「チャーリーズ・エンジェル」シリーズの歴史

『チャーリーズ・エンジェル』（Charlie’s Angels）は、1976年のTV番組に始まり、複数のメディアで展開され、アクションと女性のエンパワーメントをテーマに長きにわたり愛されてきたフランチャイズです。以下は、シリーズの歴史を詳細にまとめた解説。シリーズの起源、変遷、文化的影響をカバーします。これにより、2020年映画版の背景をより深く理解できれば幸いです。。

起源：1976年～1981年 TVドラマ番組

『チャーリーズ・エンジェル』は、1976年9月22日にABCで放送開始されたテレビドラマシリーズが起源です。アイヴァン・ゴフとベン・ロバーツが企画し、アーロン・スペリングとレナード・ゴールドバーグが製作を担当。物語は、謎の富豪チャーリー・タウンゼントが運営する私立探偵事務所に所属する3人の女性エージェント（エンジェル）が、チャーリーの指示を受け、危険な任務を遂行する姿を描きます。チャーリーは声のみで登場（ジョン・フォーサイスが声優を担当）、現場の指揮はボスレー（デヴィッド・ドイル）が担当しました。

主要キャスト

• ケイト・ジャクソン（サブリナ・ダンカン）：頭脳明晰なリーダー（シーズン1～3）。
• ファラ・フォーセット（ジル・マンロー）：スポーツ万能でセクシーな魅力（シーズン1、ゲスト出演で復帰）。
• ジャクリーン・スミス（ケリー・ギャレット）：心優しく安定感のあるメンバー（全シーズン）。
• シェリル・ラッド（クリス・マンロー）：ジルの妹、シーズン2から加入。
• シェリー・ハック（ティファニー・ウェルズ）、タニア・ロバーツ（ジュリー・ロジャース）らが後期に登場。

特徴と影響

• 女性の活躍：当時、女性が主役のアクションシリーズは珍しく、警察学校出身の女性たちが知性と身体能力で事件を解決する設定は画期的でした。視聴率は初回から高く、1976～77年のシーズン1は全米で平均2000万人が視聴。
• ポップカルチャーのアイコン：ファラ・フォーセットの赤い水着ポスターは1970年代の文化的象徴となり、1000万枚以上を売り上げる大ヒット。エンジェルたちのファッションやヘアスタイルも流行を牽引しました。
• 批判と限界：セクシーさを強調した衣装や「ジグルTV」（女性の身体を強調する番組）との批判も受け、フェミニストからは「女性の客体化」との声が。一方で、女性が自立して活躍する姿は、後の女性主導作品に影響を与えました。

全5シーズン（1976～1981年、計110話）で終了しましたが、リピート放送や国際的な人気により、シリーズはカルト的な地位を確立。1980年代以降もリブートや映画化の土壌を築きました。

1990年代～2000年代：映画化とリブート

2000年・2003年映画版

1990年代後半、TV番組の人気を受け、映画化が企画されました。2000年公開の『チャーリーズ・エンジェル』（監督：マックG）は、キャメロン・ディアス（ナタリー）、ドリュー・バリモア（ディラン）、ルーシー・リュー（アレックス）を主演に据え、現代的なアップデートを施した作品です。2003年の続編『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』も同じキャストで製作されました。

• 特徴：オリジナルシリーズの軽快なトーンを継承しつつ、MTV風のポップな演出、派手なアクション、ユーモアを強調。ビル・マーレイ（2000年）やバーニー・マック（2003年）がボスレー役で登場。音楽（デスティニーズ・チャイルドの「Independent Women Part I」など）やファッションも話題に。
• 興行と評価：2000年映画は全世界で2.64億ドルの興行収入を記録し、批評家からも「楽しくエネルギッシュ」と好評（Rotten Tomatoes 68%）。2003年の続編は2.59億ドルを稼ぐも、評価は低下（Rotten Tomatoes 42%）。
• 文化的影響：女性3人組のアクション映画として、『キル・ビル』や『マトリックス』と並び、2000年代初頭のポップカルチャーを定義。ドリュー・バリモアの製作参加も、女性主導の映画製作の先駆けとなりました。

TVリブート（2011年）

2011年、ABCで新たなテレビシリーズが放送（全8話）。ミニー・ドライヴァー、レイチェル・テイラー、アニー・イロンゼがエンジェルを演じ、マイアミを舞台に現代的な物語を展開。しかし、視聴率が振るわず、4話放送後に打ち切り。批評家からは「オリジナルや映画版の魅力を再現できていない」と批判されました。

2019年映画：現代的リブート

2019年公開（日本2020年）の映画版は、エリザベス・バンクスが監督・脚本・出演を兼ね、クリステン・スチュワート、ナオミ・スコット、エラ・バリンスカを主演に起用。詳細は前述の通りですが、シリーズの歴史的文脈では以下の点が重要です。

• 設定の拡張：チャーリー・タウンゼント社が国際的な組織に進化し、複数のエンジェルチームやボスレーが存在。オリジナルシリーズの単一チームからスケールアップ。
• 現代的価値観：セクシーさよりも女性の知性や団結を重視し、#MeToo運動後のジェンダー意識を反映。オリジナルファン向けにジャクリーン・スミスらのカメオも。
• 評価と課題：興行収入は7300万ドル（予算4800万ドル）と振るわず、批評家からも賛否両論（Rotten Tomatoes 52%）。シリーズの歴史的魅力と現代性のバランスが課題とされました。

文化的意義と今後の展望

『チャーリーズ・エンジェル』は、女性が主役のアクション作品のパイオニアとして、テレビと映画の両方で影響を与えました。1970年代のセクシーな探偵像から、2000年代のポップなヒーロー、2010年代のエンパワーメント重視のヒーローへと進化し、時代ごとの女性像を反映。フェミニズムの進展とともに、シリーズは「女性の客体化」批判に応え、現代的な自立像を描く努力を続けています。

しかし、2019年映画の興行的失敗により、即時の続編は困難な状況。ストリーミング時代では、NetflixやAmazon Primeでのリブートや、オリジナルキャストの再結集（例：キャメロン・ディアスら）への期待もファンから寄せられています。女性主導のアクション映画市場は『バービー』（2023年）や『ブラック・ウィドウ』（2021年）で拡大中であり、シリーズの再活性化の可能性は残っています。