『エロチックな足:足と靴の文化誌』は、ウィリアム・A・ロッシが執筆した、人間文化のユニークな側面を探求する一冊。
この本は、足と靴が持つエロチックな魅力に焦点を当て、人類の歴史を通じてその心理的・性的な意味を解き明かします。足は単なる移動のための器官ではなく、強い性的シンボルとして機能し、靴はその魅力を強調するセクシャルな道具として描かれています。
著者は、古代から現代に至る逸話や文化例を豊富に引用しながら、足フェティシズムの深層心理を明らかにします。例えば、中国の纏足習慣やシンデレラの物語を挙げ、足の変形や装飾がもたらす性的誘惑を論じます。
この本は、社会史の観点から足と靴の関係を考察し、読者に意外な発見を提供します。全体として、ユーモアを交えつつ学術的なアプローチを取っており、足元の世界が人間の欲望と深く結びついていることを示します。ページ数は384頁で、四六判の単行本です。足のエロティシズムをテーマに据えつつ、靴のデザインが性差やジェンダーを反映する点も興味深いです。
著者は、足の神経分布の豊富さからその性的感度を説明し、現代のファッション産業が無意識にこれを活用していると指摘します。このような視点は、日常の靴選びさえも新たな意味づけを与えます。
出版状況
この本の原著は、1976年にアメリカのSaturday Review Pressから『The Sex Life of the Foot and Shoe』として出版されました。日本語版は、筑摩書房から1999年1月7日に発行されています。翻訳は山内昶が監訳を務め、山内彰と西川隆が訳を担当しました。ISBNは978-4-480-85760-6で、定価は3,630円(税込)です。初版は帯付きで発売され、現在も中古市場で入手可能です。原著はKrieger Publishing Companyから1993年に再版されており、2023年にはTaylor & Francisから電子版がリリースされています。
日本語版は単行本形式で、脚注や参考文献も充実しています。出版当時、足フェティシのテーマがタブー視されがちだった中、筑摩書房は大胆に導入し、文化論としての価値を強調しました。再版の動きはなく、希少書として扱われていますが、オンライン書店で容易に探せます。この本の出版は、1990年代の日本でセクシュアリティを文化的に議論する風潮を反映しています。
あらすじ
この本は、章ごとに足と靴の性的側面を多角的に掘り下げます。全体の流れは、足の生物学的・心理学的基盤から始まり、歴史的逸話、文化例、現代のファッション分析へと進みます。以下に主な章の概要を挙げます。
- エロチックな足とセクシュアルな靴:足の性的魅力と靴の役割を導入します。足の神経が7,000以上あり、エロゲンゾーンとして機能することを科学的に説明します。靴は足を覆うことで神秘性を高め、性的シンボルになると論じます。
- 足を使ったセックス:足を活用した性的行為の歴史を概観します。古代の逸話から、足の触感がもたらす快楽を詳述します。
- 足元のセックス・シンボル:靴の形状が性差を表す例を挙げます。高跟靴が女性の姿勢を強調し、誘惑を強める点を分析します。
- 足の「性感神経」:足の生理学的敏感さを探り、フェティシの基盤を解明します。
- 東洋の足の性愛:中国の纏足習慣を焦点に、足の変形が性的美の基準となった文化を紹介します。小さな足が権力と美の象徴だった時代を、逸話とともに描きます。
- 足のおかげでセックスが:二足歩行の進化が人間の性行動に与えた影響を考察します。歩行が性的ディスプレイの役割を果たすと主張します。
- 知られざる足:足の隠された心理的意味を明らかにします。夢や芸術での足の象徴性を論じます。
- 靴をはく性的動機:靴選びの無意識的な性的動機を分析します。80%の靴が性的魅力目的で買われるというデータも引用します。
- 足のエロチックな芸術家:足をモチーフにした芸術作品をレビューします。画家や彫刻家が足のエロスを描いた例を挙げます。
- セクシー、セックスレス、ニューター、バイセクシュアルな靴:靴のタイプを心理的に分類します。セクシーなヒールから中性的なデザインまで、性的指向との関連を論じます。
- 足のセクシーな男性:男性の足の魅力に触れ、ジェンダーの逆転例を紹介します。
- 感じる高足:高足(ハイヒール)の感覚的快楽を詳述します。
- 歩行は性の罠:歩く動作が性的緊張を生むメカニズムを説明します。
- 足のサド・マゾヒズム:足を使ったSM的プレイの歴史を概観します。
- シンデレラはセクシー・ガール:シンデレラの靴を性的メタファーとして再解釈します。ガラスではなく毛皮製だった可能性を指摘します。
- 足の愛好家:フットフェティシストの心理を深掘りします。
- 靴の愛好家:シューフェティシの事例を挙げます。
- 踏みつけてくれ:踏みつけプレイの文化的背景を論じます。
- 肌に近いもの:靴下やストッキングの親密性を分析します。
- 足の美容:ペディキュアの性的意味を考察します。
- 検閲済み!:足関連の表現が検閲された歴史を紹介します。
- もの言う足:足が語る人間の欲望をまとめます。
- 脚注:参考文献と追加解説です。
これらの章を通じて、著者は足と靴が人類の性的進化に不可欠だったと結論づけます。ユーモラスな筆致で、重いテーマを軽やかに扱います。
登場女性
この本では、具体的な歴史的人物を直接主人公とした物語ではなく、逸話や文化例を通じて多くの女性が登場します。以下に主なものを挙げます。
- シンデレラ:有名な童話のヒロインです。著者は彼女のガラスの靴を性的シンボルとして再解釈し、毛皮製だった可能性を指摘します。この靴が王子を誘惑する道具として機能した点を強調します。
- 中国の纏足女性:唐代から清代にかけての貴族女性たちです。小さく包帯で縛られた「黄金の蓮」と呼ばれる足が、性的魅力の極致でした。皇帝や貴族がこれに魅了された逸話を多数紹介します。例えば、楊貴妃のような美女が纏足を実践し、宮廷の性的文化を象徴します。
- マリー・アントワネット:フランス王妃として、贅沢な靴のコレクションで知られます。著者は彼女のヒールが宮廷のエロティシズムを体現したと論じます。
- ヴィクトリア女王:保守的なイメージとは裏腹に、足の美容に熱心だった逸話を挙げます。靴のデザインがヴィクトリア朝の抑圧された性欲を反映すると分析します。
- 現代のセクシー・アイコン:マリリン・モンローなどのハリウッド女優が、高跟靴で歩く姿が足のエロスを象徴する例として登場します。彼女たちのポーズが男性の視線を集めるメカニズムを説明します。
- 匿名の発明家や芸術家:足をモチーフにした絵画のモデルとなった無名の女性たちです。例えば、ルネサンス期の画家が描いた裸足の女神像が、足の性的神聖さを示します。
これらの女性は、足を通じて時代ごとの性的規範を体現します。著者は、彼女たちの物語から普遍的な人間心理を抽出します。
読むメリット
この本を読むことで、以下のようなメリットが得られます。
- 文化的洞察の深化:足と靴の歴史を知ることで、ファッションの裏側にある性的動機を理解します。日常の靴が文化の鏡であることに気づきます。
- 心理的自己発見:足フェティシのメカニズムを学べ、自分の嗜好を客観視できます。神経科学の知見が、性的嗜好の多様性を肯定します。
- 娯楽性の高さ:奇抜な逸話が満載で、退屈知らずです。シンデレラの意外な解釈など、笑いを誘います。
- ジェンダー理解の促進:靴の分類から、男性・女性の性的表現の違いを考察します。現代のジェンダー論に繋がります。
- 参考文献の活用:脚注に豊富な資料があり、さらに深い研究の入り口となります。芸術や人類学の分野に広げられます。
- タブー打破の刺激:セクシュアリティをオープンに語ることで、読者の視野が広がります。検閲の歴史を知り、表現の自由を再認識します。
- 実用的アドバイス:靴選びのヒントが得られ、快適さと魅力のバランスを学べます。足の健康管理の重要性も示唆します。
全体として、この本は好奇心旺盛な読者に特におすすめです。足元の世界がこれほど魅力的とは知らず、読み終えた後、街中の靴に新たな目が向きます。性的テーマながら、学術的で中立的です。



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