『The Absence of Eden』(2023年)はマルコ・ペレゴ監督のスリラー映画。ゾーイ・サルダナ主演で、米墨国境の過酷な現実を描く。ICE捜査官と不法移民の女性が、少女を救うため協力。タオルミナ映画祭で初公開され、2024年4月12日に米国公開。
基本情報
- 原題:The Absence of Eden
- 公開年:2023年
- 製作国:英国、米国
- 上映時間:197分
- ジャンル:ドラマ
ゾーイ・サルダナの活躍
ゾーイ・サルダナは本作でエスメー(Esmee)を演じ、過酷な環境下での感情的な演技で注目を集めました。彼女はメキシコのストリップクラブで働く若い女性を演じ、カルテルメンバーへの自衛行為をきっかけにアメリカへの逃亡を決意します。サルダナの演技は、恐怖、決意、そして保護者としての優しさを見事に表現し、観客に深い共感を呼び起こします。特に、少女を守るために自らを犠牲にする姿勢は、彼女のキャラクターに人間味と強さを与えています。批評家からは、物語の中心として作品を牽引する力強いパフォーマンスと評価されていますが、一部ではストーリーの未完結さが彼女の演技の影響力をやや制限したとの意見もあります。サルダナは本作の製作にも関与し、夫であるマルコ・ペレゴ監督との共同作業で情熱を注ぎました。彼女のキャリアにおいて、『アバター』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でのアクション色の強い役柄とは異なり、本作では社会問題に焦点を当てたドラマチックな役柄に挑戦し、演技の幅を広げています。
ゾーイ・サルダナの衣装・化粧・髪型
エスメー役のゾーイ・サルダナの衣装は、物語の過酷な状況を反映し、実用性とリアリティを重視したデザインです。メキシコのストリップクラブのシーンでは、露出度の高いダンサーの衣装を着用し、彼女の置かれた環境の厳しさと脆弱性を表現。具体的には、きらびやかながらも安っぽい雰囲気のドレスやハイヒールが使用され、キャラクターの経済的・社会的状況を象徴しています。アメリカへの逃亡中は、埃っぽい砂漠を旅する不法移民として、シンプルで擦り切れたTシャツ、ジーンズ、汚れたスニーカーといった服装に変わります。これにより、彼女の絶望的な逃亡劇が視覚的に強調されます。
化粧は、クラブのシーンでは派手なアイシャドウやリップを用いて、ダンサーとしての派手な外見を演出。一方、逃亡中はほぼノーメイクで、汗や埃で汚れた顔が彼女の過酷な旅を強調します。髪型は、クラブではゆるくウェーブのかかったロングヘアで女性らしさを出し、逃亡中は乱雑に束ねたポニーテールや無造作なスタイルで、逃亡者の緊迫感を表現。サルダナの外見の変化は、キャラクターの内面的な葛藤や成長を視覚的に補強する重要な要素となっています。
あらすじ
『The Absence of Eden』は、米墨国境を舞台に、過酷な現実と人間ドラマを描くスリラーです。主人公エスメー(ゾーイ・サルダナ)は、メキシコのストリップクラブで働く若い女性。カルテルメンバーに襲われ、自衛のために彼を殺害したことで命の危険にさらされます。彼女はアメリカへの逃亡を決意し、冷酷なコヨーテ(不法移民を導く者)に導かれ、過酷な砂漠を旅します。道中、若い母親とその娘と出会い、絆を深めますが、母親がグループから連れ去られ、エスメーは娘を守り、母親との再会を約束します。一方、ICE(移民税関捜査局)の捜査官シップ(ギャレット・ヘドランド)は、国境管理の厳しさと自らの良心の間で葛藤します。彼は新たに知り合った女性ヤディラ(アドリア・アルホナ)の移民ステータスを知らず、恋愛と職務の間で板挟みに。エスメーとシップの物語は交錯し、少女を救うために協力する姿を通じて、人間性と正義の複雑さが描かれます。物語は、国境を越えるリスク、搾取、カルテルの暴力、そして移民問題の道徳的ジレンマを浮き彫りにします。
解説
『The Absence of Eden』は、米墨国境の移民問題という重いテーマを扱い、人間性と正義の葛藤を描いた作品です。監督のマルコ・ペレゴは、初監督作品としてこの題材を選び、詩的かつ宗教的なメタファーを用いて移民の苦難を表現。特に、宇宙や星のイメージをエスメーの信仰と結びつけ、希望と絶望の対比を試みました。しかし、批評家からはそのアプローチが時に重すぎ、微妙なバランスを欠くと指摘されています。映画は、移民の搾取や女性と少女が直面する危険(強姦、強盗、殺人など)をリアルに描き、観客に強い感情を呼び起こします。一方で、ICE捜査官を一面的に冷酷と描写する点や、ストーリーの結末が未解決に終わる点が批判されています。エスメーの物語は真実味があり、彼女の過酷な経験は現実の移民問題を反映していますが、シップの葛藤には十分な掘り下げがなく、物語のバランスに欠けるとの声も。映画は、素晴らしいシネマトグラフィーとビジュアルで国境の過酷さを強調し、ゾーイ・サルダナの演技が作品の中心を支えますが、ストーリーの未完結さが感情的インパクトを弱めています。2023年6月23日のタオルミナ映画祭での初公開後、2024年4月12日に米国で公開され、興行収入は3万7265ドルと振るわず、Rotten Tomatoesでは41%の「Rotten」評価を受けました。それでも、移民問題への関心を喚起する作品として意義を持つとされています。
キャスト
- ゾーイ・サルダナ – エスメー(Esmee):メキシコから逃亡する若い女性
- ギャレット・ヘドランド – シップ(Shipp):ICE捜査官
- アドリア・アルホナ – ヤディラ(Yadira):シップと恋愛関係になる女性
- トム・ウェイツ – ハンリー(Hunley):脇役
- ソフィア・ハモンズ – アルマ(Alma):エスメーが守る少女
- クリス・コイ – ドビンズ(Dobbins):ICE捜査官
- サラ・ミニッチ – レベッカ(Rebecca):脇役
- モーニングスター・アンジェリン – 移民の母親(Migrant Mother):アルマの母
- エソディ・ガイガー – ICE訓練官(ICE Training Officer)
- ケビン・オーウェン・マクドナルド – マネージャー(Manager)
- フィル・ビンセント – フエンテス・ダバロス(Fuentes Davalos)
- テッド・コッチ – シップの父(Shipp’s Father)
- メイヴ・ガレイ – 移民の少女(Migrant Girl)
- キース・メリウェザー – ICEキャプテン(ICE Captain)
- マーティン・パーマー – バイブルマン(Bible Man)
- ノア・ジギー・ジェームズ – マテオ(Mateo)
- レオネル・ガルザ – メキシコのカウボーイ(Mexican Cowboy)
- アレハンドロ・S・ロドリゲス – 酔った労働者(Drunk Worker)
スタッフ
- 監督:マルコ・ペレゴ
- 脚本:マルコ・ペレゴ、リック・ラポーザ
- 製作:カール・ハーマン、ロバート・クラビス、アレクサンドラ・ミルチャン、マルコ・ペレゴ、ゾーイ・サルダナ、ジュリー・ヨーン、リック・ヨーン
- 撮影:ハビエル・フリア
- 編集:リー・ホーゲン
- 音楽:オリバー・コーツ
- 製作会社:アシュランド・ヒル・メディア・ファイナンス、シネスター・ピクチャーズ、インジニアス・メディア、パイオニア・ピクチャーズ
- 配給:ロードサイド・アトラクションズ、ヴァーティカル・エンターテインメント
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