『博士と狂人』は2019年の歴史ドラマ。オックスフォード英語辞典の編纂を背景に、学者マレーと殺人犯マイナーの友情と葛藤を描く。メル・ギブソン、ショーン・ペン主演。実話に基づく感動の物語。ナタリー・ドーマーとジェニファー・イーリーが主要な女性キャラクターを演じる。
基本情報
- 邦題:博士と狂人
- 原題:The Professor and the Madman
- 公開年:2018年
- 製作国:イギリス、アイルランド、フランス、アイスランド
- 上映時間:124分
- ジャンル:ミステリー、伝記
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見どころ
世界最高の英語辞典の基礎を築いたのは異端の学者と殺人犯だったという驚きの実話を映画化。メル・ギブソンとショーン・ペン演じる2人の天才の絆をドラマティックに描出。
あらすじ
19世紀のイギリス、ジェームズ・マレー博士(メル・ギブソン)は、オックスフォード英語辞典(OED)の編纂を任される。この壮大なプロジェクトは、シェイクスピアの時代まで遡り、英語の全単語とその変遷を収録するという途方もない挑戦だった。しかし、学士号を持たない異端の学者マレーは、理事会からの懐疑的な視線に晒され、作業は難航する。一方、アメリカ人の元軍医ウィリアム・チェスター・マイナー(ショーン・ペン)は、南北戦争のトラウマから精神を病み、人違いでジョージ・メレットを射殺。精神病院に収監されるが、そこでマレーの辞典編纂の呼びかけを知り、膨大な用例カードを送り始める。二人は文通を通じて絆を深め、作業は加速する。しかし、マイナーが殺人犯であることが明るみに出ると、プロジェクトは危機に瀕し、時の内務大臣ウィンストン・チャーチルや王室を巻き込んだ騒動へと発展する。マイナーは罪悪感と幻覚に苦しみ、被害者の未亡人イライザとの関係にも揺れる。果たして、二人の友情と辞典の完成はどうなるのか。
解説
『博士と狂人』は、サイモン・ウィンチェスターのノンフィクション『博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話』を原作とする歴史ドラマです。OEDの編纂は、1857年から1928年まで71年を要した偉業であり、その裏には異端の学者と犯罪者の意外な協力関係があったという実話が基になっています。映画は、知識の探求、贖罪、友情といったテーマを丁寧に描き、言葉の力を通じて人間の複雑な内面を浮き彫りにします。マレーの革新的なボランティア募集法は、現代のウィキペディアを先取りしたような発想であり、マイナーの狂気と知性の両立は、精神疾患への偏見に一石を投じる要素となっています。ショーン・ペンの鬼気迫る演技とメル・ギブソンの落ち着いた存在感が、物語に深みを与え、ヴィクトリア朝の重厚な雰囲気も見事に再現されています。ただし、批評家の評価は賛否両論で、Rotten Tomatoesでは41%の支持率、Metacriticでは27/100と厳しい意見も見られます。物語の後半がやや混乱しているとの指摘や、マイナーの自傷行為など過激なシーンが一部視聴者に不快感を与えた可能性があります。それでも、言葉の歴史と人間ドラマの融合は、知的好奇心を刺激する作品として価値があります。
女優の活躍
本作では、ナタリー・ドーマーとジェニファー・イーリーが主要な女性キャラクターを演じています。
ナタリー・ドーマー(イライザ・メレット役)
ナタリー・ドーマーは、マイナーが殺害したジョージ・メレットの未亡人イライザを演じ、物語に感情的な深みを加えています。彼女の演技は、憎しみから許し、そして愛へと変化する複雑な心情を見事に表現。特に、マイナーとの面会シーンでは、子供たちを養うための葛藤と、加害者への感情の揺れを繊細に演じ、観客の心を掴みます。『ゲーム・オブ・スローンズ』でのマルガリー・タイレル役で知られるドーマーは、本作でもその存在感を発揮し、物語の人間ドラマを強化しています。彼女の登場シーンは、マイナーの贖罪のテーマと密接に結びつき、物語の感情的なクライマックスを担っています。
ジェニファー・イーリー(エイダ・マレー役)
マレーの妻エイダを演じるジェニファー・イーリーは、夫を支える献身的な女性として登場。彼女の役柄は控えめながら、マレーがプロジェクトの重圧に苦しむ中で、家庭の安定を保つ重要な存在です。特に、マイナーの犯罪者としての正体が明らかになった際、理事会に乗り込んでマレーを擁護するシーンでは、毅然とした姿勢を見せ、物語に力強いアクセントを加えます。イーリーの演技は、抑制された感情の中に深い愛情を滲ませ、ヴィクトリア朝の女性の品格を体現しています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装・化粧・髪型は、19世紀のヴィクトリア朝の雰囲気を忠実に再現しつつ、キャラクターの個性を反映しています。衣装デザインはイマー・ニー・バルドウニグが担当。
ナタリー・ドーマー(イライザ・メレット)
イライザの衣装は、貧困に苦しむ未亡人の生活を反映し、質素で暗い色調のドレスが中心。灰色や濃紺のウールのドレスは、ヴィクトリア朝の下層階級の現実を表現し、彼女の困窮を強調します。物語が進むにつれ、マイナーとの交流で心が変化する様子を反映し、淡い色のスカーフや控えめな装飾が加わる場面も。化粧はほぼ施さず、ナチュラルな肌に疲れと悲しみを湛えた表情が際立つ。髪型は、簡素なシニヨンや緩くまとめたスタイルで、未亡人としての慎ましさを表現。終盤、マイナーとの関係が深まるシーンでは、髪に柔らかいカールが加わり、わずかに希望を感じさせる演出が施されています。
ジェニファー・イーリー(エイダ・マレー)
エイダの衣装は、中流階級の学者の妻らしく、落ち着いた色合いのシルクやコットンのドレスが特徴。深緑やワインレッドのドレスに、繊細なレースやボタンが施され、品格と知性を表現。化粧は控えめで、上品な印象を与える薄いリップとチークが中心。髪型は、ヴィクトリア朝の上品な女性らしい、タイトにまとめたアップスタイルや、細かいカールで飾られたシニヨンが多用され、彼女の穏やかな性格を補完しています。理事会での演説シーンでは、ダークカラーのドレスに白い襟を合わせ、毅然とした姿勢を視覚的に強調しています。
キャスト
- ジェームズ・マレー: メル・ギブソン(日本語吹替: 磯部勉) – 独学の言語学者
- ウィリアム・チェスター・マイナー: ショーン・ペン(山路和弘) – 精神を病んだ元軍医
- イライザ・メレット: ナタリー・ドーマー(佐古真弓) – 被害者の未亡人
- マンシー: エディ・マーサン(魚建) – 精神病院の看守
- フレデリック・ジェームズ・ファーニヴァル: スティーヴ・クーガン(谷内健) – マレーを推薦した教授
- エイダ・マレー: ジェニファー・イーリー(塙英子) – マレーの妻
- チャールズ・ホール: ジェレミー・アーヴァイン – マレーの助手
- ヘンリー・ブラッドリー: ヨアン・グリフィズ – マレーの助手
- フィリップ・リッテルトン・ジェル: ローレンス・フォックス – 大学出版局長
- リチャード・ブレイン博士: スティーヴン・ディレイン(平林剛) – 精神病院の院長
- クレア:ゾーイ・ドゥイッチ
スタッフ
- 監督: P・B・シェムラン
- 脚本: トッド・コマーニキ、P・B・シェムラン
- 原作: サイモン・ウィンチェスター『博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話』
- 製作: ニコラス・シャルティエ、ガストン・パヴロヴィッチ
- 製作総指揮: ドミニク・ラスタム、ゼブ・フォアマン、ピーター・マカリーズ、タイラー・ザカリア、マニュ・ガルギ
- 撮影: キャスパー・タクセン
- 美術: トム・コンロイ
- 衣装: イマー・ニー・バルドウニグ
- 編集: ディノ・ヨンサーテル
- 音楽: ベアー・マクレアリー
- 配給: ヴァーティカル・エンターテインメント(米国)、ポニーキャニオン(日本)
- 製作会社: アイコン・フィルムズ、ヴォルテージ・ピクチャーズ
レビュー 作品の感想や女優への思い