『アムステルダム』は1930年代のニューヨークを舞台に、殺人事件の濡れ衣を着せられた3人の親友が巨大な陰謀に立ち向かうクライム・コメディ。豪華キャストと史実を基にした物語が魅力。監督はデヴィッド・O・ラッセル。マーゴット・ロビーとゾーイ・サルダナが主要な女性キャストとして活躍。
基本情報
- 邦題:アムステルダム
- 原題:Amsterdam
- 公開年:2022年
- 製作国:米国
- 上映時間:134分
- ジャンル:ドラマ
あらすじ
1930年代のニューヨーク。第一次世界大戦の戦地で出会い、オランダのアムステルダムで固い友情を誓った医師バート(クリスチャン・ベール)、弁護士ハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)、看護師ヴァレリー(マーゴット・ロビー)の3人。ある日、バートとハロルドは、かつての恩人であるミーキンズ将軍の死に関する検死を依頼される。依頼主は将軍の娘リズ(テイラー・スウィフト)で、彼女は父の死に不審な点があると疑っている。バートは看護師イルマ(ゾーイ・サルダナ)の協力を得て解剖を行うが、将軍の死因には不可解な点が多く、さらにはリズ自身が何者かに殺害されてしまう。バートとハロルドは殺人事件の容疑者として追われる身となり、ヴァレリーと共に真相を解明するため奔走する。やがて彼らは、1933年に発覚した「ビジネス・プロット」と呼ばれる実在の政治陰謀に巻き込まれ、予想外の歴史的事件の中心に立つことになる。この陰謀は、アメリカの民主主義を脅かすほどの巨大な計画であり、3人は友情と信念を頼りに、濡れ衣を晴らし、陰謀を阻止しようと奮闘する。
解説
『アムステルダム』は、デヴィッド・O・ラッセル監督による2022年のアメリカ映画で、歴史コメディスリラーとしてジャンルを融合させた作品です。本作は、1933年に発覚した「ビジネス・プロット」という実在の政治陰謀事件を題材にしつつ、フィクションを織り交ぜて描かれています。この事件は、一部の財閥がフランクリン・ルーズベルト大統領を打倒し、ファシズム体制を樹立しようとしたとされる歴史的事件で、映画はこれを背景に、3人の主人公が巻き込まれる物語を展開します。ラッセル監督は、過去の作品『アメリカン・ハッスル』や『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー賞にノミネートされた実績を持ち、本作でも豪華キャストと共に独特のユーモアとドラマを織り交ぜた演出を試みました。しかし、批評家からは脚本や演出に批判が集まり、興行成績も振るわず、スタジオの損失は約9700万ドルに上ると推定されています。それでも、プロダクションデザインやキャストの演技は高く評価されており、特に1930年代の雰囲気を見事に再現した美術や衣装は見どころの一つです。撮影はCOVID-19パンデミックの影響でボストンからロサンゼルスに変更され、製作費は当初の5000万ドルから8000万ドルに増額されました。
本作の魅力は、豪華キャストによるアンサンブルと、史実とフィクションが交錯する複雑なストーリーにあります。コメディとサスペンスが混在する展開は、観客に軽快さと緊張感の両方を提供しますが、一部の批評ではキャラクター間の化学反応、特にマーゴット・ロビーとジョン・デヴィッド・ワシントンの相性が物足りないと指摘されています。それでも、映画は友情と正義をテーマに、困難な時代における人間関係の力を描き出しています。
女優の活躍
本作では、マーゴット・ロビーとゾーイ・サルダナが主要な女性キャストとして活躍し、物語に深みを与えています。
マーゴット・ロビーは看護師ヴァレリー役を演じ、物語の中心となる3人の友情の要として重要な役割を果たします。彼女の演技は、ヴァレリーの芸術家としての情熱や、困難な状況でも冷静さを失わない強い女性像を表現しており、特に感情的なシーンでの繊細な演技が光ります。ロビーは、過去の『ハーレイ・クイン』や『バビロン』でのエネルギッシュな役柄とは異なり、内面的な葛藤と知性を併せ持つキャラクターを演じ、批評家から高い評価を受けました。彼女の存在感は、物語のユーモアとドラマのバランスを保つ上で欠かせません。
ゾーイ・サルダナは看護師イルマ役で登場し、バートの検死を助ける重要な脇役を演じます。サルダナの演技は、短い出番ながらもプロフェッショナルで落ち着いた看護師の姿勢を的確に表現し、物語に現実感を加えています。彼女の登場シーンは特に検死の場面で印象的で、限られた時間の中でキャラクターの信頼感を確立しました。
また、テイラー・スウィフトが将軍の娘リズ役でカメオ出演しており、短いながらもインパクトのある演技で物語の序盤に緊張感をもたらします。彼女の登場は、観客にサプライズを与える要素となりました。
アニャ・テイラー=ジョイも重要な脇役として出演し、独特の魅力で物語に華を添えます。彼女のキャラクターは、陰謀に関わるキーパーソンとして登場し、ミステリアスな雰囲気で観客を引き込みます。これらの女優たちの演技は、豪華な男性キャスト陣と対等に渡り合い、物語の多層的な魅力を引き立てています。
女優の衣装・化粧・髪型
『アムステルダム』の女優たちの衣装、化粧、髪型は、1930年代の時代背景を反映しつつ、各キャラクターの個性を際立たせる工夫が施されています。マーゴット・ロビー演じるヴァレリーの衣装は、芸術家らしい自由奔放なスタイルが特徴です。彼女はボヘミアン風のドレスや、柔らかな素材のブラウス、スカートを着用し、1930年代のファッションに現代的な感性を融合させています。色使いは落ち着いたアースカラーを基調としつつ、アクセントとして赤やグリーンの鮮やかな色が使われ、彼女の情熱的な性格を表現。化粧はナチュラルでありながら、赤いリップや軽いアイラインで女性らしさを強調し、髪型はゆるやかなウェーブのかかったショートボブで、時代感と個性を両立させています。
ゾーイ・サルダナ演じるイルマは、看護師としてのプロフェッショナルなイメージを反映した衣装が特徴です。白を基調としたシンプルなユニフォームに、控えめな化粧とタイトにまとめた髪型が、彼女の真面目で落ち着いた性格を表現しています。検死シーンでの清潔感ある装いは、キャラクターの信頼性を高めています。
アニャ・テイラー=ジョイの衣装は、より洗練された1930年代の上流階級風で、シルクのドレスや帽子が彼女のミステリアスな魅力を引き立てます。化粧は大胆なアイメイクと淡い口紅で、髪型はエレガントなアップスタイルが中心です。テイラー・スウィフトのカメオ出演では、クラシックなドレスと控えめなメイクで、1930年代の若い女性らしい清純な印象を与えています。全体的に、衣装デザインはJ.R.ハートリーとアルバート・ウォルターズによるもので、時代考証に基づきつつキャラクターの個性を強調した設計が施されており、映画の視覚的魅力の一翼を担っています。
キャスト
- クリスチャン・ベール(バート・ベレンセン役):医師で3人の中心人物
- マーゴット・ロビー(ヴァレリー・ヴォーズ役):看護師で芸術家
- ジョン・デヴィッド・ワシントン(ハロルド・ウッドマン役):弁護士でバートの親友
- ゾーイ・サルダナ(イルマ・セントクレア役):看護師
- テイラー・スウィフト(リズ・ミーキンズ役):将軍の娘
- アニャ・テイラー=ジョイ(リビー・ヴォーズ役):ヴァレリーの姉
- ラミ・マレック(トム・ヴォーズ役):ヴァレリーの兄
- ロバート・デ・ニーロ(ギル・デュラント将軍役):陰謀を暴く鍵を握る人物
- クリス・ロック(ミルトン・キングリー役):ハロルドの同僚
- マイケル・シャノン(ヘンリー・ノークロス役):情報提供者
その他、マイク・マイヤーズ、ティモシー・オリファントなど豪華な脇役が多数出演。
スタッフ
- 監督・脚本・製作:デヴィッド・O・ラッセル
- 製作:アーノン・ミルチャン、マシュー・バドマン、アンソニー・カタガス、クリスチャン・ベール
- 撮影監督:エマニュエル・ルベツキ
- 編集技師:ジェイ・キャシディ
- 音楽監督:ダニエル・ペンバートン(当初はヒドゥル・グドナドッティルが起用されたが降板)
- 衣装デザイン:J.R.ハートリー、アルバート・ウォルターズ
- プロダクションデザイン:ジュディ・ベッカー
撮影は2021年1月から3月にかけてロサンゼルスで行われ、製作費は8000万ドル。配給は20世紀スタジオとウォルト・ディズニー・ジャパン。
レビュー 作品の感想や女優への思い