『マー サイコパスの狂気の地下室』は、2019年公開のアメリカのサイコスリラー映画です。テイト・テイラー監督、オクタヴィア・スペンサー主演で、孤独な女性スー・アンが高校生たちに地下室を提供し、次第に狂気を露わにする復讐劇を描きます。ブラムハウス製作。
基本情報
- 邦題：マー サイコパスの狂気の地下室
- 原題：Ma
- 公開年：2019年
- 製作国：米国
- 上映時間：99分
- ジャンル：ホラー、スリラー
見どころ
オスカー女優、オクタヴィア・スペンサーが一度見たら脳裏から離れない不気味なキャラクターを怪演。ネクストブレイク必至の若手女優、ダイアナ・シルヴァーズにも注目。
女優の活躍
『マー －サイコパスの狂気の地下室－』の主演を務めるオクタヴィア・スペンサーは、本作で圧倒的な存在感を発揮し、観客に深い印象を残しました。彼女はこれまで『ヘルプ 心がつなぐストーリー』（2011年）でアカデミー助演女優賞を受賞し、『シェイプ・オブ・ウォーター』（2017年）や『ドリーム』（2016年）でも高い評価を受けた実力派女優です。本作では、親しみやすい「マー」から次第に狂気を滲ませるスー・アンという複雑なキャラクターを見事に演じ切りました。スー・アンは、孤独で内向的な女性として登場し、最初は高校生たちに優しく振る舞いますが、過去のトラウマが引き起こす復讐心と情緒不安定な一面を徐々に露呈。特に、彼女の表情や目の演技は恐怖と哀愁を同時に伝え、物語の核心である「悲しい復讐劇」を体現しています。レビューでは「眼力が凄い」「表情だけでゾッとする」と評され、彼女の演技が映画の恐怖と感情的な深みを引き立てた点が高く評価されています。
共演のダイアナ・シルヴァーズも注目すべき活躍を見せました。マギー・トンプソン役を演じた彼女は、母親の都合でオハイオに引っ越してきた女子高生として登場。新天地で友人たちと過ごす中で、スー・アンの異常な行動に直面する役どころです。シルヴァーズは『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』（2019年）でもクールな女子高生役で知られ、本作では若者らしい無邪気さと恐怖に直面する繊細な感情をバランスよく表現。彼女の自然体な演技は、スー・アンの狂気との対比を際立たせ、物語にリアリティを与えました。ジュリエット・ルイスもエリカ・トンプソン役で重要な役割を果たし、シングルマザーとしての葛藤と娘を守る強さを表現。特に、マギーとスー・アンが対峙する場面での彼女の感情的な演技は、物語に人間味を加えています。
女優の衣装・化粧・髪型
オクタヴィア・スペンサー演じるスー・アンの衣装・化粧・髪型は、彼女のキャラクターの心理や物語の進行を反映する重要な要素です。スー・アンは動物病院のスタッフとして働く地味な中年女性として登場し、普段はシンプルで実用的な服装を着用。ゆったりとしたカーディガンや地味な色合いのトップス、ジーンズなど、田舎町の平凡な生活を象徴する衣装が中心です。これにより、彼女の孤独で目立たない日常が強調されます。化粧は控えめで、ナチュラルなメイクアップが施され、彼女の「普通のおばさん」としての印象を強めます。髪型は短くまとめられたボブカットで、清潔感はあるものの派手さはなく、彼女の内向的な性格を反映しています。
しかし、物語が進むにつれてスー・アンの狂気が表面化する場面では、衣装やメイクに微妙な変化が見られます。特に、地下室でのパーティーシーンでは、彼女の服装がやや派手になり、明るい色のブラウスやアクセサリーを着用する場面も。これが彼女の内面の不安定さや、若者たちと無理に溶け込もうとする願望を暗示します。クライマックスでは、彼女のメイクが乱れ、髪もやや乱雑になることで、サイコパスとしての本性が視覚的に表現されます。この変化は、観客にスー・アンの精神の崩壊を強く印象づけます。
ダイアナ・シルヴァーズ演じるマギーの衣装は、現代のアメリカのティーンエイジャーらしいカジュアルなスタイルです。Tシャツ、ジーンズ、スニーカーといった動きやすい服装が中心で、若者の自由奔放な雰囲気を演出。化粧はほぼナチュラルで、若い女性らしい清潔感を保ちつつ、特別な場面では軽いリップやアイメイクが施されます。髪型はロングヘアを下ろした自然なスタイルで、親しみやすさと無垢さを強調。ジュリエット・ルイス演じるエリカは、シングルマザーらしい実用的な服装（カジュアルなトップスやジャケット）を着用し、化粧も控えめで、疲れた表情が彼女の生活の苦労を物語っています。
あらすじ
オハイオ州の静かな田舎町に、夫と離婚したエリカ・トンプソン（ジュリエット・ルイス）が娘のマギー（ダイアナ・シルヴァーズ）を連れて引っ越してきます。マギーは新しい学校でアンディ、チャズ、ハーレイ、ダレルといった友人たちとすぐに打ち解け、酒を飲むために近所の女性スー・アン・エリントン（オクタヴィア・スペンサー）に酒の購入を依頼。スー・アンは快く引き受け、さらには自宅の地下室をパーティー会場として提供します。彼女は「マー」と呼ばれ、若者たちに親しまれますが、次第に奇妙な行動を見せ始めます。スー・アンは高校時代に受けた苛烈なイジメのトラウマを抱えており、マギーたちの親がかつてのイジメの加害者だったことが判明。彼女の親しみは復讐心に裏打ちされており、地下室は若者たちを閉じ込める恐怖の空間へと変わります。スー・アンの狂気がエスカレートする中、マギーたちは彼女の過去と向き合い、生き延びるために闘います。
解説
『マー －サイコパスの狂気の地下室－』は、サイコスリラーとヒューマンドラマの要素を融合させた作品で、ブラムハウス・プロダクションズらしい低予算ながらも緊張感のある展開が特徴です。監督のテイト・テイラーは、『ヘルプ 心がつなぐストーリー』で描いた人間関係の複雑さを本作でも活かし、スー・アンの行動の裏にある深い悲しみや孤独を描いています。スー・アンのサイコパス的行動は、単なる狂気ではなく、過去のトラウマや社会からの疎外感に根ざしており、観客に同情と恐怖の両方を引き起こします。映画は、彼女が計画的に復讐を企てたのか、偶発的に狂気が暴走したのかを曖昧にすることで、キャラクターの複雑さを強調。レビューでは「脚本の曖昧さが物足りない」との声もある一方、オクタヴィア・スペンサーの演技がその欠点を補い、物語に深みを与えたと評価されています。
本作は、SNSや現代の若者文化を背景に、世代を超えた復讐劇を描く点でもユニークです。スー・アンが若者たちに近づくためにSNSを利用する場面は、現代のテクノロジーが持つ危険性を示唆。批評家からは「緩急の付け方がぎこちない」との指摘もあるものの、Rotten Tomatoesで61%、Metacriticで53/100の評価を受け、観客のCinemaScoreはB-とまずまずの反応を得ました。特に、スー・アンの「悲しい復讐劇」としての側面は、ホラー映画としては異色の哀愁を漂わせ、単なる恐怖を超えた感情的な余韻を残します。
キャスト
- スー・アン・エリントン（マー）：オクタヴィア・スペンサー（『ヘルプ 心がつなぐストーリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』）
- エリカ・トンプソン：ジュリエット・ルイス（『ナチュラル・ボーン・キラーズ』『ケープ・フィアー』）
- マギー・トンプソン：ダイアナ・シルヴァーズ（『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』）
- ベン・ホーキンス：ルーク・エヴァンス（『美女と野獣』）
- アンディ・ホーキンス：コーリー・フォーゲルマニス
- ハーレイ：マッケイリー・ミラー
- チャズ：ジャンニ・パオロ
- ダレル：ダンテ・ブラウン
スタッフ
- 監督：テイト・テイラー（『ヘルプ 心がつなぐストーリー』『ガール・オン・ザ・トレイン』）
- 脚本：スコッティ・ランデス
- 製作：ジェイソン・ブラム（ブラムハウス・プロダクションズ）、テイト・テイラー、ジョン・ノリス
- 製作総指揮：オクタヴィア・スペンサー他
- 撮影：クリスティーナ・ヴォロン
- 編集：ルーシー・ドナルドソン、ジン・リー
- 音楽：グレゴリー・トリピ
まとめ
『マー －サイコパスの狂気の地下室－』は、オクタヴィア・スペンサーの迫真の演技と、テイト・テイラー監督の人間ドラマとスリラーの融合が光る作品です。衣装やメイクはキャラクターの心理を反映し、物語の緊張感を高めます。過去のトラウマと復讐を描く本作は、ホラーとしてだけでなく、深い感情を呼び起こす作品として記憶に残ります。
レビュー 作品の感想や女優への思い