コネチカット州は米国北東部ニューイングランド地方の州で、面積は全米で3番目に小さく、人口約360万。州都はハートフォード、最大都市はブリッジポート。ニューヨークとボストンの中間に位置し、豊かな自然と歴史が特徴。保険産業の中心地としても知られる。出身女優にキャサリン・ヘプバーン、グレン・クローズ、メグ・ライアン、クロエ・セヴィニーたち。
歴史
コネチカット州は、アメリカ合衆国の原13州の一つであり、その歴史は植民地時代に遡ります。1630年代にイギリスからのピューリタン入植者によって設立され、1636年にハートフォード、ウィンザー、ウェザーズフィールドの3つの町が合同でコネチカット植民地を形成しました。この植民地は、1639年に「基本法(Fundamental Orders)」を制定し、これはアメリカ初の成文憲法とされることが多く、自治の基盤を築きました。このため、コネチカットは「憲法の州(Constitution State)」という愛称で知られています。
植民地時代、コネチカットは農業と交易を中心に発展し、特にコネチカット川沿いの肥沃な土地が経済の基盤となりました。18世紀には、アメリカ独立戦争において重要な役割を果たしました。コネチカット出身のネイサン・ヘイルは、独立戦争中の英雄として知られ、「我が唯一の悔いは、祖国のために捧げる命が一つしかないことだ」という言葉を残しました。1788年1月9日、コネチカットは5番目の州として合衆国憲法を批准し、連邦に加盟しました。
19世紀には工業化が進み、特にブリッジポートやハートフォードは製造業の中心地となりました。銃器製造で有名なコルトや、精密機械の生産が盛んでした。また、保険産業がこの時期に急速に成長し、ハートフォードは「保険の首都」として知られるようになりました。20世紀に入ると、州はニューヨーク大都市圏の影響を受けつつも、独自の文化と歴史を維持し続けました。近年では、インディアン・カジノの運営や観光業が経済に貢献していますが、歴史的な町並みや緑地の保存にも力を入れています。
芸術
コネチカット州は、芸術と文化の分野でも豊かとされています。特に、州内の歴史的な町並みや緑地は、芸術家や作家にインスピレーションを与えてきました。リッチフィールド・グリーンやウェザーズフィールド・グリーンなど、ニューイングランドらしい風景は、絵画や写真のモチーフとして頻繁に取り上げられます。また、州内には多くの美術館やギャラリーが存在し、ニューヘイブンにあるイェール大学美術館は、ゴッホやピカソの作品を含む豊富なコレクションで知られています。
舞台芸術も盛んで、ハートフォードのブッシュネル・パフォーミング・アーツ・センターでは、ブロードウェイの巡回公演やクラシック音楽のコンサートが開催されます。また、州内の小さな劇場では、地元の劇団による実験的な公演も行われており、地域の文化を支えています。文芸の分野では、マーク・トウェインがハートフォードに住んでいた時期に『トム・ソーヤーの冒険』や『ハックルベリー・フィンの冒険』を執筆し、その家は現在博物館として公開されています。このように、コネチカットは文学、絵画、舞台芸術など多岐にわたる芸術活動の拠点となっています。
2006年のコネチカット州文化観光委員会の報告によると、芸術、映画、歴史観光による経済効果は140億米ドルを超え、17万人の雇用を支えています。このことは、州の文化が経済的にも重要な役割を果たしていることを示しています。
登場する映画
コネチカット州はその絵のように美しい風景や歴史的な町並みから、数多くの映画の舞台やロケ地として選ばれています。以下は、コネチカット州が登場する代表的な映画のリストです。
- 炎の少女チャーリー(2022年):スティーブン・キングの小説を原作としたSFホラー映画の2022年リメイク版です。コネチカット州の静かな田舎町を舞台に、パイロキネシス(発火能力)を持つ少女チャーリーと、彼女を守る両親の逃亡劇が展開します。政府の秘密機関が能力者を追う中、家族の絆と超常現象の恐怖が交錯。ザック・エフロンが父親役を熱演し、炎の特殊効果が迫力満点。原作のエッセンスを現代的に再解釈したスリリングな一作で、能力の覚醒がもたらす悲劇を丁寧に描いています。
- プレッピー・コネクション(2015年):コネチカット州の名門私立校を舞台に、貧困家庭出身の少年トビアスが麻薬密売に手を染める実話ベースの青春ドラマです。エリート社会の階級差と孤独が彼を犯罪へ駆り立て、憧れの少女アレクシスとの関係が複雑に絡みます。トーマス・マンが主人公を演じ、1980年代のアメリカ社会の闇をリアルに映し出します。友情、裏切り、野心が交錯する中、若者の脆さと社会の冷酷さを問いかける。低予算ながら緊張感あふれる演出が光る秀作です。
- ミストレス・アメリカ(2015年):ニューヨークの大学1年生トレイシーが、自由奔放な義姉ブロークと出会い、人生の可能性を探るコメディドラマ。コネチカットの郊外シーンも織り交ぜ、都会の喧騒と田舎の静けさが対比されます。グレタ・ガーウィグがブロークをチャーミングに演じ、ノア・バームバック監督の軽快な脚本が冴えます。友情、野望、失敗の連続がユーモラスに描かれ、20代の揺らぎを鮮やかに捉えます。ウィットに富んだ対話とテンポの良さが魅力の現代版青春群像劇です。
- インキーパーズ(2011年):コネチカット州の古いホテル「ヤンキー・ペドラー・イン」を舞台にしたホラー映画。閉館間近の宿で働く若者たちが、幽霊の噂を追う中、本物の恐怖に遭遇します。サラ・パクストンとパット・ヒーリーのコンビがコミカルに描き、タイ・ウェスト監督のスロービルドな緊張感が秀逸。幽霊の正体は悲劇的な過去にあり、友情と恐怖が交錯する展開が魅力。低予算ながら心理的な怖さとユーモアのバランスが絶妙で、ホラーファン必見の隠れた名作です。
- シンプル・フェイバー(2018年):コネチカット州の裕福な郊外を舞台に、主婦ブロガーのステファニーと謎めいたママ友エミリーの友情が、失踪事件をきっかけに崩壊するサスペンス。アナ・ケンドリックとブレイク・ライブリーの演技が光り、ポール・フェイグ監督のスタイリッシュな演出が冴えます。秘密、裏切り、復讐が次々と明らかになり、ブラックユーモア満載の展開がクセになる。女性の闇と社会の仮面を風刺した現代版ノワールで、予測不能のツイストが魅力です。
- 死霊館 悪魔のせいなら、無罪。(2021年):コネチカット州ブルックフィールドで起きた実在の殺人事件を基にしたホラー。ウォーレン夫妻が、悪魔憑依を主張する被告人を救うため調査に乗り出します。マイケル・チャベス監督の手腕で、裁判と超常現象が融合したスリリングな物語。ヴェラ・ファーミガとパトリック・ウィルソンの夫婦演技が圧巻で、爪痕やトーテムの恐怖描写が秀逸。シリーズ第3作ながら新鮮なアプローチで、信仰と科学の狭間を描く深みのある一作です。
- サラブレッド(2017年):コネチカット州の裕福な郊外で、感情欠落の少女リリーとサイコパス気味の友人アマンダが、殺人を計画するブラックコメディ・スリラー。アニャ・テイラー=ジョイとオリヴィア・クックの演技が冷徹に冴え、コリー・フィンリー監督の鋭い脚本が光ります。馬の安楽死をきっかけに始まる友情の闇が、階級社会の歪みを風刺。予測不能のツイストとウィットに富んだ対話が魅力で、現代の若者の心理を鋭く抉る秀逸なデビュー作です。
- アグネスと幸せのパズル(2018年):コネチカット州の郊外を舞台に、専業主婦アグネスがジグソーパズルを通じて自己発見するドラマ。ケリー・マクドナルドが抑えた演技で内面的成長を体現し、マーク・タートルーブ監督の繊細な演出が光ります。家族の絆と個人の自由の狭間で揺れる姿が、静かな感動を呼ぶ。アルゼンチン映画のリメイクながら、アメリカの保守的な郊外生活をリアルに描き、女性の目覚めを優しく描いた心温まる一作です。
- 50歳の恋愛白書(2009年):コネチカット州の閑静な郊外で、完璧な主婦ピッパが中年危機に陥るドラマ。ロビン・ライト・ペンが繊細に演じ、レベッカ・ミラー監督の自伝的脚本が深みを加えます。過去のトラウマと新たな恋が交錯し、家族の仮面が剥がれ落ちる。キアヌ・リーブスとのロマンスが爽やかで、女性の内面的葛藤を丁寧に描く。静かな田舎町の風景が、主人公の心象風景を象徴的に映す秀逸なヒューマンストーリーです。
- サイレントナイト/こんな人質もうこりごり(1994年):クリスマスイブのコネチカット州で、泥棒が夫婦喧嘩中の家族を人質に取るブラックコメディ。デニス・レアリーのシニカルな演技が爆笑を誘い、テッド・デミ監督の風刺が効いています。家族のドタバタと泥棒の苛立ちが交錯し、祝日の皮肉を描く。ジュディ・デイヴィスとケヴィン・スペイシーの夫婦像がリアルで、予想外の展開が魅力。祝祭の裏側をコミカルに暴く、痛快なサバイバル劇です。
- インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国(2008年):1957年のコネチカット州で始まる冒険アクションの第4作。インディ(ハリソン・フォード)がイェール大学を舞台にソ連スパイと対峙し、クリスタル・スカルを探す。ヤーリ大学の図書館シーンが象徴的で、冷戦の緊張感を活かしたスリル満載。シャイア・ラブーフの息子役が新風を吹き込み、スピルバーグ監督のダイナミックな演出が冴える。シリーズらしいユーモアとアクションが融合したエンターテイメントの傑作です。
- オープニング・ナイト(1977年):コネチカット州の劇場を舞台に、女優マートルの精神崩壊を描くインディペンデントドラマ。ジーナ・ローランズの迫真の演技が圧巻で、ジョン・カサヴェテス監督の即興風演出が内面的葛藤を深掘り。死んだファンの幻影に悩まされ、舞台初日を控える彼女の苦悩がリアル。演劇界の狂気と創造性を風刺し、家族や恋人の視点も交えた群像劇。批評家から高評価の、感情の渦巻く傑作です。
- アトランティスのこころ(2001年):1960年代のコネチカット州ハーウィッチを舞台に、テレパシー能力を持つ老人テッドと少年ボビーの友情を描くスティーブン・キング原作のドラマ。アンソニー・ホプキンスの神秘的な演技が光り、スコット・ヒックス監督のノスタルジックな映像美が感動を呼ぶ。ベトナム戦争の影が忍び寄る中、純粋な絆が心を温める。青春の喪失と希望を優しく紡ぐ、静かな名作です。
- アミスタッド(1997年):1839年のコネチカット州ニューヘイブンで起きた奴隷船反乱事件を基にした歴史ドラマ。スティーブン・スピルバーグ監督が、黒人たちの裁判闘争を描き、アンソニー・ホプキンスが元大統領を熱演。ジャイモン・フンスーの迫真の演技が光り、人種差別と正義の対立を重厚に表現。実在の事件を基に、奴隷制度の残虐さを問いかける。興行的に苦戦したものの、史実の深みを湛えた力作です。
- イヴの総て(1950年):ブロードウェイの舞台裏を舞台に、野心家イヴがベテラン女優マーゴを出し抜く心理劇。コネチカット州の別荘シーンが陰謀を象徴し、ベティ・デイヴィスとアン・バクスターの名演がアカデミー賞を総なめ。ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の鋭い脚本が、芸能界の闇を風刺。マリリン・モンローの端役も話題で、野望と嫉妬の人間ドラマの金字塔です。
- 悪を呼ぶ少年(1972年):1935年のコネチカット州農村を舞台に、一卵性双生児の少年が引き起こす殺人事件を描くサイコスリラー。ロバート・マリガン監督が、トーマス・トライオン原作を基に、双子の心理を不気味に探求。ユタ・ヘーゲンの祖母役が温かみを添え、夏の田園風景が恐怖を増幅。シッチェス映画祭金賞受賞の、家族の闇を抉る名作です。
- ステップフォードの妻たち(1975年):コネチカット州ステップフォードの理想郷で、主婦ジョアンナが完璧な妻たちの秘密に迫るSFサスペンス。ブライアン・フォーブス監督が、アイラ・レヴィン原作を基に、フェミニズムの視点を鋭く描く。キャサリン・ロスの不安げな演技が緊張を高め、郊外の美しさが不気味さを強調。女性の抑圧を風刺した、時代を象徴するカルトクラシックです。
- 楡の木蔭の欲望(1958年):19世紀のコネチカット州農場を舞台に、裕福な農夫と若い後妻の禁断の愛を描くユージン・オニール原作のドラマ。デルバート・マン監督が、ソフィア・ローレンとバール・アイヴスの情念を激しく表現。アンソニー・パーキンスの息子役が悲劇を深め、欲望と復讐の渦巻く家族崩壊を克明に。古典戯曲の重厚な人間心理が魅力の力作です。
- 二十歳の火遊び(1961年):コネチカット州のタバコ農場を舞台に、青年パリッシュの恋と野心を描くドラマ。デルマー・デイヴス監督が、ミルドレッド・サヴェージ原作を基に、階級闘争と青春の葛藤を織り交ぜる。トロイ・ドナヒューとクローデット・コルベールのロマンスが爽やかで、農村の風景が情熱を彩る。家族の確執と成長の物語が心に残る一作です。
- ヘレンとフランクと18人の子供たち(2005年):コネチカット州の海辺を舞台に、再婚で18人の子供を持つ大家族のドタバタを描くコメディ。デニス・クエイドとレネ・ルッソの夫婦が温かく演じ、ラージャ・ゴスネル監督の軽快なテンポが楽しい。1968年作のリメイクながら、現代的な家族像をコミカルに表現。混沌の中の絆が微笑ましく、子だくさんの日常が心温まるエンタメです。
- スイング・ホテル(1942年):コネチカット州の農場を舞台に、ショービジネスを引退したジムがホテルを開くミュージカル。ビング・クロスビーとフレッド・アステアの夢の共演で、アーヴィング・バーリンの名曲「ホワイト・クリスマス」が誕生。マーク・サンドリッチ監督の華やかなダンスと歌が魅力で、クリスマスの魔法が満載。恋と友情のハートウォーミングなクラシックです。
- メイム叔母さん(1958年):コネチカット州の学校シーンを交え、享楽的な叔母メイムが甥パトリックを育てるコメディ。モートン・ダコスタ監督が、パトリック・デニス原作を基に、ロザリンド・ラッセルの奔放な演技を活かす。大恐慌期のアメリカをユーモラスに描き、人生の教訓を楽しく伝える。アカデミー賞衣装デザイン賞受賞の、華やかで心温まる名作です。
- メイム(1974年):コネチカット州の田舎を訪れるシーンが彩りを添えるミュージカル。ブロードウェイ版を基に、ルシル・ボールがメイム叔母さんを演じ、ジーン・サックス監督が華やかなショーを展開。パトリック・デニスの原作を歌とダンスで蘇らせ、人生の喜びを歌い上げる。賛否両論ながら、ボールのエネルギーが光るエンターテイメントの宝石です。
- ニューヨークの大停電(1968年):コネチカット州の別荘を舞台に、大停電の夜のドタバタを描くコメディ。ハイ・アヴァーバック監督が、クロード・マグニア原作を基に、ドリス・デイの魅力で笑いを誘う。夫の浮気疑惑と混乱が交錯し、テレンス・スタンプの怪演がスパイス。1965年の実在停電をモチーフに、夫婦の危機を軽快に解決する愉快な一作です。
これらの映画は、コネチカット州の美しい自然や歴史的な町並み、さらには郊外の生活の複雑さを反映しており、州の多様な魅力を世界に伝えています。
出身女優
コネチカット州出身の女優には、国際的に活躍する著名な人物が含まれます。以下は、代表的なコネチカット州出身の女優のリストです。
- ケイト・ボスワース:9歳から14歳まで当州に暮らしました。
- ジェシカ・ビール:当州フェアフィールドの高校に通い、優秀な成績を収めました。
- ローレン・アンブローズ:当州ニューヘイブンに生まれ、高校卒業まで暮らしました。
- クロエ・セヴィニー(1974年11月18日 – ): マサチューセッツ州生まれのダリエン育ち。インディペンデント映画を中心に活躍し、『ボーイズ・ドント・クライ』(1999年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネート。独特のファッションセンスでも注目を集めています。
- メグ・ライアン(1961年11月19日 – ): フェアフィールド出身。ロマンティック・コメディの女王として知られ、『恋人たちの予感』(1989年)、『めぐり逢えたら』(1993年)、『ユー・ガット・メール』(1998年)などで愛らしい魅力を発揮。近年は監督としても活動しています。
- グレン・クローズ(1947年3月19日 – ): グリニッジ出身。『危険な情事』(1987年)、『101』(1996年)、『アルバート氏の人生』(2011年)などで知られ、アカデミー賞に8回ノミネートされた実力派女優。舞台でも活躍し、トニー賞も受賞しています。
- キャサリン・ヘプバーン(1907年5月12日 – 2003年6月29日): ハートフォード出身。アメリカ映画史を代表する女優で、アカデミー賞主演女優賞の全受賞者リストを4回受賞し、これは歴代最多記録です。『フィラデルフィア物語』(1940年)、『アフリカの女王』(1951年)、『冬のライオン』(1968年)など、数々の名作に出演。知的で独立した女性像を体現しました。
これらの女優は、コネチカット州の文化的・知的な環境に育まれ、映画や舞台で独自のキャリアを築きました。彼女たちの活躍は、州の芸術への貢献を象徴しています。
レビュー 作品の感想や女優への思い