2021年公開のフランス映画『あのこと』(L’événement)は、1960年代、中絶が違法だったフランスを舞台に、望まぬ妊娠をした大学生アンヌの12週間にわたる孤独な戦いを描写。貧しい家庭出身ながら努力で大学に進学し、未来を夢見ていましたが、妊娠がすべてを脅かします。彼女の視点から、恐怖と決意の物語が臨場感たっぷりに展開。
基本情報
- 邦題:あのこと
- 原題:L’événement
- 英題:Happening
- 公開年:2021年
- 製作国・地域:フランス
- 上映時間:100分
- ジャンル:ドラマ
あのこと – 公式予告編 | HD | IFCフィルムズ
女優の活躍
『あのこと』の主演を務めるアナマリア・ヴァルトロメイは、主人公アンヌを演じて世界的な注目を集めました。彼女の演技は、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞するほどの評価を受け、セザール賞で有望女優賞を獲得しています。アナマリアは、ルーマニア出身のフランス人女優で、子役時代からキャリアをスタートさせていましたが、本作で一躍スターとなりました。
アナマリアの活躍のポイントは、アンヌの内面的な葛藤を繊細に表現した点にあります。物語はアンヌの視点を中心に進むため、彼女の表情や仕草が映画の緊張感を支えています。例えば、妊娠を知った瞬間の絶望感や、中絶を決意した後の決然とした視線が、観客に強い印象を与えます。監督のオードレイ・ディヴァンは、アナマリアの演技を「小さな兵士」と称賛し、彼女の自然な存在感が物語のリアリティを高めていると語っています。
アナマリアの演技は、身体的な苦痛を伴うシーンでも際立っています。映画の後半で描かれる中絶の試みは、非常に生々しく、彼女の叫び声や汗だくの表情がリアルに伝わってきます。このようなシーンを通じて、アナマリアは女性の身体の自治というテーマを体現し、批評家から「キャリアを変えるほどの演技」と評価されました。彼女の活躍は、単なる役柄の再現ではなく、現代の社会問題に光を当てるものとなっています。
さらに、アナマリアは本作以降、さまざまな作品に出演し、多様な役をこなしています。例えば、『モンテ・クリスト伯爵』や『メドゥーサ』などで活躍を続け、フランス映画界の新星として期待されています。本作での彼女の活躍は、彼女のキャリアの転機となり、国際的な映画祭で数々の賞を受賞する基盤を築きました。アナマリアの演技力は、静かなシーンでの微妙な感情表現から、激しいドラマチックな瞬間まで幅広く、観客を引き込む魅力があります。
アナマリアの活躍を支えたのは、徹底した役作りです。原作者のアニー・エルノーの自伝的小説を基に、彼女は1960年代の女性の心理を深く研究しました。この準備が、彼女の自然で説得力のある演技を生み出しています。批評家たちは、アナマリアの活躍を「圧倒的な存在感」と称え、映画の成功の鍵だと指摘しています。彼女の活躍は、若い女優として社会的なメッセージを伝える役割も果たしています。
女優の衣装・化粧・髪型
アナマリア・ヴァルトロメイの衣装は、1960年代の学生らしいシンプルで実用的なものが中心です。映画全体がタイムレスな雰囲気を狙っているため、派手さを避け、地味な色調のスカートやブラウスを着用しています。例えば、日常シーンではベージュやグレー系のスカートに白いシャツを合わせ、貧しい家庭出身の現実感を出しています。これらの衣装は、彼女の動きを制限せず、物語の緊張感を高める役割を果たします。
化粧は最小限で、ナチュラルなスタイルを採用しています。アナマリアの淡い肌色を活かし、リップやアイメイクはほとんど施されず、少女らしい素朴さを強調します。妊娠の進行とともに、彼女の顔色が悪くなる描写では、化粧を薄くして疲労感を表現しています。このアプローチは、映画のリアリズムを支え、観客にアンヌの内面的な苦痛を視覚的に伝えています。監督の意図で、時代を超えた普遍性を出すために、過度なメイクアップを避けています。
髪型は、シンプルなボブスタイルが基本です。アナマリアの黒髪を肩くらいの長さに整え、ポニーテールや緩く結んだ状態で登場します。学校シーンでは髪を後ろでまとめ、勉強に集中する真剣さを表しています。一方、夜の外出時や緊張する場面では、髪を下ろして少し乱れを加え、心理的な動揺を象徴します。この髪型は、1960年代のファッションを反映しつつ、現代的なニュアンスを加えています。全体として、衣装・化粧・髪型はアナマリアの演技を引き立て、物語の没入感を高めています。
アナマリアの衣装は、物語の進行に合わせて変化します。序盤の明るい時期は軽やかなドレスを着用し、中盤以降は暗い色調の服が増え、絶望感を視覚化します。化粧の変化も同様で、汗や涙で崩れる様子が、彼女の苦闘を強調します。髪型については、風に乱れるシーンが多く、自由を求めるアンヌの心情を表しています。これらの要素は、映画の美術チームが細かく設計し、アナマリアの自然な美しさを活かしています。
批評家たちは、アナマリアの衣装・化粧・髪型を「地味だが効果的」と評価します。派手さを排したスタイルが、テーマの深刻さを際立たせています。この選択は、監督のビジョンによるもので、観客に時代を超えた共感を呼び起こします。アナマリア自身も、このシンプルなルックが役に没頭しやすくしたと語っています。全体として、これらの要素は彼女の活躍を支える重要な一部です。
あらすじ
物語は1963年のフランス、アングレームの女子学生寮から始まります。主人公のアンヌは、文学を専攻する優秀な大学生です。貧しい労働者階級の家庭から努力で大学に進学し、教師になる夢を抱いています。友人たちと楽しく過ごす日常ですが、ある日、彼女は予期せぬ妊娠に気づきます。当時、中絶は法律で禁止されており、医師や周囲に相談しても助けを得られません。
アンヌは一人で解決策を探します。最初に訪れた医師は妊娠を肯定し、中絶を拒否します。友人たちにも相談しますが、誰も本気で助けようとしません。彼女は次第に孤立し、授業に集中できなくなります。妊娠が進行するにつれ、体調が悪化し、未来が閉ざされていく恐怖を感じます。アンヌは地下中絶の情報を求め、危険な方法を試み始めます。
中盤では、アンヌが中絶を助ける女性を探し当てます。しかし、その方法は針を使った危険なもので、激しい痛みを伴います。失敗した後も諦めず、再び試みます。周囲の男性たちは彼女を利用しようとし、友人たちは噂を恐れて距離を置きます。アンヌの決意は揺るがず、身体的な苦痛と精神的な孤独に耐えます。
クライマックスでは、アンヌが自宅で一人で中絶を試み、激しい出血と痛みに襲われます。ようやく病院に運ばれ、事態は解決しますが、彼女の戦いはそこで終わります。物語はアンヌの視点で描かれ、12週間の経過を週ごとに示します。このあらすじは、女性の権利と社会の抑圧を浮き彫りにします。
あらすじの終盤、アンヌは試験に合格し、未来を取り戻します。しかし、経験したトラウマは彼女を変え、強い女性として成長します。この物語は、原作者の実体験に基づき、リアルな描写が特徴です。あらすじを通じて、アンヌの勇気と絶望が交錯します。
解説
本作『あのこと』は、アニー・エルノーの自伝的小説を基に、1960年代フランスの中絶禁止時代を描きます。当時の社会では、中絶は懲役刑の対象で、女性の身体の自治が認められていませんでした。この設定は、現代の女性権利問題とリンクし、米国のロー対ウェイド判決の議論を想起させます。監督のオードレイ・ディヴァンは、女性の視点から物語を語り、観客に共感を促します。
映画のテーマは、孤独と決意です。アンヌは周囲の無理解に苦しみますが、夢を諦めません。この描写は、フェミニズムの観点から重要で、女性が直面する社会的圧力を批判します。カメラワークはアンヌの顔をクローズアップし、感情を直接伝えます。1.37:1のアスペクト比が、閉塞感を強調します。
解説として、本作のリアリズムが挙げられます。生々しい中絶シーンは、観客を震撼させますが、必要不可欠です。これにより、中絶の危険性を示し、合法化の重要性を訴えます。批評家たちは、タイムレスなスタイルを評価し、衣装やセットが時代を超えた普遍性を与えています。
さらに、解説では社会的な文脈が重要です。1960年代のフランスは、保守的な価値観が強く、女性の性はタブーでした。アンヌの物語は、そんな時代の本質を暴きます。現代では、ポーランドや米国の一部で中絶制限が進む中、本作は警鐘を鳴らします。監督は、原作の衝撃を再現し、観客に「今も起こりうる」と考えさせます。
解説のもう一つのポイントは、女優の演技と監督の手法です。アナマリアの自然な演技が、物語の説得力を高めます。音響デザインも効果的で、沈黙や呼吸音が緊張を増します。本作は、ドラマを超えた社会派作品として、国際的に高く評価されています。ヴェネツィア金獅子賞受賞は、その証です。
最後に、解説として本作の影響力を述べます。公開後、女性権利運動で引用され、議論を喚起しました。エルノーのノーベル文学賞受賞も相まって、文学と映画の融合が注目されます。この映画は、観る者に深い思索を促し、女性の声の重要性を再認識させます。
キャスト
- アナマリア・ヴァルトロメイ:アンヌ
- カシー・モテット・クライン:ジャン
- ルアナ・バイラミ:エレーヌ
- ルイーズ・オリー=ディケロ:ブリジット
- ルイーズ・シェヴィヨット:オリヴィア
- ピオ・マルマイ:教授
- サンドリーヌ・ブランケ:母親
- アンナ・ムーグラリス:リヴィエール夫人
- ファブリツィオ・ロンジョーネ:父親
- レオノール・オベール:ラエティシア
スタッフ
- 監督:オードレイ・ディヴァン
- 原作:アニー・エルノー
- 脚本:オードレイ・ディヴァン、マルシア・ロマーノ
- 撮影:ローラン・タンギー
- 編集:ジェルダ・ポンセット
- 音楽:エヴゲーニ・ガルペリン、サッシャ・ガルペリン
- 美術:ディアナ・サカリス
- 衣装:アナイス・ロマン
- 製作:エドゥアール・ウェイル、アリス・ジラール
- 配給:ワイルド・バンチ




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