『団鬼六 縄化粧』は1978年に公開された日本映画。原作は団鬼六の小説『肉体の賭け』で、監督は西村昭五郎。ジャンルはドキュメンタリーとして位置づけられ、BDSMをテーマにした人間の精神と肉体の限界を探る実験的な内容です。主演は谷ナオミで、日常の夫婦生活の中で新たな性の世界を発見する物語を描いています。日活が製作・配給を担当しました。
基本情報
- 団鬼六 縄化粧
- 公開年:1978年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:67分
- ジャンル:ドキュメンタリー
女優の活躍
谷ナオミは本作の主演として、石野加奈子役を演じています。彼女は結婚5年目の専業主婦で、夫婦間の性生活に不満を抱く女性として登場します。物語の中心人物として、友人夫妻のSMプレイを目撃したことをきっかけに、自身もその世界に引き込まれていく過程を熱演しています。谷ナオミの演技は、初めは驚きと戸惑いを表現し、徐々に好奇心と快楽に目覚めていく微妙な心理変化を細やかに描き出しています。
中島葵は滝田友江役で、加奈子の友人として重要な役割を果たします。彼女の活躍は、夫婦でBDSMを楽しむ生活を自然に体現する点にあります。犬役として徹底した演技を見せ、物語のSM要素を強く印象づけています。中島葵の存在は、主人公夫妻に新しい刺激を与え、全体の展開を推進する鍵となります。
日夏たよりは滝田の助手役で、脇役ながらSMプレイの準備や参加を通じて物語に深みを加えています。彼女の活躍は、画家アトリエの雰囲気を支え、グループでのプレイシーンで存在感を発揮します。これらの女優たちは、1970年代の成人映画界で活躍したベテランで、本作を通じてSMというテーマを現実味を持って表現しています。
女優の衣装・化粧・髪型
谷ナオミの衣装は、物語の進行に合わせて変化します。初めは日常的な主婦らしいシンプルなワンピースやスカート姿で登場し、SMプレイに移行すると下着姿や半裸状態になります。化粧は自然で控えめなものが基調ですが、プレイシーンでは汗や表情の強調のために軽く強調されたメイクが施されています。髪型はロングヘアを自然に下ろしたスタイルが多く、緊縛時にも乱れを活かした演出が見られます。
中島葵の衣装は、友人として絵画展のシーンではエレガントなドレスを着用しますが、自宅でのSMプレイでは首輪を付けた犬役としてほぼ裸体に近い状態になります。化粧は妖艶さを出すためにアイシャドウやリップを濃くし、髪型はボブスタイルを基本に、プレイ中は乱れた様子で表現されています。これにより、日常と非日常のコントラストが強調されます。
日夏たよりの衣装は、美大生らしいカジュアルなシャツとパンツが中心ですが、助手としてSMシーンに参加する際はベルトを使ったムチ役でシンプルな服装です。化粧はナチュラルメイクで、髪型はショートヘアをポニーテールにまとめた実用的なものが採用されています。
これらの要素は、映画のテーマである精神と肉体の冒涜を視覚的に支えています。
あらすじ
物語は、平凡な主婦である石野加奈子が、学生時代の友人である滝田友江から絵画展の招待状を受け取るところから始まります。加奈子は夫の英一郎と結婚して5年が経ち、夫婦間の性生活に不満を感じていました。絵画展で友江と再会し、彼女の自宅に招かれます。そこで、友江の夫である画家・伊作を紹介され、友江が縄で縛られた半裸の姿でSMプレイをしているのを目撃します。この光景に最初は驚きますが、好奇心が芽生えます。
加奈子は夫の英一郎を連れて再び滝田家を訪れます。そこで、伊作が飼い主役、友江が犬役に扮したペットプレイを間近で見ます。友江は首輪を付け、言葉を発さず犬のように振る舞います。この体験に触発された石野夫妻は、帰宅後に自分たちで飼い主と犬のプレイを試みます。最初はぎこちないながらも、徐々に快楽を見出し、夫婦の関係が活性化します。
その後、石野夫妻は滝田家でグループプレイに参加します。全員が下着姿になり、夜通しBDSMの悦楽に浸ります。加奈子は心の底にあった「犬」になる願望に気づき、精神的な解放を感じます。物語は、日常の中で合意のもとに行われるBDSMが夫婦生活の新たなバリエーションとなる様子を描き、終わりを迎えます。
原作の『肉体の賭け』を基に、絵描きの実験として人間の限界を探る要素が加わっています。画家伊作のスランプ脱却のためのSM風絵画制作が、物語の背景を形成します。全体を通じて、精神と肉体の冒涜がテーマとなり、参加者たちの心理変化が丁寧に追われています。
解説
本作は、1970年代の日本映画界で流行した日活ロマンポルノの一環として製作されました。団鬼六の原作を基に、BDSMを日常の趣味として描く点が特徴です。多くのSM映画が強制や監禁を伴うのに対し、本作は合意のもとで行われる純粋なプレイを強調し、異色作となっています。監督の西村昭五郎は、心理描写を重視した演出で、登場人物の内面的な変化を視覚的に表現しています。
テーマは人間の精神と肉体の限界を探る実験です。画家伊作の視点から、BDSMが芸術のインスピレーション源となる様子が描かれます。女優たちの演技は、SMのリアリティを高め、当時の社会的なタブーを挑戦的に扱っています。特に、ペットプレイのシーンは、言葉を排した身体表現で観客に衝撃を与えます。
製作背景として、日活ロマンポルノ路線が反映されています。脚本のいどあきおは、ユーモアを交えつつエロティックな要素をバランスよく配置し、単なる成人映画を超えた深みを加えています。撮影技術も、緊縛やプレイのシーンを美しく捉え、芸術性を高めています。
本作の影響は、後のBDSMをテーマにした作品に及び、谷ナオミの代表作として知られています。ドキュメンタリー的な要素として、リアルな夫婦生活の描写が取り入れられ、観客に現実味を与えています。全体として、性の多様性を探求する先駆的な作品です。
キャスト
- 石野加奈子:谷ナオミ
- 滝田友江:中島葵
- 石野英一郎:山田克朗
- 滝田伊作:高橋明
- 滝田の助手(ゆめこ):日夏たより
スタッフ
- 監督:西村昭五郎
- 脚本:いどあきお
- 原作:団鬼六
- 製作:結城良煕
- 企画:奥村幸士
- 撮影:前田米造
- 美術:徳田博
- 照明:熊谷秀夫
- 編集:西村豊治
- 助監督:伊藤秀裕
- 録音:高橋三郎
- スチール:浅石靖




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