『ザ・コンテンダー』（2000年）は、アメリカ初の女性副大統領候補レイン・ハンソンがスキャンダルと闘う政治ドラマ。信念を貫く彼女の姿を描く。ジョーン・アレン、ゲイリー・オールドマン、ジェフ・ブリッジスが出演。アカデミー賞2部門ノミネート。監督はロッド・ルーリー。以下では女優の活躍、衣装・化粧・髪型、あらすじ、解説、キャスト、スタッフについてまとめています。
基本情報
- 邦題：ザ・コンテンダー
- 原題：THE CONTENDER
- 公開年：2000年
- 製作国：米国
- 上映時間：127分
- ジャンル：ドラマ
見どころ
政治家として清濁併せ飲みながらも己の志を曲げずに突き進む女性をジョーン・アレンが痛快に演じ切る。製作総指揮も務めたゲイリー・オールドマンの憎々しい演技にも注目。
女優の活躍
『ザ・コンテンダー』における女優の活躍は、特に主演のジョーン・アレンが演じるレイン・ハンソン上院議員を中心に光を放っています。ジョーン・アレンは、本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされるほどの圧倒的な演技力を発揮しました。彼女は、共和党から民主党に鞍替えした経歴を持つベテラン議員であり、女性として初めて副大統領候補に指名されたレインを、知性と強さを兼ね備えた人物として体現しています。レインは、政治的信念を貫きながら、過去のスキャンダルに直面しても毅然とした態度を崩さない姿勢が求められる難しい役どころです。アレンは、感情の機微を細やかに表現しつつ、力強いスピーチや対立シーンでの堂々とした立ち振る舞いで、観客に深い印象を与えました。特に、議会での尋問シーンでは、彼女の演技が物語の緊張感を一層高めています。
また、脇を固める女優陣も物語に深みを加えています。キャスリン・モリスは、レインの過去に関わる女性ペイジ・ウィラード役で短いながらも印象的な出演を果たし、物語の鍵となるスキャンダルの背景を浮き彫りにしました。彼女の登場は、限られた時間の中で観客に強いインパクトを与えるものでした。さらに、マリエル・ヘミングウェイがレインの友人シンディ役として登場し、彼女の人間的な側面を支える役割を担っています。これらの女優たちは、それぞれの役柄でレインの物語を補完し、女性の視点から政治の世界での闘いを描き出すことに貢献しました。
ジョーン・アレンの演技は、特に女性の政治進出というテーマを体現する上で重要でした。彼女は、レインの信念と脆弱性をバランスよく表現し、観客に共感を呼び起こしました。この映画は、2000年代初頭における女性の社会進出とその困難さを描いた作品として、彼女の演技を通じて強いメッセージを発信しています。
女優の衣装・化粧・髪型
『ザ・コンテンダー』におけるジョーン・アレンの衣装、化粧、髪型は、レイン・ハンソンというキャラクターのプロフェッショナルで知的なイメージを強調するようにデザインされています。衣装は、主にテーラードスーツや上品なブラウス、スカートといった、ワシントンD.C.の政治家らしいフォーマルなスタイルが中心です。スーツはダークトーン（ネイビーやグレー）が多く、シャープで権威ある印象を与えますが、女性らしい柔らかさを保つために、シルクのブラウスや控えめなアクセサリーが組み合わされています。これにより、レインの強さと女性らしさがバランスよく表現されています。特定のシーンでは、赤や青のアクセントカラーが使われ、彼女の情熱や信念を象徴していました。
化粧は、ナチュラルでありながら洗練されたスタイルが採用されています。レインのキャラクターは、派手さを避け、信頼感と知性を重視する政治家として描かれているため、化粧は控えめで、薄いファンデーション、ニュートラルなリップカラー、軽いアイメイクが中心です。これにより、彼女の表情や演技が際立ち、観客は彼女の内面に焦点を当てやすくなっています。特に、議会での対決シーンでは、化粧のシンプルさが彼女の真剣さと誠実さを強調していました。
髪型は、ショートカットのボブスタイルで、清潔感とプロフェッショナルな印象を与えます。髪は常に整えられており、動きのある自然なスタイリングが施されています。この髪型は、レインが実務的でありながらも女性らしい魅力を保つことを象徴しており、政治家としての信頼感を高める効果がありました。全体的に、衣装、化粧、髪型は、レインのキャラクターを視覚的に補強し、彼女の信念と闘争心を観客に伝える重要な要素となっています。
脇役の女優たちの衣装や化粧も、物語のトーンに合わせて控えめで現実的です。例えば、キャスリン・モリスのペイジは、よりカジュアルな衣装で登場し、彼女の背景を反映しています。これにより、主要キャラクターとのコントラストが際立ち、物語の多層性が強調されました。
あらすじ
『ザ・コンテンダー』は、アメリカ合衆国の政治の舞台裏を描いたポリティカル・ドラマ。物語は、民主党のジャクソン・エヴァンズ大統領（ジェフ・ブリッジス）が、副大統領の急死に伴い、後任として女性上院議員レイン・ハンソン（ジョーン・アレン）を指名するところから始まります。レインは、共和党から民主党に鞍替えした経歴を持つベテラン議員で、知性と信念を兼ね備えた人物です。しかし、彼女の指名は議会内の保守派や大統領の政敵から強い反発を招きます。特に、共和党の有力議員シェリー・ラニアン（ゲイリー・オールドマン）は、レインの過去のスキャンダル――大学時代に乱交パーティに参加したという疑惑――を暴露し、彼女の承認を阻止しようと画策します。
レインは、このスキャンダルに対して毅然とした態度で立ち向かい、自身のプライバシーを守りつつ、政治的信念を貫く姿勢を示します。一方、エヴァンズ大統領は、レインの指名を支持しつつも、政治的な駆け引きの中で難しい決断を迫られます。議会の承認プロセスが進む中、レインは下院司法委員会での尋問に直面し、彼女の過去と信念が厳しく試されます。物語は、レインがスキャンダルと闘いながら、女性として政治の世界で生き抜く姿を力強く描き出します。最終的に、彼女の決断と行動は、アメリカ政治における性差別やプライバシーの問題を浮き彫りにし、観客に深い問いを投げかけます。
解説
『ザ・コンテンダー』は、2000年に公開された当時、ビル・クリントン大統領のルインスキー・スキャンダル（1998年）を背景に、政治とスキャンダルの関係、女性の政治進出、プライバシーの侵害といった現代的なテーマを鋭く描いた作品です。監督のロッド・ルーリーは、元映画評論家としての視点を生かし、現実の政治状況を反映した脚本を書き上げました。本作は、単なる政治ドラマにとどまらず、性差別やメディアの過剰な介入といった社会問題を掘り下げ、観客に深い考察を促します。
特に注目すべきは、女性初の副大統領候補という設定を通じて、女性が政治の場で直面する偏見や困難を描いている点です。レイン・レインは、スキャンダルを利用した攻撃を受けながらも、自身の信念を曲げず、プライバシーを守る姿勢を貫きます。この姿勢は、女性の自立と尊厳を象徴しており、2000年代初頭のアメリカ社会におけるジェンダー問題を反映しています。また、映画は、政治家としての公的役割と個人としての私生活の境界について問いかけ、現代社会においても議論されるテーマを先取りしていました。
ゲイリー・オールドマン演じるラニアンのキャラクターも、物語に複雑さを加えています。彼は、単なる悪役ではなく、自身の政治的信念に基づいて行動する人物として描かれており、その対立は物語に深みを与えています。ジェフ・ブリッジスの大統領役も、軽妙な演技で政治家の人間的な側面を表現し、作品のバランスを保っています。
映画の技術面でも、ルーリーの演出は緊迫感ある議会シーンや感情的な対話を効果的に描き出しました。撮影監督デニス・マロニーのカメラワークは、ワシントンD.C.の荘厳な雰囲気と、キャラクターの内面的な葛藤を巧みに捉えています。音楽のラリー・グループも、ドラマチックな展開を支える控えめながら効果的なスコアを提供しました。
公開当時、映画は興行的にも成功し、北米で約1780万ドルの興行収入を記録（製作費2000万ドル）。批評家からも高評価を受け、ジョーン・アレンの主演女優賞とジェフ・ブリッジスの助演男優賞でアカデミー賞にノミネートされました。ただし、ゲイリー・オールドマンが製作総指揮を務めたにも関わらず、編集段階での変更に不満を抱いたという論争も話題となりました。
キャスト
- ジョーン・アレン（レイン・ハンソン役）：女性初の副大統領候補。信念を貫く知的な政治家。
- ゲイリー・オールドマン（シェリー・ラニアン役）：レインの指名を阻止しようとする共和党議員。怪演が光る。
- ジェフ・ブリッジス（ジャクソン・エヴァンズ大統領役）：レインを指名する大統領。軽妙な演技で人間味を表現。
- クリスチャン・スレーター（レジナルド・ウェブスター役）：若手議員でレインを支持。
- サム・エリオット（キント・ハンソン役）：レインの夫。彼女を支える存在。
- ウィリアム・ピーターセン（ジャック・ハサウェイ役）：副大統領候補の対抗馬。
- キャスリン・モリス（ペイジ・ウィラード役）：スキャンダルに関わる女性。
- マリエル・ヘミングウェイ（シンディ役）：レインの友人。
スタッフ
- 監督・脚本：ロッド・ルーリー（元映画評論家で、本作が監督としての代表作）
- 製作：ジェームズ・スパイス、ダグラス・アーバンスキー、ウィリー・バー、マーク・フライドマン
- 製作総指揮：ゲイリー・オールドマン、ライナー・ビンガー
- 撮影：デニス・マロニー
- 編集：マイケル・ジャブロー
- 音楽：ラリー・グループ
- 配給：日本ヘラルド映画（日本）、ドリームワークス・ピクチャーズ（北米）
総括
『ザ・コンテンダー』は、政治ドラマとしての緊張感、女性の社会進出というテーマ、そして卓越した演技が融合した作品です。ジョーン・アレンの力強い演技と、彼女のキャラクターを支える衣装や演出は、物語のメッセージを強く印象付けます。現代社会におけるジェンダーやプライバシーの問題を考える上で、今なお示唆に富む作品です。
レビュー 作品の感想や女優への思い