韓国(大韓民国)は東アジアに位置する国で、首都はソウル。人口約5100万人、面積約10万平方キロメートル。朝鮮戦争後、急速な経済成長を遂げ、K-POPや韓国映画などの文化が世界的に人気。民主主義国家で、技術革新と伝統文化が共存している。
時代別映画史
日本統治時代(1910年~1945年)
韓国映画の歴史は、日本統治時代に始まります。この時期、映画は日本映画の一部として扱われ、検閲が厳しく行われました。初期の映画は無声映画が主流で、活動写真として上映されました。1923年に公開された「春香伝」は、韓国初の劇映画とされ、伝統的な物語を基にした作品です。しかし、日本による文化的統制により、韓国独自の表現は制限され、プロパガンダ映画の製作も強いられました。この時期の女優としては、ナ・ウンギュ監督作品に出演したキム・ヨンスンなどが知られていますが、資料が限られており、女優の活躍はあまり記録されていません。
- 主な作品:春香伝(1923年)
- 主な女優:キム・ヨンスン
解放後から1950年代
1945年の解放後、韓国映画は新たなスタートを切りましたが、朝鮮戦争(1950年~1953年)の影響で産業は停滞しました。戦後はフィルムや設備の不足により、製作環境は厳しかったものの、1950年代後半から徐々に復興。リアリズムを追求した作品や、戦争の影響を描いた作品が生まれました。この時期の代表作には、1955年の「自由夫人」があり、女性の自立や社会問題を扱った作品として注目されました。女優では、キム・ジミがこの時期に頭角を現し、「自由夫人」などで活躍しました。彼女の情感豊かな演技は、韓国映画の礎を築きました。
- 主な作品:自由夫人(1955年)、春香伝(1950年)
- 主な女優:キム・ジミ、チェ・ウニ
1960年代:黄金時代
1960年代は、韓国映画の「黄金時代」と呼ばれます。1960年の四月革命により、検閲が一時的に緩和され、社会問題を扱った作品や芸術性の高い映画が多数生まれました。金綺泳監督の「下女」(1960年)は、心理スリラーとして国際的に評価され、現代でもカルト的な人気を誇ります。また、兪賢穆監督の「誤発弾」(1961年)は、朝鮮戦争後の社会の荒廃をリアルに描き、軍事クーデター後に上映禁止となるほどの影響力を持ちました。申相玉監督の「離れの客とお母さん」(1961年)も、家族愛と人間ドラマが評価されました。女優では、チェ・ウニが引き続き活躍し、ムン・ジョンソクが「下女」での強烈な演技で注目を集めました。この時期、女優たちは感情表現の豊かさで作品に深みを加えました。
- 主な作品:下女(1960年)、誤発 prays(1961年)、離れの客とお母さん(1961年)、荷馬車(1961年)
- 主な女優:チェ・ウニ、ムン・ジョンソク
1970年代:統制と低迷
1970年代は、朴正煕政権下の維新体制による検閲強化とテレビの普及により、韓国映画は苦境に立たされました。政府は「政策映画」を推奨し、批判的な内容の作品は禁止されました。この結果、低予算の低俗映画やエロティシズム映画が増加。観客数は1974年に1億人を割り、産業は衰退しました。それでも、イム・グォンテク監督の「花郎の末裔」(1973年)など、一部の作品は歴史や文化を描き、質を保ちました。女優では、ユン・ヨジョンがこの時期に頭角を現し、後の国際的な成功の基盤を築きました。彼女は「火女」(1971年)などで、複雑な女性像を演じました。
- 主な作品:火女(1971年)、花郎の末裔(1973年)
- 主な女優:ユン・ヨジョン、チャン・ミヒ
1980年代:新たな動きとニューウェーブ
1980年代は、全斗煥政権下での文化統制が続きましたが、1980年代後半の民主化運動により映画界にも変化が訪れました。韓国ニューウェーブの萌芽が見られ、ペ・チャンホやイ・ジャンホ監督らが新しい表現を模索。1988年のソウルオリンピックや夜間外出禁止令の解除も、映画文化の自由度を高めました。「ソウルの虹」(1989年)は、若者の感性を描いた作品として注目されました。女優では、チェ・ジンシルが「クムホンア、クムホンア」(1988年)などで国民的スターとなり、明るい魅力で観客を惹きつけました。カン・スヨンも国際的に評価され、1987年のベネチア映画祭で最優秀女優賞を受賞した「シバジ」で名を馳せました。
- 主な作品:シバジ(1987年)、ソウルの虹(1989年)、クムホンア、クムホンア(1988年)
- 主な女優:チェ・ジンシル、カン・スヨン
1990年代:復興と大衆性の回帰
1990年代は、韓国映画の復興期です。検閲の緩和とシネマコンプレックスの普及により、観客動員数が急増。1992年の「結婚物語」は、洗練されたロマンティックコメディとして大衆性を回復。1993年の「風の丘を越えて/西便制」は、ソウルで104万人を動員し、韓国映画初の100万人突破を記録しました。1999年の「シュリ」は、韓国型ブロックバスターの先駆けとなり、620万人の観客を動員。女優では、シム・ウナが「八月のクリスマス」(1998年)で繊細な演技を見せ、キム・ユンジンが「シュリ」でアクションとドラマを両立させました。この時期、女優たちの多様な役柄が韓国映画の魅力を高めました。
- 主な作品:結婚物語(1992年)、風の丘を越えて/西便制(1993年)、八月のクリスマス(1998年)、シュリ(1999年)
- 主な女優:シム・ウナ、キム・ユンジン
2000年代:韓国型ブロックバスターと国際的評価
2000年代は、韓国映画が世界的に注目された時期です。「シュリ」に続き、「JSA」(2000年)や「友へ チング」(2001年)が大ヒット。「殺人の追憶」(2003年)や「オールド・ボーイ」(2003年)は、興行と芸術性を両立させ、国際映画祭で高評価を受けました。「シルミド」(2003年)と「ブラザーフッド」(2004年)は、1000万人動員を達成。女優では、イ・ヨンエが「JSA」や「親切なクムジャさん」(2005年)で強い印象を残し、チョン・ドヨンが「シークレット・サンシャイン」(2007年)でカンヌ映画祭最優秀女優賞を受賞。ソン・イェジンも「私の頭の中の消しゴム」(2004年)で愛される女優となりました。
- 主な作品:JSA(2000年)、友へ チング(2001年)、殺人の追憶(2003年)、オールド・ボーイ(2003年)、シルミド(2003年)、ブラザーフッド(2004年)、私の頭の中の消しゴム(2004年)、親切なクムジャさん(2005年)、シークレット・サンシャイン(2007年)
- 主な女優:イ・ヨンエ、チョン・ドヨン、ソン・イェジン
2010年代:世界的な飛躍
2010年代は、韓国映画がアカデミー賞受賞という歴史的快挙を達成した時期です。ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」(2019年)は、韓国映画初のアカデミー賞作品賞を含む4部門を受賞。社会格差を鋭く描いたこの作品は、世界的な現象となりました。「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016年)や「バーニング」(2018年)も国際的に高い評価を受けました。女優では、キム・ゴウンが「コインロッカーの女」(2015年)や「はちどり」(2018年)で注目され、若手女優の筆頭に。ユン・ヨジョンは「ミナリ」(2020年)でアカデミー助演女優賞を獲得し、韓国女優の国際的地位を確立しました。
- 主な作品:パラサイト 半地下の家族(2019年)、新感染 ファイナル・エクスプレス(2016年)、バーニング(2018年)、はちどり(2018年)、ミナリ(2020年)
- 主な女優:キム・ゴウン、ユン・ヨジョン、チョ・ヨジョン
2020年代:さらなる進化
2020年代に入り、韓国映画は多様なジャンルで進化を続けています。「モガディシュ 脱出までの14日間」(2021年)は、歴史的実話を基にしたアクション映画として成功。「ベイビー・ブローカー」(2022年)は、是枝裕和監督とのコラボレーションでカンヌ映画祭で評価されました。配信プラットフォームの普及により、Netflix作品なども増加。女優では、キム・ダミが「ソウルメイト」(2023年)で感情豊かな演技を見せ、パク・ソダムが「パラサイト」や「スペシャル・デリバリー」(2022年)で幅広い役柄を演じました。韓国映画は、国際的な影響力と独自性を維持しながら、新たな挑戦を続けています。
- 主な作品:モガディシュ 脱出までの14日間(2021年)、ベイビー・ブローカー(2022年)、ソウルメイト(2023年)、スペシャル・デリバリー(2022年)
- 主な女優:キム・ダミ、パク・ソダム
まとめ
韓国映画は、歴史的制約の中で始まり、1960年代の黄金時代、1970年代の低迷期を経て、1990年代以降の復興と2000年代の国際的飛躍を遂げました。女優たちは、各時代で作品に深みを与え、キム・ジミ、チェ・ウニ、ユン・ヨジョン、チョン・ドヨン、ソン・イェジン、キム・ゴウン、パク・ソダムらが時代を代表する存在となりました。社会問題や人間ドラマを巧みに描く韓国映画は、今後も世界で愛されるでしょう。
レビュー 作品の感想や女優への思い