1979年に公開された日本映画です。ロッキード事件を題材に、田中角栄と児玉誉士夫をモデルとしたフィクサーの政財界の癒着を描きます。監督は降旗康男、主演は佐分利信です。元々大島渚が監督予定でしたが降板しました。「日本3部作」の一つで、政界・財界・暴力の闇を鋭く抉る社会派ドラマです。
基本情報
- 原題:日本の黒幕(フィクサー)
- 公開年:1979年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:131分
- ジャンル:ドラマ
- 配給:東映
女優の活躍
この映画では、いくつかの女優が重要な役割を果たします。まず、松尾嘉代は山岡邦盟の娘である山岡雅子を演じます。彼女は家族の異様な生活を描く中で、大仰な演技で次第に狂っていく様子を表現します。物語の家族側面を支え、フィクサーの私生活の歪みを強調する活躍を見せます。
次に、江波杏子は山岡登志子役で、後妻として登場します。周囲の暑苦しい人物が多い中で、ひとり涼しげな存在として描かれ、家族内の緊張を和らげる役割を担います。彼女の演技は、物語の陰鬱な雰囲気にコントラストを与え、視聴者の印象に残ります。
橘麻紀は沢井加代子役で、脇役として政財界の人間関係を補完します。彼女の活躍は、物語の周辺を固め、フィクサーの影響力が及ぶ範囲を示します。また、北林早苗は杉山より子役で、家族や関係者の異様さを強調する演技を披露します。
水原麻紀は東山の料亭の女将役で、料亭シーンでの支援役として活躍します。彼女の存在は、フィクサーの社交的な側面を表します。さらに、富永佳代子は赤坂の料亭の女中役、西田治子は泰子役、浜口孝代は京子役、加賀美博美はある料亭女中役、東竜子は政代役で、それぞれのシーンで女性像を描き、政界の裏側を豊かにします。これらの女優たちは、全体としてフィクサーの世界観を支える重要な活躍をします。
丸平峯子は杉美香役で、家族の周辺人物として登場します。彼女の演技は、物語の緊張を高めます。これら女優の活躍により、映画は男性中心の政争だけでなく、家族や女性の視点からも深みを加えています。
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女優の衣装・化粧・髪型
松尾嘉代の衣装は、1970年代の日本女性らしいワンピースや和服が中心です。化粧はナチュラルで、髪型は肩までのストレートヘアが多く、娘役の若々しさを強調します。彼女の狂気のシーンでは、衣装が乱れ、化粧が崩れる描写が活躍を際立たせます。
江波杏子の衣装は、上品な着物やシンプルなドレスで、後妻らしい落ち着きを表します。化粧は薄く、髪型はアップスタイルが主で、涼しげな印象を与えます。これにより、家族内の対比が際立ちます。
橘麻紀の衣装は、日常的なブラウスやスカートで、化粧は控えめ、髪型はボブスタイルです。彼女の活躍シーンでは、これらが現実味を加えます。北林早苗は、地味な衣装と自然な化粧、ミディアムヘアで、脇役のリアリティを演出します。
水原麻紀の料亭の女将役では、伝統的な着物が衣装で、化粧は上品、髪型はまとめ髪です。これが料亭シーンの雰囲気を高めます。富永佳代子や加賀美博美などの女中役は、シンプルな着物やエプロン、控えめな化粧とポニーテール風の髪型で、奉仕的な役割を強調します。
西田治子や浜口孝代の衣装は、カジュアルな洋服で、化粧は軽く、髪型はロングヘアが目立ちます。これにより、周辺人物の多様性が描かれます。全体として、女優たちの衣装・化粧・髪型は、時代背景と役割に沿ったもので、物語のリアリズムを支えます。
あらすじ
平山栄吉総裁は航空機売り込みに関する外為法違反などで家宅捜査を受けます。一方、日本の黒幕とされる山岡邦盟も同じ容疑で捜査されます。山岡邸に忍び込んだ少年が山岡を短刀で襲いますが、足の不自由さから取り押さえられ、山岡により一光と名付けられて手元に置かれます。
佐竹則夫という人物が自殺し、朝倉副社長が山岡と平山の追い落としを謀議します。山岡の娘雅子と書生今泉岳男の関係が描かれ、彼らが異母姉弟であることが秘められています。暗殺や殺人が相次ぎ、平山の辞職と逮捕が迫ります。
山岡は家族の異様な生活を守りつつ、政界の闇を操ります。一光は山岡の親衛隊員となり、物語はブロマンス的な要素を含みます。最終的に、山岡の証人尋問への決意と一光による平山の刺殺で結末を迎えます。このあらすじは、フィクサーの権力闘争と人間ドラマを織り交ぜます。
関西ヤクザとの対決や、少年テロリストとの奇妙な関係が軸となり、政界・財界・暴力社会を掌握するフィクサーの実態を鋭く描きます。家族の秘密や事件の連鎖が、緊張感を高めます。
物語は、ロッキード事件を基にしつつ、独自のフィクションを加え、フィクサーの孤独と野望を強調します。暗殺未遂から始まる人間関係の変化が、ドラマの核心です。
解説
この映画は、1976年から世間を騒がせたロッキード事件にヒントを得て制作されました。田中角栄をモデルとした平山栄吉と、児玉誉士夫をモデルとした山岡邦盟を中心に、右翼組織と政財界の癒着を描きます。東映のヤクザ映画の雰囲気を持ち、流血や死体の描写が多く、政治ドラマながらアクション要素が強いです。
当初、監督は大島渚で進められましたが、脚本の最終段階で降板し、降旗康男が引き継ぎました。これにより、社会派の深みと娯楽性が融合します。「日本の首領シリーズ」の延長線上にあり、「日本3部作」として位置づけられます。フィクサーの存在を大胆に追求し、当時の社会問題を反映します。
少年の一光と山岡の関係は、奇妙なブロマンスを描き、物語に独自の魅力を加えます。政争の裏で家族の歪みが描かれ、人間性の喪失を象徴します。興行的に苦戦したものの、豪華キャストと大胆なテーマで注目を集めました。
脚本の高田宏治は、歴史劇の経験を活かし、政治の狂気を表現します。音楽の鏑木創や撮影の中島徹が、緊張感を高めます。この作品は、昭和の怪物・児玉誉士夫の晩年をアレンジし、エロやグロ要素を交え、任侠映画風に仕上げています。
全体として、総理を操るフィクサーの悲運を描き、権力の虚しさを問いかけます。ヤクザ映画の東映らしいハチャメチャな展開が、政治映画の新境地を開きます。
キャスト
- 山岡邦盟:佐分利信
- 今泉岳男:田村正和
- 一光:狩場勉
- 山岡雅子:松尾嘉代
- 山岡登志子:江波杏子
- 小栗隆義:梅宮辰夫
- 団耕太郎:中尾彬
- 竜崎達男:田中邦衛
- 加賀正樹:高橋悦史
- 沢井明:尾藤イサオ
- 吉野壮吉:中谷一郎
- 依田新吉:林彰太郎
- 竹邑良昭:遠藤征慈
- 前嶋雄二:岩尾正隆
- 宮口茂男:笹木俊志
- 木下:勝野賢三
- 吉村英吉:本間優二
- 植草登:山田昌人
- 出辺松男:青木卓司
- 剣持豊:北村明男
- 須賀政男:羽根田真之助
- 千葉豪:徳井利次
- 泰子:西田治子
- 京子:浜口孝代
- 三浦:タンクロー
- 小河内辰男:曽我廼家明蝶
- 森島泰造:成田三樹夫
- 池内豊:曽根晴美
- 水巻俊介:小林稔侍
- 神出順平:平沢彰
- 友金厚志:白川浩二郎
- 中橋亘:福本清三
- 重宗行雄:木下通博
- 伊藤良策:佐々木孝丸
- 平山栄吉:金田龍之介
- 津沼:織本順吉
- 小磯:疋田泰盛
- 国枝良雄:志摩靖彦
- 西本武彦:鈴木康弘
- 徳光:村居京之輔
- 安田:藤川弘
- 岡本:船戸順
- 朝倉:内藤武敏
- 村本:加藤和夫
- 森:中村錦司
- 佐竹則夫:有島淳平
- 渋谷平吉:有島一郎
- 三田村海風:島田正吾
- 鈴村:仲谷昇
- 沢井加代子:橘麻紀
- 杉山より子:北林早苗
- 本山:永井秀明
- 東山の料亭の女将:水原麻紀
- 安井:川浪公次郎
- 記者A:藤沢徹夫
- 記者B:波多野博
- ある料亭女中:加賀美博美
- 富永佳代子:赤坂の料亭の女中
- 平山の後援会々員A:小峰竜司
- 平山の後援会々員B:宮城幸生
- 平山の後援会々員C:司裕介
- 警官:蓑和田良太
- 刑事:有川正治
- 杉美香:丸平峯子
- 花井きぬ:富永佳代子
- 政代:東竜子
スタッフ
- 監督:降旗康男
- 脚本:高田宏治
- 企画:日下部五朗、本田達男
- 撮影:中島徹
- 美術:井川徳道
- 音楽:鏑木創
- 録音:溝口正義
- 照明:金子凱美
- 編集:市田勇
- 助監督:土橋亨
- スチール:中山健司
- 製作:東映京都撮影所
- 配給:東映


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