『トラフィック』(TRAFFIC、2000年)はスティーヴン・ソダーバーグ監督の群像サスペンス。アメリカとメキシコの麻薬戦争を三つの視点から描き、リアルな社会問題を浮き彫りに。アカデミー賞4部門受賞。本作では、キャサリン・ゼタ=ジョーンズとエリカ・クリステンセンが特に際立つ演技を見せる。
基本情報
- 邦題:トラフィック
- 原題:TRAFFIC
- 公開年:2000年
- 製作国:米国
- 上映時間:148分
- ジャンル:サスペンス、ドラマ
あらすじ
『トラフィック』は、アメリカとメキシコを舞台に、麻薬密輸とその撲滅に挑む人々の姿を三つの並行する物語で描いた群像劇です。メキシコのティファナでは、誠実な警察官ハビエル・ロドリゲス(ベニチオ・デル・トロ)が、麻薬カルテルと癒着する上層部に翻弄されながら正義を貫こうとします。アメリカのオハイオ州では、麻薬対策本部長に任命された判事ロバート・ウェークフィールド(マイケル・ダグラス)が、自身の娘キャロライン(エリカ・クリステンセン)の麻薬中毒に直面し、公私で葛藤します。一方、サンディエゴでは、麻薬王の妻ヘレーナ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)が、夫の逮捕後、家族を守るために裏社会に足を踏み入れます。それぞれの物語は独立しつつも、麻薬問題の複雑な構造を浮き彫りにし、個人と社会の闘いを描きます。
解説
『トラフィック』は、2000年に公開されたスティーヴン・ソダーバーグ監督による社会派サスペンスで、1989年の英国ドラマ『Traffik』を原作としています。麻薬密輸の闇と、それに立ち向かう人々の苦悩をリアルに描き、第73回アカデミー賞で監督賞、助演男優賞(ベニチオ・デル・トロ)、脚色賞、編集賞の4部門を制覇。ゴールデングローブ賞やベルリン国際映画祭でも高く評価されました。物語は、メキシコの黄色がかった映像、オハイオの青みがかった映像、カリフォルニアの鮮明な映像と、視覚的な色調の違いで三つのストーリーを区別し、観客に複雑な群像劇を理解しやすくしています。ドキュメンタリー風の手持ちカメラやリアルな対話が、麻薬問題の構造的課題—供給と需要、腐敗、家庭崩壊—を浮き彫りにし、観客に深い洞察を促します。ソダーバーグの演出は、個々の登場人物のドラマを丁寧に織り交ぜ、麻薬戦争の多面的な影響を示しています。
女優の活躍
本作ではキャサリン・ゼタ=ジョーンズとエリカ・クリステンセンが特に際立つ演技を見せています。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(ヘレーナ・アヤラ役)
ヘレーナは、麻薬王の妻として裕福な生活を送る主婦が、夫の逮捕を機に家族を守るため裏社会に踏み込む女性を演じます。ゼタ=ジョーンズは、最初は無垢で世間知らずな女性から、冷酷で計算高い人物へと変貌する過程を見事に表現。彼女の演技は、感情の揺れと決断力を強調し、物語に緊張感を加えます。特に、夫の裏の顔を知り、家族の存続のために非情な選択をする場面では、彼女の迫真の演技が光ります。撮影当時、ゼタ=ジョーンズは実際に妊娠中であり、そのリアルな状況が役に深みを加えました。
エリカ・クリステンセン(キャロライン・ウェークフィールド役)
麻薬対策本部長の娘で、麻薬中毒に陥るティーンエイジャーを演じます。クリステンセンは、優等生から依存症に落ちていく少女の脆さと絶望を繊細に表現。彼女の演技は、麻薬が個人や家庭に与える破壊的な影響を象徴し、観客に強い印象を与えます。特に、父親との対立やリハビリシーンでの感情的な演技は、物語の人間ドラマを深化させました。
女優の衣装・化粧・髪型
衣装や化粧、髪型は、キャラクターの社会的地位や心理的変化を反映し、物語のリアリティを高めています。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(ヘレーナ)
初期のヘレーナは、裕福な主婦としてエレガントな衣装を着用。柔らかい色調のドレスやカーディガン、洗練されたパールのアクセサリーが、彼女の恵まれた生活を象徴します。化粧はナチュラルで、口紅やアイメイクも控えめ。髪型は、ゆるやかなウェーブのロングヘアで、上品さを強調。しかし、物語が進むにつれ、彼女の衣装はダークトーンのスーツやジャケットに移行し、ビジネスライクで冷徹な印象に変化。化粧もシャープなアイラインや濃い口紅で強さを表現し、髪はタイトなアップスタイルに変わり、彼女の内面的な変貌を視覚的に示します。
エリカ・クリステンセン(キャロライン)
キャロラインの衣装は、ティーンらしいカジュアルなスタイルから始まります。学校の制服やジーンズ、Tシャツが中心で、若々しさと無垢さを表現。化粧はほぼなく、自然な肌と軽いリップが彼女の年齢を強調します。髪型はポニーテールやルーズなダウンスタイルで、普通の高校生らしい印象。しかし、麻薬依存が進行するにつれ、衣装は乱雑になり、ダークな色合いの服やしわくちゃのトップスが登場。化粧は目の下のクマや薄汚れた肌で、依存症の影響を表現。髪も乱れ、かつての活気が失われた様子が視覚的に伝わります。
キャスト
- マイケル・ダグラス:ロバート・ウェークフィールド(麻薬対策本部長)
- ベニチオ・デル・トロ:ハビエル・ロドリゲス(メキシコ警察官)
- キャサリン・ゼタ=ジョーンズ:ヘレーナ・アヤラ(麻薬王の妻)
- エリカ・クリステンセン:キャロライン・ウェークフィールド(ロバートの娘)
- ドン・チードル:モントル・ゴードン(麻薬取締局捜査官)
- ルイス・ガスマン:レイ・カストロ(捜査官)
- デニス・クエイド:アーノルド・アルバートソン(弁護士)
- ジェームズ・ブロリン:ラルフ・ランドリー(将軍)
- ベンジャミン・ブラット:フアン・オブレゴン(麻薬カルテル幹部)
- トーマス・ミリアン:サラザール将軍
- トファー・グレイス:セス・アブラムス(キャロラインの友人)
スタッフ
- 監督:スティーヴン・ソダーバーグ
- 脚本:スティーヴン・ギャガン
- 原作:サイモン・ムーア(『Traffik』)
- 製作:ローラ・ビックフォード、マーシャル・ハースコヴィッツ、エドワード・ズウィック
- 撮影:スティーヴン・ソダーバーグ(ピーター・アンドリュース名義)
- 編集:スティーヴン・ミリオン
- 音楽:クリフ・マルティネス
- 配給:日本ヘラルド映画(日本)、USAフィルムズ(アメリカ)
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