『ROMA/ローマ』(2018年)はアルフォンソ・キュアロン監督が自身の幼少期を基に描いたドラマ。1970年代初頭のメキシコシティを舞台に、中産階級の家庭で家政婦として働く若い女性クレオの視点から、家族の日常と激動の社会を描きます。美しいモノクロ映像が特徴で、家族愛や喪失、社会的混乱を静かに表現します。アカデミー賞で監督賞、撮影賞、外国語映画賞を受賞しました。
基本情報
- 邦題:ROMA/ローマ
- 原題:Roma
- 公開年:2018年
- 製作国・地域:米国、墨国
- 上映時間:135分
- ジャンル:ドラマ
女優の活躍
『ROMA/ローマ』の主演女優ヤリッツァ・アパリシオは、クレオ役で映画初出演を果たします。彼女はオアハカ州の先住民出身で、教師を目指していたところを監督に抜擢されました。アカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、寡黙で内省的な演技が高く評価されます。クレオの日常の労働や個人的な悲劇を、言葉少なく体現し、観客の心を揺さぶります。
マリーナ・デ・タビラはソフィア役を演じ、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされます。彼女はメキシコのベテラン女優で、夫の不在による家族の崩壊を繊細に表現します。クレオとの関係性を深く描き、女性たちの連帯を象徴的に示します。他の女優たちも、家族の子どもたちや周囲の人物を自然に演じ、無名ながらリアリティを加えます。
ヤリッツァ・アパリシオの活躍は、国際的に注目を集め、以降のキャリアに影響を与えます。彼女は本作で、抑圧された女性の内面的な強さを体現し、批評家から絶賛されます。マリーナ・デ・タビラも、感情の揺らぎを細やかに演じ、物語の深みを増します。両女優の共演が、映画の情感を豊かにします。
女優の衣装・化粧・髪型
ヤリッツァ・アパリシオ演じるクレオの衣装は、1970年代のメキシコ家政婦らしい質素で実用的なデザインです。主に白いエプロン付きのブラウスとスカートを着用し、清潔感を保ちながら使用人としての地位を表します。モノクロ映像のため、色味は抑えられ、灰色のグラデーションがシンプルさを強調します。
化粧は自然で控えめです。クレオの若さと素朴さを活かし、ほとんどメイクを施さず、肌の質感を生かします。これにより、彼女の内面的な純粋さが際立ちます。髪型は黒髪をストレートにまとめ、機能的なポニーテールやお団子が多く、労働中の動きやすさを優先します。時折、髪を下ろすシーンで柔らかさを表現します。
マリーナ・デ・タビラ演じるソフィアの衣装は、中産階級の主婦らしい上品なドレスやブラウスです。スカートやワンピースが多く、時代を反映したクラシックなスタイルです。化粧は洗練され、リップやアイメイクで優雅さを加えます。髪型はウェーブのかかったミディアムヘアで、家庭的な温かみを演出します。
他の女優たちの衣装も、時代背景に沿ったものです。子どもたちの母親役や周囲の女性は、日常着を中心に着用し、化粧は控えめです。髪型はボブやアップスタイルが多く、全体としてリアリズムを重視します。これらの要素が、モノクロの画面で統一感を生み、物語のリアリティを高めます。
あらすじ
1970年代初頭のメキシコシティ、コロニア・ローマ地区で物語は始まります。中産階級の家庭で家政婦として働くクレオは、医者のアントニオ、妻のソフィア、4人の子どもたち、そして祖母の世話をします。クレオは同僚のアデラと共に忙しい日々を送り、子どもたちに深い愛情を注ぎます。一方、アントニオは家庭を顧みず、海外出張を理由に家を出て行きます。
クレオは恋人のフェルミンとの関係を深めますが、妊娠が発覚します。フェルミンは彼女を捨て、クレオは一人で苦しみます。ソフィアも夫の浮気を知り、家族は崩壊の危機に陥ります。そんな中、メキシコでは学生デモが激化し、1971年の「血の木曜日」事件が発生します。クレオはこの混乱に巻き込まれ、衝撃的な出来事を経験します。
家族の危機が訪れます。ソフィアは子どもたちを連れて海辺へ旅行しますが、そこで悲劇が起きます。クレオは子どもたちを救うために命がけの行動を取ります。この出来事が家族の絆を再確認させ、クレオは家族の一員として受け入れられます。物語は、静かな日常の回復で締めくくられます。
クレオの視点から、個人的な喪失と社会の混乱が交錯します。彼女の妊娠と出産の悲劇、家族の離散、そして再統合が、細やかな描写で語られます。モノクロの映像が、これらの出来事を詩的に描き出します。
解説
『ROMA/ローマ』は、アルフォンソ・キュアロン監督の自伝的要素が強く、自身の幼少期の家政婦リボをモデルにクレオを描きます。1970年代のメキシコ社会を背景に、階級差やジェンダーの問題を静かに探求します。モノクロ映像は、記憶の断片を再現し、ノスタルジックな雰囲気を生みます。
物語の中心は、家族の愛と喪失です。クレオは使用人として主張せず、静かに支えますが、彼女の内面的な痛みが画面ににじみ出ます。監督は長回しを多用し、日常のささやかな出来事を丁寧に捉えます。これにより、観客はクレオの視点に没入します。
社会的な文脈も重要です。「血の木曜日」事件は、メキシコの政治的抑圧を象徴し、個人と社会のつながりを示します。クレオの個人的な悲劇が、この事件と重なることで、普遍的なテーマを強調します。家族の犬や空の描写は、放置された存在や無常を表します。重層する試練を描くことから、インターセクショナリティ・フェミニズムの映画例としても高く評価されています。
音響デザインも秀逸です。街の喧騒や波の音が、感情を増幅します。監督自身が撮影を手がけ、視覚的な美しさが際立ちます。本作は、Netflix配信ながら劇場公開され、映画の新しい形を提案します。
テーマとして、女性の強さと連帯が挙げられます。クレオとソフィアの関係は、階級を超えた絆を示します。子どもたちの無邪気さが、物語に希望を与えます。全体として、人生の儚さと美しさを、詩的なタッチで描きます。
キャスト
- クレオ:ヤリッツァ・アパリシオ
- ソフィア:マリーナ・デ・タビラ
- アントニオ:フェルナンド・グレディアガ
- フェルミン:ホルヘ・アントニオ・ゲレーロ
- アデラ:ダニエラ・デメサ
- トニオ:ディエゴ・コルティナ・アウトレイ
- パコ:カルロス・ペラルタ
- ソフィ:ダニエラ・デメサ
- ペペ:マルコ・グラフ
- テレサ:ベロニカ・ガルシア
スタッフ
- 監督・脚本・撮影・製作・編集:アルフォンソ・キュアロン
- 製作:ガブリエラ・ロドリゲス、ニコラス・セリス
- 製作総指揮:ジェフ・スコール、デビッド・リンド、ジョナサン・キング
- 美術:エウヘニオ・カバレロ
- 衣装:アンナ・テラサス
- 編集協力:アダム・ガフ
- 音響デザイン:セルジオ・ディアス、スキップ・リーブシー
- 視覚効果:ティム・ウェブ





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