スティーヴン・キング原作のNetflix映画『1922』は、1922年の米国ネブラスカを舞台に、農夫ウィルフレッドが妻殺害の罪を告白し、破滅へと向かうサスペンスホラー。息子を巻き込み、罪の代償に苦しむ姿を描く。主要な女優はアルレット・ジェームズ役を演じたモリー・パーカー。
基本情報
- 邦題:1922
- 原題:1922
- 公開年:2017年
- 製作国:米国
- 上映時間:102分
- ジャンル:クライム
女優の活躍
本作『1922』における主要な女優は、アルレット・ジェームズ役を演じたモリー・パーカーです。モリー・パーカーは、カナダ出身の女優で、映画やテレビドラマで幅広い役柄を演じてきた実力派として知られています。本作では、ウィルフレッドの妻であり、物語の中心となる人物であるアルレットを演じ、複雑な感情と強い意志を持つ女性像を体現しています。
アルレットは、農場暮らしに嫌気がさし、都会での新たな生活を夢見る女性として描かれています。モリー・パーカーは、アルレットの都会への憧れや、夫との対立、さらには家族に対する微妙な感情を、表情や仕草を通じて繊細に表現しています。特に、夫ウィルフレッドとの対立が深まるシーンでは、彼女の強い意志と同時に、内に秘めた不安や苛立ちを見事に演じ分けており、物語の緊張感を高めています。また、物語が進むにつれて、アルレットの存在がウィルフレッドの精神に与える影響が大きくなる中、モリー・パーカーの演技は、幽霊的な存在感や不気味さを効果的に醸し出しています。彼女の演技は、物語のホラー要素と心理的な葛藤を強調する重要な役割を果たしています。
もう一人の女性キャストとして、シャノン・コテリー役のケイトリン・バーナードも注目されます。シャノンは、ウィルフレッドの息子ヘンリーの恋人であり、物語のサブプロットにおいて重要な役割を担っています。ケイトリン・バーナードは、若々しさと純粋さを表現しつつ、物語の後半での悲劇的な展開において、感情的な深みを加えています。彼女の演技は、物語の悲劇性を一層引き立てるものであり、特に若い恋人同士の純粋な愛情と、その後の過酷な運命との対比を効果的に表現しています。
女優の衣装・化粧・髪型
『1922』の舞台は1922年のアメリカ・ネブラスカ州の農村であり、衣装や化粧、髪型は当時の農場暮らしを反映した質朴で実用的なデザインが特徴です。モリー・パーカー演じるアルレットの衣装は、1920年代の農村の女性らしい、シンプルで機能的なドレスが中心です。彼女の衣装は、主に地味な色合いのロングドレスやエプロンで、農作業や家事に適した実用性が重視されています。しかし、アルレットが都会への憧れを口にするシーンでは、彼女の内面の変化を反映するかのように、わずかに洗練されたデザインの服やアクセサリーが登場し、視覚的に彼女の心理を表現しています。化粧は控えめで、農村生活にふさわしい自然な肌の質感を強調。頬や唇に軽い赤みを加える程度で、過度な装飾は避けられています。髪型は、シンプルなアップスタイルや緩いシニヨンが多く、農作業の邪魔にならないよう実用性が考慮されていますが、都会への憧れを象徴するシーンでは、髪を少し緩めに下ろすなど、細かな変化が施されています。
ケイトリン・バーナード演じるシャノンの衣装は、若い女性らしい軽やかさと純粋さを強調するデザインが採用されています。彼女のドレスは、アルレットよりもやや明るい色合い(淡いブルーやクリーム色など)が用いられ、若さと希望を象徴しています。化粧はほとんど施されておらず、ナチュラルな美しさが強調されています。髪型は、若い女性らしい長めの髪をゆるく編んだり、シンプルに下ろしたりするスタイルで、時代背景と彼女の純朴なキャラクターを反映しています。物語の後半でシャノンが過酷な状況に置かれるにつれ、衣装や髪型も次第に乱れ、視覚的に彼女の運命の変化を表現しています。
全体的に、衣装や化粧、髪型は、1920年代の農村という時代設定を忠実に再現しつつ、キャラクターの心理や物語の進行に応じて微妙な変化が加えられています。これにより、視覚的な要素が物語のテーマやキャラクターの内面を補強する役割を果たしています。
あらすじ
『1922』は、スティーヴン・キングの同名中編小説を原作としたNetflixオリジナル映画で、1922年のアメリカ・ネブラスカ州を舞台に、農夫ウィルフレッド・ジェームズの罪と破滅を描いたサスペンスホラーです。物語は、ウィルフレッドがホテルの一室で自らの罪を告白する手記を書き始めるシーンから幕を開けます。
1922年、ウィルフレッド(トーマス・ジェーン)は、妻アルレット(モリー・パーカー)と14歳の息子ヘンリー(ディラン・シュミット)と共に、ネブラスカ州の農場で暮らしていました。ウィルフレッドは農場を子孫に残したいと願っていましたが、アルレットは自分が権利を持つ100エーカーの土地を売却し、都会のオマハで新たな生活を始めることを望んでいます。田舎暮らしに満足し、隣家の娘シャノン(ケイトリン・バーナード)と恋愛中のヘンリーもまた、引っ越しに反対します。話し合いを拒むアルレットの態度に苛立ったウィルフレッドは、息子を説得し、妻の殺害を計画します。
ウィルフレッドはアルレットを酔わせ、ヘンリーと共に彼女の命を奪い、遺体を井戸に隠します。翌日、牛を井戸に落とし、遺体を隠蔽するための偽装工作を行います。表面的にはアルレットが家出したように見せかけ、近隣に疑われることなく計画は成功したかに思えました。しかし、この殺人事件をきっかけに、ウィルフレッドとヘンリーの人生は暗転します。農場にはネズミが異常発生し、ウィルフレッドはアルレットの亡魂に悩まされるようになります。ヘンリーもまた、恋人シャノンとの関係が悲劇的な結末を迎え、罪の意識と恐怖に苛まれるウィルフレッドは、次第に精神を蝕まれていきます。物語は、ウィルフレッドの告白を通じて、彼の罪がもたらした破滅的な結末を描き出します。
解説
『1922』は、スティーヴン・キングの小説集『Full Dark, No Stars』に収録された中編小説を基にした作品で、ホラーと心理サスペンスが融合した重厚なドラマです。キング作品の特徴である、日常の中に潜む恐怖と人間の罪の意識が織り交ぜられ、因果応報のテーマが強く打ち出されています。物語は、ウィルフレッドの視点から語られ、彼の内面的な葛藤と罪悪感が詳細に描写されることで、観客は彼の精神の崩壊をリアルに感じ取ることができます。
本作のホラー要素は、超自然的な現象よりも、ウィルフレッドの罪悪感や恐怖心が引き起こす心理的な恐怖に重点が置かれています。ネズミの異常発生やアルレットの亡魂の出現は、ウィルフレッドの心の闇を象徴するものとして描かれており、観客に「これは現実か、幻覚か」と考えさせる曖昧さが効果的に用いられています。監督のザック・ヒルディッチは、キングの原作の暗鬱な雰囲気を忠実に再現しつつ、映像と音響を通じて不気味な緊張感を構築しています。特に、ネズミが這う音や農場の静寂を破る不協和音が、物語の不穏な空気を強調しています。
物語の中心テーマである「因果応報」は、ウィルフレッドとヘンリーの運命を通じて明確に示されます。ウィルフレッドの短絡的な決断と、息子を犯罪に巻き込んだことが、家族全体の崩壊を引き起こし、彼の人生を破滅へと導きます。このテーマは、キング作品に共通する「人間の選択とその結果」を深く掘り下げるものであり、観客に道徳的な問いを投げかけます。また、1920年代の農村という設定は、土地や家族への執着、伝統と変化の対立といった当時の社会的背景を反映しており、物語に深みを加えています。
モリー・パーカーの演技は、アルレットのキャラクターに複雑な人間性を与え、単なる「犠牲者」ではなく、自己主張の強い女性として描いています。一方で、トーマス・ジェーンのウィルフレッドは、罪の意識に苛まれる男の脆さと狂気を巧みに表現し、物語の中心を支えています。全体として、本作はキングの原作の精神を損なわず、心理的な恐怖と人間ドラマをバランスよく描いた作品として高く評価されています。ただし、ホラー映画としての派手な演出やスリルを期待する観客にはやや物足りないと感じられるかもしれませんが、静かな恐怖と深い人間ドラマを求める観客には満足のいく作品です。
キャスト
- トーマス・ジェーン(ウィルフレッド・ジェームズ):農夫で物語の主人公。妻殺害を決意し、罪の意識に苛まれる。
- モリー・パーカー(アルレット・ジェームズ):ウィルフレッドの妻。都会暮らしを望み、夫と対立する。
- ディラン・シュミット(ヘンリー・ジェームズ):ウィルフレッドとアルレットの息子。父親の計画に巻き込まれる。
- ケイトリン・バーナード(シャノン・コテリー):ヘンリーの恋人で、物語の悲劇的なサブプロットに関与。
- ニール・マクドノー(ハーラン・コテリー):シャノンの父親で、近隣の農場主。
- ブライアン・ダーシー・ジェームズ(保安官ジョーンズ):アルレットの失踪を調査する保安官。
- ボブ・フレイザー(銀行員):ウィルフレッドの農場の財務に関わる人物。
スタッフ
- 監督・脚本:ザック・ヒルディッチ(『Transmission』や『ファイナル・アワーズ』で知られるオーストラリア出身の監督)
- 原作:スティーヴン・キング(『1922』、小説集『Full Dark, No Stars』収録)
- 製作:ロス・M・ディナースタイン
- 撮影:ベンジ・バクシ
- 編集:マーリン・フォード
- 音楽:マイク・パットン(フェイス・ノー・モアのボーカリストとしても知られる作曲家)
- 美術:ペイジ・バックナー
- 衣装:クローディア・ダ・ポンテ
レビュー 作品の感想や女優への思い