1969年に公開された日本映画『盲獣』は、江戸川乱歩の同名小説を原作としたホラー作品。
盲目の彫刻家が美しいモデルを誘拐し、触覚のみで女体の美を追求する倒錯した物語が展開されます。増村保造監督の演出により、巨大な女体像が並ぶアトリエでの密室劇が、狂気とエロティシズムを交えて描かれます。
出演者は緑魔子、船越英二、千石規子の三人を中心に、芸術と欲望の極限を探求します。上映時間は84分で、カルト映画として国内外で評価されています。
基本情報
- 邦題:盲獣
- 公開年:1969年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:84分
- ジャンル:ホラー
女優の活躍
本作『盲獣』では、緑魔子さんが主人公のアキ役を演じ、物語の中心として活躍します。アキは人気のモデルで、盲目の彫刻家に誘拐され監禁される女性です。緑魔子さんは、初めは恐怖と抵抗を示す常識的な女性から、次第に倒錯した世界に引き込まれ、狂気へと変貌する複雑な心理を表現しています。彼女の力強い目つきと妖艶な演技が、狂気を清々しく体現し、観客に強い印象を与えます。特に、船越英二さん演じる道夫との対峙シーンでは、逃げ回る緊張感や、触れられることへの葛藤を体当たりで演じ、ヌードシーンも含めて大胆なパフォーマンスが評価されています。レビューでは、緑魔子さんの美しさと異形の美術が際立つ乱歩原作映画の傑作として、彼女の活躍が本作の魅力の核心であると指摘されます。
また、千石規子さんが道夫の母役を務め、盲目の息子を過度に愛する母親として、物語の暗部を支えています。千石規子さんは、息子とアキの関係に介入するシーンで、嫉妬や執着を静かに演じ、脇役ながら存在感を発揮します。
本作の女優たちは、限られた三人芝居の中で、心理的な深みを加えています。緑魔子さんの小悪魔的な演技は、ベタながらも魅力的で、髪型やファッションも素敵であると評されます。全体として、女優の活躍は、増村保造監督の女性描写の特徴を体現し、男性の異常性を引き立てる役割を果たしています。欧米でも支持されるカルト作として、緑魔子さんの演技が国際的に注目を集めています。彼女の出演シーンは順撮りで、リハーサルなしの本番が多く、巨大女体像上での撮影が印象的です。このように、女優たちは本作の倒錯したテーマを支え、芸術映画としての価値を高めています。
レビューでは、緑魔子さんの狂気と妖艶さが今でも輝いていると称賛されます。千石規子さんの母役も、物語の緊張を増幅させる重要な活躍です。本作は、女優たちの力により、乱歩の世界を視覚的に昇華させています。
女優の衣装・化粧・髪型
映画『盲獣』の女優たちの衣装、化粧、髪型は、1960年代の芸術家やモデルを反映したスタイルが特徴です。
緑魔子さんのアキ役では、ヌードモデルらしいシンプルで露出度の高い衣装が中心で、物語が進むにつれ、監禁状態での乱れた服装が心理の崩壊を表現します。衣装は初めはモダンなドレスやスカートですが、後半ではほとんどヌード中心となり、肢体の美しさを強調します。化粧は自然で力強い目元を際立たせ、狂気への移行をメイクの変化で示します。髪型はストレートのロングヘアが多く、小悪魔的な魅力を引き出すファッションが素敵であるとレビューで評価されます。彼女の髪は、逃げ回るシーンで乱れ、妖艶さを増します。
千石規子さんの母役では、地味で保守的な和服や日常着が用いられ、化粧は控えめで老母らしい疲れた表情を強調します。髪型はまとめ髪で、息子への執着を表すシンプルさです。
全体的に、衣装はアトリエの巨大女体像と対比して、女体の芸術性を視覚化します。緑魔子さんの化粧は、妖艶さを保ちつつ、終盤の狂気シーンで崩れたメイクが効果的です。レビューでは、緑魔子さんの髪型とファッションがとても綺麗で、個人的にグラマーさが好みであるとの意見もあります。衣装の変化は、物語の進行を象徴し、監禁後のヌードがエロティシズムを高めます。ただし、エロさやグロさは控えめで、芸術的な表現が優先されます。
これらの要素は、女優の活躍を視覚的に支え、乱歩原作の倒錯世界を強調します。緑魔子さんのスタイルは、増村監督の女性描写に適したもので、巨大像上での撮影が髪や化粧の乱れを活かしています。本作の女優たちは、衣装を通じてテーマの深みを加えています。
あらすじ
人気モデルのアキは、自身の写真展で盲目の彫刻家・道夫に狙われます。道夫は触覚のみで芸術を追求し、アキの肢体に魅了されます。道夫の母の協力でアキは誘拐され、巨大な女体像が並ぶ地下アトリエに監禁されます。最初、アキは逃げようと抵抗しますが、暗闇の世界で道夫の触覚芸術に触れ、次第に引き込まれます。母の嫉妬が絡み、事故で母が死亡した後、二人は倒錯した愛に溺れます。アキは道夫を誘惑し、触覚の極限を求め、互いの体を切り刻む狂気の行為に及びます。
最終的に、二人は芸術の究極として自らを犠牲にし、昇華します。このあらすじは、乱歩のマゾヒズムを基に、増村監督独自の展開で描かれ、密室での心理戦が緊張感を生みます。
解説
『盲獣』は、1969年に大映が製作した映画で、江戸川乱歩の小説を増村保造監督が翻案した作品。
原作の中盤以降を独自に展開し、盲目の彫刻家とモデルの倒錯愛を極限まで描きます。脚本の白坂依志夫は、乱歩のマゾヒズムをエロティックに映像化し、触覚中心の芸術世界を強調します。撮影の小林節雄は、モノクロのシネマスコープを活かし、巨大女体像のセットを効果的に捉え、異様な雰囲気を演出します。音楽の林光は、緊張を高めるBGMを提供します。
本作は、登場人物が三人だけの密室劇で、増村監督の女性描写の真骨頂を示します。
レビューでは、序盤の早い展開と中盤の事故からのトーン変化が見事であると評価されます。一方で、終盤の性急さが残念との意見もあります。欧米でカルト映画として支持され、4K修復版が上映されるほどです。
緑魔子さんの演技と船越英二さんの怪演が光り、芸術と欲望のテーマを探求します。増村監督は、『刺青』や『痴人の愛』同様、極限状況での人間性を描き、個と自由の問題を問いかけます。
本作は、日本映画史の異色作として、乱歩原作のビジュアル性を活かした傑作です。セットの美術は費用をかけ、乱歩世界を再現します。全体として、社会から遮断された空間での禁断の愛が、観客に衝撃を与えます。この映画は、1960年代の日本映画界におけるエロスとホラーの交差点を示す作品です。
キャスト
- アキ:緑魔子
- 道夫:船越英二
- 道夫の母:千石規子
スタッフ
- 監督:増村保造
- 脚本:白坂依志夫
- 撮影:小林節雄
- 音楽:林光
- 美術:加藤雅俊
- 編集:中静達治
- 照明:藤林甲
- 録音:荒川輝彦



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