『ライフ・ウィズ・ミュージック』はオーストラリアの歌手シアが監督を務めた2021年の米国製作ミュージカル映画。主人公のズーは薬物依存から回復したばかりの女性で、突然自閉症の義妹ミュージックを預かることになる。ミュージックの世界を幻想的なダンスで描きながら、家族の絆と成長を歌と音楽で紡ぐ心温まる物語。ケイト・ハドソンの演技が光るが、自閉症描写で物議を醸した作品。全107分。
基本情報
- 邦題：ライフ・ウィズ・ミュージック
- 原題：Music
- 公開年：2021年
- 製作地：アメリカ
- 上映時間：107分
- ジャンル：ミュージカル
- 公式サイト：flag-pictures.co.jp
女優の活躍
本作『ライフ・ウィズ・ミュージック』の中心を担う女優として、ケイト・ハドソンが主人公ズーを熱演しております。ハドソンは薬物依存からの回復を遂げたばかりの自由奔放な女性を、複雑な内面を繊細に表現し、ミュージカルシーンでの歌唱も見事です。彼女の演技は、家族の責任を負う過程での葛藤と成長をリアルに体現しており、ゴールデングローブ賞主演女優賞（ミュージカル・コメディ部門）にノミネートされるほどの評価を受けました。一方で、ラジー賞では最低女優賞を受賞するなど、賛否が分かれる点もございますが、その大胆さと脆弱さを併せ持つポートレイは、観る者の心を強く揺さぶります。
もう一人の重要な女優、マディー・ジーグラーが演じるミュージックは、非言語的な自閉症の少女です。ジーグラーはシアのミュージックビデオで長年活躍するダンサーで、本作ではその身体表現を活かし、ミュージックの内面的な世界を幻想的なダンスで視覚化しております。言葉を発さない役柄ながら、表情や動きで感情を伝える演技は感動的で、一部の批評家からは「感動的で独創的」と絶賛されました。しかし、非自閉症の俳優が自閉症役を演じた点で批判も多く、ラジー賞助演女優賞を受賞する結果となりました。それでも、彼女のダンスは物語の核となり、ミュージカルの魅力を高めております。
これらの女優の活躍は、物語の感情的な深みを生み出し、観客に自閉症の多様な側面を考える機会を提供しております。ハドソンとジーグラーの化学反応は、姉妹の絆を美しく描き出しており、本作の最大の魅力の一つと言えましょう。
女優の衣装・化粧・髪型
ケイト・ハドソンが演じるズーの衣装は、彼女の自由奔放な性格を反映したカジュアルでエッジの効いたスタイルが中心です。デニムパンツやタンクトップ、革ジャケットなどのストリートウェアが多用され、薬物依存からの回復期らしいラフな印象を与えます。ミュージカルシーンでは、よりカラフルで幻想的なドレスに変わり、動きやすい素材でダンスを強調。化粧はナチュラルメイクが基本で、日常シーンでは軽いファンデーションとリップのみですが、感情の高ぶる場面ではアイラインを強調したスモーキーアイが用いられ、内面的な葛藤を象徴します。髪型は物語序盤でロングヘアのウェーブがかかったスタイルですが、成長の象徴として中盤でショートボブにカットされ、新たな始まりを視覚的に表現しております。この変化は、彼女のキャラクターアークを効果的に支えております。
マディー・ジーグラーのミュージック役の衣装は、自閉症の少女らしいシンプルで快適さを優先したデザインです。ゆったりしたTシャツやレギンス、フーディーなどが主で、日常の安心感を表します。ミュージカルシーケンスでは、劇的な変身を遂げ、虹色のフェイスペイントやウィッグを着用したファンタジックな衣装が登場します。例えば、黒いウィッグにカラフルなドレスを纏い、ミュージックの内なる世界を象徴する蝶や花のモチーフが施されます。これらの衣装は、振付師ライアン・ヘフィントンのデザインによるもので、動きのダイナミズムを高めております。化粧は日常では最小限ですが、シーケンスでは大胆なフェイスペイントが特徴で、虹色のグラデーションが視覚的にインパクトを与えます。髪型はストレートのロングヘアが基本ですが、ブラッディングのシーンで編み込みが重要な役割を果たし、彼女のルーチンの乱れによるメルトダウンを描きます。この髪型のこだわりは、キャラクターの心理を深く掘り下げております。
全体として、女優たちの衣装・化粧・髪型は現実と幻想のコントラストを強調し、ミュージカルの魅力を引き立てております。ただし、一部のシーケンスのメイクが過度に派手で、視覚障害を持つ観客への配慮不足として批判された点もございます。
あらすじ
物語は、薬物依存から回復したばかりのズー（ケイト・ハドソン）が、突然亡くなった祖母の遺言により、非言語的な自閉症の義妹ミュージック（マディー・ジーグラー）の後見人となる場面から始まります。ズーはコスタリカ移住の夢を抱き、失業中で薬の売買で生計を立てており、ミュージックの世話など荷が重いと感じます。ミュージックの日常ルーチンを守る重要性を知らず、ブラッディングの失敗で大規模なメルトダウンを引き起こし、困惑します。
そんな中、隣人のエボ（レスリー・オドム・Jr.）が助け舟を出します。彼はシングルファーザーの元ボクサーで、優しくミュージックを落ち着かせ、ズーに自閉症のケア方法を教えます。二人は次第に親しくなり、互いの過去を共有します。エボの息子とミュージックの交流も温かく描かれます。しかし、ミュージックが蜂に刺されてアナフィラキシーショックを起こし入院する事件で、ズーは酒に手を出して再発の危機に陥ります。
さらに、エボの近所の少年フェリックスが両親の喧嘩で悲劇的な死を遂げ、ズーは動揺します。ミュージックのサポートドッグを手配したのもフェリックスでした。ズーはミュージックを養子縁組センターに連れて行きますが、最終的に連れ帰り、エボの兄弟の結婚式に参加します。そこで三人は歌い、ミュージック自身が初めて歌い出す感動のシーンが訪れます。ミュージックの内面的世界は、幻想的なダンスと歌のミュージカルシーケンスで表現され、蝶や花が舞う美しいビジュアルが展開します。最終的に、ズー、エボ、ミュージックは新しい家族として支え合い、希望に満ちた未来を歩み始めます。
解説
『ライフ・ウィズ・ミュージック』は、シアの初監督作として、彼女の音楽世界をスクリーンに投影した野心的なミュージカルです。テーマは自閉症の少女とその家族の絆で、ミュージックの内面をダンスで視覚化する手法は革新的ですが、監督のシア自身が自閉症の娘を持つ経験から着想を得たものの、非自閉症俳優のキャスティングが最大の論争点となりました。批評家からは「自閉症のステレオタイプを助長する」との厳しい声が多く、Rotten Tomatoesで7%の低評価を記録しました。一方で、音楽と振付のクオリティは高く評価され、シアのオリジナルソングが物語の感情を豊かに彩ります。
物語構造は、ズーの成長譚を中心に据え、依存症の回復と責任の受容を丁寧に描きます。ミュージカルシーケンスは現実と非現実の境界を曖昧にし、観客にミュージックの視点を提供しますが、点滅する照明や派手なビジュアルがてんかん患者への配慮不足として問題視されました。社会的には、自閉症啓発の意図が感じられますが、表現の浅さが指摘され、Netflix公開時にボイコット運動も起きました。ポジティブな側面では、ケイト・ハドソンの演技が人間味あふれ、レスリー・オドム・Jr.の温かな存在感が癒しを与えます。全体として、善意に満ちた失敗作として語り継がれ、障害描写の倫理をめぐる議論を喚起した意義深い作品です。
製作背景として、2017年に40日間で撮影され、予算1600万ドル。シアのビジョンが強く反映された一方、脚本の共同執筆者ダラス・クレイトンとのコラボがファンタジー要素を加えました。批評の多角性から、障害者コミュニティの声を反映したリメイクの可能性も示唆されます。本作は、ミュージカルの伝統を現代の社会問題に融合させた試みとして、価値ある一作と言えましょう。
キャスト
- ケイト・ハドソン：ズー（カズ・ギャンブル）
- マディー・ジーグラー：ミュージック
- レスリー・オドム・Jr.：エボ
- ブラッド・モリス：ルディ
- ヘザー・グラハム：ミリー（祖母）
- ジュリエット・ルイス：フラニー（エボの元妻）
- ボビー・カナヴェール：リチャード（エボの兄）
- ベン・シュワルツ：フェリックス
- メアリー・ケイ・プレイス：ババ
- シア：カメオ出演
スタッフ
- 監督：シア
- 脚本：シア、ダラス・クレイトン
- 製作総指揮：シア、ヴィンセント・ランデイ 他
- 撮影監督：セバスチャン・ウィンター
- 編集：エリン・マトソン、ロバート・スキャヴッツォ
- 音楽：クレイグ・デレオン
- 歌曲：シア
- 振付：ライアン・ヘフィントン
- 製作会社：ハンウェイ・フィルムズ、アトランティック・フィルムズ 他
レビュー 作品の感想や女優への思い