『呪われた女』は1975年の仏西伊合作のホラー・ファンタジー映画。中世フランスを舞台に、喪失と執着、呪いの代償を描き、リヴ・ウルマンの妖艶でミステリアスな演技が光ります。
領主リチャードの最愛の妻レオノールが落馬事故で亡くなった後、深い悲しみに暮れる夫が悪魔との取引で彼女を蘇らせます。しかし蘇ったレオノールは子供の血を求める吸血鬼と化し、村に恐怖をまき散らします。
基本情報
女優の活躍
映画『呪われた女』でレオノール役を演じたリヴ・ウルマンは、ノルウェー出身の国際的に著名な女優であり、映画監督としても活躍しています。1938年に東京で生まれ、幼少期をノルウェーで過ごした彼女は、イングマール・ベルイマン監督に見出され、数多くの名作に出演しました。
ウルマンはスウェーデン映画だけでなく、ハリウッドや国際映画でも活躍し、『移民者たち』(1971年)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。女優業の傍らで監督として『ソフィー』(1992年)や『クリスティン・ラヴランスダッテル』(1995年)などを手がけ、舞台女優としてもシェイクスピア作品などで成功を収めています。また、ユニセフ親善大使として人道支援活動にも尽力しています。
本作『呪われた女』では、ベルイマン映画とは異なるミステリアスで妖艶な魅力を発揮し、死と再生のテーマに適した神秘的な存在感を示しました。彼女のキャリアは、心理ドラマからホラー・ファンタジーまで幅広いジャンルでの適応力を証明しています。
女優の衣装・化粧・髪型
リヴ・ウルマン演じるレオノールは、生前の中世貴族夫人として華やかな衣装を身にまとっています。優美な刺繍やレースを施した長いドレス、豊かなスカートが特徴で、貴族の威厳と美しさを強調するデザインです。生前のシーンでは、暖色系の生地が用いられ、幸福な日常を象徴しています。
蘇った後のレオノールは、死の冷たさを表す蒼白い化粧が施され、唇や頰にわずかな血色を残すことで妖艶さと不気味さを併せ持つ表情を生み出しています。目は暗く強調され、吸血鬼としての冷徹な視線を際立たせます。髪型は長くウェーブのかかった金髪を自然に下ろしたり、乱れさせた状態で登場し、幽玄で魅惑的な雰囲気を醸し出しています。
全体として、衣装は中世のゴシック調で、死後の姿では暗い色調のヴェールや簡素なドレスが用いられ、生き返った怪物としての異質さを視覚的に表現しています。これらの要素は、観客に恐怖と魅力を同時に与える効果を発揮しています。
あらすじ
中世のフランス。地方領主リチャードは、美しい妻レオノールを深く愛していました。しかし、レオノールは落馬事故で重傷を負い、間もなく息を引き取ります。リチャードは妻の死に耐えられず、彼女の遺体を家族の霊廟に封印しますが、悲しみから抜け出せません。
数年後、リチャードは村の少女カトリーヌと再婚し、二人の息子をもうけます。しかし、心の底ではレオノールへの想いを忘れられず、10年後、ついに悪魔との取引に踏み切ります。死者よ目覚めるなかれという禁忌を破り、レオノールを蘇らせることに成功します。
蘇ったレオノールは最初は美しい姿のまま現れますが、徐々にその本性を現します。彼女は吸血鬼となり、村の幼い子供たちの血を吸って生きながらえます。神秘的な子供の失踪事件が相次ぎ、村は恐怖に包まれます。リチャードはレオノールを守るため、村人や家臣を次々と殺害しますが、事態は悪化します。
ついにレオノールはリチャード自身の息子たちを狙い、惨劇が起きます。過ちを悟ったリチャードは、深い罪悪感に苛まれながら、レオノールと共に死を選ぶのです。喪失の代償と執着の恐ろしさが、鮮やかに描かれています。
解説
映画『呪われた女』は、ルートヴィヒ・ティークの小説『死者よ目覚めるなかれ』を原作とする古典的なヴァンパイア物語を基にしていますが、フアン・ルイス・ブニュエル監督(ルイス・ブニュエルの息子)はシュールで実験的な要素を加え、単なるホラーではなく心理的な深みを追求しています。喪失した愛への執着がもたらす破滅というテーマが、強烈に描かれています。
エンニオ・モリコーネの幻想的で美しい音楽が、ゴシックなスペインの古城を舞台とした映像とマッチし、恐怖の中に優美さを添えています。リヴ・ウルマンの演技は、蘇生後の冷たくも魅力的な怪物像を体現し、ミシェル・ピッコリの苦悩する領主像との対比が効果的です。
オルネラ・ムーティ演じる再婚相手カトリーヌの若々しい美しさも、物語の悲劇性を高めています。中世の迷信や悪魔信仰を背景に、近代的な心理描写を織り交ぜた点が、本作の独自性と言えます。ヴァンパイア映画の伝統を継ぎつつ、父ブニュエル譲りのシュールリアリズムの影響が見られる作品です。
キャスト
- リヴ・ウルマン:レオノール
- ミシェル・ピッコリ:リチャード
- オルネラ・ムーティ:カトリーヌ
- アントニオ・フェランディス:トマス
- アンヘル・デル・ポソ:チャプレン
- ジョージ・リガウド:カトリーヌの父
- ホセ・マリア・プラダ:謎の男
- カルメン・マウラ:下女
- ホセ・サクリスタン:司祭
スタッフ
- 監督 : フアン・ルイス・ブニュエル
- 脚本 : フアン・ルイス・ブニュエル、ベルナルディーノ・ザッポーニ、ジャン=クロード・カリエールほか
- 撮影 : ルチアーノ・トヴォリ
- 音楽 : エンニオ・モリコーネ
- 編集 : パブロ・G・デル・アモ
- 製作 : ミシェル・ピッコリほか




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