ:The World of John Wick』は、『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年)と『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023年)の間の時系列に設定されています。主人公のエヴ・マカロは、ルスカ・ロマと呼ばれるロシア系の暗殺者組織でバレリーナ兼暗殺者として訓練を受けた女性です。彼女の物語は、父親の死に対する復讐を軸に展開します。エヴの父親ハビエルはルスカ・ロマのキキモラ(暗殺者兼ボディガード)であり、カルトと呼ばれる敵対組織との対立の過程で妻を失い、エヴと共に逃亡していました。この過去がエヴの復讐心を駆り立て、物語の中心となります。
エヴは、ルスカ・ロマの指導者である「ディレクター」(アンジェリカ・ヒューストン)の下で12年間にわたり訓練を受け、キキモラとして成長します。ある任務でカルトの暗殺者に襲われたことをきっかけに、彼女はカルトへの復讐を決意。ディレクターの禁止を無視し、ニューヨークのコンチネンタルホテルでウィンストン(イアン・マクシェーン)やシャロン(ランス・レディック)から情報を得て、カルトのリーダーであるチャンセラー(ガブリエル・バーン)とその息子ダニエル・パイン(ノーマン・リーダス)を追います。この過程で、ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)との出会いも描かれ、彼との短い対決や会話が物語に深みを加えています。
本作のアクションは、「ジョン・ウィック」シリーズの特徴である「ガンフー」(銃と格闘技の融合)や、フレイムスロワーを使った斬新な戦闘シーンで観客を魅了。特に、エヴの戦闘スタイルは、ジョン・ウィックの精密な射撃とは異なり、即興的で予測不可能な動きが特徴で、グレネードや火を使った戦闘が新鮮な印象を与えます。物語は、アクションだけでなく、エヴの感情的な旅路や「ジョン・ウィック」の世界観の新たな一面を掘り下げることで、シリーズに新たな魅力を加えています。
キャストと製作
『バレリーナ:The World of John Wick』の主演はアナ・デ・アルマスで、彼女は『ノウ・タイム・トゥ・ダイ』や『ナイブズ・アウト』での活躍で知られる実力派女優。エヴ・マカロ役には、当初『パラベラム』で同役を演じたユニティ・フェランがキャスティングされていましたが、アナ・デ・アルマスのスター性とアクション演技の能力を活かすため再キャスティングされました。彼女の感情表現と激しいアクションシーンは、批評家や観客から高い評価を受けています。
脇を固めるキャストには、シリーズおなじみのキアヌ・リーブス(ジョン・ウィック)、イアン・マクシェーン(ウィンストン)、アンジェリカ・ヒューストン(ディレクター)、ランス・レディック(シャロン)が登場。レディックの出演は、彼の2023年3月の死去により遺作となりました。また、新キャストとしてノーマン・リーダス(ダニエル・パイン)、ガブリエル・バーン(チャンセラー)、カタリーナ・サンディノ・モレノが参加し、物語に新たな深みを加えています。
監督はレン・ワイズマン(『アンダーワールド』『ダイ・ハード4.0』)が務め、脚本は『ジョン・ウィック:パラベラム』や『コンセクエンス』のシェイ・ハッテンが執筆。ハッテンは2017年に『バレリーナ:The World of John Wick』の脚本をライオンズゲートに売却し、シリーズの世界観を拡張する基盤を築きました。また、ジョン・ウィックシリーズの監督であるチャド・スタエルスキがプロデューサーとして参加し、2024年2月からの追加撮影でアクションシーンの監修を行いました。この追加撮影は、映画の完成度を高めるために行われ、約1年の公開延期(当初の2024年6月7日から2025年6月6日へ)につながりました。
評価と影響
『バレリーナ:The World of John Wick』は批評家から概ね好評を得ており、Rotten Tomatoesでは75%の支持率を記録。IGNのクリント・ゲージは「シリーズのアクションの伝統を守りつつ、独自の物語を展開している」と評価し、Vultureのアリソン・ウィルモアは「本物のジョン・ウィック映画として完成している」と称賛しました。特に、アナ・デ・アルマスの演技と、フレイムスロワーや環境を活用した戦闘シーンの独創性が好評です。一方で、物語の前半がややスローペースである点や、シリーズ本編ほどのインパクトに欠けるという意見も一部存在します。
観客の反応はさらに熱狂的で、CinemaScoreの「A-」やRotten Tomatoesの観客スコア94%、PostTrakの「確実におすすめ」スコア79%と高い評価を得ています。特に、アクションファンからは「シリーズで最もアクションが詰まった作品」との声も聞かれ、女性主人公の活躍が新鮮だと評価されています。
『バレリーナ』の興行成績は、スピンオフ作品としての限界を示しつつも、シリーズのブランド力とアナ・デ・アルマスのスター性を活かし、一定の成功を収めました。ライオンズゲートは、本作の結果を踏まえ、今後のスピンオフや『ジョン・ウィック5』の展開を慎重に計画する必要があるでしょう。特に、キアヌ・リーブスが主役でない作品に対する観客の反応は、シリーズの将来を占う重要な指標となります。
今後の展望
『バレリーナ:The World of John Wick』の公開は、「ジョン・ウィック」シリーズのさらなる拡張の第一歩です。ライオンズゲートは、ドニー・イェン演じる盲目の暗殺者ケインを主人公にしたスピンオフや、アニメーション前日譚、そして『ジョン・ウィック5』の製作を発表しており、シリーズの世界観をさらに広げる意欲を見せています。アナ・デ・アルマスも、続編の可能性について前向きなコメントを残しており、エヴ・マカロがシリーズの新たな柱となる可能性があります。
結論
『バレリーナ:The World of John Wick』は、シリーズの伝統であるスタイリッシュなアクションと世界観を継承しつつ、新たな主人公エヴ・マカロを通じて新鮮な物語を提供しました。興行成績は期待を下回ったものの、観客や批評家からの高い評価は、シリーズのブランド力と可能性を示しています。アナ・デ・アルマスの魅力と、ルスカ・ロマやカルトといった新たな要素は、「ジョン・ウィック」ユニバースのさらなる拡大に貢献するでしょう。今後のシリーズ展開に注目が集まる中、『バレリーナ』はアクションファンにとって見逃せない作品です。
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