『沈黙のジェラシー』（1998年）は、ジェシカ・ラングとグウィネス・パルトロー主演のスリラー。愛する息子の新妻を排除しようとする執着的な母の策略と、家族の秘密を描く。キャンプな展開と過剰な演技が特徴のメロドラマ。
基本情報
- 邦題：沈黙のジェラシー
- 原題：HUSH
- 公開年：1998年
- 製作国：米国
- 上映時間：95分
- ジャンル：サスペンス
- 公式サイト：sonypictures.jp
女優の活躍
本作の主演はジェシカ・ラング（マーサ・ベアリング役）とグウィネス・パルトロー（ヘレン役）。ジェシカ・ラングは、アカデミー賞受賞歴（『ブルースカイ』1994年など）を持つ実力派で、本作では息子への異常な執着を持つ母親マーサを演じました。ラングの演技は、批評家から「オーバー・ザ・トップ」と評されるほど大仰で、常にタバコと酒を手にした悪女ぶりが強調されています。IMDbのユーザーレビューでは、「ラングのサディスティックな笑顔が映画を支配している」と称賛される一方、監督がその過剰さを制御できなかったとの批判も。彼女のキャンプな演技は、映画のメロドラマ的魅力を高め、B級スリラーの楽しさを体現しました。Xの投稿でも、「ジェシカ・ラングの悪役ぶりが最高に楽しい」との声が見られます。
グウィネス・パルトローは、キャリア初期の1998年当時、『エマ』や『恋におちたシェイクスピア』（後者でアカデミー賞受賞）で注目を集めていました。ヘレン役では、都会的で愛らしい女性を演じ、マーサの策略に立ち向かう姿を繊細に表現。しかし、脚本の弱さから彼女の演技は「素材選びのミス」と一部で批判され、IMDbでは「グウィネスの魅力が活かされなかった」との意見も。 それでも、マーサとの緊張感ある対峙シーンでは、恐怖と決意の表情が光ります。ニナ・フォーク（アリス役）は、マーサの義母として短い出番ながら、家族の秘密を知る賢い女性を落ち着いた演技で印象づけました。
女優の衣装・化粧・髪型
ジェシカ・ラング演じるマーサの衣装は、彼女の支配的かつ不気味なキャラクターを強調するデザインです。南部の裕福な農場主の妻らしく、エレガントだがどこか時代遅れのドレスやスカートスーツを着用。濃い赤やダークグリーンの色調が、彼女の強烈な個性と悪意を象徴します。衣装デザイナー、アン・ロスによるこれらの選択は、マーサの「古き良き南部」のイメージと現代の不穏さを融合。メイクは濃いアイラインと赤いリップで、常に微笑む顔に不気味な魅力を加えています。ヘアスタイルは、ふんわりとしたブロンドのアップスタイルで、1960年代の南部貴婦人を思わせる一方、過剰なボリュームがキャンプ感を強調。IMDbのレビューでは、「ラングのルックが映画のトーンを決定づけた」と評されています。
グウィネス・パルトローのヘレンは、ニューヨークのキャリアウーマンらしいモダンな衣装が中心。シンプルなブラウスやテーラードジャケット、淡い色のパンツは、彼女の都会的で純粋なキャラクターを反映。妊娠が判明する中盤以降は、ゆったりしたマタニティドレスが登場し、脆弱さと母性を表現します。メイクはナチュラルで、フレッシュな肌と控えめなリップがヘレンの若さと無垢さを強調。ヘアスタイルは、肩まであるブロンドのストレートヘアで、時折ポニーテールにまとめられ、日常的かつ現実的な印象を与えます。ニナ・フォークのアリスは、落ち着いたグレーやベージュのドレスに、白髪をタイトにまとめたヘアスタイルで、知性と威厳を演出。全体的に、衣装とメイクは各キャラクターの対立する立場を視覚的に際立たせています。
あらすじ
ヘレン（グウィネス・パルトロー）とジャクソン（ジョナサン・シェック）はニューヨークで暮らす恋人同士。クリスマス休暇中、ジャクソンはヘレンを故郷ケンタッキーの名門馬牧場「キルロナン」に連れて行き、母マーサ（ジェシカ・ラング）に紹介します。広大な屋敷は豪華だが不気味な雰囲気が漂い、マーサの過剰な干渉がヘレンを困惑させます。ニューヨークに戻った後、ヘレンは妊娠が発覚し、ジャクソンと結婚。マーサの誘いでキルロナンに移り住むが、マーサの息子への執着とヘレンへの敵意が明らかになります。ヘレンはマーサの異常な行動と家族の秘密に気づき、ジャクソンの祖母アリス（ニナ・フォーク）の助けを借りて真相に迫ります。マーサの策略がエスカレートする中、ヘレンは自らと赤ちゃんを守るため、壮絶な対決に挑みます。
解説
『沈黙のジェラシー』は、家族の絆や母性をテーマにしたスリラーであり、1960年代のゴシックメロドラマや『ローズマリーの赤ちゃん』に影響を受けたキャンプな作品です。監督ジョナサン・ダービーの初長編作品で、テネシー・ウィリアムズやリリアン・ヘルマンの劇のような過剰な感情表現が特徴。ロジャー・イーバートは、「最初の10分で展開が読めるが、期待を裏切ってほしいと願う映画」と評し、脚本の単純さと予測可能性を指摘。 しかし、ジェシカ・ラングの誇張された演技と、キルロナン農場の不気味なセットデザインは、カルト的な魅力を持つと一部で評価されています。Varietyは、「下品だが、女性観客の母性本能を刺激する」と述べ、商業的な可能性を認めました。
音楽はクリストファー・ヤングが担当し、「Hush, Little Baby」の不気味なアレンジが緊張感を高めます。撮影のアンドリュー・ダンは、南部の広大な風景と屋敷の暗い内装を対比させ、閉塞感を演出。IMDbユーザーレビューでは、「馬や田舎の美しさが都市との対比で際立つ」との声も。 しかし、脚本の穴やキャラクターの非現実的な行動が批判され、ジェシカ・ラングはゴールデンラズベリー賞の最悪女優賞にノミネートされました。 それでも、キャンプなスリラーとして楽しむ層には一定の支持があり、B級映画の愛好家には「隠れた名作」とも呼ばれます。
キャスト
- マーサ・ベアリング：ジェシカ・ラング（ジャクソンの執着的な母）
- ヘレン：グウィネス・パルトロウ（ジャクソンの婚約者）
- ジャクソン・ベアリング：ジョナサン・シェック（ヘレンの恋人）
- アリス・ベアリング：ニナ・フォーク（マーサの義母）
- リサ：デビ・メイザー（ヘレンの友人）
- ギャビン：デビッド・ソーントン（牧場関係者）
- ヒル医師：ハル・ホルブルック（地元医師）
スタッフ
- 監督：ジョナサン・ダービー
- 脚本：ジョナサン・ダービー、ジェーン・ラスクーニ
- 製作：ダグラス・ウィック
- 音楽：クリストファー・ヤング
- 撮影：アンドリュー・ダン
- 編集：ダン・レイ、リンジー・クリングマン、ロバート・レイトン
- 美術：トーマス・A・ウォルシュ、マイケル・ジョンストン
- 衣装：アン・ロス
- 製作会社：TriStar Pictures
総括
『沈黙のジェラシー』は、ジェシカ・ラングの過剰な演技とグウィネス・パルトローの繊細な魅力が光る、キャンプなスリラーです。脚本の弱さや予測可能な展開が欠点ですが、マーサの不気味な衣装やキルロナンの雰囲気は独特の魅力を放ちます。B級映画の楽しさを求める視聴者には、カルト的な価値がある作品と言えるでしょう。
レビュー 作品の感想や女優への思い