『千羽鶴』は川端康成の原作を基にした1969年の日本映画。増村保造監督が、人間の本能と伝統美を融合させて描いています。一人の男性を巡る女性たちの愛憎劇が、茶道の場面を中心に展開します。主演は平幹二朗、若尾文子、京マチ子で、カラー撮影により美しい映像が特徴です。上映時間は96分。
基本情報
- 原題:千羽鶴
- 公開年:1969年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:96分
女優の活躍
本作では、若尾文子が太田夫人役を務めています。彼女は父親の愛人として、息子である菊治に惹かれていく複雑な感情を表現しています。常に情熱的に体をくねらせ、息の荒い演技が印象的です。この役柄を通じて、愛に溺れる女性の儚さと激しさを体現しています。増村保造監督とのコンビで知られる若尾文子は、ここでも彼女の力量を発揮しています。
特に、菊治との場面では、復讐心から始まる関係が次第に本物の愛情に変わる過程を、微妙な表情と声のトーンで描き出しています。彼女の演技は、観る者に強い印象を残します。若尾文子は本作で、女優としての成熟した魅力を存分に発揮しています。
京マチ子は栗本ちか子役を演じています。彼女は父親から捨てられた過去を持ち、菊治の結婚に執着する女性です。お節介で執拗な性格を、独特の存在感で表現しています。太田夫人に対する警告の場面では、彼女の嫉妬と支配欲が際立ちます。京マチ子は、この役で中性的なイメージを強調し、物語の緊張感を高めています。
梓英子は太田文子役です。母親の行動に苦しむ娘として、葛藤を繊細に演じています。彼女の活躍は、後半で菊治との関係が深まる部分で顕著です。南美川洋子は稲村ゆき子役で、清楚な令嬢を演じ、物語に純粋さを加えています。これらの女優たちは、各々の役柄で本作のドラマを豊かにしています。
女優の衣装・化粧・髪型
若尾文子演じる太田夫人の衣装は、主に伝統的な着物です。柔らかな色合いの着物が、彼女の儚い美しさを引き立てています。化粧は控えめながら、目元を強調したスタイルで、熱っぽい視線を表現しています。髪型はアップスタイルが多く、乱れがちな様子が情熱的な性格を表しています。これにより、愛に生きる女性のイメージを強調しています。
京マチ子演じる栗本ちか子の衣装は、地味めの着物が中心です。化粧は強い印象を与えるもので、眉を濃く描き、唇を際立たせています。髪型は厳しい束ね方で、中性的な雰囲気を醸し出しています。このスタイルは、彼女の執着心の強い性格を視覚的に支えています。
梓英子演じる太田文子の衣装は、若々しい着物です。化粧はナチュラルで、髪型はシンプルなダウンスタイルです。これが、彼女の純粋さと苦悩を表しています。南美川洋子演じる稲村ゆき子の衣装は、白を基調とした清潔感のある着物です。化粧は薄く、髪型は整ったアップで、清楚さを強調しています。本作の女優たちのスタイルは、日本的美を体現しています。
あらすじ
三谷菊治は、鎌倉円覚寺の参道で千羽鶴の風呂敷を抱えた令嬢、稲村ゆき子に仏日庵への道を尋ねます。菊治は、生前父が通っていた栗本ちか子のお茶席を見学しに行きます。そこで、父の愛人だった太田夫人とその娘・文子に出会います。ちか子は、父の愛に満たされなかった過去から、菊治にお見合い相手としてゆき子を紹介します。
太田夫人は、菊治に父の面影を見出し、心を乱します。菊治も夫人に惹かれ、関係を持ちます。文子は母の行動を止めようとしますが、夫人は娘の目を盗んで菊治を訪れ、茶室で愛を交わします。しかし、父子二代との関係に苦しみ、自ら命を絶ちます。
夫人の死後、ちか子は菊治の結婚をさらに推し進めますが、菊治は文子に近づきます。文子は母の影に悩みます。ちか子は執拗に介入し、物語は女性たちの葛藤で展開します。最終的に、菊治はゆき子との未来を選びますが、過去の影が残ります。(ネタバレを含む)
解説
本作は、川端康成の小説を基に、増村保造監督が映画化したものです。人間の本能を赤裸々に描く増村のスタイルが、川端の繊細な文学と融合しています。茶道の伝統美を背景に、愛欲の複雑さを表現しています。ノーベル文学賞受賞記念として製作されましたが、興行は振るいませんでした。
物語は、親子二代の愛憎を軸に、女性たちの心理を深掘りします。器の継承と破壊が象徴的に用いられ、日本的美学を反映しています。カラー撮影により、茶室の緑や着物の色彩が美しく描かれています。増村の演出は、情欲場面を洗練された形で扱っています。
キャスティングでは、平幹二朗が主人公を演じ、女優陣の演技が光ります。本作は、増村と若尾文子の最後の合作です。文学的な会話とドラマチックな展開が、再鑑賞の価値を高めています。
キャスト
- 平幹二朗:三谷菊治
- 若尾文子:太田夫人
- 京マチ子:栗本ちか子
- 梓英子:太田文子
- 南美川洋子:稲村ゆき子
- 船越英二:菊治の父
- 新宮信子:菊治の母
- 北林谷栄:とよ
- 三笠すみれ:ゆき子の友人
- 武江義雄:菊治の同僚
スタッフ
- 監督:増村保造
- 脚色:新藤兼人
- 原作:川端康成
- 企画:藤井浩明
- 製作:永田雅一
- 撮影:小林節雄
- 美術:下河原友雄
- 音楽:林光
- 録音:奥村幸雄
- 照明:渡辺長治
- 編集:中静達治



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