映画『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』1959年に公開された市川崑監督の風刺喜劇。キャリアウーマンの青田和子が婚約解消を試みるものの、友人の梅子が婚約者に惹かれ、複雑な恋愛と家族のドラマが展開します。女性の社会進出、結婚観、親子関係をユーモラスに描き、若尾文子、京マチ子、野添ひとみら豪華女優陣が出演します。家族の絆と個人の自由をテーマに、当時の社会を風刺しています。
基本情報
- 原題:あなたと私の合言葉 さようなら、今日は
- 公開年:1959年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:87分
- ジャンル:ドラマ
女優の活躍
映画『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』では、主に若尾文子、京マチ子、野添ひとみの三人の女優が活躍します。
若尾文子は主人公の青田和子を演じ、キャリアウーマンとして仕事に没頭する一方で、家族思いの優しい面を見せます。彼女の演技はクールさと可愛らしさを併せ持ち、結婚に消極的な女性の内面を繊細に表現しています。特に、婚約解消を巡る葛藤や、父への思いやりが印象的です。
京マチ子は市毛梅子を演じ、大阪の料亭女将としてパワフルに振る舞います。彼女の活躍は、半次郎への猛烈なアプローチが中心で、従来の女性像を覆す積極性を見せます。色っぽさとユーモアを交え、物語を活気づけています。野添ひとみは青田通子を演じ、スチュワーデスとして自由奔放なキャラクターを体現します。哲との結婚を決意する過程で、わがままながらも愛らしい一面を披露し、家族の末っ子らしい魅力を発揮します。
これらの女優たちは、オールスターキャストの一翼を担い、男性キャラクターとの対比で女性の強さを強調します。若尾文子の演技は特に評価が高く、眼鏡をかけた知的な姿が物語のキーとなっています。京マチ子は大阪弁を活かしたコミカルな演技で笑いを誘い、野添ひとみは若々しいエネルギーを注入します。全体として、彼女たちの活躍が映画の風刺的なトーンを支えています。
女優の衣装・化粧・髪型
若尾文子演じる青田和子の衣装は、キャリアウーマンらしいスーツが中心です。シンプルで洗練されたデザインが、彼女のクールな性格を表しています。化粧はナチュラルで、眼鏡をポイントに知的な印象を強調します。髪型はショートカットに近いボブスタイルで、動きやすく実用的です。
京マチ子演じる市毛梅子の衣装は、大阪の料亭女将らしい和服と洋服のミックスです。華やかな着物が登場し、彼女の積極性を象徴します。化粧は少し濃いめで、色っぽさを引き立てます。髪型はアップスタイルが多く、ビジネスライクな場面でまとめ髪が見られます。
野添ひとみ演じる青田通子の衣装は、スチュワーデスの制服が目立ち、モダンで爽やかな印象を与えます。化粧は明るくフレッシュで、若さを際立たせます。髪型はミディアムヘアで、軽やかにカールがかかり、自由奔放な性格を反映します。これらの要素が、1950年代の女性像を視覚的に描き出しています。
あらすじ
東京の日産自動車デザイン課で働く青田和子は、社内でも評判の才女ですが、恋愛には消極的です。国際線スチュワーデスの妹・通子はわがままな性格で、男やもめの父・伍介は家事が苦手です。会社を辞めた父の面倒を見るため、和子は家族を支えています。そんな中、親が決めた婚約者・半次郎が大阪に転勤しています。和子は結婚に乗り気ではなく、大阪から上京した友人・梅子に婚約解消を伝言してもらいます。
梅子は老舗料亭「与太呂」の女将で、半次郎の会社を訪ねますが、意外にも半次郎に惹かれてしまいます。これを知った梅子の血のつながらない兄・虎雄は困惑します。一方、半次郎は婚約解消に納得せず、梅子のアプローチに戸惑います。半次郎の母・まさから電話で解消を知った伍介は驚き、和子に別の縁談を持ち込みますが、お見合いの日に仮病を使って邪魔をし、破談にします。和子は父を残して嫁げないと考え、内心で安心します。
青田家に出入りする苦学生の哲は和子に想いを寄せますが、和子は彼を弟のように見ています。出張で大阪へ行った和子は半次郎と直接話し、真面目だが鈍感な彼との結婚が幸せでないと悟ります。帰京後、通子が哲と結婚したいと言い出します。哲は和子からの呼び出しに期待しますが、通子の縁談だと知り落胆します。しかし、和子の説得で受け入れます。
やがて、梅子と半次郎、通子と哲の結婚が決まります。周囲が幸せになっていく中、和子は寂しさを感じます。伍介は和子に子離れを促し、会社から勧められたアメリカ行きを決意します。家族の別れと新たな出発を描き、物語は締めくくられます。
解説
この映画は、1959年の日本社会を背景に、女性の社会進出と結婚観を風刺的に描いています。市川崑監督は、小津安二郎作品のパロディ要素を取り入れ、家族ドラマを展開しますが、伝統的な結婚観を覆す展開が特徴です。主人公の和子は仕事熱心で家族思いですが、結婚を避ける理由に父の存在があります。伍介の依存心が、和子の自由を阻害する様子がユーモラスに表現されます。
男性キャラクターたちは身勝手で鈍感に描かれ、女性たちの積極性と対比されます。梅子の半次郎へのアタックや、通子の結婚宣言は、当時の女性像を革新的に示します。監督は俳優に無機質な芝居をさせ、スピーディなセリフ回しでブラックユーモアを生み出します。これにより、戦後日本の男女不平等を批判しています。60年経った今も、男性の不甲斐なさが現代社会に通じる点が興味深いです。
また、家族の日常風景を小津風に借用しつつ、近代的なひねりを加えています。ラストで和子がアメリカ行きを選ぶのは、個人の自由を象徴します。オールスターキャストの演技が光り、特に女優たちの魅力が物語を豊かにします。隠れた名作として、市川崑の演出センスが際立つ作品です。
テーマソングや音楽も、軽快な雰囲気を支えています。全体として、喜劇の枠を超え、社会批評を含んだ深みがあります。女性の視点から描かれた人間模様が、観る者に共感を呼び起こします。
キャスト
- 青田和子:若尾文子
- 市毛梅子:京マチ子
- 青田通子:野添ひとみ
- 青田伍介:佐分利信
- 渡辺半次郎:菅原謙次
- 片岡哲:川口浩
- 市毛虎雄:船越英二
- 渡辺まさ:三好栄子
- 友人宮本:見明凡太朗
- 洋服屋主人:潮万太郎
- 客武智:桂小文治
- 伊藤営業課長:星ひかる
- おでん屋のおかみ:浦辺粂子
- 女事務員:倉田マユミ
- プロローグの社員A:石井竜一
- プロローグの社員B:田宮二郎
- プロローグの社員C:川村淳
スタッフ
- 監督:市川崑
- 原作:久里子亭
- 脚本:久里子亭、舟橋和郎
- 製作:武田一義
- 撮影:小林節雄
- 美術:下河原友雄
- 音楽:塚原晢夫
- 録音:長谷川光雄
- 照明:米山勇




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