『足にさわった女』は1960年に公開された日本映画。増村保造監督によるコメディ作品で、原作は沢田撫松の小説。主演の京マチ子が演じる美人女スリと、ハナ肇演じる刑事の軽妙な追いかけっこを、走行中の特急列車を舞台に描きます。三度目の映画化で、市川崑の企画によるリメイク版です。高度成長期の日本社会を背景に、ユーモアと人間味を交えています。上映時間は85分。
基本情報
- 原題:足にさわった女
- 公開年:1960年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:85分
女優の活躍
映画『足にさわった女』では、京マチ子が主演の塩沢さや役を務めます。彼女は美人女スリとして、魅力的に描かれています。列車内でスリを行いながら、刑事の北八平太を翻弄する演技が光ります。さやの過去を語るシーンでは、戦争中の父の悲劇や天涯孤独の身の上を情感豊かに表現し、観客の同情を誘います。コメディエンヌとしての才能を発揮し、軽快な動きと表情で物語を牽引します。
杉村春子は築前春子役で、スリの姐さんとして登場します。通常の重厚な役柄とは異なり、コメディでの活躍が珍しく、さやを支えるボスとしてユーモラスに振る舞います。彼女の台詞回しが笑いを生み、レビュアーからも「喋るたび笑える」と評価されています。江波杏子は若い百姓女役で、厚木の場面で存在感を発揮します。短い出演ながら、さやの故郷の変化を象徴する演技が印象的です。
町田博子は厚化粧の女役で、列車内の乗客として活躍します。彼女の化粧が強調された役柄が、物語の賑やかさを加えています。浦辺粂子は老婆役で、さやに助けられるシーンで人間味を演出します。これらの女優たちは、メインから脇役まで、作品のコメディ要素を支えています。楠よし子は厚木の女役で、地元の風俗を体現します。
全体として、女優たちの活躍は、1960年代の大映映画らしい華やかさを示しています。京マチ子を中心に、個性的な役柄が絡み合い、テンポの良いストーリーを展開します。レビュアーからは、京マチ子の存在感が特に絶賛され、彼女の演技が作品の魅力の中心となっています。
女優の衣装・化粧・髪型
京マチ子演じる塩沢さやの衣装は、ブルーのドレスが代表的です。このドレスはチャーミングで、現代から見ても魅力的に映ります。列車内のシーンで着用し、動きやすいデザインがスリの手口を助けています。帽子が素敵に描かれ、ヒールよりも帽子が強調されるレビューがあります。全体的に、戦後復興期のファッションを反映した上品なスタイルです。
化粧については、京マチ子が「ベスト眉ニスト」と称されるほど、眉の美しさが際立ちます。自然で洗練されたメイクが、さやの美人設定を支えています。オープニングのサイダーを飲むシーンでは、軽やかな化粧が爽やかさを演出します。髪型は、時代らしいウェーブのかかったスタイルで、優雅さを加えています。これにより、さやの足の美しさとともに、全身の魅力が強調されます。
杉村春子演じる築前春子の衣装は、姐さんらしい実用的な服装です。厚木のドヤで登場し、地味ながら威厳のあるスタイルです。化粧は控えめで、役柄の現実味を高めています。髪型はシンプルなまとめ髪で、ボスらしい落ち着きを表します。江波杏子演じる若い百姓女の衣装は、田舎風の素朴な服です。化粧は薄く、自然な髪型が故郷の情景を象徴します。
町田博子演じる厚化粧の女は、名前の通り厚い化粧が特徴です。派手なメイクと衣装が、列車内の賑わいを生みます。髪型はボリュームのあるスタイルで、コミカルさを加えています。浦辺粂子演じる老婆の衣装は、古びた服で、化粧はほとんどなく、ぼさぼさの髪型が貧しさを表現します。これらの要素は、作品の多様な女性像を視覚的に豊かにします。
あらすじ
物語は、東海道線の上り特急列車「えこう」の中で始まります。休暇中の大阪のスリ専門刑事、北八平太(ハナ肇)が、美人スリの塩沢さや(京マチ子)と隣り合わせになります。トンネルでの停電で車内が騒然とする中、さやは重役の男から名刺入れをスリます。八平太はさやの足に触れ、彼女が犯人だと気づきますが、さやの魅力に負けます。
さやは戦争中の父のスパイ嫌疑と自殺により、天涯孤独となり、法事資金を稼ぐためにスリを続けています。八平太に説教されますが、逆に八平太の財布をスリ、小説家の五無康祐(船越英二)から金を騙し取ります。法事資金を失ったさやは、厚木に戻り、築前春子(杉村春子)のドヤで暮らします。八平太はさやを追跡し、彼女の故郷が米軍基地になったことを知ります。
さやは金を返し、八平太に捕まりますが、八平太はさやの面倒を見る決意をします。さやの足が素晴らしいと評され、コミカルな結末を迎えます。列車内の喧騒と厚木の現実が交錯し、軽快な追いかけっこが展開します。
解説
作品の背景
映画『足にさわった女』は、沢田撫松の原作を基にした三度目の映画化です。1952年の市川崑監督版をリメイクし、市川自身が企画と脚本に参加しています。増村保造監督が手掛け、1960年の高度経済成長期を反映した内容です。戦後復興と米軍基地の問題を、コメディの形で描きます。列車を舞台にすることで、移動する社会の象徴を示しています。
大映製作のカラー映画で、喜劇要素が強いです。和田夏十の脚本が軽妙で、市川崑の現代描写が加わっています。レビュアーからは、導入部の喧騒が傑作を予感させると評価されます。後半の基地前シーンは、空虚さを表現し、戦後の日本を象徴します。
テーマと演出
テーマは、犯罪と人間性です。さやのスリは、過去の悲劇から来るもので、同情を誘います。八平太のセンチメンタルさが、コメディを生みます。演出では、列車内のテンポ良い展開が魅力です。オープニングの京マチ子がサイダーを飲むシーンは、洒落ています。基地の描写は、故郷の喪失を表し、社会批判を込めています。
キャスティングが豪華で、ハナ肇の若さとクレージーキャッツのメンバー出演がユーモアを加えます。杉村春子の珍しいコメディ役が新鮮です。音楽の塚原晢夫が、軽快な雰囲気を支えています。全体として、戦後日本映画の華やかさを示す作品です。
文化的意義
1960年代の日本映画界では、リメイクが流行っていました。本作は、市川崑の影響が強く、増村保造のスタイルが融合します。女優の活躍が目立ち、京マチ子のコメディエンヌぶりが注目されます。レビューでは、故郷の変化が高度成長期を表現したと分析されます。基地問題は、時代背景を反映し、娯楽を超えた深みを与えます。
上映機会が少ないため、貴重な作品です。現代から見ると、ファッションやメイクが懐かしく、歴史的価値があります。コメディながら、戦争の傷跡を描き、観客に考えさせます。
キャスト
- 塩沢さや(女スリ):京マチ子
- 北八平太(刑事):ハナ肇
- 五無康祐(小説家):船越英二
- 築前春子(女万引、姐さん):杉村春子
- 野呂走(女の弟分):大辻伺郎
- 花輪次郎(雑誌記者):田宮二郎
- 警視:見明凡太朗
- 重役:多々良純
- 学生:ジェリー藤尾
- 列車ボーイ:谷啓
- からむ乗客:植木等
- 老婆:浦辺粂子
- 厚化粧の女:町田博子
- 厚木の巡査:潮万太郎
- 厚木の洋服屋:春本富士夫
- 若い百姓女:江波杏子
- 愚連隊風の男:大川修
- 駅員:犬塚弘
- 警視庁の巡査:湊秀一
- 拳銃を売る男:杉田康
- 買う男:小山内淳
- 買う男:井上信彦
- 買う男:守田学
- 公安官:谷謙一
- 黒ソフトの男:高村栄一
- 機関手:夏木章
- 厚木の女:楠よし子
スタッフ
- 監督:増村保造
- 製作:永田雅一
- 企画:市川崑
- 企画:藤井浩明
- 脚本:和田夏十
- 脚本:市川崑
- 撮影:村井博
- 美術:間野重雄
- 音楽:塚原晢夫
- 録音:飛田喜美雄
- 照明:米山勇



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