ネブラスカ州はアメリカ合衆国中西部に位置し、広大なグレートプレーンズに広がる農業州。州都はリンカーン、最大都市はオマハ。人口約196万人で、トウモロコシや牧畜が経済の中心です。出身女優にヒラリー・スワンク、ジャニーン・ターナー、ガブリエル・カーター、スウォージー・カーツたち。
歴史
ネブラスカ州の歴史は、先住アメリカン部族から始まり、19世紀にはルイス・クラーク探検隊がこの地を訪れました。1803年のルイジアナ買収により米国領となり、1867年に37番目の州として承認されました。州名の「ネブラスカ」は、先住オマハ族の言葉で「平らな水」を意味し、ミズーリ川やプラット川に由来します。19世紀中盤、ホームステッド法により多くの開拓者が移住し、農業が発展しました。特に1860年代の鉄道建設は、ネブラスカを東西交易の要衝に変え、オマハは商業の中心地となりました。南北戦争後、グレートプレーンズの肥沃な土壌を活用し、トウモロコシや小麦の生産が拡大。20世紀初頭には農業機械化が進み、経済が安定しました。しかし、1930年代の大恐慌とダストボウル(砂嵐災害)は農民に深刻な打撃を与え、人口流出も発生しました。第二次世界大戦後は経済が回復し、現代では農業に加え、保険業や製造業も成長。オマハはウォーレン・バフェット氏の投資会社バークシャー・ハサウェイの本拠地として知られ、経済的影響力を持ちます。ネブラスカ州は一院制の議会を採用する唯一の州であり、1934年に導入されたこの制度は、効率的で透明性の高い政治を象徴しています。近年は、再生可能エネルギーや技術革新にも力を入れ、風力発電が成長産業となっています。
芸術
ネブラスカ州の芸術は、その広大な自然と農村文化に深く根ざしています。オマハのジョスリン美術館は、19世紀から現代までのアメリカ美術を中心に収蔵し、特に西部開拓時代の作品や先住アメリカンの芸術が特徴です。リンカーンのシェルドン美術館は、現代アートや写真に力を入れ、地元アーティストの作品も展示しています。文学では、ウィラ・キャザー(1873-1947)が著名で、彼女の小説『マイ・アントニア』はネブラスカの開拓者生活を描写し、州の文化的アイデンティティを象徴します。キャザーの故郷レッドクラウドには、彼女の記念館があり、文学愛好家の巡礼地となっています。音楽面では、ネブラスカはカントリーやフォーク音楽が盛んで、オマハのインディーズ音楽シーンは全国的に注目されています。毎年開催される「オマハ芸術フェスティバル」は、音楽、演劇、ビジュアルアートを融合し、地元住民と観光客を引きつけます。また、先住アメリカンの伝統工芸や現代アートも州内のギャラリーで展示され、多様な文化が共存しています。公共アートも盛んで、州都リンカーンの街角には彫刻や壁画が点在し、都市の景観を彩ります。ネブラスカ大学は芸術教育の中心として、若手アーティストの育成にも貢献しています。
登場する映画
ネブラスカ州は、その広大な風景や素朴な雰囲気を活かし、数々の映画の舞台やロケ地となっています。以下は代表的な作品です。
- 天国は、ほんとうにある(2014年):実話に基づく感動的な物語です。ネブラスカ州の小さな町に住む少年が臨死体験を通じて天国を訪れたと語り、その体験が家族や周囲に大きな影響を与えます。信仰と奇跡をテーマに、家族の絆や人生の意味を問いかけます。宗教的な視点から描かれつつも、普遍的な人間の感情に訴えかける作品です。
- ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(2013年):モノクロで描かれるロードムービーです。ネブラスカ州を舞台に、老いた父親と息子が宝くじの当選を信じて旅に出ます。家族の関係や人生の喪失感をユーモアと哀愁を交えて描き、素朴な田舎町の風景が印象的です。人間味あふれる物語が心に響きます。
- 31年目の夫婦げんか(2012年):長年連れ添った夫婦がネブラスカ州の日常の中で関係の危機に直面します。カウンセリングを通じて過去を振り返り、愛を再発見する過程を描きます。リアルな感情表現とユーモアが織り交ぜられ、熟年夫婦の葛藤と絆に焦点を当てた感動作です。
- マイレージ、マイライフ(2009年):ネブラスカ州オマハを拠点とする解雇請負人の物語です。孤独な主人公が全米を飛び回り、人間関係や人生の意義を見つめ直します。現代社会の孤独とつながりを描き、ジョージ・クルーニーの演技が光る心揺さぶるドラマです。
- ゾンビ・ストリッパーズ(2008年):ネブラスカ州の架空の町で、ゾンビウイルスがストリップクラブに広がるホラーコメディです。過激な描写とブラックユーモアが特徴で、B級映画の楽しさを存分に味わえます。ゾンビとダンサーの奇妙な融合が独特のカルト的魅力を持っています。
- 死霊高校(2008年):ネブラスカ州の高校を舞台にしたホラー映画です。呪われた学校で生徒たちが超自然的な恐怖に直面します。低予算ながら緊張感ある演出と予測不能な展開が魅力で、ホラーファンに愛されるカルト作品です。地方の閉鎖的な雰囲気が不気味さを増します。
- ミッション・ワイルド(2007年):ネブラスカ州の広大な自然を背景に、家族がサバイバルと冒険に挑む物語です。自然との共存や家族の絆をテーマに、壮大な風景とアクションが織り交ぜられています。ネブラスカの荒々しい美しさが物語に深みを与えています。
- アバウト・シュミット(2002年):ジャック・ニコルソン主演のドラマです。ネブラスカ州オマハで定年退職した男が人生の意味を探す旅に出ます。孤独や家族との関係を静かに描き、ユーモアと切なさが共存する作品です。ネブラスカの平凡な日常が物語の背景として効果的に使われています。
- ボーイズ・ドント・クライ(1999年):実話に基づく衝撃的なドラマです。ネブラスカ州の田舎町で、トランスジェンダーの青年が恋愛と偏見の中で生きる姿を描きます。差別やアイデンティティを巡る重いテーマを扱いつつ、深い人間ドラマが心を打ちます。ヒラリー・スワンクの演技が絶賛されました。
- ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!(1999年):ネブラスカ州の高校を舞台にした青春コメディです。生徒会選挙を巡る騒動を通じて、若者の野心や友情を描きます。風刺的なユーモアと軽快な展開が魅力で、平凡な田舎町の学校生活が舞台として活かされています。
- FAIL SAFE 未知への飛行(2000年):冷戦時代の緊迫したスリラーです。ネブラスカ州の空軍基地が舞台の一部となり、核戦争の危機が描かれます。軍事的な緊張感と人間の決断をリアルに描写し、現代にも通じる戦争の恐怖を伝えています。重厚なドラマが特徴です。
- インディアン・ランナー(1991年):ネブラスカ州の田舎町を舞台にした家族ドラマです。対照的な兄弟の葛藤と愛情を描き、ショーン・ペンの監督デビュー作として注目されました。人間関係の複雑さとネブラスカの静かな風景が物語に深い情感を与えています。
- 少年の町(1991年):ネブラスカ州の小さな町で育つ少年たちの友情と成長を描いた青春映画です。1960年代のノスタルジーを背景に、純粋さと葛藤が交錯する物語が展開します。田舎町の素朴な魅力と少年たちの冒険が心温まる作品です。
- チルドレン・オブ・ザ・コーン(1984年):スティーヴン・キング原作のホラー映画です。ネブラスカ州のトウモロコシ畑に囲まれた町で、子供たちが邪悪なカルトに支配されます。不気味な雰囲気と地方の孤立感が恐怖を増幅し、ホラー映画の古典として知られています。
- 愛と追憶の日々(1983年):ネブラスカ州の農場を舞台にしたロマンスドラマです。離婚した女性と写真家が織りなす切ない恋物語が描かれます。美しい田園風景と情感豊かなストーリーが調和し、深い愛と喪失感を丁寧に表現した名作です。
- ナチュラル(1984年):ネブラスカ州出身の野球選手の人生を描いた感動的なスポーツドラマです。才能ある主人公が夢と挫折を経験しながら成長します。ロバート・レッドフォード主演で、ネブラスカの田舎の美しさとアメリカの精神が融合した作品です。
- 雨のなかの女(1969年):ネブラスカ州の田舎町を舞台にしたロマンスとミステリーの物語です。孤独な女性と謎めいた男性の出会いが、雨の情景と共に描かれます。情感豊かな演出とネブラスカの静かな風景が、物語に独特の雰囲気を加えています。
- 1922(2017年):スティーヴン・キング原作のスリラーです。ネブラスカ州の農場で、農夫が妻を殺害したことから始まる恐怖と罪悪感の物語です。心理的な闇と田舎の孤立感が強調され、不気味な展開が観客を引き込みます。暗い人間性を描いた作品です。
これらの映画は、ネブラスカの広大な平原や小さな町の雰囲気を活かし、州の多様な側面を世界に伝えています。特に農村部の静けさやコミュニティの人間模様が、物語の背景として効果的に使われています。
出身女優
ネブラスカ州出身の女優は、ハリウッドで活躍する才能ある人物を輩出しています。以下は代表的な女優です。
- ヒラリー・スワンク(Hillary Swank):1974年リンカーン生まれ。『ボーイズ・ドント・クライ』(1999年)でトランスジェンダーの青年を演じ、アカデミー主演女優賞を受賞。『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)でも同賞を獲得し、演技力が高く評価されています。ネブラスカの素朴な環境で育ち、強い意志を持った役柄を得意とします。
- ジャニーン・ターナー(Janine Turner):1962年リンカーン生まれ。テレビドラマ『ジェネラル・ホスピタル』や『Northern Exposure』(1990-1995年)で注目を集めました。ネブラスカの保守的な価値観を背景に、強い女性像を演じることで知られています。
- ガブリエル・カーター(Gabrielle Carteris):1961年オマハ生まれ。『ビバリーヒルズ高校白書』(1990-2000年)でアンドレア役を演じ、ティーンドラマのスターとして一世を風靡。後に声優やプロデューサーとしても活動しています。
- スウォージー・カーツ(Swoosie Kurtz):1944年オマハ生まれ。舞台と映画で活躍し、トニー賞やエミー賞を受賞。『危険な情事』(1987年)や『シスターズ』(1991-1996年)のテレビシリーズで知られ、幅広い役柄をこなすベテラン女優です。
これらの女優は、ネブラスカの質朴な文化や価値観を背景に、独自のキャリアを築きました。特にヒラリー・スワンクは、ネブラスカ出身者として最も成功した女優の一人で、州の誇りとなっています。彼女たちの活躍は、ネブラスカが単なる農業州にとどまらず、文化的・芸術的な才能を育む土壌を持つことを示しています。
レビュー 作品の感想や女優への思い