『トーナメント』(原題:Midnighters)は、2017年製作の米国のシチュエーション・スリラー。大晦日の夜、ひき逃げ事故を隠蔽しようとした夫婦が、謎の男の登場により命がけのデスゲームに巻き込まれる。ジュリアス・ラムゼイ監督の長編デビュー作で、ホリブル国際映画祭最優秀作品賞受賞。
基本情報
- 原題:トーナメント
- 邦題:Midnighters
- 公開年:2017年
- 製作国:アメリカ
- 上映時間:93分
- ジャンル:スリラー
見どころ
『ウォーキング・デッド』や『アウトキャスト』の演出を手掛けたジュリアス・ラムゼイ監督によるシチュエーションスリラー。先の読めない展開で残酷と恐怖が続出する。
あらすじ
大晦日の夜、リンジー(アレックス・エッソー)とジェフ(ディラン・マクティー)の夫婦は、酔った状態で車を運転中に見知らぬ男を轢いてしまう。男は息絶え、動揺した二人は事件を隠蔽するため、死体を自宅ガレージに運び込む。男の所持品を確認すると、財布から二人の自宅住所が書かれたメモが見つかり、不気味な疑問が浮かぶ。一方、リンジーの妹ハンナ(パーラ・ヘイニー=ジャーディン)がガレージで男が息を吹き返したことに気づき、混乱が広がる。そんな中、刑事を名乗るスミス(ウォード・ホートン)が現れ、家族に「殺し合いのトーナメント」を強要。家族間の不信感と裏切りが露呈し、予測不能な展開が続く。なぜ男は彼らの住所を知っていたのか? スミスの真の目的とは? 緊迫感あふれるスリラーが、観客を恐怖と謎の連鎖へと引き込む。
解説
『トーナメント』は、ジュリアス・ラムゼイが『ウォーキング・デッド』や『アウトキャスト』での演出経験を活かし、長編映画監督デビューを果たした作品である。シチュエーションスリラーとしての本作は、限られた空間と時間の中で、登場人物の心理的な葛藤とサスペンスを巧みに描き出す。物語は大晦日という特別な夜を舞台に、日常から一転して極端な状況に追い込まれる家族の姿をリアルに描写。観客は、登場人物の選択とその結果に引き込まれる。
本作の特徴は、タイトルの「トーナメント」が示唆するような明確な対戦形式ではなく、家族内の不信感や裏切りが複雑に絡み合う心理戦にある。 ホリブル国際映画祭での最優秀作品賞受賞をはじめ、国際的に評価された本作は、低予算ながらも緊張感と意外性を保ち、B級スリラーの魅力を見事に体現している。 ただし、邦題『トーナメント』は原題『Midnighters』に比べてストーリーの核心を捉えきれていないとの批判もあり、観客に誤解を与える可能性が指摘されている。
女優の活躍
本作の主要女優であるアレックス・エッソーとパーラ・ヘイニー=ジャーディンは、物語の中心となるリンジーとハンナを演じ、作品の緊張感を大きく支えている。
アレックス・エッソー(リンジー役)
アレックス・エッソーは、『ネイバーズ』や『スターリー・アイズ』で知られる実力派女優。本作では、夫ジェフとともに危機に直面するリンジーを演じ、感情の揺れと決断力を表現。リンジーは、夫の失業や妹との複雑な関係に悩みながらも、極限状態での冷静さと脆さを併せ持つキャラクターだ。エッソーは、特に物語後半の心理的な緊張が高まる場面で、微妙な表情と動作でリンジーの内面を巧みに伝え、観客に感情移入させる。彼女の演技は、恐怖と疑心暗鬼の中で葛藤する女性像をリアルに描き出し、作品の核心を支えている。
パーラ・ヘイニー=ジャーディン(ハンナ役)
『スティーブ・ジョブズ』や『キル・ビル Vol.2』での子役経験を持つパーラ・ヘイニー=ジャーディンは、リンジーの妹ハンナ役で出演。ハンナは、姉夫婦の家に居候する自由奔放な若者として登場し、物語の鍵を握る存在となる。ヘイニー=ジャーディンは、ハンナの無鉄砲さと脆さをバランスよく演じ、家族間の軋轢や予期せぬ行動を通じてストーリーを推進。彼女の若々しいエネルギーと感情の爆発は、作品に新たな緊張感をもたらす。特に、ガレージでの衝撃的な場面での演技は、観客に強い印象を残す。
両女優の演技は、家族内の複雑な関係性とサスペンスの展開を深化させ、物語のリアリティを高めている。彼女たちの対照的なキャラクター造形が、作品の心理的な緊張感を一層引き立てている。
女優の衣装・化粧・髪型
『トーナメント』の衣装、化粧、髪型は、キャラクターの個性と物語の現実感を反映しつつ、シチュエーションスリラーの雰囲気を強調している。
アレックス・エッソー(リンジー)
衣装
リンジーの衣装は、大晦日のパーティーから帰宅した直後のカジュアルかつ実用的なスタイルが中心。ダークトーンのコートやセーター、ジーンズを着用し、日常的な主婦の雰囲気を演出。物語が進むにつれ、血や汚れがついた衣装が、彼女の置かれた過酷な状況を視覚的に表現する。
化粧
リンジーのメイクはナチュラルで、薄いファンデーションと控えめなリップが中心。パーティー帰りであるため、最初は軽いアイメイクが見られるが、物語の進行とともに汗や涙でメイクが崩れ、彼女の動揺と疲弊を強調。
####髪型:髪は肩までの長さで、ルーズなウェーブが施されたシンプルなスタイル。危機的状況では髪が乱れ、緊迫感を増す演出に一役買っている。
パーラ・ヘイニー=ジャーディン(ハンナ)
衣装
ハンナの衣装は、若者らしいカジュアルでややラフなスタイル。フーディーやTシャツ、ダメージジーンズが特徴で、居候としての自由な生活態度を反映。彼女の衣装は、姉のリンジーとは対照的にやや派手な色使いが目立つ。
化粧
ハンナのメイクは若々しく、アイライナーやマスカラで目を強調したスタイル。リップは明るめのピンクやレッドを使用し、彼女の奔放な性格を表現。物語の後半では、化粧が乱れることで彼女の混乱と恐怖が視覚化される。
髪型
ハンナの髪はロングで、ゆるいカールまたはストレートで下ろしたスタイル。動きの多いシーンではポニーテールにまとめられ、アクティブな印象を与える。
衣装とメイクは、キャラクターの社会的立場や心理状態を反映しつつ、物語の緊迫感を高める役割を果たしている。特に、状況の悪化とともに衣装やメイクが乱れる演出は、視覚的にサスペンスを強調する効果的手段となっている。
キャスト
- リンジー:アレックス・エッソー…
- ハンナ:パーラ・ヘイニー=ジャーディン…
- ジェフ:ディラン・マクティー…
- スミス:ウォード・ホートン…
- その他:アンドリュー・ローゼンバーグ、ジョセフ・リー・アンダーソン
スタッフ
- 監督・脚本・製作:ジュリアス・ラムゼイ……『ウォーキング・デッド』での演出経験を活かし、緊張感あふれる演出と脚本を手がける。…
- 製作:ジュリアス・ラムゼイ、ケヴィン・ウェイン…
- 撮影:エリオット・デイヴィス……暗い色調と閉鎖的な空間を活かした撮影で、作品の不気味な雰囲気を強調。…
- 編集:ジュリアス・ラムゼイ、アンドリュー・ウェスブルム……テンポの速い編集で、サスペンスの緊張感を維持。…
- 音楽:アレクサンダー・バーンズ……不穏な音階とミニマルなスコアで、物語の不安感を増幅。
総括
『トーナメント』は、低予算ながらも緊張感と心理戦を巧みに描いたシチュエーションスリラーである。アレックス・エッソーとパーラ・ヘイニー=ジャーディンの演技は、家族の葛藤と恐怖をリアルに伝え、観客を引き込む。衣装やメイクは、キャラクターの個性と物語の進行を視覚的に補完し、ジュリアス・ラムゼイの演出は限られた空間で最大限のサスペンスを引き出している。邦題に対する批判はあるものの、ホリブル国際映画祭での受賞歴が示すように、スリラー映画としての完成度は高い。 緊迫感と意外性を求める観客にとって、見応えのある作品である。
レビュー 作品の感想や女優への思い