『ザ・キラー』（原題：The Killer）は2023年に公開された米仏合作のネオ・ノワール・アクション・スリラー映画。デヴィッド・フィンチャー監督が手がけ、マイケル・ファスベンダー主演で、フランスのグラフィックノベルを原作に、暗殺者の復讐劇をスタイリッシュに描写。Netflixで配信され、ベネチア国際映画祭に出品されました。
基本情報
- 邦題：ザ・キラー
- 原題：The Killer
- 公開年：2023年
- 製作国：仏国、米国
- 上映時間：118分
- ジャンル：サスペンス、アクション、アドベンチャー・冒険、クライム、スリラー
あらすじ
パリでターゲットを狙う冷徹な暗殺者「ザ・キラー」（マイケル・ファスベンダー）は、緻密な計画を信条とする一匹狼です。しかし、ある任務で誤って無関係な女性を撃ち、失敗に終わります。逃走後、ドミニカ共和国の自宅に戻ると、恋人のマグダラが襲撃され重傷を負っていることを知ります。怒りに駆られた彼は、襲撃に関与した者たちへの復讐を決意。ニューオーリンズでハンドラーのホッジスを追及し、情報を得るため秘書のドロレスを犠牲にします。フロリダでは屈強な暗殺者「ザ・ブルート」を倒し、ニューヨークでは女性暗殺者「エキスパート」（ティルダ・スウィントン）と対峙。最後にシカゴで依頼主の億万長者クレイボーンに迫りますが、殺さず警告して去ります。復讐を終えた彼は、ドミニカでマグダラと静かに寄り添うのでした。この物語は、暗殺者の孤独な戦いと内面的葛藤を、淡々とした語り口で描きます。
女優の活躍
本作では、ティルダ・スウィントンとソフィー・シャーロットが主要な女性キャストとして登場します。特にティルダ・スウィントンの演じる「エキスパート」は、物語の後半で重要な役割を果たします。彼女はニューヨークの高級レストランで主人公と対峙する、知性と冷酷さを兼ね備えた女性暗殺者です。スウィントンは、短い出演時間ながら、独特の存在感で観客を引き込みます。彼女の落ち着いた口調と鋭い眼光は、主人公との緊張感あふれる会話シーンで際立ち、映画に深みを加えています。一方、ソフィー・シャーロット演じるマグダラは、主人公の恋人として登場。襲撃により重傷を負う役どころで、感情的なシーンは少ないものの、主人公の動機を支える重要な存在です。両女優とも、限られた出番の中で印象的な演技を見せ、物語の重厚な雰囲気を支えています。
女優の衣装・化粧・髪型
ティルダ・スウィントンの衣装は、彼女のキャラクター「エキスパート」の洗練されたイメージを反映しています。ニューヨークのレストランシーンでは、ダークトーンのエレガントなコートとスカーフをまとい、都会的な雰囲気を漂わせます。化粧は控えめで、ナチュラルな肌に薄いリップとアイメイクを施し、知的な冷酷さを強調。髪型は、タイトにまとめたアップスタイルで、プロフェッショナルな印象を与えます。このスタイルは、彼女のキャラクターが計算高く、隙のない暗殺者であることを視覚的に表現しています。一方、ソフィー・シャーロット演じるマグダラは、ドミニカ共和国の温暖な気候に合わせたカジュアルな衣装が特徴です。シンプルなトップスとパンツで、日常的な生活感を演出。化粧はほぼすっぴんに近く、自然体で、髪はゆるくウェーブのかかったロングヘアで、親しみやすさと脆弱さを表現しています。これらの対照的なスタイルは、両キャラクターの役割の違いを際立たせ、物語の雰囲気を補強しています。
解説
『ザ・キラー』は、デヴィッド・フィンチャー監督の持ち味である緻密な映像美と心理描写が光る作品です。原作はフランスのグラフィックノベル『Le Tueur』（アレクシス・ノラン作、リュック・ジャカモン画）で、孤独な暗殺者の内面を掘り下げたネオ・ノワール作品です。フィンチャーは、主人公のモノローグを多用し、彼のルーティンや哲学を強調。ザ・スミスの楽曲を効果的に使い、80年代のノスタルジーを織り交ぜつつ、現代的なデジタルツール（スマートウォッチやeバイク）を活用する主人公の姿は、伝統的な暗殺者像を刷新しています。映画は派手なアクションよりも、静かな緊張感と計画的な行動に重点を置き、主人公の感情の揺れを抑制的に描きます。ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品作として高い評価を受け、フィンチャーの冷徹かつスタイリッシュな演出が際立つ一作です。物語は復讐劇の枠組みを持ちつつ、主人公の自己矛盾や孤独を浮き彫りにし、観客に解釈の余地を残します。Netflix配信により、劇場公開と同時に世界中で視聴可能となり、現代の映画体験を象徴する作品となりました。
キャスト
- マイケル・ファスベンダー（ザ・キラー）：主人公の暗殺者。冷徹かつ計算高く、復讐に突き進む。
- ティルダ・スウィントン（エキスパート）：知的な女性暗殺者。主人公と対峙する重要な役どころ。
- ソフィー・シャーロット（マグダラ）：主人公の恋人。襲撃を受け、物語の動機となる。
- チャールズ・パーネル（ホッジス）：主人公のハンドラー。復讐の標的の一人。
- アーリス・ハワード（クレイボーン）：億万長者の暗殺依頼者。物語の終盤で登場。
- ケリー・オマリー（ドロレス）：ホッジスの秘書。情報を提供する役割。
- サラ・ベイカー（ザ・ブルート）：屈強な暗殺者。主人公と激しい戦闘を繰り広げる。
スタッフ
- 監督：デヴィッド・フィンチャー（『セブン』『ファイト・クラブ』で知られる鬼才）
- 脚本：アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー（『セブン』の脚本家。現代的な暗殺者を描く）
- 原作：アレクシス・ノラン（『Le Tueur』原作者）、リュック・ジャカモン（同作のイラストレーター）
- 撮影：エリック・メッサーシュミット（『Mank/マンク』でアカデミー撮影賞受賞）
- 音楽：トレント・レズナー、アティカス・ロス（『ソーシャル・ネットワーク』でアカデミー賞受賞）
- 製作：プランBエンターテインメント（ブラッド・ピットが関与する製作会社）
- 配信：Netflix（2023年11月10日配信開始、一部劇場で10月27日公開）
レビュー 作品の感想や女優への思い