パリジェンヌ
夜中に「パリジェンヌ」という映画を見ました。
これは、4人の監督が約20分ずつ制作し、4話からなる軽快なオムニバス映画です。
初公開は1962年(1961年説あり)。
4話の区切りは映像ではわからず、主人公名ではっきりするのが斬新(オムニバスでは当然?)。
第4話にカトリーヌ・ドヌーヴが出ます。
作品情報
- 原題:LES PARISIENNES
- 公開年:1962年
- 製作国:フランス
- 上映時間:105分
- 製作会社:
- 配給会社:
あらすじ
軽快なオムニバス映画、4話で描くパリ女性たち。
キャスト
登場人物 | 作品 | 出演者 |
フランソワーズ | フランソワーズ | フランソワーズ・アルヌール |
ジャクリーヌ | フランソワーズ | フランソワーズ・ブリオン |
ソフィー | ソフィー | カトリーヌ・ドヌーヴ |
テオドラ | ソフィー | ジリアン・ヒルズ |
ジャクリーヌ | ソフィー | エリナ・ラボールデット |
アントニア | アントニア | ダニー・ロビン |
エラ | エラ | ダニー・サヴァル |
ユベール・パーカー | エラ | ダリー・カウル |
ミシェル | フランソワーズ | ポール・ガーズ |
ジャン・アラール | ソフィー | ジョニー・ハリデイ |
クリスチャン・レニエ | アントニア | クリスチャン・マルカン |
ジャン=ピエール・ルロワ | アントニア | ジャン・ポワレ |
ルイ | ソフィー | ホセ・ルイス・デ・ヴィラロンガ |
ピドゥー | エラ | ジャック・アリ |
秘書 | エラ | オルガ・ジョルジュ=ピコ |
ジュリエット | エラ | フランソワーズ・ジレ |
タクシー運転手 | エラ | セルジュ・マルカン |
シュザンヌ | ソフィー | ジゼル・サンドレ |
プレイボーイ | フランソワーズ | フランソワ・パトリス |
エリック | エラ | アンリ・ティソ |
自分たち | エラ | レ・ショセット・ノワール |
女子学生 | ソフィー | ダニエール・エヴェヌー |
シュザンヌ | ソフィー | ベルト・グランヴァル |
同僚 | ソフィー | フランス・アングラード |
バスの乗客 | ソフィー | アンリ・アタル |
エラの友達 | エラ | エレン・バール |
電車の乗客 | ソフィー | イヴ・バルサック |
エラの友人 | エラ | アンヌ=マリー・ベリーニ |
ゴルフプレイヤー | アントニア | ミック・ベッソン |
エラの友人 | エラ | ジャック・シャンルー |
クレジットなし | アンヌ・コサイン | |
オルリーの旅行者 | フランソワーズ | ルシアン・デザニョー |
パーカーの助手 | エラ | コリン・ドレイク |
SNCFの切符係 | エラ | マリウス・ガイドン |
ホテルの受付係 | アントニア | アンドレ・ガイヤール |
リチャード | アントニア | ベルナール・ラヴァレット |
女子学生 | ソフィー | パロマ・マッタ |
自分 | エディ・ミッチェル | |
アメリカ人観光客 | エラ | ドナルド・オブライエン |
カフェの女性 | エラ | ロール・パイエット |
クレジットなし | ポール・プレボイスト | |
エラの友人 | エラ | ジャック・サンティ |
バスの乗客 | ソフィー | ドミニク・ザルディ |
スタッフ
監督
- ジャック・ポワトルノー
- ミシェル・ボワロン
- クロード・バルマ
- マルク・アレグレ
脚本
- ジャック・ポワトルノー
- ジャン=ルー・ダバディ
- ミシェル・ボワロン
- アネット・ワドマン
- クロード・バロア
- クロード・ブリュレ
- マルク・アレグレ
- ロジェ・ヴァディム
見どころと感想
パリジェンヌの定義は?
パリジェンヌの定義が作品ごとに違います。
パリジェンヌはフランス語で「les Parisiennes」、パリ女性と訳します。ですので既婚・未婚は問いません。
この映画の主人公4人のうち、未婚女性は3人、既婚女性は1人です。
では一話ずつ、紹介、感想、パリジェンヌの定義をご紹介します。
第1話 : 「エラ」
パリジェンヌは世界一貞淑
コメディー調の作品。
主演女優ダニー・サヴァルの務めるエラはダンサー。
映画女優を目指す彼女が、たまたま飲み屋で知り合った男性ユベールと一夜を過ごします。
少し恋が始まっていますが、お互いに肉体関係はないまま、クリアな状態のまま朝を迎えます。
その日の朝にエラは彼と一緒に女優採用の面接へ行きます。
面接を待つ間にエラはトイレへ。その間にユベールは控室へ。
踊らされたり音楽ないのに歌わされたりして秘書が面接をします。
その途中に彼が出現して採用通知。
彼女の健気な性格やダンス歌などの能力に惹かれました。
そこでようやくエラは彼がハリウッドから来た大物プロデューサーだと知ります。
ユベールは偽名で本名はパーカー。
パーカー=ユベールだと驚き、またパーカーがさっそく仕事に行こうと誘った場所がハリウッドだというので、エラはやたらと無邪気に喜びます。
そのまま二人は秘書とともにパリから飛行機でハリウッドへ飛び立ち、2ヶ月後に結婚しました。
ユベールはパリジェンヌを次のようにまとめます。
決して浮気などしない可愛い妻
パリジェンヌは世界一貞淑だ
でもご注意を
彼女たちはとても気難しい
私の印象
冒頭場面が印象的。
慌ただしいパリの街へやってきてエラはタクシーを探します。ダンスの仕事が遅れそうだから。
その慌てっぷりがコメディ丸出しなので閉口。わたしコメディが苦手で…。
ところが、彼女は忙しいなかで独り言を漏らしました。
この台詞で私は最後まで見ようと思いました(といっても20分ほどなので黙って見ろという話ですが)。
パリは外国人ばっかり
1960年代初頭のパリは既に観光地化されていて外国人が多かったのだと分かりました。
当時の航空機事情からして、今ほど空のグローバル化は進んでいないでしょうから、所得階層の高い連中ばかりとはいえパリにはあちこちから人間がやってきていたのです。
しかし、この台詞で腑に落ちないのが「じゃあ、戦前や戦中に外国人は少なかったのか?」という点です。
真っ先に思い出したのは第二次大戦中のドイツ軍によるパリ占領。
1940年代前半のパリにはドイツ人がウジャウジャいたはずです。
つぎに思い出すのが1920年代パリ。
日本からも画家や作家たちが挙ってパリへ行きました。世界中のアーティストが集まっていたのは広く知られているとおり。
ですので、1960年頃のパリに外国人が多いといわれると、どの程度だったのかを妄想。
最後に分かったのは、この作品のエラは私の妄想なんぞ関係なく、自分の目の前の光景がメトロポリタンだといっただけの話。
過去からずっとメトロポリタンだという点は、エラにとっては、どうでもいい。
彼女は素直で健気で単純な女の子だったんですね。
そして、ちゃっかりハリウッドの金持ちプロデューサーと結婚して、そそくさとアメリカへわたりました。
タフ。
というわけで私自身がとてつもなく薄汚れたオッサンに思えた作品でした。
それでは薄汚れた既婚者たちの大人な話をみてみましょう。
といっても実は軽快で、薄汚れた中にも強い意志ありです。
第2話 : 「アントニア」
世間は狭い
主演女優ダニー・ロバン演じるのは美容整形医の妻アントニア。
夫のピエールと一緒にゴルフへ出かけ練習。
そこにアントニアの昔の恋人クリスチャンに出会います。
3人でカフェに寄るも夫はイライラ。
近い間にゴルフ・コンペがあり、夫も元恋人も参加する設定。
コンペ前日に会場近くで夫ピエールが大便をしている最中に、元恋人が男性友人とトイレへ入ってきます。
夫が聞き耳を立てているとクリスチャンがアントニアの性行為は未熟だったと自慢げに。
夫ピーエルはそれを妻アントニアに話したところ、彼女は激怒。
DVDの解説に夫が激怒とありますが間違い。
世の中には小悪魔のようなパリジェンヌもいる
ここで面白い展開。
怒った妻はなんと翌朝にクリスチャンの所へ行って半ば無理やりにベッドイン。
性行為が終わった後に、クリスチャンがメロメロになってアントニアに恋人関係に迫ります。
そこでアントニアは関係の維持を拒否。
エッチをしたけど金輪際は関係を持たないといわれたギャップが腑に落ちないまま、ゴルフ・コンペ当日を迎えます。
コンペで夫は大活躍。
美容整形の仕事の合間を縫って(マメにサボって)ショットの練習をしていた甲斐があったようです…。
クリスチャンも点数を迫りますが、昨日の腑に落ちない状況に疑問がありまくり。
アントニアに関係を迫ったりギャップを質問したりとゴルフに集中できず。
結果は夫の優勝。
妻が元恋人へ身体を張った逆襲が功を奏した訳です。映画は次のように結びます。
彼が優勝できたのはアントニアのおかげだ
彼は一生知るまい
でも世の中には
小悪魔のようなパリジェンヌもいる
クリスチャンにとってはベッドで愉しく過ごせて、アントニアも性行為に満足だと言いました。
しかし恋人関係を拒否されたので、彼は混乱。
他方でアントニアは混乱しなかったのは、小悪魔的な逆襲が最初からの目的だったからです。
目的達成!
私の印象
ドヌーヴよりもダニー・ロバンの方が可愛いぞと思った、ドヌーヴ裏切りのひと時でした。
ゴルフ場での衣装も可愛いですね。パイピングとヘアスタイルに脱帽。
この女優、いずれ調べてみます。
第3話 : 「フランソワーズ」
この作品の特徴は、ズタズタの四角関係が仲直りと恋人関係の維持へと、クリアにまとまる不思議なオチ。
主演女優はフランスワーズ・アルヌール。
出だしの場面が空港のエスカレーター。
誰が迎えにくるかと思ったら友人女性ジャクリーヌ(演フランソワー ズ・ブリヨン)。
そこで展開の予測が少しリセットされました。
この作品はここが上手と思いますが、他は最後を除いてイマイチ。
この場面、ジャクリーヌの着ている服はシャネル・スーツに似ています。
ソフトな色合いとパイピング、両サイドにポケットの付いたミニ・ジャケット、膝丈でエイチ・ラインのスカート。
この映画のクレジットによると衣装デザイナーは「Tanine Autré」。あれこれ調べましたが、出てきません…。
ラメ入りツイードの生地だったので、てっきりシャネルの作品だと思いました。
この第3話のパリジェンヌははっきりと定義されていません。
最後のナレーションから判断してパリジェンヌとはあっさりしていて、くよくよしないというところでしょうか…。
ズタズタの三角関係か四角関係かが、一瞬であっさりと解決している点は脚本の上手さですね。
第4話 : 「ソフィー」
第4話についぞカトリーヌ・ドヌーヴが登場。
ですが、かなり眠たい状況で見ていて、第4話はあまり記憶がありません。
素朴で孤独なソフィー
素朴な女子学生をドヌーヴが上手に演じていました。
シングル・マザーの母親と一緒に暮らすも、孤独な女子を演じています。
お母さんには恋人がいます。娘のソフィーつまりドヌーヴは母の恋人を嫌がっています。
その辺のバランスがさらりと書かれているので、ひょっとすると当時のパリでは見慣れた状況だったのかもしれません。
ソフィーが恋に落ちたギター少年も孤独な様子を上手く演じています。
結局のところギターを介した恋が芽生えて一件落着に思えますが、オチにはややもの悲しいものがありました。
学校内で多数派から弾かれがちなソフィーには内面で充実した時間を振り返っています。
最後の場面で充実さが滲み出ていたドヌーブの笑顔が良かったです。
ソフィーの衣装
上の写真は第4話冒頭で、ソフィーが母親に付いていったパーティ会場の場面です。
トランスペアレントのシャツにベアトップのドレスを重ねているのかと思ったら逆でした。
逆なら窮屈か。
配色が見たいところです…。
DVDでは「ドヌーヴの初々しい下着姿も収録された」と大々的に宣伝されていました。
でも、学校の更衣室で着替えている場面、おまけに横縞のトップレスブラだけだった気がします。
大人っぽいドヌーヴには似合いません。
面白かった場面
女子同級生たちに《大人の恋人がいる》とハッタリをかましたので、デート現場を押さえようと彼女たちがソフィーの後を付け回す場面。
ソフィーは一人の同級生の友人宅に転がり込みますが、この家は他の同級生たちに秘密の部屋と言っていた住所。
この単純にバレやすい嘘が面白いです。
転がり込んだ同級生の部屋のドアに耳を澄ませる同級生たち。
仕方なしに室内のソフィーと友人の二人は男女が密室で行なう行為を演じるために、声の演技をやりはじめます。
ついでにムードが高まるであろう頃合いをみて、ベッドの上で二人は跳ねまくり、ベッドを軋ませます。
ドアの外は固唾を飲んでいるでしょうが、室内はかなり楽しそうです。
1960年代を描いたウォン・カーウァイ監督の「2046」や「若き仕立屋の恋」にもベッドの軋む場面と音が出ていたことを思い出しました。
ソフィーからみたパリジェンヌ
恋や思い出に満足していれば周囲はどうでも良いということになるかと…。
そう考えると、冒頭でソフィーの母親ジャクリーヌ(エリナ・ラブルデット)がパーティで楽しそうに過ごしていたことと重なってきます。
感想
あれこれウダウダと解説や感想を入り混じって書いてきました。
カラー映画だったらもっと活き活きしたと思いますが、20分程度の話が4個のオムニバスは、かなり軽快。
それでいてしっかりオチを作っている分、4作品のカラーがはっきり出ていました。
ファム・ファタル
「パリジェンヌ」のファム・ファタルはカトリーヌ・ドヌーヴといいたいところですが、私には第3エピソードに出てきたダニー・ロバンがお気に入りです。
出演時の年齢をみると、カトリーヌが20歳、ダニーが35歳。
熟した年数が違います(^^)
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