ドイツ連邦共和国

ドイツ（ドイツ連邦共和国）はヨーロッパの中心に位置し、経済力と文化で影響力を持つ先進国。歴史は神聖ローマ帝国に遡り、統一後はEUの要。科学、音楽、哲学が豊かで、ビール文化も有名。

時代別映画史

時代別映画史

初期（1895年～1918年）：映画の誕生とサイレント映画の黎明

ドイツの映画史は、1895年にマックス・スクワドウスキーがベルリンで初の映画上映を行ったことから始まります。この時期はサイレント映画の時代で、短編や実験的な作品が中心でした。第一次世界大戦中、映画はプロパガンダとしても利用され、技術的進歩とともに物語性が向上しました。初期の映画は、劇場や移動映画館で上映され、大衆娯楽としての地位を確立しました。表現力豊かな俳優や簡単なストーリーが特徴で、ドイツ映画はヨーロッパ映画の先駆けとなりました。

主な作品：『キッド・オート・レース』（1914年、ドイツでの上映）、チャールズ・チャップリンの初期作品がドイツでも人気。『ホモンクルス』（1916年、監督：オットー・リッパート）、科学者を描いたサイレント映画の先駆けで、視覚的表現が注目された。
主な女優：アスタ・ニールセン、『アビス』（1910年）で国際的な名声を得たデンマーク出身の女優で、ドイツ映画でも活躍。ヘンニー・ポルテン、『アンナ・ボーレン』（1920年）で歴史劇のヒロインを演じ、感情豊かな演技で知られた。

ワイマール共和国期（1919年～1933年）：表現主義と黄金時代

ワイマール共和国期は、ドイツ映画の最初の黄金時代とされます。表現主義が特徴で、心理的・視覚的な実験が盛んでした。フリッツ・ラングやF・W・ムルナウなどの監督が国際的な評価を受け、映画は芸術としての地位を確立しました。都市の闇や人間の内面を描く作品が多く、独特のセットデザインや照明技術が際立ちました。この時期、ドイツ映画は世界的に影響を与え、ハリウッドにも影響を及ぼしました。

主な作品：『カリガリ博士』（1920年、監督：ロバート・ウィーネ）、表現主義の金字塔で、歪んだセットが特徴。『メトロポリス』（1927年、監督：フリッツ・ラング）、SF映画の先駆けで、未来的な都市を描き、視覚効果が革新的だった。
主な女優：マレーネ・ディートリヒ、『青い天使』（1930年）でセクシーな歌手を演じ、ハリウッドへ進出。ルイーゼ・ライナー、『グレート・ジーグフェルド』（1936年）でオスカーを獲得した最初のドイツ人女優。

ナチス時代（1933年～1945年）：プロパガンダと制限

ナチス政権下では、映画はプロパガンダの道具として利用されました。ヨーゼフ・ゲッベルス宣伝相の統制により、ナチス思想を広める作品が多数制作されました。一方で、娯楽映画も制作され、大衆の支持を集めました。多くの才能ある映画人は亡命し、ドイツ映画の創造性は低下しました。この時期、映画は政治的メッセージを強く反映し、芸術性より宣伝が優先されました。

主な作品：『意志の勝利』（1935年、監督：レニ・リーフェンシュタール）、ナチス党大会を記録したプロパガンダ映画。『ミュンヒハウゼン』（1943年、監督：ヨーゼフ・フォン・バキ）、色彩豊かな娯楽映画で戦時中の人気作。
主な女優：ツァラ・レアンダー、『偉大なる愛』（1939年）で歌と演技で人気を博した。クリスティナ・ゼーダー、『カラーフィルム』（1943年）で戦時中の軽快な役柄で知られた。

戦後と新ドイツ映画（1945年～1980年代）：再建と革新

第二次世界大戦後、ドイツ映画は東西分裂の影響を受けました。西ドイツでは、戦後の再建と共に「新ドイツ映画」が1960年代から台頭。ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーやヴェルナー・ヘルツォークらが、過去のトラウマや現代社会を批判的に描きました。東ドイツでは、社会主義に基づく映画が主流でしたが、芸術性は限定的でした。

主な作品：『若きテレス』（1960年、監督：エドガー・ライツ）、戦後の若者の葛藤を描く。『アギーレ、神の怒り』（1972年、監督：ヴェルナー・ヘルツォーク）、狂気と探検をテーマにした傑作。
主な女優：ロミー・シュナイダー、『シシー』（1955年）でオーストリア皇后を演じ、国際的スターに。ハンナ・シグラ、『マリア・ブラウンの結婚』（1979年）で新ドイツ映画の象徴的役を演じた。

現代（1990年代～現在）：統一後の多様化と国際化

1990年のドイツ統一後、映画は商業化と国際化が進みました。ハリウッドとの合作やコメディ、歴史劇が人気で、インディペンデント映画も活発です。デジタル技術の進化により、視覚効果や多様なジャンルが開花しました。国際映画祭での受賞も増え、ドイツ映画は世界的な評価を維持しています。

主な作品：『ラン・ローラ・ラン』（1998年、監督：トム・ティクヴァ）、革新的な編集とテンポで世界的にヒット。『グッバイ、レーニン！』（2003年、監督：ヴォルフガング・ベッカー）、統一後の東ドイツをユーモラスに描く。
主な女優：フランカ・ポテンテ、『ラン・ローラ・ラン』でエネルギッシュな演技が評価された。ダイアン・クルーガー、『トロイ』（2004年）でハリウッドでも活躍し、ドイツ映画にも貢献。