『奇跡』は1954年のベルギー、デンマーク合作映画。デンマークの田舎町を舞台に、信仰の違いがもたらす家族の葛藤を描写。カール・テオドア・ドライヤー監督の傑作で、宗教的なテーマを深く探求しています。
農民モルテン・ボルゲンの一家は、信仰深い父と三人の息子たちで構成されています。長男ミッケルは信仰を失い、次男ヨハネスは自身をイエス・キリストと思い込み、三男アンデルスは恋に落ちます。ミッケルの妻インゲルの死と奇跡の復活を通じて、家族の絆と信仰の真髄が試されます。
基本情報
- 邦題:奇跡
- 原題:ORDET
- 公開年:1954年
- 製作国・地域:ベルギー、デンマーク
- 上映時間:126分
- ジャンル:ドラマ
女優の活躍
『奇跡』では、ビアギッテ・フェダースピールがミッケルの妻インゲル役を演じています。彼女は家族の中心として、温かく優しい女性を体現し、物語の鍵となる人物です。特に、出産シーンでの演技は現実味があり、彼女自身が妊娠中だったため、実際の陣痛の声を録音して使用されました。このパフォーマンスは高く評価され、ボディル賞最優秀女優賞を受賞しました。
ゲルダ・ニールセンはアンネ・ペーターセン役で出演します。厳格な信仰を持つ家族の一員として、宗派間の対立を象徴する役柄を熱演しています。彼女の演技は、静かな緊張感を醸し出し、物語のドラマチックな展開を支えています。
シルヴィア・エックハウセンはキルスティン・ペーターセン役を務めます。若い女性の純粋さと葛藤を表現し、アンデルスとの恋愛要素に深みを加えています。彼女の自然な演技は、田舎の生活感をリアルに伝えています。
アン・エリザベス・ルドはマレン・ボルゲン役で、子供らしい無垢さを演じています。クライマックスの奇跡シーンで重要な役割を果たし、観客の心を捉えます。彼女の演技は、信仰の純粋さを象徴しています。
スザンヌ・ルドはリルインゲル・ボルゲン役を演じ、家族の末っ子として可愛らしい存在感を示します。全体として、女優たちはドライヤー監督の厳格な演出の下、感情の微妙なニュアンスを表現し、作品の芸術性を高めています。
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女優の衣装・化粧・髪型
インゲル役のビアギッテ・フェダースピールは、白いエプロン付きのシンプルなドレスを着用しています。これは1920年代のデンマーク田舎の主婦を象徴し、純粋さと家庭的な温かさを表しています。化粧はナチュラルで、ほとんど施さず、自然な肌の質感を活かしています。髪型は後ろでまとめたシンプルなアップスタイルで、日常の作業に適した実用的なものです。
アンネ・ペーターセン役のゲルダ・ニールセンは、黒い長袖のドレスを着ています。これは厳格な宗派の信者を反映し、控えめで質素な印象を与えます。化粧は最小限で、厳しい表情を強調しています。髪はきつく結んだバンスタイルで、規律正しさを示しています。
キルスティン・ペーターセン役のシルヴィア・エックハウセンは、淡い色のブラウスとスカートを着用します。若さを表す柔らかな素材を使い、恋愛の純粋さを演出しています。化粧は軽く、頰に自然な赤みを加えています。髪型は緩やかなウェーブで、肩まで下ろしたスタイルです。
子供役のアン・エリザベス・ルドとスザンヌ・ルドは、シンプルな子供服を着ています。白や淡い色のドレスで、無垢さを強調します。化粧は一切なく、自然な子供らしい顔立ちです。髪はリボンで結んだポニーテールや三つ編みで、可愛らしさを添えています。
全体の衣装デザインはN.サンド・イェンセンによるもので、時代と場所を忠実に再現しています。化粧はロマ・イェンセンが担当し、過度な装飾を避け、人物の内面を際立たせています。これにより、作品のリアリズムが強化されています。
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あらすじ
1925年のデンマーク田舎、ボルゲン農場で暮らすモルテン・ボルゲンは信仰深い老人です。彼には三人の息子がいます。長男ミッケルは信仰を失い、妻インゲルと幸せに暮らしていますが、インゲルは三人目の子供を妊娠中です。
次男ヨハネスは神学を学んだ後、精神を病み、自分をイエス・キリストと思い込んでいます。彼は家族や村人たちの信仰の欠如を非難します。三男アンデルスは、近隣の仕立て屋ペーター・ペーターセンの娘キルスティンと恋に落ち、結婚を望みます。
アンデルスの結婚を巡り、モルテンとペーターの間で宗派の違いから対立が生じます。一方、インゲルの出産が難産となり、医師の努力にもかかわらず赤ん坊は死に、インゲルも命を落とします。家族は悲しみに暮れます。
ヨハネスはインゲルの棺の前で、家族の信仰があれば彼女を蘇らせられると宣言します。ミッケルの娘マレンの純粋な信仰がきっかけとなり、奇跡が起こり、インゲルは蘇生します。これにより、家族は信仰を再確認し、和解します。
物語は、信仰の力と奇跡の可能性を描き、宗教的な対立を超えた人間の絆を示します。ドライヤーの静かな演出が、感動的なクライマックスを導きます。
解説
本作『奇跡』は、カイ・ムンクの戯曲「御言葉」を基にしています。ドライヤー監督は、宗教的なテーマを深く掘り下げ、信仰の多様性と奇跡の意味を探求します。デンマークの田舎を舞台に、宗派間の対立が家族のドラマを生み出します。
ヨハネスの狂気は、キェルケゴールの影響を受け、現代の信仰喪失を象徴します。一方、インゲルの死と復活は、キリストの奇跡を想起させ、観客に信仰の力を問いかけます。撮影はヘニング・ベンツェンが担当し、長回しの技法で緊張感を高めています。
作品は1955年のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、批評家から高評価を得ました。ドライヤーの唯一の商業的成功作であり、映画史上の傑作として位置づけられています。テーマは普遍的で、現代でも共感を呼びます。
女優たちの演技は、感情の抑制された表現が特徴です。特にインゲルの復活シーンは、静寂の中で感動を呼び起こします。音楽はポウル・シエルベックが作曲し、ミニマリズムが物語を支えています。
全体として、本作は宗教と人間性を融合させた深い洞察を提供します。視聴者は、奇跡の可能性を自ら考える機会を得ます。
キャスト
- モルテン・ボルゲン:ヘンリク・マルベア
- ミッケル・ボルゲン:エミル・ハス・クリステンセン
- ヨハネス・ボルゲン:プレベン・レルドルフ・ライ
- アンデルス・ボルゲン:カイ・クリスティアンセン
- インゲル・ボルゲン:ビアギッテ・フェダースピール
- ペーター・ペーターセン:エイナー・フェダースピール
- アンネ・ペーターセン:ゲルダ・ニールセン
- キルスティン・ペーターセン:シルヴィア・エックハウセン
- 牧師:オヴェ・ルド
- 医師:ヘンリー・シェール
- メッテ・マレン:エディト・トラネ
- マレン・ボルゲン:アン・エリザベス・ルド
- リルインゲル・ボルゲン:スザンヌ・ルド
- カレン:ハンネ・アゲセン
スタッフ
- 監督:カール・テオドア・ドライヤー
- 脚本:カール・テオドア・ドライヤー
- 原作:カイ・ムンク
- 製作:カール・テオドア・ドライヤー、エリク・ニールセン、タゲ・ニールセン
- 撮影:ヘニング・ベンツェン
- 編集:エディト・シュルッセル
- 音楽:ポウル・シエルベック
- 衣装デザイン:N.サンド・イェンセン
- メイクアップ・アーティスト:ロマ・イェンセン
- 音響:ヘニング・モラー、カイ・グラム・ラーセン
- 製作会社:A/S パラディウム





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