『PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ』は、1933年、日本統治下の京城で抗日組織「黒色団」のスパイ「ユリョン」を巡るサスペンスアクション。警備隊長が仕掛けた罠で、容疑者4人が孤立したホテルに集められ、暗殺作戦と生存を懸けた心理戦が繰り広げられる。ソル・ギョング、イ・ハニ、パク・ソダムら実力派が出演。
基本情報
- 邦題:PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ
- 原題:유령
- 英題:Phantom
- 公開年:2022年
- 製作国:韓国
- 上映時間:133分
- ジャンル:ミステリー、スリラー
- 配給:クロックワークス
見どころ
ソル・ギョングやイ・ハニ、パク・ソダムら抜群の存在感と演技力を兼ね備えた実力派俳優たちが集結。イ・ヘヨン監督の最後の最後まで結末が読めない脚本は秀逸。
女優の活躍
『PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ』では、イ・ハニとパク・ソダムという二人の女優が物語の中心で圧倒的な存在感を発揮しています。
二人の女優は、男社会の中で生きる女性としての連帯感や葛藤を表現し、物語に女性視点のリアリティをもたらしています。彼女たちの対話や視線の交換は、言葉以上に多くの感情を伝え、観客に強い印象を残します。
イ・ハニ(パク・チャギョン役)
暗号記録係として登場するチャギョンは、冷静沈着かつ知的なキャラクターです。イ・ハニは『エクストリーム・ジョブ』で披露したアクションスキルを本作でも存分に発揮。特に中盤以降の格闘シーンでは、流れるような動きで観客を魅了します。彼女の演技は、表面的な穏やかさと内に秘めた闘志を見事に表現し、物語の緊張感を高めています。チャギョンの複雑な背景や動機が徐々に明らかになる過程で、イ・ハニの繊細な表情芝居が光ります。
パク・ソダム(吉永佑璃子役)
政務総監秘書の佑璃子を演じるパク・ソダムは、『パラサイト 半地下の家族』で世界的に注目された演技力を本作でも発揮。佑璃子は一見優雅で従順な女性ですが、物語が進むにつれその裏に隠された強さと決意が浮かび上がります。パク・ソダムは、アクションシーンではスカートの裾を切り裂き、機敏な動きで戦う姿が印象的ですが、レビューではこのシーンが十分に活かされなかったとの指摘もあります。それでも、彼女の感情の揺れを捉えた演技は、ユリョンの正体を巡るミステリーに深みを加えています。
女優の衣装・化粧・髪型
『PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ』の舞台は1930年代の京城で、衣装やメイクは当時の雰囲気を再現しつつ、キャラクターの個性を際立たせています。
イ・ハニの衣装・化粧・髪型
チャギョンは暗号記録係という事務的役割を反映し、シンプルかつ上品な洋装が特徴です。ダークトーンのタイトなスカートスーツやブラウスは、彼女の知的な印象を強調。化粧はナチュラルで、薄い口紅と軽いアイラインが中心ですが、アクションシーンでは汗や傷でメイクが崩れる様子がリアルに描かれ、キャラクターの過酷な状況を表現しています。髪型は短めのボブを後ろでまとめ、動きやすさと時代感を両立。アクション時には髪が乱れることで、戦う女性の力強さが際立ちます。
パク・ソダムの衣装・化粧・髪型
佑璃子は政務総監秘書として、より華やかなスタイルが特徴。淡い色のワンピースやエレガントなスカートに、ウエストを強調したデザインが1930年代のファッションを彷彿とさせます。化粧は柔らかいピンク系の口紅とチークで、若々しくも品のある印象。髪型は緩やかなウェーブのかかったミディアムヘアで、シーンによってはピンで留めており、秘書としての几帳面さを表現。アクションシーンでは、スカートの裾を切り裂くことで動きやすさを確保し、衣装の変化が彼女の内面的な変貌を象徴しています。
これらの衣装やメイクは、時代背景を反映しつつ、キャラクターの心理や役割を視覚的に伝える重要な要素となっています。特に、華やかな衣装が戦闘で汚れるコントラストは、物語の緊張感を高めています。
あらすじ
1933年、日本統治下のソウル(京城)。抗日組織「黒色団」のスパイ「ユリョン(幽霊)」が朝鮮総督府内に潜入し、総督暗殺を企てている。新任の警備隊長・高原(パク・ヘス)は、ユリョンを捕まえるため、総督府内の容疑者4人を人里離れた崖上のホテルに集める。容疑者は、保安情報受信係監督官の村山(ソル・ギョング)、暗号記録係のチャギョン(イ・ハニ)、政務総監秘書の佑璃子(パク・ソダム)、暗号解読係長のウノ(ソ・ヒョヌ)。彼らに与えられた時間はわずか1日。ユリョンは仲間のために暗殺作戦を成功させなければならず、容疑者たちは疑いを晴らし生き残るために互いを牽制し合う。密室での心理戦、裏切り、銃撃戦が交錯し、最後までユリョンの正体は明かされない。息をのむ展開と迫力のアクションで、観客をスクリーンに釘付けにする。
解説
『PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ』は、歴史的背景とスパイ映画のスリルを融合させた作品です。1930年代の日本統治下の朝鮮半島を舞台に、植民地支配の過酷さと抗日運動の緊張感を描きます。日本人観客にとっては、帝国主義の暗い歴史を直視する重いテーマですが、韓国映画らしいエンターテインメント性も兼ね備えています。
監督イ・ヘヨンは、『毒戦 BELIEVER』で培ったアクションとサスペンスの演出力を本作でも発揮。密室推理劇から始まり、心理戦、格闘、銃撃戦へと展開するノンストップのストーリーテリングは、観客を最後まで飽きさせません。しかし、一部のレビューでは、アクションが長すぎる、心理戦が十分に掘り下げられていないとの批判もあります。
本作の特徴は、ユリョンの正体を巡るミステリーとキャラクターの多面性です。各容疑者が抱える秘密や動機が徐々に明らかになり、誰が味方で誰が敵なのかわからない緊張感が持続します。特に、女性キャラクターの連帯や葛藤は、男社会の中で生きる彼女たちの強さを描き、現代的なテーマとも共鳴します。
映像美も見どころの一つ。1930年代の京城を再現したセットや衣装、クラシックな音楽が時代感を醸し出し、アクションシーンではダイナミックなカメラワークが緊張感を増幅。日本語が頻繁に登場する点も、歴史的リアリティを高めています。
キャスト
- 村山淳次(保安情報受信係監督官):ソル・ギョング(『ペパーミント・キャンディー』)
- パク・チャギョン(暗号記録係):イ・ハニ(『エクストリーム・ジョブ』)
- 吉永佑璃子(政務総監秘書):パク・ソダム(『パラサイト 半地下の家族』)
- 高原海人(警備隊長):パク・ヘス(『イカゲーム』)
- ウノ(暗号解読係長):ソ・ヒョヌ(『KCIA 南山の部長たち』)
その他、キム・ドンヒ(『梨泰院クラス』)、キム・ジュンヒ(『コンフィデンシャル:国際共助捜査』)、コ・インボム(『シークレット・ミッション』)。実力派揃いのキャストが、各キャラクターの複雑な心理を深く表現。特にソル・ギョングの重厚な演技とパク・ヘスの冷徹な警備隊長像が、物語に緊張感を加えます。
スタッフ
- 監督・脚本:イ・ヘヨン(『毒戦 BELIEVER』)
イ・ヘヨンの緻密な脚本とダイナミックな演出が、歴史的背景とアクションを見事に融合。製作チームは、時代再現にこだわり、セットや小道具に細部まで気を配っています。
総括
『PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ』は、歴史的背景を基にしたスパイアクションの傑作です。イ・ハニとパク・ソダムの活躍、時代感溢れる衣装とメイク、息をのむストーリー展開が観客を引き込みます。重いテーマを扱いつつ、エンターテインメント性も高い本作は、韓国映画の魅力を存分に味わえる一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い