『フェリーニに恋して』は、イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニに魅せられた少女ルーシーが、彼を探す旅に出るファンタジックなドラマ。ローマやベネチアを舞台に、母娘の絆と成長を描く。2016年製作、アメリカ、103分。
基本情報
- 邦題:フェリーニに恋して
- 原題:In Search of Fellini
- 公開年:2016年
- 製作国:米国
- 上映時間:103分
見どころ
主演は『ブラック・スワン』のクセニア・ソロ。フェリーニ作品に登場した人物との出会いをファンタジックに描く。病に侵されながらも、娘の成長を強く願う母の姿に感動。
あらすじ
1993年、アメリカのオハイオ州で暮らす20歳のルーシー(クセニア・ソロ)は、過保護な母クレア(マリア・ベロ)に守られ、世間知らずに育ちました。恋愛や友人関係、仕事の経験がなく、モノクロのクラシック映画を愛する彼女は、ある日、母が末期疾患を患っていることを知ります。自立を決意するルーシーですが、就職活動はうまくいきません。そんな中、偶然訪れた劇場で開催されていた「フェリーニ映画祭」で、フェデリコ・フェリーニの作品に初めて触れ、その幻想的で魅力的な世界に心を奪われます。特に『道』や『甘い生活』、『8 1/2』などの名作に影響を受け、フェリーニ本人に会いたいという強い衝動に駆られたルーシーは、単身イタリアへ旅立ちます。
ローマ、ベネチア、ベローナなどイタリアの美しい都市を巡る旅の中で、ルーシーはフェリーニの映画に登場するような不思議な人々や出来事に出会い、現実と幻想が交錯する冒険を体験します。旅を通じて、彼女は自分自身を見つめ直し、内面的な成長を遂げます。母との絆を再確認しつつ、初めての恋や友情、そして自立への一歩を踏み出す姿が描かれます。この物語は、フェリーニの作品へのオマージュとして、彼の映画の象徴的なシーンや雰囲気を織り交ぜながら、ルーシーの心の旅をファンタジックに描き出します。
解説
『フェリーニに恋して』は、イタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニへの愛と敬意を込めた作品です。監督のタロン・レクストンは、フェリーニの『道』、『甘い生活』、『8 1/2』など16作品以上へのオマージュを散りばめ、彼の映画の特徴である幻想と現実の融合、詩的な映像美、奇抜なキャラクター造形を巧みに再現しています。物語は、純粋で世間知らずな少女が、フェリーニの映画にインスパイアされ、未知の世界に飛び込むことで自己発見する過程を描いており、フェリーニの作品が持つ「夢想家こそが真のリアリスト」という哲学を体現しています。
イタリアのローマやベネチアの美しい風景は、フェリーニの映画に登場するような華やかで怪しげな雰囲気を醸し出し、観客を魅了します。ルーシーの旅は、まるで「フェリーニの国のアリス」とも称されるように、迷宮的で刺激的な冒険として描かれ、フェリーニファンだけでなく、成長物語やロードムービーを愛する観客にも訴えかける作品です。また、母と娘の深い絆や、過保護な親子関係から自立するテーマは、普遍的な共感を呼びます。映画はフェリーニの創造した世界へのラブレターでありながら、若者の成長と自己実現の物語として独自の魅力を持っています。
女優の活躍
本作の主人公ルーシーを演じたクセニア・ソロは、カナダ出身の女優で、『ブラック・スワン』(2010年)での助演で知られています。ルーシーの純粋さや好奇心、そして内面的な葛藤を見事に表現し、観客に感情移入させる演技が評価されました。彼女のナイーブでありながらも勇敢な姿勢は、フェリーニの映画に登場する無垢なキャラクターを彷彿とさせ、物語の中心として作品を牽引します。特に、イタリアでの冒険を通じて徐々に自信を獲得していく姿は、彼女の繊細な演技によって説得力を持っています。
ルーシーの母クレア役を務めたマリア・ベロは、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005年)や『プリズナーズ』(2013年)で知られる実力派女優です。本作では、過保護ながら愛情深い母親像を丁寧に演じ、ルーシーとの心のつながりを感動的に描き出しました。クレアの病と向き合う姿勢や、娘を思うあまりの葛藤は、マリア・ベロの情感豊かな演技により深みを与えられています。彼女の存在感は、物語の後半でルーシーの成長を支える重要な要素となっています。
女優の衣装・化粧・髪型
ルーシーを演じたクセニア・ソロの衣装は、彼女の純粋で少し古風な性格を反映しています。物語の冒頭では、シンプルで控えめなワンピースやカーディガンを着用し、若々しく無垢な印象を与えます。色調は柔らかいパステルカラーや中間色が多く、彼女の内向的な性格を表現。イタリアに旅立つと、フェリーニ映画の華やかな世界観に影響を受けた、クラシックで少し劇的なスタイルの衣装が登場します。たとえば、ベネチアでのシーンでは、フェリーニの『甘い生活』を思わせるエレガントなドレスが登場し、彼女の成長とともに衣装も変化します。化粧は控えめで、ナチュラルなメイクが中心。ルーシーの無垢さを強調するため、淡いリップと軽いチークが施され、物語が進むにつれて少し大胆なメイクが加わり、自信の芽生えを表現しています。髪型は、ルーズなウェーブのロングヘアで、少女らしさとフェリーニ映画のロマンティックな雰囲気を融合させています。
マリア・ベロ演じるクレアの衣装は、家庭的で落ち着いたスタイルが特徴です。ゆったりとしたブラウスやスカートを着用し、母親としての温かみと病による弱さを表現。化粧はほとんど施さず、ナチュラルで疲れた表情がクレアの内面を反映しています。髪型はシンプルなミディアムヘアで、時折乱れた様子が彼女の心の揺れを示唆します。衣装やメイクを通じて、ルーシーとクレアの対比が明確に描かれ、母娘の関係性の変化が視覚的にも伝わります。
キャスト
- ルーシー:クセニア・ソロ
- クレア:マリア・ベロ
- ケリー:メアリー・リン・ライスカブ
- ピエトロ:ベス・グラント
- アンジェロ:デビッド・オドネル
- シルビア:ベス・リースグラフ
- ホステス:バルバラ・ブーシェ
- 大柄なO嬢:エイプリル・マルトゥッチ
スタッフ
- 監督:タロン・レクストン
- 脚本:ナンシー・カートライト、デビッド・K・チャン
- 製作:ミルコ・ミキッチ、モニカ・バカルディ、アンドレア・イエルボリーノ
- 音楽:デビッド・キャンベル
- 撮影:ケビン・ガリソン
- 編集:アレクサ・アイラ・シュルツ
- 配給:ココロヲ・動かす・映画社○(日本)
レビュー 作品の感想や女優への思い