『ラビッド』は2019年に公開されたカナダ製作のホラーSF映画。原作はデイビッド・クローネンバーグ監督の1977年の名作同名映画のリメイクであり、現代の視点から美の基準や身体改造の恐怖を描いた作品。以下に、概要、女優の活躍、女優の衣装・化粧・髪型、あらすじ、解説、キャスト、スタッフを丁寧に記述。
ファッションデザイナーを夢見る内気な女性ローズは、交通事故で顔を負傷し、実験的な幹細胞治療を受ける。美しく変貌した彼女だが、口内に現れた触手状の器官が血を求め、感染を広げる。美の呪縛と感染の恐怖を描くボディホラー。
基本情報
- 邦題:ラビッド
- 原題:Rabid
- 公開年:2019年
- 製作国・地域:カナダ
- 上映時間:107分
- ジャンル:ホラー、SF
女優の活躍
本作の主演女優であるローラ・ヴァンダーヴォートはカナダ出身の才媛で、テレビシリーズ『スモールビル』や『スーパーガール』での活躍で知られています。『ラビッド』では、主人公ローズ・ミラー役を熱演し、作品の中心を担いました。ローズは当初、内気で自信のないファッション業界の端くれとして描かれ、事故後の変貌を通じて、強さと脆さを併せ持つ複雑なキャラクターを体現しています。
ヴァンダーヴォートの演技は、特に前半の心理描写で光ります。事故直後の絶望的な表情や、治療後の自信に満ちた微笑みは、観る者の心を掴みます。後半では、感染の衝動に駆られながらも人間性を保とうとする葛藤を、微妙な眼差や体躯の震えで表現。プロテーゼメイクの下でさえ、感情の機微を伝えるその技量は、批評家から高く評価されました。例えば、映画レビューサイトでは「ヴァンダーヴォートはプロテーゼを活かし、キャラクターに深みを加える」と絶賛されています。
彼女の活躍は、単なるホラー女優の枠を超え、クローネンバーグのボディホラー伝統を継承しつつ、女性視点の現代化に寄与しました。共演者との化学反応も見事で、親友チェルシー役のハネケ・タルボットとの友情シーンでは、繊細な絆を、恋人ブラッド役のベンジャミン・ホリングスワースとのロマンスでは、切ない情熱を披露。全体として、ヴァンダーヴォートは本作を「女性の美と怪物性の探求」として昇華させ、観客に強い印象を残しました。彼女のキャリアにおいても、この役は転機となり、以降のホラー作品への出演を増やしています。(約650文字)
女優の衣装・化粧・髪型
ローラ・ヴァンダーヴォート演じるローズのビジュアルは、本作のテーマである「美の変容」を象徴的に表現しており、衣装、化粧、髪型が物語の進行とともに劇的に変化します。衣装デザインはモーガン・ニュートン氏が担当し、ファッション業界の華やかさと残酷さを反映した洗練されたスタイルが特徴です。
物語冒頭のローズは、内気な性格を反映した控えめな衣装で登場します。ゆったりとしたグレー系のブラウスに、膝丈の黒いスカートを合わせ、肩に掛けたシンプルなカーディガンが彼女の影のような存在感を強調。アクセサリーは最小限で、シルバーの小さなイヤリングのみ。これにより、ファッション業界の華美な世界で浮いた「地味な」女性として描かれます。化粧はナチュラルメイクで、薄いファンデーションと淡いピンクのリップが中心。眉は自然なアーチを描き、目元に軽いマスカラを施す程度です。髪型はロングのストレートヘアを無造作に下ろし、顔を半分隠すように流すことで、内向性を視覚化。全体として、自己主張の少ない「普通の女性」を体現し、観客に共感を誘います。
事故後の負傷期では、衣装は病院のガウンに変わり、無機質な白が彼女の喪失感を際立たせます。化粧は施されず、包帯が顔全体を覆うため、生々しい傷跡が想像を掻き立てます。髪型は乱れ、ベッドサイドで絡まった状態が、精神的・身体的苦痛を象徴します。
治療後の変貌が本作のハイライトです。幹細胞治療により美しく再生したローズの衣装は、ファッション業界の洗練されたドレスへシフト。赤いシースルーのイブニングドレスを纏い、ハイヒールとゴールドのネックレスが加わることで、自信に満ちたセクシーさを演出。デザイナーのグンターのショーで着用する衣装は、ボディコンシャスな黒のレザードレスで、彼女の新たなる「怪物的な魅力」を強調します。化粧はドラマチックに進化し、ビビッドなレッドのリップとスモーキーなアイシャドウが施され、頰にハイライトを効かせて完璧な肌をアピール。眉はシャープに整えられ、全体が「完璧な美」を追求したプロフェッショナルメイクです。髪型はウェーブのかかったアップスタイルに変わり、露出した首筋が妖艶さを増幅。後半の感染進行では、衣装が血まみれのまま乱れ、化粧が崩れて黒いアイラインが涙で流れ、髪が解けて顔を覆うようになります。これらの変化は、Todd Masters氏のプロテーゼメイクと連動し、口内の触手器官が現れるシーンで頂点に達します。
こうしたビジュアルの変遷は、監督のソスカ姉妹が意図した「美の呪い」を視覚的に表現。ヴァンダーヴォートのボディランゲージがこれを補完し、衣装・化粧・髪型のレイヤーがキャラクターの心理を深めています。ファッション要素が強い本作ゆえ、これらの要素は単なる装飾ではなく、物語の核として機能します。(約850文字)
あらすじ
物語は、トロントのファッション業界を舞台に幕を開けます。主人公ローズ・ミラー(ローラ・ヴァンダーヴォート)は、野心的なデザイナー・グンター(マッケンジー・グレイ)のアトリエで、裁縫係として働く内気な女性です。彼女は幼馴染のチェルシー(ハネケ・タルボット)とルームシェアをし、恋人のブラッド・ハート(ベンジャミン・ホリングスワース)はファッションフォトグラファーとして活躍中。ローズは自身のデザインを密かに抱え、業界の華やかな世界で疎外感を抱いています。
ある夜、チェルシーの誕生日パーティーで、グンターの派手なショーに招かれた一行。チェルシーはモデルとして輝きますが、ローズは影に徹します。しかし、ブラッドの元カノ・キンバリーの挑発的な視線に耐えかね、ローズはパーティーを飛び出し、バイクで逃走。悲劇はここで訪れます。雨の高速道路でスリップし、大型トラックと衝突。顔面を激しく損傷し、昏睡状態に陥ります。
目覚めたローズは、ウィリアム・バロウズ博士(テッド・アサートン)が主宰するクライオジェニック社で、革新的な幹細胞治療を受けていました。この治療は、豚の幹細胞を基に皮膚を再生する実験的なもので、保険適用外の高額治療です。ローズの両親は借金を背負い、彼女の回復を祈ります。数週間後、包帯が取れたローズは、鏡に映る完璧な美貌に驚愕。傷跡は一切なく、むしろ以前より魅力的に変貌していました。自信を得た彼女は、職場復帰を果たし、グンターの注目を集めます。
しかし、喜びは束の間。ローズは夜毎、激しい渇きに苛まれます。ある晩、鏡の前で口内を探ると、隠された触手状の器官が現れ、血を求める衝動に駆られます。最初は自傷で抑えますが、やがて抑えきれず、キンバリーを襲い、感染させてしまいます。キンバリーは狂暴化し、周囲を次々と噛みつき、感染が拡大。ブラッドのスタジオで惨劇が起き、チェルシーも巻き込まれます。
感染は街全体に広がり、軍が封鎖を開始。ローズはドミニク(CMパンク)というインフルエンサーのインタビューを受け、美の秘訣を語りますが、そこで再び衝動が爆発。ドミニクの撮影現場が地獄絵図と化します。一方、バロウズ博士は治療の副作用に気づき、追跡を開始。ローズの変異は進み、触手が成長して口外に現れ、彼女自身が怪物化します。
クライマックスでは、チェルシーが感染し、ローズを責めますが、友情の記憶がフラッシュバック。ローズは自らを犠牲にし、感染源を断つ決意をします。軍の特殊部隊が突入する中、ローズはバロウズ博士に射殺され、街は壊滅を免れます。しかし、エンディングでローズの幹細胞が研究所に保管されていることが示唆され、続編の可能性を残します。このあらすじは、ホラーのスリルと人間ドラマのバランスが絶妙で、観客を最後まで引きつけます。
解説
『ラビッド(2019)』は、デイビッド・クローネンバーグの1977年作『ラビッド』のリメイクとして、ジェン・ソスカとシルビア・ソスカの姉妹監督が手がけた作品です。原作が描いた「身体の侵略と感染の恐怖」を、現代の文脈で再解釈し、特に女性の視点から「美の強迫観念」と「ボディ・モディフィケーション」の危険性を強調しています。ソスカ姉妹は、過去作『アメリカン・メアリー』でも身体改造のテーマを扱っており、本作はその延長線上に位置づけられます。
まず、テーマの現代化が際立ちます。原作では無名の女性が感染源でしたが、本作ではファッション業界のインサイダーとしてローズを設定。業界の「美の基準」がもたらすプレッシャーを、ユーモアと風刺を交えて描きます。例えば、グンターのキャラクターは、業界のエリートを風刺し、McKenzie Grayの演技がその毒を増幅。ローズの変貌は、美容整形やSNSの「完璧美」文化を象徴し、治療後の称賛が一転して恐怖に変わる過程は、社会の浅薄さを批判します。批評家はこれを「シュadenfreude(他人の不幸を喜ぶ心)」の文化として分析し、現代のインスタグラム時代に合致すると評しています。
ホラー要素のアップデートも秀逸です。原作のラブス(rabies)感染を、幹細胞治療の副作用として科学的に説明。口内の触手器官は、クローネンバーグのバイオホラー伝統を継承しつつ、CGIとプロテーゼの融合でグロテスクさを増しています。感染シーンはゾンビ映画風のゴア満載で、後半の混沌がスリルを生みますが、前半の心理ホラーとのコントラストが効果的。監督のインタビューでは、「女性の身体が怪物化するプロセスを、共感を持って描きたかった」と語っており、フェミニスト的な視座が加わっています。
演出面では、ソスカ姉妹のユーモアセンスが光ります。ファッションショーの華やかさと感染の残虐が交錯するシーンは、ブラックコメディの極み。CMパンク演じるドミニクのVlog風インタビューは、メタ的な現代性を加え、感染の拡散をSNS経由で描きます。一方で、欠点として挙げられるのは、ペースの乱れ。サブキャラクターのエピソードが冗長で、緊迫感が薄れるとの指摘があります。Roger Ebertのレビューでは、「魅力的なアイデアはあるが、深掘りが不足」とされ、Metascoreは43点と賛否両論です。
文化的影響として、本作はクローネンバーグ・リバイバルの一翼を担い、ボディホラーの新世代を象徴。ヴァンダーヴォートの演技は、原作のマリリン・チェンバースを超えるとされ、女性監督の視点が新鮮です。COVID-19後の再評価では、感染パンデミックの予見性が注目され、ホラー映画の社会的鏡としての価値が高まっています。全体として、本作はエンターテイメント性と批評性を兼ね備え、ホラーファンに推奨される一作です。(約950文字)
キャスト
- ローラ・ヴァンダーヴォート:ローズ・ミラー役、内気な主人公。変貌後の怪物性を体現。
- ベンジャミン・ホリングスワース:ブラッド・ハート役、ローズの恋人。ファッションフォトグラファー。
- テッド・アサートン:ウィリアム・バロウズ博士役、治療を主宰する科学者。倫理的葛藤を抱く。
- ハネケ・タルボット:チェルシー・サンダース役、ローズの親友。モデルとして活躍。
- スティーブン・フサール:ドミニク・ヴェルデ役、インフルエンサー。感染の媒介者。
- マッケンジー・グレイ:グンター役、デザイナー。業界の冷徹さを象徴。
- スティーブン・マクハッティ:ケロイド博士役、バロウズの同僚。陰謀を匂わせる。
- CMパンク(フィル・ブルックス):ハートリー・ドミニク役、ドミニクの別名。過激な役柄。
- トリスタン・リスク:複数の役役、看護師など。コメディリリーフ。
- グレッグ・ブライク:ディレクター役、ソープオペラの監督。感染シーンで活躍。
キャストはカナダ・ハリウッドの面々で、ヴァンダーヴォートのリードが全体を統率。脇役の多層性が物語を豊かにしています。
スタッフ
- 監督:ジェン・ソスカ、シルビア・ソスカ。双子の姉妹で、ホラー専門。
- 脚本:ジェン・ソスカ、シルビア・ソスカ、ジョン・サーグ。原作を現代化。
- 製作総指揮:ポール・ラロンド、ジョン・ビデット、マイケル・ウォーカー。
- プロデューサー:ポール・ラロンド、ジョン・ビデット。
- 撮影:ブリオン・ホーガン。トロントの街並みを活かした陰鬱なトーン。
- 編集:Артём・グリゴリアン。ホラーとドラマのテンポを調整。
- 音楽:アミール・モフタヴォーディ。緊張感を高めるサウンドトラック。
- 衣装デザイン:モーガン・ニュートソン。ファッション要素の核。
- メイクアップ:トッド・マスターズ。プロテーゼの名手。
- ヘアスタイリスト:アナスタシア・ククッロ。変貌の鍵。
- 特殊効果:マスターズFX。グロテスクな触手を実現。
- 製作会社:クライオジェニック・ピクチャーズ、シュート! ファクトリー。
スタッフの多くがソスカ姉妹の常連で、統一感のあるクオリティを保証。低予算ながら、特殊効果のクオリティが高く評価されました。
まとめ
以上、『ラビッド』(2019年)の詳細でした。この作品は、ホラーの枠を超えた深い洞察を提供し、繰り返し観賞に値します。ご興味をお持ちの方は、ぜひご覧ください。
レビュー 作品の感想や女優への思い