1959年の市川崑監督作『鍵』は、谷崎潤一郎の同名小説を原作に、家族内の愛欲と陰謀を描いた成人映画です。京マチ子が郁子を演じ、官能的な衣装と化粧で女優の活躍が光ります。カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作で、ミステリー要素を加えた耽美主義が特徴です。初老の夫が妻と娘の婿候補の関係を操る物語で、色彩を抑えた撮影が秀逸です。
基本情報
- 原題:鍵
- 公開年:1959年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:107分
- ジャンル:ドラマ
女優の活躍
京マチ子は、妻の郁子役を務めます。彼女は物語の中心人物として、夫の剣持に対する嫌悪と、木村との禁断の関係を体現します。抑えた大人の色気を発揮し、裸体シーンや毒を盛られる場面で存在感を放ちます。彼女の演技は、谷崎潤一郎の原作に寄り添いつつ、市川崑の演出でミステリアスに仕上がっています。品のある女らしさを保ちながら、体を張った役どころで観客を引き込みます。
叶順子は、娘の敏子役を演じます。彼女は木村との関係で家を出る犠牲者的な立場を表現し、物語の転換点で重要な役割を果たします。シンプルな演技で家族の崩壊を象徴し、京マチ子との対比がドラマを深めます。彼女の活躍は、物語の後半で毒殺の標的となる部分で際立ちます。
北林谷栄は、女中のはな役を担います。色盲の設定を活かし、最後の毒殺を実行するキーパーソンとして活躍します。老人らしい控えめな演技が、物語の意外な結末を支えています。彼女の存在は、家族の陰謀を締めくくる重要な要素です。
倉田マユミは、小池役で脇を固めます。彼女の活躍は、物語の周辺で家族の秘密を垣間見せる部分にあります。全体として、女優たちは市川崑の演出のもとで、谷崎の耽美的な世界を体現します。京マチ子の官能性、叶順子の純粋さ、北林谷栄の現実味が融合し、映画の魅力を高めています。
これらの女優の活躍は、1959年の公開当時、成人指定の映画として社会的な注目を集めました。彼女たちは、嫉妬と欲情の渦中で人間の暗部を描き出し、国際映画祭での受賞に貢献します。京マチ子を中心に、女優陣の演技が物語の心理的な深みを加えています。
女優の衣装・化粧・髪型
京マチ子の衣装は、着物が中心で、官能的なデザインが特徴です。豊満なボディをチラリと見せるスタイルで、物語のエロティシズムを強調します。化粧は眉を鋭く角度をつけ、目を吊り上げるメイクを施し、頭が痛くなるほど髪を引っ張った髪型が用いられます。これにより、能面のような無表情を保ち、陰性を表現します。
叶順子の衣装は、シンプルな和服や洋服が多く、自然な髪型と控えめな化粧で描かれます。これが、彼女の犠牲者的な純粋さを際立たせ、京マチ子との対比を明確にします。髪型はストレートにまとめ、化粧は薄く、物語の緊張感を保ちます。
北林谷栄の衣装は、女中らしい地味な和服で、老人らしい髪型と化粧が施されます。髪を後ろでまとめ、化粧を抑えることで、現実的な存在感を出しています。これが、物語の意外な結末を自然に導きます。
倉田マユミの衣装は、脇役らしい控えめなものですが、化粧と髪型は時代を感じさせるスタイルです。全体として、女優たちの衣装・化粧・髪型は、市川崑の色彩設計とメーキャップの工夫により、耽美的な雰囲気を生み出します。発色を抑えた撮影が、これらをよりミステリアスに映します。
これらの要素は、谷崎原作のフェティシズムを視覚的に再現し、女優の魅力を最大限に引き出します。京マチ子の吊り目メイクや着物のニュアンスが、映画の象徴的なイメージを形成します。
あらすじ
古美術鑑定家の剣持は、大学病院で注射を続け、娘の敏子の婿に木村を望みます。妻の郁子は夫を嫌い、木村と関係を持ちます。剣持はこれを知りながら、木村を家に招き、郁子を運ばせます。敏子も木村と関係を持ち、現場を目撃して家を出ます。
剣持は婚約を進め、倒れて死にます。郁子と木村は関係を続け、敏子に毒を盛りますが、女中のはなが色盲で入れ替え、農薬をサラダにかけ、三人を死なせます。はなは自首しますが、刑事は無視します。
物語は、剣持の嫉妬から始まり、家族の崩壊を描きます。木村の訪問がきっかけで、郁子の酔いが事件を起こします。剣持の策略が、妻と婿候補の関係を刺激します。敏子の発見が、家族の亀裂を深めます。
剣持の死後、郁子と木村の陰謀が敏子を狙います。はなのミスが、意外な結末をもたらします。このあらすじは、谷崎の原作を基にミステリー要素を加えています。
全体として、愛欲の渦中で人間の暗部が露わになります。剣持の注射や郁子のビッコが、キャラクターの深みを加えます。家族の会話が、抑えた緊張感を生みます。
解説
谷崎潤一郎の1956年小説を基に、市川崑がミステリー要素を加え、耽美主義を映画的に処理します。製作は大映で、原作の性表現が社会騒動を起こし、谷崎の許可を得て実現します。市川は「陰性」を追求し、役者の表情を能面のように変えないメーキャップを施します。
フランス映画影響を受け、主要人物以外を映さず、色彩設計を重視します。公開時は成人指定で大ヒット、カンヌ国際映画祭審査員賞とゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞します。ジョルジュ・サドゥールらから賛否両論です。リメイク4作あり。
市川は原作の意味合いを変え、題名の「鍵」を別物にします。谷崎の意見を聞きつつ、制作を進めます。撮影の宮川一夫が、発色を抑えたカラーで独特の雰囲気を生みます。音楽の芥川也寸志が、緊張感を高めます。
物語は嫉妬の心理を描き、人間の不定形さを示します。谷崎のフェティシズムを、市川のタッチでモダンに仕上げます。気味悪いキャラクターが、隠微なムードを醸します。公開当時の社会背景が、映画のインパクトを強めます。
国際的に評価され、日本映画の多様性を示します。市川の演出リズムが、見事です。谷崎世界に寄せつつ、独自の解釈を加えます。これにより、文学と映画の融合が実現します。
キャスト
- 京マチ子:郁子
- 叶順子:敏子
- 仲代達矢:木村
- 中村鴈治郎:剣持
- 北林谷栄:はな
- 菅井一郎:石塚
- 倉田マユミ:小池
スタッフ
- 監督:市川崑
- 脚本:長谷部慶治、和田夏十、市川崑
- 原作:谷崎潤一郎
- 製作:永田雅一
- 企画:藤井浩明
- 撮影:宮川一夫
- 照明:伊藤幸夫
- 音楽:芥川也寸志
- 美術:下河原友雄
- 衣裳構成:上野芳生
- メイク:野村吉毅
- 編集:中静達治




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