『女と男と金』(原題:Oggi, domani, dopodomani)は、1965年にイタリアで製作されたコメディ映画。3つの独立したエピソードからなり、それぞれでマルチェロ・マストロヤンニが異なる女性とカップルの危機を描きます。監督はエドゥアルド・デ・フィリッポ、マルコ・フェレーリ、ルチアーノ・サルチェが担当し、上映時間は87分。1960年代のイタリア社会を風刺した作品として知られています。
基本情報
- 邦題:女と男と金
- 原題:OGGI, DOMANI, DOPODOMANI
- 公開年:1965年
- 製作国・地域:イタリア
- 上映時間:87分
『女と男と金』予告編
女優の活躍
カトリーヌ・スパーク
カトリーヌ・スパークは、第一エピソード「L’uomo dei 5 palloni」でジョヴァンナ役を演じています。この役では、マルチェロ・マストロヤンニ演じるマリオの恋人として登場し、彼の風船に対する異常な執着に悩まされる女性を表現しています。
スパークは当時18歳ながら、大人の女性らしい成熟した演技を披露し、エロティックなシーンでも服を脱がずにセクシーさを醸し出す点が評価されています。彼女の演技は、映画の風刺的なユーモアを支え、観客を引き込む魅力的な存在感を示しています。また、この作品は彼女のキャリアにおいて異例のプロジェクトであり、複数のバージョンが存在する中で、彼女の柔軟性が光っています。
スパークは1960年代のイタリア映画界で「イットガール」として人気を博し、ティーンエイジャーのファッションアイコンとしても活躍しました。この映画では、即興的な演出に対応し、マストロヤンニとの相性の良さを活かした自然な演技が特徴です。
ヴィルナ・リージ
ヴィルナ・リージは、第二エピソード「L’ora di punta」でドロテア役を務めています。このエピソードでは、マルチェロ・マストロヤンニ演じるミケーレの相手役として、交通渋滞の中で繰り広げられるコミカルなやり取りを演じています。
リージは、1960年代のイタリア映画でセクシーなイメージを確立し、この作品でも魅力的な女性像を体現しています。彼女の演技は、ユーモラスな状況下での洗練された表情とジェスチャーが際立ち、映画のコメディ要素を高めています。
リージはハリウッド進出も果たし、「How to Murder Your Wife」(1965年)で注目を集めましたが、このイタリア映画では母国らしい軽快なスタイルで活躍しています。彼女の存在は、エピソードにエレガントな魅力を加え、観客に印象を残すものとなっています。
パメラ・ティフィン
パメラ・ティフィンは、第三エピソード「La moglie bionda」でペピータ役を演じています。この役は、マルチェロ・マストロヤンニ演じるミケーレの妻で、彼が彼女をハレムに売ろうとするという奇抜なプロットの中で、コミカルに描かれています。
ティフィンはアメリカ出身の女優として初めてマストロヤンニの相手役を務め、ブロンドヘアのイメージを活かした新鮮な演技が特徴です。彼女は1960年代初頭にモデルから女優へ転身し、ハリウッドで活躍していましたが、この作品でイタリア映画界に進出し、国際的な魅力を発揮しています。
ティフィンの演技は、ユーモラスな状況での無邪気さとセクシーさを兼ね備え、映画のエンターテイメント性を高めています。この役をきっかけに、彼女はイタリアで複数の映画に出演し、キャリアを広げました。
女優の衣装・化粧・髪型
カトリーヌ・スパーク
カトリーヌ・スパークは、この映画でジョヴァンナ役を演じる際、18歳という若さを抑え、大人びた印象を与える衣装を選んでいます。眼鏡を着用し、ワードローブはシンプルでエレガントなドレスやカジュアルな服装が中心です。これにより、彼女の外見は実際の年齢より成熟したものとなっています。
化粧はナチュラルで、セクシーさを強調しつつ過度に派手さを避け、肌の自然な輝きを活かしたメイクが施されています。髪型はミディアムレングスのストレートや軽くウェーブのかかったスタイルで、1960年代のイタリアンスタイルを反映しています。プロモーション写真ではバスルームシーンでのタオル姿が登場しますが、映画本編では親密なシーンでも服を着用したままの演出が特徴です。
これらの要素は、彼女の「イットガール」としてのイメージを強化しています。
ヴィルナ・リージ
ヴィルナ・リージは、ドロテア役でブロンドのボリュームあるブーファンヘアスタイルを採用し、1960年代のファッションアイコンらしい華やかさを演出しています。
衣装はシルバーのパンツスーツや黄色のスラッシュスリーブトップなど、洗練されたモダンなものが多く、交通渋滞のシーンに適したエレガントなスタイルです。ピンクのフェザーボアを頭に巻いた姿も見られ、遊び心のあるアクセサリーが加わっています。
化粧はアイラインを強調したスモーキーアイとリップのナチュラルカラーで、セクシーさを際立たせています。髪型はブロンドのボリュームヘアが主流で、約1965年の撮影当時のトレンドを体現しています。これらの要素は、彼女のハリウッド進出時のイメージと連動し、国際的な魅力を強調しています。
パメラ・ティフィン
パメラ・ティフィンは、ペピータ役でブロンドヘアを初めて披露し、以降のキャリアで定着させるきっかけとなりました。
衣装はオダリスク風のドレスやダイヤモンド付きのビキニ、ホットパンツなど、エキゾチックでセクシーなものが中心です。ハレム売却のプロットに合わせ、オリエンタルなヘッドドレスやベールが用いられています。
化粧は1960年代のハリウッドスタイルを反映し、アイシャドウとマスカラを強調したグラマラスなメイクで、唇はピンクやヌードトーンです。髪型はブロンドのロングヘアで、ストレートや軽くカールしたものが多く、ビーチシーンでは自然なウェーブが加わっています。
この作品が彼女のイタリアデビュー作であり、ブロンドイメージの転機となった点が注目されます。
あらすじ
第一エピソード:L’uomo dei 5 palloni
マルチェロ・マストロヤンニ演じるマリオは、キャンディー製造業者の男性で、風船にどれだけ空気を入れられるかを執拗に追求します。彼の恋人ジョヴァンナ(カトリーヌ・スパーク)は、そんな彼の異常なこだわりに苛立ち、関係が悪化していきます。マリオは友人たちと風船の実験を繰り返し、トルコ風呂やユースクラブを訪れますが、最終的に絶望的な行動に出ます。このエピソードは、風刺的なユーモアで現代社会の強迫観念を描いています。
第二エピソード:L’ora di punta
マルチェロ・マストロヤンニ演じるミケーレは、妻ドロテア(ヴィルナ・リージ)と交通渋滞に巻き込まれます。渋滞の中で夫婦の危機が露呈し、コミカルな対話が展開されます。ミケーレの友人アルトゥーロ・ロッシ(ルチアーノ・サルチェ)も関わり、状況を複雑にします。このエピソードは、1960年代イタリアの都市生活を風刺した内容です。
第三エピソード:La moglie bionda
マルチェロ・マストロヤンニ演じるミケーレは、妻ペピータ(パメラ・ティフィン)を中東のハレムに売ろうと企てます。ペピータは無邪気なブロンドの妻で、夫の奇抜な計画に巻き込まれます。警察署長(ライモンド・ヴィアネッロ)や友人(レリオ・ルッタッツィ)が登場し、ドタバタ劇が繰り広げられます。このエピソードは、夫婦関係のコメディを強調しています。
解説
『女と男と金』は、1960年代のイタリアンコメディの典型例で、オムニバス形式を採用しています。各エピソードが独立しつつ、マルチェロ・マストロヤンニの多面的な演技が共通の魅力です。
第一エピソードはマルコ・フェレーリ監督の風刺が強く、風船のメタファーで資本主義の限界を表現しています。第二エピソードはルチアーノ・サルチェ監督のユーモアが光り、都市のストレスを描きます。第三エピソードはエドゥアルド・デ・フィリッポ監督の軽快さで、国際色を加えています。
全体として、男女関係の危機をコミカルに扱い、当時の社会風俗を反映しています。この映画は、複数のバージョンが存在し、特に第一エピソードが拡張版として再リリースされた点が特徴です。カール・ポンティの製作により、国際市場を意識した作品となっています。女優たちの活躍は、1960年代のフェミニンなイメージを象徴し、ファッションやメイクが時代を表しています。コメディながら深い風刺を含み、イタリア映画の黄金期を象徴する一作です。
女と男と金 – 彼は私を撃った!
キャスト
- マルチェロ・マストロヤンニ:マリオ(L’uomo dei 5 palloni) / ミケーレ(L’ora di punta, La moglie bionda)
- カトリーヌ・スパーク:ジョヴァンナ(L’uomo dei 5 palloni)
- ヴィルナ・リージ:ドロテア(L’ora di punta)
- パメラ・ティフィン:ペピータ(La moglie bionda)
- ルチアーノ・サルチェ:アルトゥーロ・ロッシ(L’ora di punta)
- ウーゴ・トニャッツィ:ドライバー(L’uomo dei 5 palloni)
- ウィリアム・バーガー:ベニー(L’uomo dei 5 palloni)
- レリオ・ルッタッツィ:ミケーレの友人(La moglie bionda)
- ライモンド・ヴィアネッロ:警察署長(La moglie bionda)
- エンニオ・バルボ:モハメッドの兄弟(L’uomo dei 5 palloni)
スタッフ
- 監督:エドゥアルド・デ・フィリッポ(La moglie bionda), マルコ・フェレーリ(L’uomo dei 5 palloni), ルチアーノ・サルチェ(L’ora di punta)
- 脚本:マルコ・フェレーリ, ラファエル・アズコナ, エドゥアルド・デ・フィリッポ, イザベッラ・クアラントッティ, フランコ・カステラーノ, ジュゼッペ・モッチャ, ルチアーノ・サルチェ
- 製作:カール・ポンティ
- 配給:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
- 音楽:テオ・ウスエリ(一部エピソード)
- 撮影:不明(複数の撮影監督が関与)



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