レイチェル・ブロズナハン(Rachel Brosnahan)は米国の女優。ウィスコンシン州ミルウォーキー生まれでイリノイ州ハイランドパーク育ち。NYUティッシュ芸術学部卒業後、2009年から映画・TVで活躍。『ハウス・オブ・カード』で注目を集め、『マーベラス・ミセス・メイゼル』でエミー賞主演女優賞と2度のゴールデングローブ賞を受賞。2025年の『スーパーマン』でロイス・レイン役を演じる。私生活では俳優ジェイソン・ラルフと結婚。おばはデザイナーのケイト・スペード。
プロフィール
- レイチェル・ブロズナハン(Rachel Brosnahan)
- 生年月日:1990年7月12日(35歳)
- 出生地:アメリカ合衆国ウィスコンシン州ミルウォーキー
- 職業:女優
- 活動期間:2007年~
- 配偶者:ジェイソン・ラルフ(英語版)(2016年~)
- 著名な家族:ケイト・スペード(おば)、アンディ・スペード(英語版)(おじ)
生い立ち・教育
レイチェル・エリザベス・ブロズナハンは、1990年7月12日にアメリカ合衆国ウィスコンシン州ミルウォーキーで生まれた。父親のアール・ブロズナハンは子供向け出版業で働き、母親のカロルはイギリス出身である。彼女には弟と妹がおり、家族は彼女が4歳の時にイリノイ州ハイランドパークに移住した。そこで彼女の幼少期が過ごされた。ハイランドパークはシカゴの北郊外に位置する裕福な住宅街で、緑豊かな環境が彼女の成長に寄与した。
幼い頃から演劇に興味を示し、家族の励ましを受けて表現活動に没頭した。母親のカロルはイギリス文化の影響を彼女に与え、父親の仕事を通じて本や物語に囲まれた生活を送った。彼女の叔母は有名なハンドバッグデザイナーのケイト・スペード(旧姓ブロズナハン)で、叔父のアンディ・スペードもファッション業界で知られる人物である。この家族のクリエイティブなバックグラウンドが、彼女の芸術的感性を育んだ。
教育面では、ウェイン・トーマス小学校とノースウッド中学校に通い、そこでミュージカルシアターの活動に参加した。中学校時代に演劇クラブに入り、歌やダンスを学び、自信を築いた。ハイランドパーク高校ではさらに本格的に演劇に取り組み、ミュージカルに出演したほか、レスリングチームに2年間所属し、女子として珍しい経験を積んだ。また、雪上インストラクターとしてアルバイトをし、屋外活動を通じて精神的な強靭さを養った。16歳の時、ウィルメットの俳優トレーニングセンターのディレクター、カロル・ディボのクラスを受講し、それがきっかけで彼女のマネージャーとなる関係が生まれた。この出会いが、プロの道への第一歩となった。
高校卒業後、2008年にニューヨーク大学ティッシュ芸術学部に入学。リー・ストラスバーグ演劇映画研究所で演技を専攻し、Bachelor of Fine Arts(美術学士)を取得した。在学中からオーディションを受け、業界の厳しさを肌で感じながらスキルを磨いた。ティッシュ校は名門で、ウディ・アレンやマーティン・スコセッシなどの卒業生を輩出しており、彼女のネットワークを広げた。2012年の卒業時には、すでにいくつかの役を得ており、学生時代がキャリアの基盤を固めた時期だった。こうした生い立ちと教育が、彼女の多面的な才能を形成した。
経歴
レイチェル・ブロズナハンのキャリアは、2007年の高校時代に始まった。最初は地元の劇場で小さな役をこなし、2009年にマイケル・ベイ監督のホラー映画『アンボーン』で映画デビューを果たした。リサ役という脇役だったが、スクリーンでの存在感を示した。在学中のニューヨーク大学時代には、TVシリーズのエピソード出演を重ね、『ゴシップガール』(2010年)、『グッド・ワイフ』(2010年)、『グレイズ・アナトミー』(2013年)、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』(2013年)などにゲスト出演。こうした小さな積み重ねが、彼女のレジュメを充実させた。
2012年の卒業後、TVシリーズ『ブラックリスト』(2014年)と『ブラック・ボックス』(2014年)でリカーリング役を獲得。短編映画では、アリ・アスター監督の『ベーシカリー』(2013年)と『ムンハウゼン』(2014年)に出演し、インディペンデントシーンで評価された。劇場では2009年にステッペンハウフ・シアター・カンパニーの『アップ』でデビュー。2013年にブロードウェイで『ビッグ・ナイフ』のリバイバルに出演し、ブロードウェイ初登場を飾った。
転機となったのは2013年のNetflix政治スリラー『ハウス・オブ・カード 野望の階段』への出演。レイチェル・ポスナー役は当初2エピソードの予定だったが、ケヴィン・スペイシーやマイケル・ケリーとの化学反応で19エピソードに拡大。売春婦として描かれる複雑なキャラクターを深く演じ、2015年のプライムタイム・エミー賞ゲスト女優賞(ドラマシリーズ部門)と全米映画俳優組合賞アンサンブル賞(ドラマシリーズ部門)にノミネートされた。この役で彼女は一躍注目を浴び、業界の扉が開かれた。
2014年から2015年にかけて、WGNアメリカのドラマ『マンハッタン』でアビー・アイザックス役を演じ、核開発プロジェクトの妻として人間ドラマを体現。2016年にはウディ・アレン監督のAmazonシリーズ『ウディ・アレンの6つの危ない物語』でエリー役を務め、ウディ・アレンやマイリー・サイラスと共演した。しかし、後年のウディ・アレンに対する性的虐待疑惑により、彼女はこの選択を後悔したと公言。2016年のオフ・ブロードウェイ『オセロ』ではデズデモーナ役でダニエル・クレイグと共演し、批評家から絶賛された。
2017年、最大のブレイクを果たす。Amazonプライム・ビデオのピリオド・コメディ『マーベラス・ミセス・メイゼル』で、1950年代のユダヤ系主婦ミリアム「ミッジ」・メイゼル役を主演。離婚後スタンダップコメディアンに転身する女性の成長物語で、彼女のコメディとドラマの両面が光った。シリーズは2023年まで続き、43エピソードを放送。彼女はこの役で2018年のプライムタイム・エミー賞主演女優賞(コメディシリーズ部門)、2018年と2019年のゴールデングローブ賞女優賞(ミュージカル・コメディシリーズ部門)、2度の全米映画俳優組合賞女優賞(コメディシリーズ部門)、2度のクリティクス・チョイス賞を受賞した。ユダヤ文化への親しみが役作りに役立ったと語っている。
2019年、自身のプロダクション会社「スクラップ・ペーパー・ピクチャーズ」を設立し、Amazonスタジオとファーストルック契約を結んだ。映画では2013年の『ビューティフル・クリーチャーズ』でジュネヴィエーヴ役を演じ、ファンタジーロマンスで存在感を示した。2015年の『母の残像』と『ラウダー・ザン・ボムズ』、2016年の『ザ・フィネスト・アワーズ』と『パトリオット・デイ』で多様な役柄をこなした。2020年には『クーリエ:最高機密の運び屋』でベネディクト・カンバーバッチと共演し、スパイスリラーに挑んだ。同年の『アイム・ユア・ウーマン』では主演兼プロデューサーとして、逃亡生活の女性ジーン役を演じた。
2022年の『デッド・フォー・ア・ダラー』では西部劇に進出。2025年にはジェームズ・ガン監督のDCユニバース『スーパーマン』でロイス・レイン役を演じ、フランチャイズの顔となる。同じく2025年の『アマチュア』ではラミ・マレクと共演し、サラ・ヘラー役でエスピオナージュ・スリラーを繰り広げる。また、Apple TV+の『推定無罪』シーズン2でレイラ・レイノルズ役を主演し、エグゼクティブ・プロデューサーも務める予定だ。他に、2019年の『サタデー・ナイト・ライブ』ホスト、声優として『スパイ in デンジャー』(2019年)と『アバローのプリンセス エレナ』(2019-2020年)、2020年の『50ステーツ・オブ・フライト』に出演。2023年のブロードウェイ『シドニー・ブルスティンの窓のサイン』リバイバルでアイリス役を演じ、ドラマ・リーグ賞にノミネート。2024年には『グーテンベルク! ザ・ミュージカル!』で1夜限りのプロデューサーとして参加した。
彼女のキャリアは、インディペンデントからメインストリームへ移行し、多ジャンルで活躍するものとなった。受賞歴の豊富さとプロデュースへの進出が、今後の活躍を予感させる。
私生活
レイチェル・ブロズナハンは、私生活を比較的プライベートに保ちつつ、家族やパートナーシップを大切にする人物だ。2015年にドラマ『マンハッタン』の撮影現場で出会った俳優のジェイソン・ラルフと交際を開始。2人は共演を通じて互いの才能を認め合い、自然な関係を築いた。結婚は2018年頃に行われたと報じられたが、実際には2016年に静かに式を挙げていたことが2019年に明らかになった。2019年のゴールデングローブ賞受賞スピーチで、彼女はジェイソンに感謝の言葉を述べ、関係の深さを公に示した。2人はニューヨークを拠点に暮らし、互いのキャリアを支え合うパートナーシップを維持している。子供については2025年現在、公表されていないが、仕事とプライベートのバランスを重視しているようだ。
家族との絆も強い。叔母のケイト・スペードは2018年に自殺で亡くなり、レイチェルは深い悲しみを抱えた。この出来事はメンタルヘルスへの意識を高め、彼女は慈善活動を通じて精神衛生の啓発に取り組むようになった。叔父のアンディ・スペードや、遠縁のデヴィッド・スペード(コメディアン)とも親しい関係を保つ。父親のアールは出版業を引退し、家族の支え手として存在感を発揮。母親のカロルからはイギリス文化の影響を受け、旅行や読書を趣味とする。
彼女は社会問題にも積極的で、2014年と2015年に「ライブ・ビロウ・ザ・ライン」チャレンジに参加し、1日1.50ドル以内の生活を体験。貧困問題への理解を深め、寄付や啓発活動に携わる。趣味は絵画で、自身の作品をSNSで共有することもある。COVID-19パンデミック中は、オンラインでの演劇ワークショップを支援し、業界の若手育成に貢献した。こうした私生活の側面が、彼女の人間性豊かな役柄に反映されている。(約650文字)
出演作品
映画
- 2009年:アンボーン(リサ役)
- 2009年:普通の男たちの真実(モリー役)
- 2013年:ビューティフル・クリーチャーズ 光と闇に選ばれし者(ジュネヴィエーヴ・デュシャネス役)
- 2013年:ニューヨーク・ハートビート(タマラ役)
- 2015年:母の残像(エレン役)
- 2015年:ラウダー・ザン・ボムズ(エリン役)
- 2016年:ザ・フィネスト・アワーズ(ベア・ハンセン役)
- 2016年:バーン・カントリー(サンドラ役)
- 2016年:パトリオット・デイ(ジェシカ・ケンスキー役)
- 2016年:チェンジ・イン・ジ・エア(ニッキー役)
- 2019年:スパイ in デンジャー(ウェンディ・ベケット役、声の出演)
- 2020年:クーリエ:最高機密の運び屋(エミリー・ドノヴァン役)
- 2020年:アイム・ユア・ウーマン(ジーン役、兼プロデューサー)
- 2022年:デッド・フォー・ア・ダラー(レイチェル・キッド役)
- 2025年:アマチュア(サラ・ヘラー役)
- 2025年:スーパーマン(ロイス・レイン役)
- TBA:リア・レックス(リーガン役、ポストプロダクション)
テレビドラマ
- 2010年:ゴシップガール(少女役)
- 2010年:イン・トリートメント(セシリア役)
- 2011年:CSI:マイアミ(メラニー・ガーランド役)
- 2013年:グレイズ・アナトミー 恋の解剖学(ブライアン・ウェストン役)
- 2013年:オレンジ・イズ・ニュー・ブラック(リトル・アリー役)
- 2013-2015年:ハウス・オブ・カード 野望の階段(レイチェル・ポスナー役、19話)
- 2014年:オリーヴ・キタリッジ(パティ・ハウ役)
- 2014年:ザ・ブラックリスト(ジョリーン・パーカー役、6話)
- 2014-2015年:マンハッタン(アビー・アイザックス役、23話)
- 2014年:ブラック・ボックス(ローラ・レミック役、3話)
- 2016年:ウディ・アレンの6つの危ない物語(エリー役、4話)
- 2017-2023年:マーベラス・ミセス・メイゼル(ミリアム・ミッジ・メイゼル役、43話)
- 2019年:サタデー・ナイト・ライブ(ホスト)
- 2019-2020年:アバローのプリンセス エレナ(クロエ役、声の出演、3話)
- 2020年:50ステーツ・オブ・フライト(ヘザー役、3話)
- 2020-2021年:さよなら2021年(本人役、2話)
- TBA:推定無罪 シーズン2(レイラ・レイノルズ役、兼エグゼクティブ・プロデューサー)
舞台
- 2009年:アップ(マリア役、ステッペンハウフ・シアター・カンパニー)
- 2013年:ビッグ・ナイフ(ディクシー・エヴァンス役、ブロードウェイ)
- 2016年:オセロ(デズデモーナ役、オフ・ブロードウェイ)
- 2023年:シドニー・ブルスティンの窓のサイン(アイリス・パロダス・ブルスティン役、ブロードウェイ)
- 2024年:グーテンベルク! ザ・ミュージカル!(プロデューサー、1夜限り)
レビュー 作品の感想や女優への思い