『ホワイト・オランダー』（2002年・米国）はジャネット・フィッチのベストセラー小説を映画化したもの。母の逮捕後、里親を転々とする少女の葛藤と成長を描く感動作。芸術家でありながら支配的で自己中心的な母親イングリッドをミシェル・ファイファーが圧倒的な存在感で演じる。
基本情報
- 邦題：ホワイト・オランダー
- 原題：White Oleander
- 公開年：2002年
- 製作国：米国
- 上映時間：109分
- ジャンル：ドラマ
あらすじ
15歳のアストリッド・マグヌセン（アリソン・ローマン）は、ロサンゼルスでカリスマ的な芸術家の母イングリッド（ミシェル・ファイファー）と暮らしています。イングリッドは美しく才能に溢れ、強い影響力でアストリッドを支配していますが、恋人のバリー（ビリー・コノリー）の裏切りを知り、彼を毒殺してしまいます。この事件でイングリッドは逮捕され終身刑を宣告され、アストリッドは天涯孤独となり、児童相談所を通じて里親のもとへ送られます。
最初の里親スター（ロビン・ライト）は宗教的な女性ですが、不安定な生活を送っており、アストリッドは彼女の愛人との関係を誤解され、撃たれて負傷します。次の里親である裕福な俳優夫妻のクレア（レニー・ゼルウィガー）とマーク（ノア・ワイリー）の家では、クレアの優しさに心を開きかけますが、イングリッドの嫉妬深い介入によりクレアは精神的に追い詰められ自殺。傷心のアストリッドはイングリッドとの関係を断ち切ろうと決意します。最後の里親レナ（スヴェトラーナ・エフレモーヴァ）の家では厳しい環境の中、アストリッドは同世代のポール（パトリック・フュジット）と出会い、初めて自分自身のアイデンティティを見出します。
イングリッドの刑期短縮のための証言を求められたアストリッドは、母との過去の真実を知り、嘘の証言を条件に決別を選びます。しかし、裁判では証言を求められず、イングリッドは娘を自由にする選択をします。アストリッドは母の呪縛から解放され、自身の人生を歩み始めます。
解説
『ホワイト・オランダー』は、ジャネット・フィッチのベストセラー小説『扉』を原作としたヒューマンドラマで、母と娘の複雑な関係性と、少女の自立への旅路を繊細に描いています。原題の「White Oleander」は、劇中に登場する毒性のあるキョウチクトウ（夾竹桃）を指し、イングリッドの美しくも危険な愛を象徴しています。監督のピーター・コズミンスキーは、感情の機微を丁寧に捉え、視覚的な美しさと心理的な深みを融合させました。映画は、支配的な親子関係、養子縁組制度の課題、個人のアイデンティティ形成といったテーマを掘り下げ、観客に深い思索を促します。トーマス・ニューマンの音楽は、物語の情感を一層引き立て、登場人物の内面的な葛藤を表現しています。また、豪華女優陣の競演は、物語にリアリティと重層的な魅力をもたらし、特に若いアストリッド役のアリソン・ローマンが新鮮な存在感を示しました。この映画は、家族の絆と個の自由という普遍的なテーマを通じて、観る者の心に強い印象を残します。
女優の活躍
ミシェル・ファイファー（イングリッド・マグヌセン）
ミシェル・ファイファーは、芸術家でありながら支配的で自己中心的な母親イングリッドを圧倒的な存在感で演じました。彼女の美貌とカリスマ性は、イングリッドの魅力と同時にその毒性を体現し、観客を惹きつけます。特に、獄中から娘を操ろうとするシーンでは、冷徹さと脆弱さを絶妙に表現し、複雑なキャラクターに深みを与えました。ファイファーの演技は、物語の中心的な緊張感を生み出し、批評家からも高い評価を受けました。
アリソン・ローマン（アストリッド・マグヌセン）
新人だったアリソン・ローマンは、400人以上のオーディションを勝ち抜き、主人公アストリッドを演じました。感受性豊かな少女が過酷な環境で成長する姿を、繊細かつ力強く表現。彼女の演技は、物語の感情的な軸となり、観客に共感を呼びました。特に、里親たちとの関係や母との対立を通じて変化していく表情や仕草は、彼女の才能を証明するものでした。
レニー・ゼルウィガー（クレア・リチャーズ）
レニー・ゼルウィガーは、優しくも心に闇を抱える里親クレアを演じ、短い出演時間ながら強烈な印象を残しました。クレアの温かさと脆さを繊細に表現し、特にイングリッドとの対峙シーンでは、感情の揺れを見事に演じきりました。彼女の演技は、物語に悲劇的な深みを加え、観客の心を打ちます。
ロビン・ライト（スター）
ロビン・ライトは、宗教的で不安定な里親スターを力強く演じました。スターの激情と脆さを体現し、アストリッドとの衝突シーンでは緊張感を高めました。ライトの演技は、物語の初期の過酷さを強調し、アストリッドの成長の対比を際立たせます。
女優の衣装・化粧・髪型
ミシェル・ファイファー（イングリッド）
イングリッドの衣装は、芸術家らしいボヘミアン風のスタイルが特徴で、鮮やかな色彩のロングドレスやスカーフを多用。白や赤を基調とした衣装は、彼女のカリスマ性と劇中の「ホワイト・オランダー」の象徴性を強調します。化粧は、鋭い目元を際立たせるアイラインと自然な肌感で、知的かつ冷酷な印象を醸し出します。髪型は、緩やかなウェーブのブロンドヘアで、自由奔放な芸術家の雰囲気を表現。獄中ではシンプルなまとめ髪になり、彼女の孤立感を強調します。
アリソン・ローマン（アストリッド）
アストリッドの衣装は、物語の進行とともに変化し、彼女の成長を反映します。最初は母の影響を受けたシンプルでアーティスティックなワンピースやカジュアルなトップスを着用。スターの家では、宗教的な影響から保守的な長袖ブラウスやスカートが登場し、クレアの家では柔らかい色合いのフェミニンなドレスに。レナの家では、ダークトーンのカジュアルな服や革ジャケットで反抗的な一面を表現。化粧はほぼナチュラルで、少女らしい純粋さを保ちつつ、物語後半では軽いリップやアイメイクで大人への変化を示します。髪型は、ストレートのロングヘアから始まり、里親ごとにポニーテールや編み込み、短めのスタイルへと変化し、環境への適応を象徴します。
レニー・ゼルウィガー（クレア）
クレアの衣装は、裕福な生活を反映した上品で柔らかい色調のドレスやカーディガンが中心。パステルカラーやシルク素材が、彼女の優しさと脆弱さを表現します。化粧は、ナチュラルで温かみのあるピンク系のチークとリップで、親しみやすさを強調。髪型は、肩までの柔らかなウェーブヘアで、家庭的で優しい雰囲気を演出します。
ロビン・ライト（スター）
スターの衣装は、派手で露出度の高いトップスやタイトなジーンズで、彼女の不安定で奔放な性格を反映。赤やアニマル柄が多用され、強烈な個性を表現します。化粧は、濃いアイシャドウと赤いリップで挑発的な印象。髪型は、ボリュームのあるブロンドのロングヘアで、ワイルドな魅力を強調します。
キャスト
- アリソン・ローマン：アストリッド・マグヌセン（日本語吹替：本名陽子）
- ミシェル・ファイファー：イングリッド・マグヌセン（日本語吹替：勝生真沙子）
- レニー・ゼルウィガー：クレア・リチャーズ（日本語吹替：安藤麻吹）
- ロビン・ライト：スター（日本語吹替：山像かおり）
- ビリー・コノリー：バリー・コルカー（日本語吹替：辻つとむ）
- スヴェトラーナ・エフレモーヴァ：レナ（日本語吹替：宮寺智子）
- パトリック・フュジット：ポール・トラウト（日本語吹替：浪川大輔）
- ノア・ワイリー：マーク・リチャーズ（日本語吹替：内田夕夜）
- エイミー・アキノ：マルティネス（日本語吹替：磯辺万沙子）
スタッフ
- 監督：ピーター・コズミンスキー
- 脚本：メアリー・アグネス・ドナヒュー
- 原作：ジャネット・フィッチ（『扉』）
- 製作：ジョン・ウェルズ、ハント・ロウリー
- 製作総指揮：ステイシー・コーエン、E・K・ゲイロード二世、クリスティン・ハームズ、パトリック・マーキー
- 撮影：エリオット・デイヴィス
- 美術：ドナルド・グラハム・バート
- 編集：クリス・リズデイル
- 音楽：トーマス・ニューマン
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