南アフリカ共和国は、アフリカ大陸の最南部に位置する共和制国家。面積は約122万平方キロメートルで、世界第25位の広さを有します。北にナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、エスワティニと国境を接し、レソトを囲んでいます。南は大西洋とインド洋に面し、海岸線は約2,500キロメートルに及びます。国土の大部分が高原地帯で、ドラケンスバーグ山脈やカルー平野が特徴的です。気候は地中海性気候や亜熱帯気候が多く、日照時間が長く温暖ですが、冬期には一部地域で氷点下を記録します。
人口は2022年時点で約5,752万人、世界第26位です。人口密度は約47人/平方キロメートルと低く、都市部に集中しています。民族構成は黒人系が79.4%、白人系が9.2%、カラード(混血)が8.8%、アジア系が2.6%で、多民族国家として知られます。公用語は11言語で、英語、アフリカーンス語、ズールー語、コサ語などが含まれます。英語が行政やビジネスで主に用いられます。
政治体制は1994年のアパルトヘイト廃止以降の議院内閣制で、アフリカ民族会議(ANC)が長年政権を担っています。首都は行政のプレトリア、立法のケープタウン、司法のブルームフォンテーンに分散する三都制です。経済はアフリカ最大級で、2020年のGDPは市場基準で約335億ドル、購買力平価で約7,923億ドルです。鉱業が基幹産業で、金、ダイヤモンド、プラチナの産出世界トップクラスです。また、農業(トウモロコシ、果物)、自動車製造業も盛んです。BRICS加盟国であり、G20のアフリカ唯一の参加国として国際的に影響力を持っています。ただし、失業率の高さや貧富格差が課題です。
歴史
南アフリカ共和国の歴史は、先史時代に遡ります。約300万年前に人類の祖先アウストラロピテクスが現れ、化石が多数発見されています。紀元前にはコイコイ人やサン人が狩猟採集生活を営んでいました。紀元300年頃、バントゥー系民族が北から南下し、鉄器文化をもたらしました。これにより先住民は内陸部へ追いやられました。
ヨーロッパ人の到着は1488年、バルトロメウ・ディアスによる喜望峰到達からです。1652年、オランダ東インド会社がヤン・ファン・リーベックを派遣し、ケープ植民地を建設しました。これによりボーア人(オランダ系入植者)が形成され、グレート・トレック(1835-1840年)で内陸進出を果たしました。イギリスは1795年にケープを占領し、奴隷廃止(1834年)でボーア人の反発を招きました。ボーア人はトランスヴァール共和国とオレンジ自由国を建国しましたが、第一次ボーア戦争(1880-1881年)で一時独立を回復しました。
第二次ボーア戦争(1899-1902年)でイギリスが勝利し、1910年に南アフリカ連邦が成立しました。1948年、国民党が政権を握り、アパルトヘイト(人種隔離政策)を法制化しました。これにより黒人系住民の抑圧が激化し、1960年のシャープビル虐殺事件が発生しました。抵抗運動が高まり、アフリカ民族会議のネルソン・マンデラらが活動しました。1990年、マンデラ釈放とアパルトヘイト廃止が宣言され、1994年の全人種選挙でマンデラが初の黒人大統領に就任しました。以降、民主化が進み「虹の国」と呼ばれますが、経済格差やHIV/AIDS問題が残ります。
文化
南アフリカ共和国の文化は、多様な民族と歴史が交錯する豊かなものです。公用語が11言語に及び、英語、アフリカーンス語、ズールー語、コサ語などが日常的に用いられます。これらの言語は文学や口承伝統に反映され、ズールー人の叙事詩やサン人の神話が伝えられています。多文化主義が基調で、黒人系、白人系、カラード、アジア系の伝統が融合します。
伝統芸能では、ズールー人のダンスやコサ人の歌が代表的です。音楽はクワイト(タウンシップ・ジャズ)が有名で、ミリアム・マケバやヒュー・マシケラが世界的に活躍しました。現代ではアフロポップやヒップホップが人気で、ラディオ・アフリカの影響が強いです。視覚芸術では、ウィリアム・ケントリッジのアニメーション作品が国際的に評価されています。工芸品として、ビーズ細工や彫刻が伝統的で、市場で観光客に人気です。
食文化は多様で、ボブティ(ミートパイ)やブライ(スパイシーな煮込み)がオランダ系由来です。黒人系ではパパ(トウモロコシ粥)が主食で、ブライニョーフ(ソーセージ)も一般的です。祝祭では、ヘリテージ・デイに各民族の伝統衣装を着用します。スポーツ文化も強く、ラグビーやクリケットが国民的で、1995年のラグビーW杯優勝が融和の象徴となりました。文学ではJ.M.コエトジーがノーベル賞を受賞し、多文化の複雑さを描いています。
おもな教育機関
高等教育機関
南アフリカ共和国は高等教育が発展しており、公立大学を中心に26校が存在します。これらの機関は研究と教育の両面でアフリカをリードしています。主な大学は多様な分野で国際的に評価されており、留学生も多く受け入れています。
- ケープタウン大学:1829年創立のアフリカ最古の大学です。医学、工学、人文科学が強みで、QS世界大学ランキングでアフリカ1位を維持しています。美しいキャンパスがケープタウンに位置します。
- プレトリア大学:1908年設立の研究大学で、南アフリカ最大規模です。獣医学、工学、法学が著名で、BRICS諸国で上位にランクインします。プレトリアに本拠を置きます。
- ウィットウォーターズランド大学:1896年創立のヨハネスブルグの名門です。社会科学、経済学、鉱山工学に優れ、多文化教育を推進しています。
- ステレンボッシュ大学:1918年設立のワイン産地ステレンボッシュにあります。アフリカーンス語教育と農業科学が特徴で、ビジネススクールも高評価です。
- 南アフリカ大学:1946年創立の通信制大学で、最大の学生数を誇ります。オンライン教育のパイオニアで、幅広い学部を提供します。
映画演劇学校
映画と演劇の教育は、クリエイティブ産業の成長を支えています。南アフリカはハリウッドのロケ地としても知られ、専門学校が俳優や監督を育成します。これらの学校は実践的なカリキュラムを重視します。
- AFDA(南アフリカ映画学校):1994年設立の私立校で、ヨハネスブルグ、ケープタウンなどにキャンパスがあります。映画制作、演劇、ライブパフォーマンスを専門とし、国際的な卒業生を輩出します。
- ウィットウォーターズランド大学 ドラマ・フォー・ライフ:ヨハネスブルグのウィッツ大学内にある演劇プログラムです。HIV/AIDS啓発を通じた演劇教育が特徴で、社会変革を目指します。
- ケープタウン大学 演劇学部:人文科学部傘下のプログラムで、シェイクスピア演劇や現代作品を扱います。アフリカの多文化を反映したカリキュラムです。
- マーケット・シアター演劇学校:ヨハネスブルグのマーケット・シアター財団が運営します。1980年代からの反アパルトヘイト演劇の伝統を引き継ぎ、俳優養成に注力します。
- ステレンボッシュ大学 演劇学部:アフリカーンス語圏の演劇教育が中心で、クラシックからコンテンポラリーまで幅広く学べます。
登場する映画
南アフリカ共和国は、美しい自然と複雑な社会問題を背景に、多くの映画の舞台となっています。アパルトヘイトや人種問題をテーマにした作品が多く、国際的に評価されています。以下に主な作品を挙げます。
- クライ・フリーダム(1987年):リチャード・アッテンボロー監督作。アパルトヘイト反対の活動家スティーブ・ビコの生涯を描き、ケビン・クラインとデンゼル・ワシントンが出演します。ヨハネスブルグや東ケープを舞台に、人権闘争の現実を追います。
- ツォツィ(2005年):ギャヴィン・フッド監督のオスカー外国語映画賞受賞作。ソウェトのスラムを舞台に、犯罪者の贖罪を描きます。プレスリー・チュエニヤハエが主演で、貧困と希望のコントラストが印象的です。
- ブラッド・ダイヤモンド(2006年):エドワード・ズウィック監督。シエラレオネ内戦とダイヤモンド密売をテーマに、南アフリカの鉱山地帯を舞台の一部とします。レオナルド・ディカプリオとジェニファー・コネルが出演し、倫理的ジレンマを探ります。
- 第9地区(2009年):ニール・ブロムカンプ監督のSF。ヨハネスブルグのスラムにエイリアンが住む設定で、アパルトヘイトを寓意します。シャールト・コッペルスが主演し、革新的な視覚効果でアカデミー賞にノミネートされました。
- マンデラ 自由への長い道(2013年):ジャスティン・チャドウィック監督。ネルソン・マンデラの生涯を描き、ケープタウンやロベン島を舞台にします。イドリス・エルバがマンデラを演じ、民主化の過程を再現します。
- ケープタウン(2013年):ジェローム・サレット監督。麻薬密売組織を追う刑事の物語で、ケープタウンの港湾部を舞台にします。オリヴィエ・マルシャルが主演し、サスペンスフルなアクションが展開します。
- 俺たちに明日はある(1998年):ジャン=ジャック・アノー監督。WHO AM I?の邦題で、ヨハネスブルグの犯罪世界を描きます。ジャン・レノが出演し、復讐劇が繰り広げられます。
- 陽のあたる教室(2008年):スティーブン・ヘレク監督。黒人教育の苦難をテーマに、ソウェトの学校を舞台にします。マンデラの影響を受けた教師の物語で、感動的な人間ドラマです。
出身女優・モデル
南アフリカ共和国は、美しい容姿と才能豊かな女性を世界に送り出しています。女優やモデルとしてハリウッドやファッション界で活躍する人材が多く、多文化の魅力が反映されます。以下に主な人物と出演作品を紹介します。
シャーリーズ・セロンは、1975年生まれの女優・モデル。ベノニ出身で、16歳からモデルとしてキャリアをスタートさせ、1990年代にハリウッドへ進出しました。アカデミー賞主演女優賞を受賞するなど、演技力で知られます。
- モンスター(2003年 アイリーン・ウースノスキ役):連続殺人犯の実話を基にした伝記ドラマで、変身演技が絶賛されました。
- イーオン・フラックス(2005年、ニナ・ヨーク役):SFアクションで主演し、スタントを自らこなし、未来都市を駆け巡ります。
- マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年、フュリオサ大隊長役):ポストアポカリプス世界の戦士を演じ、アクションの新境地を開きました。
- アトミック・ブロンド(2017年、ロレーン・ブロートン役):スパイアクションで監督ミカエル・H・ファスベンダーと共演し、スタイリッシュな戦いを披露します。
タニア・ヴァン・グラーンは、ケープタウン出身の女優、歌手、モデル。多才なエンターテイナーとして知られ、2003年にデビュー以来、映画、テレビ、舞台で幅広い活躍を展開しています。代表作には、2008年の『スターシップ・トゥルーパーズ3 マローダー』でのサージェント・A・サンデー役、2010年の『デッド・レース2』でのホリー役、2013年の『ズールー』でのタラ役、2020年の『ジ・エンプティ・マン』でのアリソン・ラスンブラ役などがあります。
キャンディス・スワンポエルは、1988年生まれのスーパーモデルです。モエレ出身で、2007年からヴィクトリアズ・シークレットのエンジェルとして活躍します。南アフリカのビーチを思わせる健康的な美貌が特徴です。
- 主な活動:ヴィクトリアズ・シークレット・ファッションショー(2007年以降複数回出場):ランウェイで天使の翼をまとい、世界的なファッションアイコンとなります。
- メナデル(2010年以降):ファッションブランドの広告塔として、ビーチウェアやランジェリーをプロモートします。
タニット・フェニックスは、1984年生まれの女優・モデルです。デューバン出身で、モデルから女優へ転身し、アクション作品で存在感を発揮します。
- ガルフォース(2011年 レイラ役):SFアクションの短編で、戦闘シーンをこなします。
- ハウ・トゥ・リベンジ(2017年 ジョー役):復讐サスペンスで主演し、ダークな役柄を演じます。
アリス・クリージは、1954年生まれのベテラン女優です。アップルタール出身で、舞台から映画へ活躍の場を広げました。
- チャリオッツ・オブ・ファイア(1981年 セーラ役):オリンピックを題材にしたドラマで、国際デビューします。
- スター・トレック:ネクスト・ジェネレーション(1992-1993年 ボーグ・クイーン役):SFシリーズで悪役を熱演し、象徴的なキャラクターとなります。
出身女性アスリート
南アフリカ共和国は、スポーツ大国として女性アスリートも多く輩出しています。陸上、競泳、体操などで国際大会で活躍し、国威発揚に貢献します。厳しい環境下での精神力が強みです。以下に主な人物と業績を紹介します。
キャスター・セメンヤは、1991年生まれの陸上選手です。リンポポ州出身で、中距離走のエースとしてオリンピック金メダルを獲得しました。性差別問題で注目を集め、女性アスリートの権利を主張します。
- 2012年ロンドンオリンピック女子800m金メダル:世界記録に迫るタイムで優勝し、南アフリカに歴史的勝利をもたらします。
- 2016年リオデジャネイロオリンピック女子800m金メダル:連覇を達成し、国際陸上競技連盟の規則変更に抗議する象徴となります。
- 世界陸上競技選手権大会(2009年、2011年、2017年)女子800m金メダル:複数回の優勝で、中距離の女王として君臨します。
ゾーラ・バッドは、1966年生まれの陸上選手です。ブルームフォンテーン出身で、素足走行のスタイルで知られます。クロスカントリーと長距離で世界記録を樹立しました。
- 世界クロスカントリー選手権(1985年、1986年)女子ジュニア金メダル:南アフリカ初の国際タイトルを獲得します。
- 1984年ロサンゼルスオリンピック女子3000m:アパルトヘイト下のボイコット回避で英国籍を取得し、出場します。
- マラソン転向後(2001年以降):シカゴマラソン(2001年)で3位となり、復活の狼煙を上げます。
タチアナ・スクンマーカーは、1997年生まれの競泳選手です。ヨハネスブルグ出身で、平泳ぎのスペシャリストです。2020年東京オリンピックで銀メダルを獲得しました。
- 2020年東京オリンピック女子200m平泳ぎ銀メダル:南アフリカ競泳史上初の個人メダルです。
- 2024年パリオリンピック女子200m平泳ぎ金メダル:世界選手権記録を更新し、国民的英雄となります。
- コモンウェルスゲームズ(2022年)女子100m・200m平泳ぎ金メダル:複数種目で圧勝します。
ケイトリン・ルースクランツは、2001年生まれの体操選手です。ヨハネスブルグ出身で、南アフリカ女子体操の先駆者です。北京2008年以来のオリンピック出場を果たしました。
- 2020年東京オリンピック団体・個人総合出場:アフリカ体操のレベル向上に貢献します。
- コモンウェルスゲームズ(2022年)個人総合銅メダル:南アフリカ初の体操メダル獲得です。
- 世界体操選手権(2019年)個人総合出場:厳しいトレーニングで国際舞台に挑みます。
レベッカ・メドランカは、1998年生まれのラグビー選手です。東ケープ州出身で、女子ラグビーのキャプテンとして活躍します。ラグビーワールドカップで南アフリカを牽引します。
- 2021年ラグビーワールドカップ女子準優勝:チームを率い、歴史的成績を収めます。
- コモンウェルスゲームズ(2022年)セブンズ金メダル:速攻のウィングとして得点を量産します。
- ワールドラグビー女子セブンズシリーズ(複数回優勝):国際シリーズでMVPに選出されます。



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