1963年に製作された日本映画『女系家族』は、山崎豊子の同名小説を原作とするドラマ。大阪船場の老舗木綿問屋を舞台に、代々女系で続いてきた家系の当主急死後、莫大な遺産をめぐる三姉妹と関係者たちの熾烈な争いを描いています。欲と嫉妬にまみれた人間模様を鋭くえぐり出し、当時の社会派映画として高い評価を受けました。上映時間は111分。
基本情報
- 原題:女系家族
- 公開年:1963年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:111分
- ジャンル:ドラマ
- 配給:KADOKAWA
女優たちの活躍
映画『女系家族』では、当時を代表する実力派女優たちが競演し、それぞれの個性を存分に発揮しています。京マチ子は出戻りの長女・藤代を演じ、気位が高く執念深い女性像を迫真の演技で表現しました。若尾文子は当主の愛人・文乃役で、清楚ながらも芯の強い存在感を示し、物語の鍵を握る重要な役どころを体現しています。高田美和は末娘・雛子として若々しく奔放な魅力を、鳳八千代は次女・千寿として家業を背負う責任感と苛立ちを巧みに演じ分けました。これらの女優たちは、美貌と演技力を兼ね備え、互いに火花を散らすような緊張感を生み出しています。
女優の衣装・化粧・髪型
映画『女系家族』の時代背景である昭和30年代の大阪船場を反映し、女優たちの衣装は上品で伝統的な和装が中心です。京マチ子演じる藤代は、落ち着いた色合いの訪問着や付け下げをまとい、気品ある佇まいを強調しています。化粧は控えめながらも目元を際立たせ、髪型はすっきりと結い上げた日本髪風で、年齢と立場を感じさせる厳格さを演出します。
若尾文子演じる文乃は、比較的モダンな洋装と和装を織り交ぜ、柔らかなメイクとゆるやかなウェーブのかかった髪型で、愛人らしい色気と儚さを表現しています。高田美和の雛子は華やかな振袖や小袖を着こなし、若々しい紅を差した化粧と現代的な髪型で、花嫁修業中の可憐さを際立たせています。鳳八千代の千寿は、商家の女主人らしい地味めの着物に、きりっとしたまとめ髪と薄化粧で、実務的で強い女性像を描き出しています。これらの装いとメイクは、役柄の性格を視覚的に補完する重要な要素となっています。
あらすじ
昭和三十三年、大阪船場に暖簾を誇る矢島商店は、三代にわたる女系の家筋です。婿養子であった当主の矢島嘉蔵が急死し、残された三人の娘に巨額の遺産相続が発生します。親族会議で大番頭の宇市が遺言状を読み上げると、長女の藤代には意外に少ない取り分、次女の千寿には家業継続のための条件付き、末娘の雛子には結婚費用相当の額が記されていました。出戻りの藤代は自分が総領娘であると主張し、不満を爆発させます。家業を継ぐ千寿は姉のわがままを非難し、雛子は無邪気に自分の取り分を楽しみにします。
さらに事態は複雑化します。嘉蔵の愛人である文乃が身重であることが発覚し、彼女の存在が遺産分配に新たな波紋を投じます。藤代の恋人である芳三郎、叔母の芳子、大番頭の宇市ら周囲の人々もそれぞれの思惑を抱き、争いは一層激化していきます。家族の絆は崩れ、欲望と策略が交錯する中、誰もが予想しなかった結末が待っていました。
解説
映画『女系家族』は、山崎豊子が得意とする「金と欲」をテーマにした社会派ドラマの典型です。女系家族という特殊な家制度の中で、当主の死が引き起こす相続争いは、単なる家族内の確執ではなく、当時の日本社会における女性の地位、財産観、伝統と近代の狭間を象徴的に描いています。原作の骨子を忠実に再現しつつ、三隅研次監督は大映特有の華やかな映像美と緊迫感のある演出で、観客を物語の世界に引き込みます。
特に注目すべきは、登場人物一人ひとりのエゴイズムです。誰もが正義を主張しながら、実際は自己の利益しか考えていないという皮肉が、コミカルさと同時に恐ろしさを生み出しています。大番頭の宇市による滑稽な立ち回りが、深刻な争いにユーモアを添え、重くなりすぎないバランスを保っています。現代でも遺産相続をめぐる争いは後を絶たず、本作のテーマは時代を超えて普遍的な意味を持ち続けています。
キャスト
スタッフ
- 監督:三隅研次
- 原作:山崎豊子
- 脚本:依田義賢
- 製作:永田雅一
- 撮影:宮川一夫
- 配給:大映(現・KADOKAWA)
以上が1963年版『女系家族』の詳細です。この作品は、豪華キャストによる競演と鋭い人間描写で、昭和の名作として今なお語り継がれています。



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