黒いチューリップ

『黒いチューリップ』は1963年に公開されたアクション映画。1789年、フランス革命前夜。義賊「黒いチューリップ」こと貴族ギヨームが、顔の傷を隠すため双子の弟ジュリアンに身代わりを依頼。コメディと織り交ざる冒険活劇。ヴィルナ・リージとドーン・アダムスが主要な女性キャラクターを演じ、物語に華と深みを添える。

基本情報
見どころ
女優の活躍
女優の衣装・化粧・髪型
あらすじ
解説
キャスト
スタッフ

基本情報

邦題：黒いチューリップ
原題：LA TULIPE NOIRE
公開年：1963年
製作国：フランス、イタリア、スペイン
上映時間：110分
ジャンル：アクション

【LA TULIPE NOIRE】Alain Delon

ALAIN DELON SI ON POUVAIS ENCORE A VOIR 18 ANS. TU MA FAIT RÊVE PENDANTS DES ANNÉES MERCI A TOI ALPHONSE BRIXHE

見どころ

『花咲ける騎士道』のクリスチャン＝ジャックが監督を務め、全編70mmフィルムで撮影された超大作。一人二役に挑戦したアラン・ドロンが性格の全く違う兄弟を演じ分ける。

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女優の活躍

本作では、ヴィルナ・リージとドーン・アダムスが主要な女性キャラクターを演じ、物語に華と深みを添えています。

ヴィルナ・リージはカロ役として、ギヨームの恋人であり、革命的な志を持つ女性を演じました。彼女の演技は、情熱的かつ知的で、物語の後半でジュリアンと関わることで、革命の理想に目覚める姿を魅力的に表現しています。特に、剣を手に戦うシーンでは、男性的なアクションに果敢に挑む姿が印象的で、当時の女性キャラクターとしては珍しく、勇敢で行動的な一面を見せています。リージの落ち着いた美貌と、感情豊かな演技が、物語のロマンスとドラマを高めています。

一方、ドーン・アダムスはヴィゴーニュ侯爵夫人カトリーヌ役として、ギヨームの愛人であり、貴族社会の洗練された女性を演じました。アダムスの演技は、貴族らしい優雅さと狡猾さを兼ね備え、情報提供者としての役割を果たす一方で、ギヨームとの関係に複雑な感情を織り交ぜ、物語に緊張感を加えています。

両女優とも、アラン・ドロンの二役によるダイナミックな演技と対峙しながら、作品のアクションとロマンスのバランスを支える重要な役割を果たしました。リージとアダムスの対照的なキャラクター設定は、フランス革命前夜の社会的混乱を背景に、異なる女性像を浮き彫りにし、観客に強い印象を与えました。

女優の衣装・化粧・髪型

ヴィルナ・リージ演じるカロの衣装は、18世紀末のフランス貴族社会を反映しつつ、彼女の活動的な性格を強調するデザインが特徴です。普段は、柔らかな色調のドレスに、繊細なレースや刺繍が施されたものが多く、女性らしい優雅さを演出しています。しかし、アクションシーンでは、動きやすいようにタイトに仕立てられたドレスや、男装に近い衣装を着用し、剣を振るう姿が際立ちます。化粧は控えめで、自然な肌の美しさを強調し、革命的な情熱を表現するために、眉やアイラインをやや強めに描いています。髪型は、ゆるやかに巻かれたアップスタイルが基本で、戦闘時には簡素にまとめられ、彼女の行動力を象徴しています。

ドーン・アダムス演じるカトリーヌの衣装は、貴族の夫人らしい豪華さが際立ちます。深紅やエメラルドグリーンのサテンやベルベットのドレスに、金糸の装飾やジュエリーがふんだんに使われ、貴族社会の華やかさを体現。化粧は、頬に濃いめのチークと赤い口紅を用い、洗練された美しさを強調しています。髪型は、複雑に編み込まれたアップスタイルに、宝石やリボンをあしらったものが多く、彼女の地位と魅力を表現しています。両女優の衣装とメイクは、時代背景とキャラクターの個性を反映し、視覚的にも物語のコントラストを際立たせています。

あらすじ

1789年6月、フランス革命前夜のルシヨン地方。貴族のギヨーム・ド・サン＝プルー（アラン・ドロン）は、昼間は社交界で軽薄な貴族として振る舞いながら、夜は覆面を被り、悪徳貴族から金品を奪い庶民に分け与える義賊「黒いチューリップ」として活躍していました。憲兵隊長ラ・ムーシュ（アドルフォ・マルシラック）は、ギヨームが「黒いチューリップ」だと確信していますが、証拠をつかめず、貴族社会でも彼の正体を信じる者は少ない状況です。ギヨームは、ヴィゴーニュ侯爵夫人カトリーヌ（ドーン・アダムス）との愛人関係を通じて情報を得つつ、巧みに貴族たちを翻弄していました。しかし、ある日、ラ・ムーシュの罠にかかり、ギヨームは左頬に大きな剣の傷を負ってしまいます。この傷が原因で正体が露見する危機に瀕した彼は、瓜二つの双子の弟ジュリアン（アラン・ドロン）を田舎から呼び寄せます。ジュリアンは内気で純朴な性格で、勇猛な兄とは正反対。ギヨームを特権階級の傲慢な貴族だと思っていたジュリアンは、彼が庶民のために戦う「黒いチューリップ」だと知り、驚きつつも身代わりを引き受けます。ジュリアンは、ヴィゴーニュ侯爵（エイキム・タミロフ）のパーティに出席し、ギヨームとして振る舞いながら、黒いチューリップの疑惑を晴らし、さらには王族ダルトワ公の陰謀を探る任務を遂行します。しかし、社交界に不慣れなジュリアンはぎこちない行動で周囲を戸惑わせ、さらにはカロ（ヴィルナ・リージ）という女性と出会い、彼女の革命的な理想に感化されていきます。一方、ギヨームは傷を隠しながら裏で活動を続けますが、ラ・ムーシュの追及は厳しさを増し、兄弟の運命はフランス革命の波乱に飲み込まれていきます。最終的に、ジュリアンは民衆の側に立ち、ギヨームは自己犠牲を選ぶことで、兄弟の絆と正義が描かれます。

解説

『黒いチューリップ』は、アレクサンドル・デュマ・ペールの同名小説を原作としていますが、監督クリスチャン＝ジャックと脚本家らによって大幅に脚色され、オリジナルとは異なる物語が展開されています。原作が17世紀のオランダのチューリップ・バブルを背景にしたロマンスと陰謀の物語であるのに対し、本作はフランス革命前夜の動乱期を舞台に、アクションとコメディを融合させた娯楽作品として再構築されました。アラン・ドロンの一人二役による演技が最大の見どころで、ギヨームの自信に満ちた大胆さと、ジュリアンの純朴で不器用なキャラクターを見事に演じ分け、観客を魅了します。特に、CGのない時代に、兄弟が同じ画面に登場するシーンの合成技術は、当時としては高度で、70ミリフィルムの鮮やかな映像美とともに話題となりました。本作は、フランス革命の社会的背景を軽快なタッチで描きつつ、貴族社会の腐敗や民衆の不満を背景に、義賊としてのヒーロー像を強調。ギヨームの行動は、単なる金銭目的ではなく、正義感とスリルを求める複雑な動機が垣間見え、ジュリアンの成長とともに、革命の理想と個人の犠牲がテーマとして浮かび上がります。ヴィルナ・リージとドーン・アダムスの女性キャラクターは、物語にロマンスと緊張感を加え、時代劇としての華やかさを増しています。撮影監督アンリ・ドカエによる鮮やかな色彩と、ジェラール・カルヴィの軽快な音楽が、作品の冒険的な雰囲気を高め、70ミリの大画面にふさわしい迫力を生み出しています。公開当時、フランスで300万人以上を動員し、アラン・ドロンのスター性を確立した作品としても知られています。2015年には、4K修復版がリリースされ、現代の観客にもその映像美が再評価されています。