イリノイ州はアメリカ合衆国中西部に位置し、人口は国内6番目。シカゴが最大都市で、工業と農業が盛ん。五大湖とミシシッピ川を結ぶ交通の要衝。州都はスプリングフィールド。出身女優にジリアン・アンダーソン、ジェニファー・ビールス、ロビン・タニー、グロリア・スワンソンたち。
歴史
イリノイ州の歴史は、先住文化から始まり、数千年にわたり様々な先住部族がこの地に住んでいました。17世紀にはフランス人探検家がミシシッピ川とイリノイ川沿いに定住し、ヌーベルフランスの一部であるイリノイ・カントリーを形成しました。フランス人による初期の入植地は、交易や宣教活動の拠点として機能しました。18世紀後半のアメリカ独立戦争では、イリノイ地域でのキャンペーンが行われ、アメリカの影響力が強まりました。1783年の独立後、イリノイは北西部領土の一部となり、1818年に21番目の州として合衆国に加盟しました。
19世紀には、シカゴが急速に成長し、鉄道や運河の発展により交通の要衝となりました。特に1830年代から1840年代にかけて、運河や鉄道網の整備が進み、シカゴは五大湖とミシシッピ川を結ぶ中継地として繁栄しました。南北戦争ではイリノイ州は北軍側で重要な役割を果たし、多くの兵士や物資を提供しました。エイブラハム・リンカーン大統領はイリノイ州出身で、彼の政治的基盤はこの州にありました。
20世紀に入ると、シカゴは工業と商業の中心地としてさらに発展しました。1920年代の禁酒法時代には、シカゴはギャング文化の中心地ともなり、アル・カポネなどの犯罪組織が台頭しました。第二次世界大戦後、州は製造業や金融業で成長を続け、シカゴ証券取引所や商品取引所が世界的な影響力を持つようになりました。現代では、テクノロジーやサービス業も州経済の重要な柱となっています。イリノイ州は多様な民族構成と経済基盤を持ち、米国中西部の中心的な州として発展を続けています。
芸術
イリノイ州、特にシカゴは、芸術と文化の中心地として知られています。シカゴ美術館(Art Institute of Chicago)は、世界的に有名な美術館で、印象派やポスト印象派のコレクションが特に充実しています。モネやゴッホの作品、さらにはアメリカの近代美術やアジアの工芸品など、多様な展示が特徴です。シカゴ交響楽団もまた、世界最高峰のオーケストラの一つとして評価されており、クラシック音楽の公演で知られています。
シカゴは建築の分野でも注目され、フランク・ロイド・ライトのプレーリースタイルの建築物が州内に多く残されています。ライトの代表作であるロビー邸やユニティ・テンプルは、モダン建築の先駆けとして知られ、観光名所ともなっています。また、シカゴのダウンタウンには、ルイス・サリバンやミース・ファン・デル・ローエによる建築が立ち並び、建築ツアーが人気です。
演劇文化も盛んで、シカゴの劇場地区では即興コメディグループ「セカンド・シティ」が有名です。このグループは多くのコメディアンや俳優を輩出し、現代アメリカのコメディ文化に大きな影響を与えました。音楽面では、シカゴ・ブルースが世界的に知られ、マディ・ウォーターズなどのアーティストがこのジャンルを築きました。毎年開催されるシカゴ・ブルース・フェスティバルは、音楽ファンを魅了しています。
さらに、ストリートアートや現代アートも盛んで、シカゴの街角にはカラフルな壁画や彫刻が点在します。ミレニアム・パークにある「クラウド・ゲート」(通称ビーン)は、観光客にも人気の現代彫刻です。イリノイ州の芸術は、伝統と現代が融合した多様な表現で、訪れる人々を魅了しています。
登場する映画
イリノイ州、特にシカゴは多くの映画の舞台やロケ地として登場します。以下は代表的な作品の一部です。
- 行き止まりの世界に生まれて(2018年):イリノイ州ロックフォードを舞台としたドキュメンタリー映画。スケートボードに情熱を注ぐ若者たちの日常を通じて、家族間の葛藤やドメスティックバイオレンスの影を描き出します。監督のビン・リュー自身が自身の過去を振り返りながら、閉塞感あふれる環境で生きる人々の内面的な成長を探求。サンダンス映画祭で高く評価され、アカデミー賞にノミネートされた感動作。
- インフォーマント!(2009年):シカゴを拠点とする農業企業ADMの社員マーク・ウィットコフが、価格カルテル事件をFBIに内部告発する実話に基づくコメディドラマ。スティーブン・ソダーバーグ監督が、マット・デイモンのコミカルな演技を活かし、嘘が積み重なる人間心理を風刺的に描きます。ユーモアと緊張感が交錯する、企業倫理の闇を暴く一作。
- ウェインズ・ワールド(1992年):イリノイ州オーロラを舞台に、ロック好きの若者ウェインとガースがケーブルTV番組を配信するコメディ。マイク・マイヤーズとダナ・カーヴィの絶妙な掛け合いが光り、TVプロデューサーとの契約騒動や恋のドタバタを軽快に描きます。『サタデー・ナイト・ライブ』から生まれたカルト的人気作で、ロック文化の楽しさを満載しています。
- ウェインズ・ワールド2(1993年):前作の続編としてイリノイ州オーロラで展開するロックコメディ。ウェインが夢でジム・モリソンから啓示を受け、巨大ロックフェスを企画する騒動を描きます。マイク・マイヤーズらのアドリブ満載のユーモアと豪華ゲストの音楽シーンが魅力。友情と恋を軸に、夢を追いかける青春の輝きをコミカルに表現した作品。
- エイブ・リンカーン(2012年):イリノイ州スプリングフィールドを背景に、第16代大統領エイブラハム・リンカーンの奴隷解放への闘いを描く伝記ドラマ。ダニエル・デイ=ルイスがリンカーンを熱演し、スティーブン・スピルバーグ監督が政治的駆け引きと家族の葛藤を深く掘り下げます。アカデミー賞を総なめにした、歴史の転換点を描く名作。
- エブリワンズ・ヒーロー(2022年):シカゴを舞台に、マルチバースを巡るアクションアドベンチャー。コインランドリー経営者のエヴリンが並行世界を駆け巡り、家族の絆を取り戻す物語。ダニエルズ監督の革新的なビジュアルとミシェル・ヨーのパワフルな演技が融合し、家族愛と自己発見のテーマをユーモラスに描きます。アカデミー賞7部門受賞の傑作。
- クリスマスに降る雪は(2019年):イリノイ州ローレルでクリスマスイブの大雪がもたらす青春群像劇。高校生たちの恋愛、友情、家族の葛藤が交錯し、ジュリーの大学進学の決断を中心に描きます。ルーク・スネルリング監督が、冬の風景を活かした温かなタッチで、若者の成長と別れの切なさを優しく綴ります。
- 恋の時給は4ドル44セント(1991年):イリノイ州のスモールタウンで、深夜バイトのジムがスーパーに閉じ込められた美女と出会うロマンティックコメディ。フランク・ホエーリーとジェニファー・コネリーのケミストリーが魅力で、ジョン・ヒューズ脚本の軽快なユーモアが、青春の甘酸っぱさを描きます。一夜の冒険が心を変える物語。
- ザ・コンサルタント(2016年):シカゴの企業を舞台に、天才会計士クリスチャン・ウルフの二重生活を描くアクションサスペンス。ベン・アフレックが自閉症のエリートを熱演し、裏社会の暗殺者としての顔を明かします。ガブリエル・ルイス監督が、ミステリーとアクションを融合させたスリリングな一作。
- 12人のパパ(2003年):イリノイ州の大学監督トムが12人の子供たちと繰り広げるファミリーコメディ。スティーブ・マーティンが大家族のドタバタをコミカルに演じ、妻の留守中に起こる騒動が笑いを誘います。家族の絆を温かく描き、現代版『一ダースなら安くなる』のリメイクとして親しまれています。
- ジョン・ゲイシー(2003年):イリノイ州シカゴ郊外で実在の連続殺人犯ジョン・ウェイン・ゲイシーの生涯を描く犯罪ドラマ。マーク・ホルトンが二重人格の男を体現し、ピエロ姿の裏に潜む闇を暴きます。社会的に成功した男の異常心理を冷静に追及した、衝撃の実話ベースの作品。
- セサミストリート ザ・ムービー:おうちに帰ろう、ビッグバード!(1985年):イリノイ州オーシャンビューを訪れるビッグバードの冒険を描くファミリーミュージカル。セサミストリートの仲間たちがアメリカ横断の旅をし、友情と帰属意識を歌とユーモアで表現。子供たちの想像力を刺激する、心温まる一編。
- ゾンビスクール!(2015年):イリノイ州の小学校でチキンナゲットが原因のゾンビ化が起きるホラーコメディ。イライジャ・ウッド演じる教師たちがキッズゾンビと対決し、グロテスクさと笑いを融合。ジョナサン・マイロット監督の過激なユーモアが、意外な爽快感を生み出します。
- ときめきサイエンス(1985年):イリノイ州の高校生がコンピューターで理想の女性を生み出すSFコメディ。ジョン・ヒューズ監督が、アンソニー・マイケル・ホールらの青春の妄想を軽快に描き、魔法のような恋のドタバタを繰り広げます。80年代のポップカルチャーを象徴する楽しい一作。
- トレスパス(1992年):イリノイ州の廃工場で宝探しをする消防士たちがギャングの犯罪に巻き込まれるアクション。ウォルター・ヒル監督が、ビル・パクストンとアイス・Tらの対立を緊張感たっぷりに描き、人種と階級の対立を背景にスリリングな攻防を展開します。
- ドント・ルック・アップ(2021年):ミシガン州の天文台で彗星衝突を予見した科学者たちの警告を描くSFコメディ。アダム・マッケイ監督が、レオナルド・ディカプリオとジェニファー・ローレンスを起用し、メディアと政治の無責任さを風刺。現代社会の寓話として鋭く響きます。
- バッド・ティーチャー(2011年):イリノイ州の高校で、金と男に目がない教師エリザベスの騒動を描くブラックコメディ。キャメロン・ディアスが型破りな役をコミカルに演じ、豊胸手術資金のための生徒虐めが波乱を呼ぶ。ジェイク・カスダン監督の辛辣なユーモアが光ります。
- 羊たちの沈黙(1991年):イリノイ州のFBIアカデミーで、クラリスが連続殺人犯を追うサイコスリラー。ジョナサン・デミ監督が、ジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンスの心理戦を緊張感を持って描き、ハンニバル・レクターの魅力が永遠の名作を生み出しました。
- 秘密の絆(1997年):イリノイ州の町で、上流階級の三姉妹と労働者階級の兄弟の恋模様を描くラブストーリー。パット・オコナー監督が、階級差を超えた愛憎劇を繊細に綴り、ビリー・クラッドップとリブ・タイラーの切ない関係が心に残ります。
- ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(2016年):イリノイ州のマクドナルド兄弟店から始まるレイ・クロックの野望を描く伝記ドラマ。ジョン・リー・ハンコック監督が、マイケル・キートンの執念を軸に、ファストフード帝国の闇を冷静に暴きます。成功の代償を問う一作。
- フォー・フレンズ/4つの青春(1981年):イリノイ州東シカゴの高校生4人の15年にわたる友情と愛を描く青春ドラマ。アーサー・ペン監督が、ベトナム戦争の影を背景に、喜びと悲しみの青春を情感豊かに表現。J・T・ウォルシュらの演技が深い余韻を残します。
- 普通の人々(1980年):イリノイ州の裕福な家族が長男の死を巡り崩壊するドラマ。ロバート・レッドフォード監督デビュー作で、ドナルド・サザーランドとメアリー・タイラー・ムーアの抑えた演技が、喪失と再生の痛みを静かに描きます。アカデミー賞作品賞受賞の傑作。
- プリティ・リーグ(1992年):イリノイ州の女子プロ野球チームの奮闘を描くスポーツドラマ。ペニー・マーシャル監督が、ジーナ・デイヴィスとトム・ハンクスの活躍をユーモアたっぷりに綴り、戦時中の女性活躍を明るく称えます。友情と成長の爽快な一編。
- ホリデーオンリー: とりあえずボッチ回避法?(2020年):シカゴで祝日限定のパートナーとなったスローンとジャクソンのロマコメ。エマ・ロバーツとルーク・ブレイシーの軽快な掛け合いが、孤独回避の関係から生まれる恋を温かく描きます。ジョン・ホワイトセル監督のハートフルな作品。
- マイ・ボディガード (1980年の映画)(1980年):シカゴの荒れた高校で、いじめられっ子クリフォードがボディガードを雇う青春ドラマ。トニー・ビル監督が、コリー・ハイムとマット・ディロンの対立を感動的に描き、友情の芽生えと成長の痛みを優しく語ります。
- ミーン・ガールズ(2004年):イリノイ州の高校で、新入生ケイディが人気女子グループに潜入する学園コメディ。マーク・ウォールズ監督が、リンジー・ローハンの視点で陰湿ないじめを風刺し、ティーンエイジャーの心理を鋭く描きます。カルト的人気の名作。
- モンスター・ア・ゴーゴー(1965年):シカゴ近郊で巨大モンスターが暴れる低予算SFホラー。ハーシェル・ゴードン・ルイスが未完のフィルムを完成させ、ゴーゴーダンスを挿入したカオスな作りが「史上最低の映画」として有名。B級の極みを楽しむ一作。
- ルーカスの初恋メモリー(1986年):イリノイ州の郊外高校で、ルーカスが初恋に挑む青春ロマンス。デイヴィッド・セルツァー監督が、コリー・ハイムとケリー・グリーンの純粋な恋を優しく描き、チャーリー・シーンらの脇役が青春の複雑さを加えます。切ない初恋の記憶。
これらの映画は、シカゴの都市景観や文化を活かし、物語に深みを加えています。イリノイ州の多様なロケーションは、アクションからコメディまで幅広いジャンルの映画に適しています。
出身女優
イリノイ州出身の女優は、ハリウッドや世界の映画界で活躍する才能を多く輩出しています。以下は代表的なイリノイ州出身の女優です。
- ジリアン・アンダーソン(Gillian Anderson, 1968年8月9日生まれ、シカゴ出身):テレビシリーズ『X-ファイル』のダナ・スカリー役で知られる女優。ミステリアスな役柄からコメディまで幅広く演じ、舞台でも活躍しています。
- ジェニファー・ビールス(Jennifer Beals, 1963年12月19日生まれ、シカゴ出身):映画『フラッシュダンス』(1983年)で主演を務め、一躍スターに。ダンサーとしての背景を活かし、情熱的な演技が評価されました。
- ロビン・タニー(Robin Tunney, 1972年6月19日生まれ、シカゴ出身):『ザ・クラフト』(1996年)や『エンド・オブ・デイズ』(1999年)で知られ、テレビシリーズ『メンタリスト』でも人気を博しました。
- グロリア・スワンソン(Gloria Swanson, 1899年3月27日生まれ、シカゴ出身):サイレント映画時代の大スターで、『サンセット大通り』(1950年)でアカデミー賞にノミネート。華やかなキャリアで知られています。
- ラケル・ウェルチ(Raquel Welch, 1940年9月5日生まれ、シカゴ出身):1960年代のセックスシンボルとして知られ、『ミリオンダラー・ベビー』(1966年)などで活躍。力強いスクリーンプレゼンスが特徴です。
イリノイ州出身の女優たちは、多様なジャンルで活躍し、サイレント映画時代から現代まで、映画史に名を刻んでいます。彼女たちの成功は、シカゴの豊かな文化環境や演劇伝統に影響を受けたものと考えられます。
レビュー 作品の感想や女優への思い