2024年公開のロシア映画『甘美なる戯れ』(原題:Pochemu ty?)は、42歳の富豪と22歳の女子大生がパパ活で出会い、互いに惹かれ合うラブロマンス。夢のような恋物語の裏に、生きることへの渇望と葛藤を描く。監督はアレクサンドル・プロスト。104分。
基本情報
- 邦題:甘美なる戯れ
- 原題:Pochemu ty?
- 英題:Why Do You?
- 公開年:2024年
- 製作国:ロシア
- 上映時間:103分
- ジャンル:恋愛、スリラー
見どころ
パパ活アプリで出会った男女が繰り広げる官能ラブストーリー。ヒロインを務めた新進女優、アンジェリーナ・ザグレビナが体当たりの演技で大胆なベッドシーンを披露する。
あらすじ
『甘美なる戯れ』は、現代ロシアを舞台に、年齢も立場も異なる二人の出会いから始まるラブロマンスです。42歳の成功したビジネスマン、アンドレイ(ダニール・ボロビヨフ)は、富と地位を持ちながらも心に空虚を抱えています。一方、22歳の女子大学生リナ(アンジェリーナ・ザグレビナ)は、経済的な困窮からパパ活を始めます。二人は偶然の出会いから、報酬を伴う関係として契約を結びますが、次第に本物の感情が芽生え始めます。
アンドレイはリナの若さと純粋さに心を奪われ、彼女との時間に生きがいを見出します。一方のリナは、アンドレイの落ち着いた魅力と経済的安定に惹かれつつも、自分の将来や自立への不安を感じます。夢のようなひとときは、互いの心の隙間を埋める一方で、社会的な格差や周囲の視線、さらには自分たちの本心と向き合うことで複雑さを増していきます。物語は、恋愛の甘美さと現実の厳しさの間で揺れる二人の姿を、繊細かつ情熱的に描き出します。ハッピーエンドを期待したくなる展開ながらも、Filmarksのレビューにあるように、現実的な結末が観客に深い余韻を残します。
解説
『甘美なる戯れ』は、ロシア映画としては珍しく現代の恋愛文化、特に「パパ活」というテーマを正面から取り上げた作品です。この映画は、単なるロマンスに留まらず、現代社会の格差や世代間の価値観の違い、そして個々の内面的な葛藤を浮き彫りにします。監督のアレクサンドル・プロストは、軽快なラブストーリーの枠組みを用いつつ、登場人物の心の動きを丁寧に描き、観客に「愛とは何か」「幸せとは何か」を問いかけます。
物語の背景には、経済的な不安定さと物質主義が色濃く反映された現代ロシア社会が描かれています。アンドレイの富とリナの困窮は、単なる恋愛の障害を超えて、階級や世代間の断絶を象徴しています。Filmarksのレビューで指摘される「ふわふわと地に足のつかないストーリー」は、夢と現実の狭間を漂うような物語のトーンを的確に表現しており、観客に非現実的な恋愛の甘美さとその裏にある切なさを感じさせます。
映像面では、モスクワの華やかな都市風景と対比されるリナの簡素な生活環境が、視覚的に二人の距離感を強調しています。音楽も物語の情感を高める重要な要素で、クラシックと現代的なポップスが融合したサウンドトラックが、シーンごとの感情の起伏を効果的に演出しています。ロシア映画の文脈では、『チャイコフスキーの妻』(2022年)のような重厚な伝記映画や『チェルノブイリ1986』(2020年)のような社会派ドラマとは異なり、現代的で身近なテーマを軽やかに扱いつつも、深い人間ドラマを提供する点で独自の位置を占めています。
女優の活躍
本作のヒロイン、リナを演じるアンジェリーナ・ザグレビナは、ロシアの若手女優として注目を集めています。彼女は本作で、複雑な内面を持つ22歳の女子大学生を見事に演じきりました。リナは経済的な理由からパパ活を始めるものの、アンドレイとの関係を通じて自分の価値観や欲望と向き合う過程で、感情の揺れ動きを繊細に表現しています。ザグレビナの演技は、特に感情が高ぶるシーンでの自然体な表現力が高く評価されており、観客にリナの純粋さと脆さを同時に感じさせます。Filmarksのレビューでも、「全然可愛さを感じなかったのに、可愛く見えてくる」との声があり、彼女の演技がキャラクターの魅力を徐々に引き出すことに成功していることがわかります。
ザグレビナは、劇中でリナが抱える葛藤—自立への渇望と経済的依存の間で揺れる心情—を、表情や仕草を通じて丁寧に伝えます。特に、アンドレイとのデートシーンでは、初々しさと計算高さが混在する複雑なキャラクターを体現し、観客に強い印象を与えました。彼女のこれまでの出演作は主にロシアのテレビドラマや短編映画に限られていましたが、本作での活躍により、国際的な注目を集める可能性があります。
女優の衣装・化粧・髪型
アンジェリーナ・ザグレビナ演じるリナの衣装、化粧、髪型は、彼女のキャラクター造形において重要な役割を果たしています。物語の冒頭では、リナの経済的困窮を反映して、シンプルでカジュアルな服装が中心です。ジーンズやスウェット、くすんだ色合いのコートなど、大学生らしい控えめなスタイルが、彼女の日常的な生活を強調します。化粧もナチュラルで、薄いリップと軽いアイメイクが中心。髪型は、肩にかかる長さのストレートヘアをラフに下ろしたスタイルで、若さと無垢さを表現しています。
アンドレイとの関係が深まるにつれ、リナの衣装は変化を見せます。彼が提供する高級なドレスやアクセサリーを身にまとうシーンでは、鮮やかな赤や深い青のイブニングドレスが登場し、彼女の美しさを際立たせます。これらの衣装は、モスクワの夜の華やかさとリンクし、リナが一時的に夢の世界に足を踏み入れる様子を象徴しています。化粧も、こうしたシーンではより洗練され、濃いめのアイシャドウや鮮やかなリップカラーが用いられ、彼女の大人びた魅力を引き出します。髪型も、ルーズなアップスタイルやエレガントなウェーブが加わり、彼女の変貌を視覚的に示しています。
しかし、物語の後半でリナが自分の本心と向き合う場面では、再びシンプルな服装に戻り、化粧も控えめになります。この変化は、彼女の内面的な成長と現実への回帰を表現しており、衣装デザインがストーリーテリングに大きく貢献しています。全体的に、リナの衣装とメイクは、現代ロシアの若者のトレンドを取り入れつつ、キャラクターの感情の起伏を反映した工夫が施されています。
キャスト
- アンドレイ:ダニール・ボロビヨフ…42歳の富豪ビジネスマン。落ち着いた魅力と内面の孤独を併せ持つキャラクターを、ボロビヨフが深みのある演技で表現。
- リナ:アンジェリーナ・ザグレビナ…22歳の女子大学生。パパ活を通じてアンドレイと出会い、葛藤しながらも愛を見出そうとするヒロイン。- その他:詳細な脇役情報は公開されていないが、友人や家族役として複数のロシア人俳優が出演。
スタッフ
- 監督・脚本:アレクサンドル・プロスト…ロシアの新進気鋭の監督。本作では、現代的なテーマを情感豊かに描き、独自の視点を提示。
- 製作:マキシム・ロガルスキー…ロシア映画界で活躍するプロデューサー。現代ロシア社会を背景にした作品の製作に定評。
- 撮影:キリル・ゲラ…モスクワの都市風景とキャラクターの感情を巧みに捉えた映像美を提供。
- 音楽:未公開の情報だが、クラシックとポップスの融合が特徴的。
総括
『甘美なる戯れ』は、現代ロシアの社会問題を背景に、愛と葛藤を描いたラブロマンスです。アンジェリーナ・ザグレビナの自然体な演技と、キャラクターの成長を反映した衣装・メイクの変化が、物語に深みを加えています。アレクサンドル・プロスト監督の繊細な演出と、ダニール・ボロビヨフの落ち着いた魅力が、観客に感情的な共鳴を呼び起こします。夢と現実の間で揺れる二人の物語は、恋愛映画の枠を超えて、生きることの意味を問いかける作品です。Filmarksでの平均スコア3.3点(66件のレビュー)は、賛否両論あるものの、観客に強い印象を与えたことを示しています。ロシア映画の新たな可能性を示す本作は、恋愛映画ファンはもちろん、社会派ドラマに興味がある方にもおすすめです。
レビュー 作品の感想や女優への思い