サウスダコタ州は米国中西部に位置し、グレートプレーンズに広がる州です。州都はピア、最大都市はスーフォールズ。ラシュモア山やバッドランズ国立公園で知られ、観光業と農業が主要産業です。出身女優にジャニュアリー・ジョーンズ、エイミー・アダムス、シェリル・ラッドたち。
歴史
サウスダコタ州の歴史は、数千年前に遡ります。この地域には、紀元前5000年頃まで狩猟採集生活を送っていたパレオ・インディアンが住んでいました。その後、500年から800年頃には、マウンドビルダーと呼ばれる半遊牧民が中部と東部に定住し、土を盛り上げた構造物を作りました。14世紀には、ミズーリ川沿いで数百人が犠牲となったクロウクリーク虐殺が発生し、地域の緊張を物語っています。1500年頃にはアリカラ族がミズーリ川流域を支配していましたが、19世紀初頭にはスー族がこの地域をほぼ完全に掌握しました。
ヨーロッパ人との接触は、1743年にフランスのラヴェランドリー兄弟が現在のピア市近くを探検し、フランス領ルイジアナの一部であると記した銘板を残したことから始まります。19世紀に入ると、アメリカ合衆国の拡大に伴い、スー族と米国政府との間で緊張が高まりました。特に、1868年の第二次ララミー砦条約でサウスダコタ州西部がグレートスー居留地としてスー族に認められたにもかかわらず、1874年のカスター遠征によるブラックヒルズでの金発見が引き金となり、鉱夫や開拓者の流入を招きました。スー族は土地の譲渡を拒否し、これがスー戦争へと発展しました。最終的に米国陸軍が勝利し、グレートスー居留地は5つの小さな居留地に分割され、ラコタ族が収容されました。1980年、米国最高裁判所はブラックヒルズの違法占拠を認め、ラコタ族に賠償金を命じましたが、彼らは金銭ではなく土地の返還を求め、現在もこの問題は未解決です。
1889年11月2日、ベンジャミン・ハリソン大統領によりダコタ準州がノースダコタ州とサウスダコタ州に分割され、サウスダコタ州は米国40番目の州として昇格しました。この際、どちらの州が先に加盟したかを明確にしないため、署名順序がシャッフルされるという異例の措置が取られました。20世紀に入ると、州は農業中心の経済から多様化を遂げ、1960年代の州間高速道路の整備により観光業が成長しました。1981年にはシティバンクがクレジットカード部門をスーフォールズに移し、金融産業も発展。さらに、2007年には閉鎖されたホームステイク金鉱が地下研究施設に転用されるなど、科学分野でも進展が見られます。しかし、農村部では人口流出が続き、若者の都市部や他州への移動が課題となっています。
芸術
サウスダコタ州の芸術は、先住スー族の伝統文化と、開拓時代以降の西洋文化が融合した独自の特徴を持っています。スー族の芸術は、ビーズ細工、キルト、伝統的な衣装や装飾品に表れ、部族の物語や精神性を反映しています。特にラコタ族のビーズ細工は、鮮やかな色彩と複雑な模様で知られ、現代でも工芸品として高い評価を受けています。これらの作品は、州内の保留地や博物館、例えばラピッドシティのスー族文化センターで展示されています。
現代芸術では、ブラックヒルズやバッドランズ国立公園の壮大な自然がインスピレーションの源となっています。地元のアーティストは、風景画や彫刻を通じて、州の広大な平原や岩石地形を描き出します。ラシュモア山の巨大な大統領像は、彫刻家ガットスン・ボーグラムによるもので、1927年から1941年にかけて制作され、州の芸術的ランドマークとなっています。また、クレイジーホース記念碑は、ズィオウコフスキー家による進行中のプロジェクトで、スー族の英雄を称える巨大な彫刻として、観光客だけでなくアート愛好家にも注目されています。
音楽の分野では、サウスダコタ州はカントリーミュージックやフォークミュージックが盛んで、地元のフェスティバルやライブハウスで頻繁に演奏されます。スーフォールズの音楽シーンは特に活発で、インディーズバンドや地元ミュージシャンが活動の場を広げています。また、州内では毎年開催される「サウスダコタ州芸術フェスティバル」が、絵画、彫刻、音楽、パフォーマンスアートを一堂に集め、地域のアーティストを支援しています。
登場する映画
サウスダコタ州はその独特な景観から、映画のロケ地としてたびたび選ばれています。以下は、州内で撮影された、または州が舞台として登場する代表的な映画です。
- エターナルズ(2021年):マーベル・シネマティック・ユニバースの新章を描く本作は、太古より人類を守護する不死身の超人集団「エターナルズ」の活躍を壮大に展開します。サウスダコタ州に住む癒しの力を持つアジャクを中心に、復活した脅威ディヴィアンツとの戦いを繰り広げます。クロエ・ジャオ監督の美しい映像美が、7000年にわたる彼らの葛藤と絆を詩情豊かに表現。アクションの迫力と哲学的な深みを兼ね備え、観る者に永遠の命の意味を問いかけます。ジェンマ・チャン、リチャード・マッデンら豪華キャストが息づくキャラクターを鮮やかに演じ、MCUの新たな地平を切り開きました。
- エルヴィス(2022年):ロックンロールの王エルヴィス・プレスリーの波乱に満ちた生涯を、バズ・ラーマン監督が華麗なビジュアルと情熱的な音楽で描いた伝記映画です。サウスダコタ州のラシュモア山を思わせる壮大なスケールで、彼の成功と悲劇を追います。オースティン・バトラーが若きエルヴィスのカリスマを完璧に体現し、トム・ハンクスが狡猾なマネージャー・トム・パーカーを演じます。貧困からスターへの上昇、愛と喪失のドラマが、息をのむダンスシーンとロックのビートで融合。家族の絆と芸能界の闇を丁寧に紡ぎ、永遠のアイコンを現代に蘇らせました。
- 三悪人(1926年):ジョン・フォード監督のサイレント西部劇の傑作で、サウスダコタ州ダコタ準州の土地開拓時代を舞台に、ならず者三人の男たちが少女を守る感動的な物語です。1877年のスー族土地解放を背景に、荒野の厳しさと人間の絆を無声の情感豊かに描きます。ジョージ・オブレーンらが出演し、馬の疾走と銃撃戦のダイナミックなアクションが魅力。少女の父を殺した悪党に復讐し、移住者の列車を守る彼らの成長が、ユーモアと悲壮感を交え心を揺さぶります。西部開拓のロマンと友情の美しさを象徴する不朽の名作です。
- サンダーハート(1992年):サウスダコタ州のスー族居留地を舞台にしたマイケル・アプテッド監督のサスペンスで、ネイティブアメリカンの血を引くFBI捜査官レイ・レボイの葛藤を描きます。殺人事件の捜査を通じて、自身のルーツと政府の陰謀に直面し、伝統と現代の狭間で苦悩します。ヴァル・キルマーがレイを熱演し、フレッド・ウォード、グレアム・グリーンが脇を固めます。1973年のウーンデッド・ニー事件を基に、環境破壊と人権問題を鋭く指摘。緊張感あふれる追跡劇と内面的成長が融合し、差別と正義のテーマを深く掘り下げました。
- 小さな巨人(1970年):アーサー・ペン監督の叙事詩的な西部劇で、サウスダコタ州の荒野を舞台に、白人少年ジャック・クラブの波乱の人生を追います。両親をインディアンに殺されシャイアン族に育てられた彼は、「小さな巨人」と呼ばれ、白人とネイティブの間で翻弄されます。ダスティン・ホフマンが少年から老境までを演じ、フェイ・ダナウェイが姉役で共演。カスターの最期の戦いを背景に、文化衝突とアイデンティティの探求を感動的に描きます。コメディ要素を交えつつ、開拓史の悲劇を詩情豊かに語り、ホフマンの変幻自在な演技が光る名作です。
- デッドウッド 決戦のワイルドタウン(2019年):HBOの人気西部劇シリーズ『デッドウッド』の完結編で、サウスダコタ州の無法街デッドウッドを舞台に、10年後の住人たちの再会と対決を描きます。デヴィッド・ミルチ脚本、ダニエル・ミナハン監督のもと、イアン・マクシェーン、ティモシー・オリファントらが再集結。1889年の州成立をめぐる陰謀と私怨が渦巻き、娼館主アルや保安官セスらの老境の葛藤が切なく響きます。銃声と対話の緊張感が融合したドラマチックな展開で、開拓時代の終焉を哀愁たっぷりに締めくくり、シリーズの遺産を美しく継承しました。
- ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記(2007年):前作の続編として、ニコラス・ケイジ主演のアドベンチャーで、サウスダコタ州マウント・ラシュモアをキー舞台に、歴史の謎を解き明かします。ベン・ゲイツ一族にかけられたリンカーン暗殺の汚名を晴らすため、失われた日記を探す冒険譚。ジョン・ボイエガ、ジョン・ハートらが共演し、ワシントンD.C.からラシュモア山への追跡劇がスリリング。歴史的事実を基にした謎解きとアクションが融合し、家族の絆と愛国心を楽しく描きます。娯楽性豊かなシリーズ第2弾として、観客をワクワクさせました。
- ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(2013年):アレクサンダー・ペイン監督のモノクロロードムービーで、ネブラスカ州への旅がサウスダコタ州の風景を横断し、父子の絆を温かく描きます。詐欺の当選通知を信じた老人ウディと息子デイビッドの旅路で、故郷の再訪が過去の秘密を明かします。ブルース・ダーンがウディを、ウィル・フォーテがデイビッドを自然体で演じ、ジュン・スクエアが妻役でユーモアを添えます。中西部の荒涼とした風景が家族の複雑な感情を映し、静かな感動を呼び起こします。カンヌ男優賞受賞の名演が光る、心に残る人間ドラマです。
- 北北西に進路を取れ(1959年):アルフレッド・ヒッチコックのスパイ・スリラー傑作で、サウスダコタ州ラシュモア山をクライマックスの舞台に、無実の男の逃走劇を展開します。広告マン・ロジャー・ソーンヒルがスパイに間違えられ、ニューヨークから中西部へ追われるアクション満載の物語。ケイリー・グラントがロジャーを、エバ・マリー・セイントが謎の美女を演じます。飛行機襲撃や列車追跡の名シーンが連続し、ヒッチコックのサスペンス技法が冴えわたります。ユーモアと緊張の絶妙なバランスで、映画史に残るエンターテイメントの金字塔です。
これらの映画は、サウスダコタ州の広大な自然や先住文化を背景に、物語に深みを加えています。ただし、州が主要な舞台となる映画は比較的少なく、ニューヨークやロサンゼルスなど大都市を舞台にした作品に比べると、登場頻度は限定的です。
出身女優
サウスダコタ州出身の女優は多くはありませんが、以下に代表的な人物を紹介します。
- ジャニュアリー・ジョーンズ:1978年1月5日、スーフォールズ生まれ。テレビシリーズ「マッドメン」(2007-2015年)のベティ・ドレイパー役で知られ、エミー賞にノミネートされました。映画では「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(2011年)でエマ・フロスト役を演じ、クールな美貌で注目を集めました。
- エイミー・アダムス:1974年8月20日、イタリア生まれですが、サウスダコタ州で育ちました。6度のオスカーノミネートを誇る実力派女優で、「魔法にかけられて」(2007年)、「ザ・ファイター」(2010年)、「アメリカン・ハッスル」(2013年)などに出演。サウスダコタでの幼少期は、彼女の自然体な演技に影響を与えたと言われています。
- シェリル・ラッド:1951年7月12日、サウスダコタ州ヒューロン生まれ。1970年代の人気テレビシリーズ「チャーリーズ・エンジェル」でクリス・マンロー役を演じ、一躍有名になりました。歌手としても活動し、1970年代に数枚のアルバムをリリース。映画では「パープル・ハーツ」(1984年)などに出演しました。
これらの女優は、サウスダコタ州の控えめな環境で育ちながら、ハリウッドで大きな成功を収めました。州の人口が少ないことを考えると、こうした才能の輩出は注目に値します。
レビュー 作品の感想や女優への思い