『ペイン・ハスラーズ』は2023年公開のNetflix映画。シングルマザーが製薬会社の不正に巻き込まれ、倫理的葛藤に直面する実話ベースのクライムドラマ。エミリー・ブラント主演、監督はデヴィッド・イェーツ。10月27日配信開始。
基本情報
- 邦題:ペイン・ハスラーズ
- 原題:Pain Hustlers
- 公開年:2023年
- 製作国:米国、英国
- 上映時間:122分
- ジャンル:クライム
あらすじ
『ペイン・ハスラーズ』は、シングルマザーのライザ・ドレイクが主人公の物語。高校中退のライザは、娘フィービーを育てるためストリップクラブで働くも職を失い、生活に困窮していました。
そんな中、ザナ製薬の営業マン、ピート・ブレナーと出会い、彼の後押しで製薬会社の営業職に就きます。ライザは持ち前のバイタリティと人脈を活かし、鎮痛剤「ロナフェン」の売り込みに成功。会社を経営難から救い、自身も高級車や豪邸を手に入れるなど生活が一変します。
しかし、会社が利益追求のため、癌患者以外への適応外処方を推し進め、患者が薬に依存し死亡する事件が発生。ライザは自責の念に駆られ、会社の不正を告発することを決意します。
最終的に、彼女自身も1年3か月の実刑判決を受けますが、出所後は母ジャッキーの天然化粧品ビジネスを手伝い、新たな人生を歩み始めます。
実話を基にした本作は、アメリカのオピオイド危機と経済格差を背景に、欲望と正義の間で揺れる人間ドラマを描きます。
女優の活躍
本作『ペイン・ハスラーズ』の主演を務めるエミリー・ブラントは、ライザ・ドレイク役で圧倒的な存在感を発揮しています。彼女は高校中退で学歴や職歴がないシングルマザーという複雑な役柄を、持ち前の演技力でリアルに体現。ライザのハングリー精神や人たらしな魅力、倫理的葛藤に揺れる心情を繊細に表現し、観客を引き込みます。
特に、成功への猪突猛進な姿勢と、娘や周囲への愛情、そして不正に気づいた後の内面的な葛藤を巧みに演じ分け、物語の中心として作品を牽引しています。ブラントは『プラダを着た悪魔』(2006年)や『クワイエット・プレイス』(2018年)などで知られる実力派女優ですが、本作ではさらに深みのある演技を見せ、批評家からも安定した演技力が高く評価されています。彼女の演技は、物語のエンタメ性とシリアスな社会問題のバランスを保つ鍵となっており、観る者に強い印象を与えます。
また、ライザの母ジャッキー役のキャサリン・オハラも見逃せません。『ホーム・アローン』シリーズで愛情深い母親役を演じたオハラは、本作でもライザを信じ支える母親像をコミカルかつ温かく演じています。彼女の自然体な演技は、物語に軽やかなユーモアを加え、ライザの成功と葛藤の背景に家族の絆を浮かび上がらせます。
さらに、ライザの娘フィービー役のクロエ・コールマンも、若手ながら母親を支える健気なティーンエイジャーを好演。彼女の演技は、ライザの決断に感情的な重みを加え、物語に深みを与えています。
これら女優陣の活躍が、作品の人間ドラマとしての魅力を一層引き立てています。
女優の衣装・化粧・髪型
『ペイン・ハスラーズ』の衣装デザインは、著名なデザイナー、コリーン・アトウッドが担当し、ライザの社会的地位の変化を視覚的に表現しています。
エミリー・ブラント演じるライザの衣装は、物語の進行に合わせて顕著に変化します。序盤では、ストリップクラブのダンサーとしての派手な衣装や、困窮した生活を反映するカジュアルで質素な服が登場。Tシャツやジーンズ、くたびれたジャケットなど、労働者階級の現実感を強調するスタイルです。化粧も薄めで、疲れた表情を際立たせるナチュラルメイクが中心。髪型はラフなポニーテールや無造作なダウンスタイルで、忙しいシングルマザーの生活感を表現しています。
ライザがザナ製薬で成功を収める中盤以降は、衣装が一変。洗練されたビジネスカジュアルや高級感のあるドレス、スーツに変化し、彼女の社会的上昇を象徴します。例えば、シャープなブレザーにタイトスカート、シルクのブラウスといったプロフェッショナルな装いや、パーティーシーンでのエレガントなドレスが登場。化粧も鮮やかなリップやアイメイクで華やかさを増し、自信に満ちた表情を引き立てます。髪型は、滑らかなブロースタイルやエレガントなアップスタイルに変わり、成功者としての風格を演出。
終盤、ライザが不正を告発し新たな生活を始めるシーンでは、再びシンプルだが品のある衣装に戻り、ナチュラルメイクと整ったダウンスタイルで、再生と希望を表現しています。これらの衣装・化粧・髪型の変化は、ライザの内面的な成長や葛藤を視覚的に補強する重要な要素です。
キャサリン・オハラ演じるジャッキーの衣装は、個性的で少し派手なスタイルが特徴。彼女の天然化粧品ビジネスを反映した、カラフルなスカーフやボヘミアン風のトップスが登場し、自由奔放な性格を表現。化粧は明るいチークとリップで、年齢を重ねた女性の活気を強調。髪型はゆるいウェーブのミディアムヘアで、親しみやすさを演出しています。
クロエ・コールマン演じるフィービーは、ティーンらしいカジュアルな服(スウェットやデニム)が中心で、ナチュラルなメイクとポニーテールが彼女の若さと純粋さを引き立てます。
これらの女優の衣装・化粧・髪型は、それぞれのキャラクターの個性や物語のテーマを効果的に反映しています。
解説
『ペイン・ハスラーズ』は、2018年にニューヨーク・タイムズ・マガジンに掲載されたエヴァン・ヒューズの記事「The Pain Hustlers」と、彼の小説「The Hard Sell」を基にした実話ベースの作品です。アメリカで深刻な社会問題であるオピオイド危機を背景に、製薬会社の不正と個人の倫理的葛藤を描いたクライムドラマ。
特に、鎮痛剤フェンタニルの依存性問題と、製薬業界の利益優先の姿勢がもたらす悲劇をリアルに描写。物語は、ライザのシンデレラストーリーとして始まり、成功の裏に潜む闇を暴く社会派ドラマへと展開します。
本作は、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を彷彿とさせるテンポの良さとエンタメ性を持ちつつ、『エリン・ブロコビッチ』のような社会的弱者の闘いを描く要素を融合。ライザの成功は、経済格差の中で這い上がろうとする個人の奮闘として共感を呼びますが、彼女が不正に手を染める過程は、欲望と正義の間で揺れる人間の弱さを浮き彫りにします。
監督のデヴィッド・イェーツは、『ハリー・ポッター』シリーズで培ったストーリーテリングの技術を活かし、シリアスなテーマを軽快なリズムで描き出します。しかし、一部の批評家からは、エンタメ性を重視しすぎたため、オピオイド危機の深刻さがやや薄れたとの指摘もあり、Rotten Tomatoesでは支持率23%と評価が分かれています。
本作のもう一つの見どころは、製薬業界の不正をリアルに描いた点です。医師への賄賂や適応外処方、過剰なマーケティングなど、実際の事件(インシス社の有罪判決)を反映した描写は、観客に業界の闇を考えさせます。ライザが最終的に告発に踏み切る姿は、正義を貫く勇気を称賛しつつ、彼女自身の過ちと向き合う姿勢が物語に深みを加えています。アメリカの経済格差や医療制度の問題も背景に織り込まれ、観る者に「自分ならどうするか」を問う作品となっています。
キャスト
- ライザ・ドレイク:エミリー・ブラント(シングルマザー、ザナ製薬の営業マン)
- ピート・ブレナー:クリス・エヴァンス(ザナ製薬の営業マン)
- ジャック・ニール:アンディ・ガルシア(ザナ製薬の創業者、博士)
- ジャッキー・ドレイク:キャサリン・オハラ(ライザの母)
- フィービー・ドレイク:クロエ・コールマン(ライザの娘)
- エリック・ペイリー:アミット・シャー(ザナ製薬のCEO)
- ブレント・ラーキン:ジェイ・デュプラス(ザナ製薬のマーケティング副部長)
- ネイサン・ライデル:ブライアン・ダーシー・ジェームズ(医師)
- オーブリー・ダラー
スタッフ
- 監督:デヴィッド・イェーツ(『ハリー・ポッター』シリーズ、『ファンタスティック・ビースト』シリーズ)
- 脚本:ウェルズ・タワー
- 原作:エヴァン・ヒューズ(「The Pain Hustlers」「The Hard Sell」)
- 製作:ローレンス・グレイ、デヴィッド・イェーツ
- 製作総指揮:エミリー・ブラント、マーク・モラン、イボンヌ・ウォルコット=イェーツ、ルイス・テイラー、ベン・エバラード
- 撮影:ジョージ・リッチモンド
- 美術:モリー・ヒューズ
- 衣装:コリーン・アトウッド
- 編集:マーク・デイ
- 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード、マイケル・ディーン・パーソンズ
レビュー 作品の感想や女優への思い