『エターナルズ』(2021年公開、マーベル・スタジオ製作)は、クロエ・ジャオ監督によるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の作品で、地球を守るために数千年にわたり活動してきた不死の異星人「エターナルズ」の物語を描いています。
この映画に登場するキャラクター「セナ(Thena)」は、エターナルズのメンバーの中で特に重要な役割を担う戦士であり、その複雑な背景と魅力的なキャラクター造形が注目されています。以下では、セナというキャラクターについて、彼女の背景、能力、物語における役割、演じた俳優、そしてテーマ的な意義を中心に詳しくまとめます。
セナ
- 別人格:アズーラ
- 種族:エターナル
- 所属チーム:エターナルズ、ヒーローズ・フォー・ハイヤー、スターク・インターナショナル
- 著名な異名:セナ・エリオット、アテナ、ズーラ、ベティ・スー・ビアロフスキー、プライム・エターナル
能力
- 超人的な力、スタミナ、耐久力、スピード、敏捷性、反射神経
- 宇宙操作
- 物質変換
- サイコキネシス
- 再生
- 瞬間移動
- 不死
- 飛行
背景と設定
セナは、エターナルズの一人で、創造主であるセレスティアルのアリシェムによって作られた不死の存在です。エターナルズは、宇宙のバランスを保つためにディヴィアンツと呼ばれる怪物と戦う使命を与えられており、セナはその中でも戦闘に特化した戦士として描かれています。彼女のキャラクターは、ギリシャ神話の知恵と戦争の女神アテナ(Athena)に着想を得ており、名前も「Thena」としてその影響を反映しています。映画では、彼女が紀元前5000年頃から人類の歴史に寄り添い、ディヴィアンツとの戦いや文明の発展を見守ってきたことが示されます。
セナの特徴の一つは、彼女が抱える「マハド・ワイリー(Mahd Wy’ry)」と呼ばれる精神的な病です。これは、エターナルズが長期間の記憶を蓄積することで精神が不安定になる状態で、セナはこの症状に苦しみ、過去の記憶や使命に対する混乱を経験します。この設定は、彼女のキャラクターに深みを与え、不死であることの重荷やアイデンティティの葛藤を象徴しています。
能力と戦闘スタイル
セナは、エターナルズの中でも卓越した戦闘能力をもつキャラクターです。彼女の主な能力は、宇宙エネルギーを操って武器を具現化することであり、特に槍や剣、盾といった武器を自在に作り出し、流れるような動きで戦います。映画の戦闘シーンでは、彼女の優雅で力強い戦い方が強調され、まるで舞踏のような美しさと致命的な精度を兼ね備えています。たとえば、バビロニアでのディヴィアンツとの戦いや、現代の南極での戦闘シーンでは、彼女のスピードと戦略的な攻撃が際立っています。
セナの戦闘スタイルは、単なる力強さだけでなく、知性と冷静さを反映しており、彼女が「戦争の女神」としての役割を体現していることがわかります。しかし、マハド・ワイリーの影響で、戦闘中に突然混乱状態に陥ることがあり、これが彼女の強さと脆弱性の両方を描く重要な要素となっています。
物語における役割
『エターナルズ』の物語は、ディヴィアンツの再来と、セレスティアルの計画「エマージェンス」(新たなセレスティアルの誕生のために地球を犠牲にする計画)を阻止するエターナルズの葛藤を中心に展開します。セナはこの物語において、チームの戦力としての役割だけでなく、感情的・テーマ的な柱としても機能します。
マハド・ワイリーと内面的な葛藤
セナのマハド・ワイリーは、物語の重要なサブプロットです。彼女は、過去の記憶や異なる惑星での使命がフラッシュバックし、現実と記憶の境界が曖昧になることで苦しみます。この状態は、彼女がエターナルズの使命に対する疑問を抱くきっかけとなり、物語が進むにつれて、彼女が自分自身の存在意義や自由意志について考える姿が描かれます。セナのこの葛藤は、映画全体のテーマである「神と人間の関係」や「自由意志の価値」と密接に結びついています。
ギルガメッシュとの絆
セナの物語においてとくに感動的なのは、彼女とギルガメッシュ(演:ドン・リー)の関係です。ギルガメッシュは、セナのマハド・ワイリーによる混乱を抑えるために彼女を支え、共にオーストラリアの僻地で静かに暮らしていました。二人の関係は、恋愛というよりも深い信頼と相互依存に基づくもので、ギルガメッシュの優しさと犠牲的な行動がセナの精神的な安定を支えます。ギルガメッシュの死後、セナは彼の遺志を継ぎ、エマージェンスを阻止する戦いに身を投じることで、彼女の成長と決意が描かれます。
エマージェンスへの貢献
物語のクライマックスでは、セナはエターナルズの他のメンバーと共に、セレスティアルのティアマトの誕生を阻止する「ユニマインド」を形成する一員となります。彼女の戦闘能力は、ディヴィアンツや裏切ったエターナルズのイカリスとの戦いで重要な役割を果たし、チームの勝利に貢献します。セナの行動は、単なる戦士としての義務を超え、地球と人類への愛情、そして仲間への忠誠心を示しています。
セナを演じたアンジェリーナ・ジョリー
セナは映画『エターナルズ』に登場し、アンジェリーナ・ジョリーが演じました。この映画版でセナは “Mahd Wy’ry “を患っており、エターナルズは数世紀にわたる人生で多くの記憶を蓄積した結果だと考えています。後に、任務を終えたエターナル全員に行われる”マインド・ワイプ”が失敗した結果であることが判明。ギルガメッシュと深い絆で結ばれ、クロと対決します。
アンジェリーナ・ジョリーは、セナの威厳と脆弱性を絶妙に表現し、キャラクターに深みを与えました。彼女の演技は、セナの戦士としての堂々とした姿勢と、マハド・ワイリーによる内面的な苦悩の両方を観客に伝えるもので、特にギルガメッシュとのシーンでは感情的な繊細さが光ります。
ジョリー自身、インタビューでセナの役柄について、「不死の存在としての孤独と、仲間との絆を通じて見出す希望」を表現したかったと語っており、クロエ・ジャオ監督のビジョンに共感して役を引き受けたことを明かしています。彼女の存在感は、映画のアンサンブルキャストの中でも特に際立っており、セナを記憶に残るキャラクターにしています。
テーマ的意義
セナのキャラクターは、『エターナルズ』のテーマである「神話と人間性」「使命と自由意志」の探求を体現しています。不死の存在として創造されたセナは、セレスティアルの命令に従う機械的な存在ではなく、感情や疑問を抱く人間的な側面を持っています。マハド・ワイリーは、彼女の不死性と記憶の重荷を象徴し、完璧な神話的英雄像を壊すことで、観客に「完全さとは何か」「生きるとは何か」を問いかけます。
また、セナとギルガメッシュの関係は、映画全体の「家族」や「絆」というテーマを強化します。エターナルズは、単なるチームではなく、長い年月を共にした家族のような存在であり、セナの物語はその中心にあります。彼女がギルガメッシュの死を乗り越え、仲間と共に新たな道を歩む姿は、喪失と再生の物語として感動的です。
映画外での影響
セナは、MCUにおける多様なキャラクターの一人として、観客に強い印象を与えました。アンジェリーナ・ジョリーのキャスティングや、クロエ・ジャオの監督としての独特なアプローチ(自然光の使用やロケーション撮影の重視)により、セナは視覚的にもテーマ的にも記憶に残るキャラクターとなりました。映画公開後、セナのコスチュームや戦闘シーンはコスプレイヤーやファンアートの題材となり、彼女の物語は多くの議論を呼びました。
また、映画のエンディングでセナは他のエターナルズのメンバー(ドルイグ、セルシ、マッカリ)と共に宇宙船ドーモで新たな冒険に向かうことが示唆され、続編やMCUの今後の展開での再登場が期待されています。とくに、セナがマハド・ワイリーを克服し、自身の使命を再定義する姿は、MCUのフェーズ4が掲げる「新たなヒーローの誕生」というテーマに合致しています。
まとめ
セナは、『エターナルズ』において、戦士としての強さと人間的な脆さを併せ持つ魅力的なキャラクターです。彼女の戦闘能力、マハド・ワイリーによる葛藤、ギルガメッシュとの絆、そしてエマージェンス阻止への貢献は、映画の物語とテーマを深める重要な要素です。アンジェリーナ・ジョリーの演技により、セナは神話的な存在でありながら、観客に共感を呼ぶキャラクターとして描かれました。彼女の物語は、不死の重荷、自由意志の探求、そして仲間との絆を通じて、MCUの新たな地平を切り開くものであり、今後の展開でのさらなる活躍が期待されます。
レビュー 作品の感想や女優への思い