倒叙形式(とうじょけいしき)のミステリーは、英語で「howcatchem(ハウキャッチェム)」とも呼ばれるミステリーのサブジャンルで、物語の冒頭で犯人や犯行の詳細を視聴者や読者に明かし、その後で探偵や主人公がどのようにして真相を解き明かし、犯人を追い詰めるかを描く手法です。従来の「whodunit(フーダニット)」形式が「誰が犯人か」を中心に展開するのに対し、倒叙形式は「どうやって捕まえるか」に焦点を当てます。この形式は、謎解きのプロセスやキャラクターの知恵、観察力、心理戦を強調し、視聴者に独特の緊張感と知的興奮を提供します。
特徴
倒叙形式のミステリーには以下のような特徴があります。
犯行の開示
物語の冒頭で、犯人、動機、犯行の手口が明示されます。視聴者は「犯人が誰か」ではなく、犯人がどのようにして隠蔽を図り、探偵がどうやってその企みを暴くかに注目します。
探偵の視点
主人公(多くの場合、探偵や捜査者)の鋭い観察力や推理力が物語の中心となり、犯人のミスや手がかりを見逃さずに真相に迫ります。
心理戦と緊張感
犯人と探偵の知的な対決が描かれ、犯人が逃げ切ろうとする試みと探偵の追跡がサスペンスを生み出します。
キャラクター主導
倒叙形式は、探偵や犯人の個性や人間性を深く掘り下げる傾向があり、単なる謎解きを超えたドラマチックな展開が魅力です。
代表的な作品
倒叙形式の代表作として、1970年代のアメリカドラマ『刑事コロンボ』が挙げられます。この作品では、ピーター・フォーク演じるコロンボ警部が、犯行の全貌を視聴者に示した後、独特のユーモアと鋭い質問で犯人を追い詰めます。各エピソードは、犯人の完璧に見える計画が、コロンボの執念深い捜査によって崩される過程を描き、視聴者を引き込みます。『ポーカー・フェイス』(2023年)もこの形式を採用し、ナターシャ・リオン演じるチャーリー・ケールが嘘を見抜く能力を活かし、犯人を追い詰める展開が特徴です。
魅力と視聴体験
倒叙形式の魅力は、視聴者が犯人の視点と探偵の視点の両方を体験できる点にあります。犯行の詳細を知っているため、視聴者は探偵が見逃しそうな手がかりや、犯人の小さなミスに注目し、推理のプロセスを一緒に楽しめます。また、探偵の個性やユーモアが物語に深みを加え、単なる謎解き以上のエンターテインメントを提供します。たとえば、『ポーカー・フェイス』では、チャーリーのカジュアルな魅力と機知に富んだ対話が、倒叙形式の緊張感を軽快なコメディに昇華しています。
他の形式との違い
Whodunit(フーダニット)
アガサ・クリスティの作品などに代表される形式で、犯人の正体を最後まで隠し、読者や視聴者に推理を楽しませます。
Whydunit(ワイダニット)
動機に焦点を当て、なぜ犯罪が起きたかを探る形式。
ポイント
倒叙形式は、これらとは異なり、犯人や動機を最初に提示することで、ストーリーテリングの重心を「過程」に移し、視聴者に新たな視点を提供します。
結論
倒叙形式のミステリーは、犯行の全貌を最初に明かすことで、探偵の推理力やキャラクターの魅力を最大限に引き出す独特の手法です。『刑事コロンボ』や『ポーカー・フェイス』のように、ユーモアや人間ドラマを織り交ぜた作品が多く、視聴者に知的で楽しい体験を提供します。この形式は、単なる謎解きを超え、ストーリーの展開やキャラクターの対決を楽しみたい方に特におすすめです。
レビュー 作品の感想や女優への思い